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☆ ☆ ☆



夢、夢を見ている。
辺りの景色は近所の公園。
公園にいる子供達の声は少しうるさく、トイレのすぐ傍にあるベンチでは青いツナギを着た男性が優男に声をかけている。
リアルな夢だ。
空を見上げると日差しが眩しく、吹き付ける風は少し肌寒い。
そんな中を私、いや私達は歩いていた。

「たまには三人でお散歩もいいわよね」

そう、これは夢に違いない。 だって・・・・・・

「そうだなーでも少し退屈だ」

姉さまとカナがいるからだ。

「じゃあ夏奈の鯛焼きは無しね」
「やっぱり楽しいです! な、千秋」

同意を求めるなバカ野郎、と言うところだろうが、
今の私にとってはこのバカ面を見せられることでさえうれしい。

「なんだよ千秋、黙ってないで何か言えよなー」
「・・・・・・」
「どうしたの千秋? 調子が悪いなら帰ろうか?」

黙っていた私に、カナが頬を膨らませ、姉さまは私の顔を心配そうに覗き込んでくる。
二度と来るとは思わなかった三人の日常、その全てが懐かしく、ずっと待ち望んでいたものだった。

「大丈夫ですハルカ姉さま」
「おいおい春香にだけ口を開くのかよ」
「・・・・・・うるさいぞバカ野郎、お前がやかましすぎて答える気が出なかっただけだ」
「なんだとぉ!」

怒ったカナが私に絡み付いてくるもんだからそれをヒョイとかわす。
すると負けんとばかりまた絡み付いてこようとして、慌ててカナから逃げ出した。
姉さまを困らせることはあまりしたくないが、カナに捕まるのはごめんなので私は思いっきり駆ける。
走ることによって風が顔、腕、足、と服を纏ってない部分に思いっきり当たって冷たい。
途中、トイレを横切るときに男の人の叫び声が聞こえてくるけど気にしない。
砂場を通るとき幼稚園児五人のうち一人が尻を丸出しにしているけど気にしない。
顔の濃いおっさん(お兄さん?)が『己、クライシス帝国めっ!』とか言ってるけど気にしない。
ふと後ろに目をやるとカナが不敵な笑みを浮かべてすぐ傍まで走ってきていた。
もうすぐ私はこのバカ野郎に捕まってしまうだろう。 そうしたら第2ラウンドの開始と言うわけだ。

マウントポジションをとったカナは、私の腋をくすぐってこようとする。
どうせ体格差で勝てるわけもないので、カナの腕を払おうとはせず、負けじとくすぐろうと試みる。
私は両腕を操って迫り来る魔手を避けつつカナへと手を伸ばした。
そしてうまく腋を捉えてくすぐろうとしたその時だった。

「甘い、甘すぎるんだよチアキ」

その言葉とともに私の両手が挟まれる。
やられた!
カナはあろうことか私の攻撃を予見してあえて私をくすぐるのを途中で止めたのだ。
こうやって私の動きを拘束した上で身動きの取れない私を自分の思うようにしようとしたのか!?
バカ野郎にしては頭が回るな。

「さーて、生意気な妹にはお姉ちゃんから愛の制裁をしてやろうかねぇ」

カナは不気味な笑みを浮かべて私に語りかけてくる。
なんだ愛って。 お前の愛などいらないよ、私はハルカ姉さまの愛があれば十分だ。
心の中であーだこーだ言っている間にカナの顔が目の前まで近づいてきたじゃないか。

「おい何をするんだHA☆NA☆SE!バカ野郎!」
「何っておかしなことさ。 千秋も知りたかっただろう」

そんなことを言うカナは私にキスをするつもりだ。
うん、確かに私はお前におかしなことって何なのかを大分前に聞いたことがあるぞ。
でもそれがキスだってことは証明済みだ。 お前のキスでな。
あの時私の初めてを奪ったことは忘れてないからな。 あれがハルカ姉さまだったらなぁ・・・・・・

「やめなさい夏奈!」
「冗談だって、だから怒るなよ春香」

嘘付け、どう見ても姉さまが止めなければやっていただろう。
二度もこいつにキスをされるなんてニンジン食わされてもごめんだ。
・・・・・・いややっぱりニンジンもやだな。
とにかくハルカ姉さま感謝致します。

「と見せかけてフェイント!」
「ひゃっ!?」

カナが神速のスピードで私の腋をくすぐりはじめたせいで思わず情けない声がでる。
おいやめろバカ野郎、くすぐったいぞ。

「夏奈! やめなさい!」
「ひゃひゃひゃはははっ!」

バカ野郎はハルカ姉さまの言葉を無視して更にくすぐり続けてくる。
くすぐったいくすぐったいくすぐったい。
ろくに声が出せずにただ悶えていることしかできない。

「ひゃめろばひゃはははっ!!」

目の前にはにやにやしたカナの顔があって少しむかつく。
でも不思議と離れたいとは思わない。
バカ面から浮かぶ能天気な笑顔、いつも私をからかったり姉さまを困らせることしか考えていなさそうな頭、
ついでにどう考えても姉さまほど大きくなりそうにない胸・・・・・・え、私はどうかって? うるさいよ!
以前はこのバカ野郎がいなくなって私とハルカ姉さまだけになったらどれだけ至福と考えたこともあった。
うるさいやつがいなくなったら私は気兼ねなく姉さまに甘えられるからだ。

でも、それはとても間違ったことだった。
カナと永遠に会えなくなった日からも確かに私は姉さまに甘えた。
姉さまの手を煩わせないために、姉さまが帰ってくる前に掃除や洗濯をした。
少しでも姉さまと触れ合える時間を増やすために、宿題も早く終わらせた。
寝るときも姉さまと一緒の部屋になって姉さまに抱きつきながら寝た。
姉さまがいる時はいつも姉さまの傍にいた。 膝枕をお願いしたことも結構ある。
だけど、私がどれだけ姉さまを求めて同じ時を過ごしても私の心は満たされることがなかった。
不思議なことだ、大好きなハルカ姉さまとずっと一緒にいられるという願いは叶っているというのに。

答えは簡単、というよりもわかりきっていたことかもしれない。
朝起きれば居間のテーブルには私とハルカ姉さまがいて、テーブルの端にも誰かがいると思っていた。
出かけるとき、私にしては大きすぎる、姉さまにしては小さい靴があった。
ご飯の準備をしているときは、気づけば三人分を用意していたことを覚えている。
寝るときにも誰もいないはずの寝室から誰かが出てくるのを待っていた気がする。

そうなんだ。 私はあのバカ野郎がいない、悲しみをハルカ姉さまにぶつけていただけなんだ。
ぶつけられる姉さまもカナが死んで悲しいというのに私はなんとバカなことだろうか。

「もう、夏奈ったらやめなさい!」

ハルカ姉さまの声が聞こえてくる。
そうだ、これは夢なんだ。

「ちぇ・・・・・・」
「いい加減離れろバカ野郎」

夢ならそれでいいや。 今は三人ずっとこのままでいたい。
そう、ずっと一緒に・・・・・・


『だが断る!』

!? なんだこの声は?
前からとも上からとも横からともいえない。
耳一杯に聞きなれない男の声が響いてくる。
誰が発したのかと立ち上がってみると一人のおっさんだけが立っていた。
え? 一人の男だけって姉さまは? カナは?

「彼女達は元々ここにはいない。 ここにいるのは最初から私達だけだ」
「どういうことだおっさん!」

このおっさんは何を言っているのだろうか。
目上の人に対してこんなことを言えば姉さまに怒られるだろうが、今はそんなことを気にしている場合ではない。

「私の名前はそうだな・・・・・・賢者Aとでも呼んでいてくれ」
「そんなことはどうでもいいんだよ!」

何なんだよ勝手に人の夢に入ってきてよ! これは私の夢なんだから早く出て行けよ!
ここは私とハルカ姉さまとカナ以外がいちゃいけないんだ!

「夢か・・・・・・それはちょっと違うな千秋」
「なっ!」

なんで私の考えていることが解るんだこの野郎。
思考を読み取る能力でも持っているのかよ、気味が悪い。
第一私はこんなおっさんに会った事も見た事もない。 なのに何故夢に出てくるのだろうか。

「それよりも私の話を聞いてくれないか?」
「・・・・・・」

こうして黙っていてもどうせこのおっさんには通じるんだろう。
気持ち悪いことを言ったけど無視をして話を聞いてやることにする。
私の寛大な心を前に、少しは口を謹んで欲しいものだ。

「ようやく話を聞いてくれる気になったね。
そうなんだ、この世界は確かに君の精神の中の世界だ。
ただ、さっきの出来事は夢じゃない」

それはさっきも聞いた。 だから続きを話せ。

「世界は様々な可能性に分岐している。 そして君が体験してきたこともその可能性の一つに過ぎないんだ」

可能性? 黙っていればわけのわからないことを話し出してどういうつもりだこの野郎。
あんまり意味不明なことを言い続けるならマムクートの力でしばくぞおっさん。

「君が見たお姉さん達との日常は言わば
"もしテラカオスバトルロワイアルが始まらなかったら"
という一つの可能性なんだ。 これを見てごらん」

おっさんは右手に光を集めたかと思うとそれを破裂させる。
拡散した光はたちまち私達を覆いつくし、景色が何処にでもある公園から私の家であるアパートの一室へと変わった。

『姉様、長門さんからお手紙です』
『ありがとう千秋』

郵便立てから手紙を取った私は私をすり抜けて居間へ向かって駆けていく。
そして姉さまに手紙を渡すと、姉さまの持っている手紙を覗き見ようとする少年がいるのですぐさまそれを妨害していた。

『おいモクバ、それは姉様宛に届いたものだぞ』
『いいじゃんどうせうち宛なんだし』
『二人とも喧嘩しないの。 一緒に見せてあげるから』
『『はーい』』

モクバというのは半年前死んだ海馬という私の仲間の弟で、
殺し合いが終わった後色々あって家に居候することになった子供だ。
そういえばこいつも殺し合いの中で死んだんだったな・・・・・・



「そして次はこれ」

おっさんが再び手の平から光を放つと、今度はさっきとは打って変わり大きなドーム状の会場。
大勢の観客に祝福され、ドーム中央に立っている私とその他変な格好をしたやつら。
腕には私含めちょっと変わった板を身につけていた。そんな中私は一人の男と会話をしている。

『待ってたよ千秋ちゃん』
『約束の時間に来たばかりだぞバカ野郎』

そいつは紅葉の葉っぱみたいな髪型をした遊戯という少年。
こいつもさっき死んでしまった仲間の一人だ。
しかし私が感慨にふける暇もなく、会場は更なる熱気に包まれる。

『これより海馬コーポレーション主催の第1回幕張メッセデュエルグランプリを開催する!』
『デュエル開始を宣言してください磯野さん!』
『決闘開始ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!』

姉さまと磯野とかいうおっさんの声で闘いが始まった。
みんな腕のデュエルディスクを構え、そこからカードを操ってモンスターを出している。
無論私と遊戯も例外ではなく、お互いデッキからカードを取り出してモンスターを操る。

『手加減しないからな遊戯!』
『それはこっちも同じだよ千秋ちゃん!』

なんと輝いているのだろう。
手札から白き龍を召喚する南千秋は、私から見て眩しすぎた。
彼女の従える龍が光っているとかそういう問題ではない。
彼女自身がとても生き生きとしている。
今の私と比較するなり私は思わず彼女から目を覆いたくなってくる。
半年前カナを失った私はひたすら姉さまに執着して生きてきた。
なのに少女はそんなこといざ知らずと、今自分が闘っている武藤遊戯とのデュエルで頭がいっぱいみたいだ。
何故お前はそこまで他のことに夢中になれるんだ?
何故ハルカ姉さまの傍にいないんだ? カナは気にならないのか?


「それは簡単だよ千秋、何故なら今見たものは君が過去を断ち切った時の未来なんだから」
「過去を・・・・・・断ち切る?」
「ああそうさ。あの世界の南千秋は南夏奈の死を乗り越え、
南春香に海馬モクバ、そして武藤遊戯や仲間達とともに生きることを決意したのだからね」

そうだったのか、道理であそこまで眩しかったはずだ。
それにこれは所詮可能性。 今の私には二度と辿り着くことができないもの・・・・・・

「確かにこの未来は存在する、だけど既に分岐してしまった」
「だろう、だったら私はどうすればいいんだ?」

ハルカ姉さまもモクバも死んでしまって残されたのは私だけ。
今さら改心したところであの南千秋になれるわけもない。

「そんなこと君が一番よく知っているじゃないか」
「あ・・・・・・」


『自分の大切なものが消えたとしても・・・・・・自分のロードは・・・・・・見失わないように・・・・・・ね』


え・・・・・・?


「ハルカ姉さま・・・・・・?」

一瞬写った景色には、確かに姉さまがいた。
だけど姉さまの体は傷だらけで、胸を貫かれて今にも死に絶えそうで、それでいて笑っていた。
姉さまの傍には姉さまと同じぐらいの年齢の女の人と、白い騎士と帽子を被ったヒゲのおっさんが二人いる。
そんなにボロボロなのになんで笑っていられるの?


「光は単に暗闇を照らすだけのものではない、あるときは迷いを照らして行くべき道を導きだし、
あるときは人の辿ってきた道を照らしていく。 そしてこれは君のお姉さんが辿っていた道だよ」

姉さまはこの殺し合いを止めるために私達をずっと探して、
かつての怨敵テラカオスと会っても記憶を失っているということで手を出さず、
殺し合いに乗っている参加者達にも勇敢に立ち向かっていった。
そして自分を殺した人間を恨むこともせず、最後まで私の心配をしてくれていた。
ハルカ姉さま、あなたはやっぱりすごいです。
ああそうだった、私はこんなことをしている場合じゃない。
現実でないものに溺れている場合じゃないんだ。

「さあそろそろ目覚めの時間が来たようだ」

景色が段々ぶれてくる。
この世界から旅立ち、本来私がいるべき世界へ戻ろうとしている。
私がこれから進む未来にはハルカ姉さまもカナも存在しないだろう。
姉さまやモクバ達と一緒に生きていく未来にも、もう辿り着くことはできない。
だけれども、殺し合いを止めるという未来を創ることはできるんだ。
だから私は歩いていく、私自身で未来を切り開くために。




「あーシリアス疲れた。 じゃあ後はよろしく」

え? ちょっと待ておっさん、あんたさっきと全然口調違うぞ!?

「まあ最終回だし固いことはいいんじゃない?」
「老賢者自重しろ」
「自重してないな・・・・・・暗殺する!」

そうこういっている間に見覚えがある野球選手とおっさんがでてくる。
さっきまでいたおっさんは彼らを見るなり『バイニー』とか言って逃げ出した。
おいお前らちゃんと説明しr(ry


☆ ☆ ☆



「新新生SOS団突撃ぃぃぃぃぃぃ!!!」
「もっと熱くなれよぉぉぉぉぉぉ!!!」


目覚めた私の前で青く光る巨人に乗った女の人が叫ぶ。
そして知らないやつが何人か出てくる。

「ま た こ の パ タ - ン か」
「よかった千秋ちゃん、気づいたんですね!」

目が覚めた千秋の前に、一人の少女が身を乗り出す。
少女の年は彼女の姉と同程度かそれよりも下だろう。
童顔に見合わぬ体系が、彼女をなんとか年上に見立てている。
不思議なことに全身に痛みはない。

「あ、心配しなくていいよ。 傷はポーションを使って治したから」

千秋は周囲を見渡すといくつか空き瓶が転がっているのを発見する。

「あなたは誰ですか?」
「私は朝比奈みくるっていいます。 千秋ちゃん、あなたのお姉さんから伝言があるの」

みくると名乗った少女は浮かぬ顔をした後、透き通った水のような剣を取り出す。
その剣の形状を確認した千秋は目を見開き、凝視するために身を乗り出した。

「その剣はハルカ姉さまから?」
「うん。 でもハルカさんはもう・・・・・・」

みくるは剣の背を身に押し付ける。
そして千秋は理解する。
彼女はハルカとともにいた仲間の一人なのだろうと。

「自分の大切なものが消えたとしても自分のロードは見失わないように」
「!?」

みくるは驚愕した。
自分の言おうとしたことを逆に相手に言われてしまったからだ。

「何故あなたがそれを・・・・・・」
「ハルカ姉さまなら、なんとなくそう言われる気がしたからです」
「・・・・・・強いんだね」
「私がメソメソしていたらハルカ姉さまや死んだ人達に顔向けできないじゃないか」

お姉さんに礼を言って立ち上がる。
私の罪滅ぼしはまだ終わってはいないんだ。
まだ龍になるだけの力は残っている。
だったら私のやることは一つしかない。

「行ってきます」


☆ ☆ ☆


「我はテラカオス・・・・・・」
「「「な、なんだってー!!!」」」

ハルヒ、シレン、ルイージが驚愕する。
ネオグランゾンから突然黒いオーロラが立ち始め、マサキの様子が変わり始めたのだ。
そして言い放った言葉が前期にて完全に滅ぼしたはずの破壊者の名前なのだから、
実際その場に魂として居合わせた三人は驚きを隠せない。

「テラカオス、確か木原マサキが研究していた意識集合体だったな」
「研究の末自らも取り憑かれてしまったというのか。 哀れな」

式とオメガモンがネオグランゾンを眺めながら言い放つ。

「だけどテラカオスは5期で倒したはずじゃない! なのになんで木原マサキに取り憑いているのよ!」
「マス夫の話によると、やつはいつの間にか『テラカオスを呼び出し、世界を支配しする。』のではなく、
『殺し合いを見たい。』と願う様になったそうだ。 恐らく研究中にテラカオスの一部にでも取り憑かれたのだろう」

式の答えにハルヒは思案する。
木原マサキは天才だ。
その頭脳はこの世の未来を見通す千里眼となって世界の情勢を全て網羅するに至る。
彼にとって自分以外の全ての生命は使われるための存在だ。

彼は優れすぎた。
故に孤独であり、孤高であった。
自分に挑むもの全ては無様に敗れ去る。
そこに可能性など見出せるものではない。
分かりきった未来に用はない。 だから想像できない不可思議が出来事に憧れていたのだろう。

予想以外の出来事がみてみたい。
彼の心にあった僅かな欲望、それは子供の好奇心に酷似している。
そこに現れたのはテラカオスという意識集合体である。
そしてテラカオスはマサキの表面上にあった、世界の全てを支配するという思想よりも、
予測不可能の物語を観測し続ける願いを優先してしまったのだ。


「おい式、あれはなんなんだ?」
「千秋、ようやく来たか。 あれは・・・・・・言わなくても分かるだろう」

駆けつけてきた千秋に式が言う。
千秋はあからさまに不機嫌な表情を浮かべる。

「ああ忘れたくても忘れられない。 いや、忘れちゃいけない」
「わかっているならいい。 さて問題はあれをどうやって倒すかだ」

邪気をむき出しにしているネオグランゾンを見ながら式は更に言う。
一部とはいえ相手はテラカオス。 それにネオグランゾンの力を加わったとなれば力量は容易に想像できる。

「俺に良い案がある」
「ボン太くんの姿で言うと説得力があるな」

後から千秋に続いてやってきた宗助に千秋は言い放つ。

「千秋、これにはお前の力が必要だ」
「何がいいたい?」

式が口を挟む。
本来はあまりこのようなことはしないのだが、今は緊急事態だ。
もたもたしててはテラカオスに先手を打たれてしまう。

「理解した。 説明していると時間を食うから千秋は龍に変身してくれ」
「わかった」
「ちょぉぉぉっと待ったぁ! あんた達この私を差し置いて何勝手に話を進めているのよ!」
涼宮ハルヒか。 ちょうどいい、人手は多ければ多いほど助かる。
他のやつも呼んできてくれ」
「私をパシるな!」

ハルヒの拳骨が宗助の額を打つが、ボン太くんスーツなせいか外傷はない。
彼女の怒声に吊られてシレン達も集まってくる。

『変身終わったぞー』
「了解した。 みんな、南千秋に触れて念じろ!」
「念じるたって何を考えればいいんだ?」
「簡単なことだ。 お前らが今一番叶えたい望みを千秋に込めるんだ」
「ラムダドライバとかいうやつの応用だな」

式の問いに宗助が頭を縦に振る。
ラムダドライバは人の想いがそのまま力になるのだ。
されどそれを転用するための武器が必要となる。

『それが私というわけだな』
「肯定だ。 短期間でネオグランゾンのフィールドを撃ち貫き、撃墜するにはこの方法が最も有効だと判断した。
時間はない、ネオグランゾンが完全にテラカオスに馴染む前に想いを込めろ!」
「「「わかった」」」

全員肯定の意を返す。
一人一人が千秋の体に手を添える。
目を瞑り、願いに近づく己の姿を想像する。

(私の願いといえばやっぱりSOS団の名を世界、いや宇宙全体に轟かせることね!)
(銀河の果てまで・・・・・・いや時空を超えても俺はハルヒと旅をしたい!)

そこに潜むは果て無き開拓魂。
何処までも己が名を示し、何処までも愛する者と共に行きたいという天にひたすら突き進む。

(俺が望むのはデジタルワールド、そしてリアルワールド全体の平和!)
(みんなが仲良く笑って過ごせる世界が欲しい!)

彼らが望むのは悠久の楽園。
何者にも汚されることなく、住人が手を取り合って秩序を保つ世界の創造。

(もっと熱くなれよぉぉぉぉぉぉぉ!!!)
(愛しの彼もディアボロモンも熱くなるべきだと判断)
(なんだか知らんがみ な ぎ っ て き た)

消えることの無き闘争心。
立ちはだかる壁は壊して進む。 生きていること全てが彼らの戦い。水を刺そうなどと無駄なことだ。

(任天堂が世界を埋め尽くさなくてもいい。 あらゆる社が存在してもいい、俺の貯金は64兆です。
でももうやばいです。 頼むからルイージさん買収やめてください)
(全ての会社を任天堂と合併できますように)

ただ、ただ、純粋な欲望。
しかしそれは、決して他人を傷つけるためだけのものではない。 それが人を守る力に繋がることだってある。

『伝わってくるよみんな・・・・・・
だから最後は私の番だ。 私の願い、それは・・・・・・』

私は私自身の未来を

(クライシス帝国め、許ざんっ!)
(カカカ・・・アカギとちゃんと勝負ができますように)
(のび太と結婚できますように)
(これからもいい男といっぱいヤれますように)
(胡桃がいっぱい食べられますように)
(馬鹿息子のタケシが長生きできますように。 そして剛田商店の売り上げ向上)
(こなたと6/とたくさんヤれますように)
(らき☆すたのでこという異名を祓えますように)
(残機が増えますように)
(まちがってアイテムつかってしにませんように)


『何処から湧いたんだこのバカ野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!』

人々の願いが力となり、千秋の叫びによって彼女からブレスが放たれる。
それは純粋な白、願いの奔流がネオグランゾンを包み込む。
ネオグランゾンは、テラカオスは断末魔を上げながら光の渦に消滅していった。


【木原マサキ@冥王計画ゼオライマー 死亡確認】
【テラカオスの亡霊@テラカオスバトルロワイアル 死亡確認】

☆ ☆ ☆


「大雷鳳登場!」
「助けに来たわよ! ・・・・・・って木原マサキは?」
「もう倒したよバカ野郎」

その後千秋達は、冬馬と凛が乗ってきたロボットに乗って帰ることになったのだ。
だが彼らの前に仮面の男が立ちはだかる。


「このカオスロワの黒幕は実は私だ」
「知らないよ。 じゃあお前達早く行こうか。 私は地球に帰ったら仲間を探さなきゃいけないからね」
「あーそういえば私もだった。 アーチャーのやつどこほっつき歩いているんだか・・・・・・」
「そういえば千秋に会わせたいやつがいるんだ。 早く帰ろう」
「会わせたい人?」
「それは後からのお楽しみ」

だが式の発言によって大雷鳳に乗り始める千秋達。
仮面の男はひたすら無視され続けている。


「いや本当に私になんだってば・・・・・・おーい、おーい!」


☆ ☆ ☆



―えーとこの場合なんていえばいいのかな・・・・・・?

―!?

―驚かせてしまったようだねチアキ。 まあこれもカオスクオリティというやつさ。

―・・・・・・カ・・・・・・郎

―ん?

―バカ野郎と言っているんだ! お前が死んでみんな悲しかったんだぞ!
 それなのに何処ほっつき歩いて・・・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!

―よしよし、心配かけたなチアキ。 今日は特別にカナ様特製カレーを作ってやろう

―カレーってお前いつもそれしか作れないじゃないか

―じゃあなんでそんなうれしそうなんだ?

―それは・・・・・・それはそれだよバカ野郎!

―ハハハハハ、じゃあ帰ろうかチアキ

―うん!


【テラカオスバトルロワイアル6@テラカオスバトルロワイアル 完】





「木原マサキにテラカオスを憑依させたのも私だ。
殺し合いを始めるように指揮したのも私だ。
そもそもテラカオスを差し向けたのも私だ」


「君は実に馬鹿だな」
「ユーゼスめ、死ねぇ!」
「さあ闘争を始めようではないか」
「エェェェェェェイメン!!!」
「蛆虫めが、この俺が断罪してくれる!」
「グゥレイトだぜ! イザーク、ニコル、サポートは任せた」
「「はいはい」」
「黒幕ユーゼスとかwwwwwww嘘吐き乙wwwwwww」
「貴様の力をこの拳王に全力でぶつけてこい!」
「や ら な い か」
「ごちゃごちゃうるせえ! さっさと始めようぜ!」
「新生スポーツ軍団の力を見せてやろうかねぇ」
「雑種が。 我はさっさとお前を倒してやおいとヤるのだ」
「俺は貴様をムッコロス!」
「己クライシスの手先め、許ざんっ!!」
「まさか、俺は主催で高見の見物をしているから安全、だと思っちゃいねえだろうなぁ?
いやもう思ってねえな。 お前もそう思うだろ?ひまわり」
「たぁ」
「この門倉雄大、実は荒事の経験も心得ているのです」

「え?」

その後、ユーゼスの姿を見たものはいなかった。


【ユーゼス@クロススレ 死亡確認】
最終更新:2009年05月04日 09:18