神が人を作り出してどれだけの年月が経ったのだろうか。
生ある者はやがて死ぬ。
人に限らず幾多の動植物は皆そうだ。
未来永劫ど存在せず、古くなったモノは時代から去って行く。
ならば去った彼らは何処に辿り着くというのか。
「全員揃ったようだな」
死者スレと呼ばれる空間に声が響き渡る。
その主は死の王デス、かつては邪神として名を馳せていたが、
現在は他の神々との契約で魂を管理する立場についた者だ。
「おいおいデスさん、一体俺達に何のようがあるってんだよ」
死者スレの住人から一人の男が名乗り出る。
彼の名は6/という、現世では英雄とも呼ばれた男である。
だが、この箱庭の住人になってしまった彼は既に死人だ。
そこに他の魂達との格差はない。
「そうよそうよ! せっかくこなたをヤろうとしたのに邪魔してさ」
「だあああ!かがみ、お前がしゃべるとややこしくなるから黙っていろ!」
柊かがみと呼ばれた少女はデスに怒鳴り出るが、
6/によって取り押さえられる。
「かがみよ。 貴様は今まで何回死んだのだ?」
「そんなの数えたこともないわね」
かがみは答えることを放棄した。
だが無理もないだろう。 彼女はバトルロワイアルという儀式によって何度も命を奪われたのだ。
ついさっきだってドサクサに紛れて光の奔流に飲み込まれたらしい。
野比玉子症候群という者達ほどではないが、それでも数時間の間に幾多の命を落としている。
「だろうな。 第一、どれだけ死んだかなんぞ数えたくもない」
「デス様、単刀直入に申し上げてもらえますか?」
新たに名乗り出る少女は南春香だ。
腰まで伸びたロングヘアーに、十代にしては落ち着いている風貌は、
柊かがみよりもどこか大人びた印象を受ける。
「わかった」
デスは少女に頷く。
そして言葉を続ける。
「実はこの死者スレを本日を持って締めたいと思うのだ」
「「「「な、なんだってー!」」」」
「お前らは黙っていろ! それで死者スレを締めるとなると俺達はどうなるんだよ!?」
6/は声を荒げて申し立てる。
死者スレの消滅とは同時に自分達の住むところが無くなってしまうということだ。
彼のみにならず、多くの住民達が異議の声を上げる。
だがデスが己の鎌の柄を地面に叩きつけたことにより、鉛を打つ鈍い音が響き渡って静まった。
「頼むから静かに聞いてくれ・・・・・・
これからお前らには転生を行って貰うことになる」
「ぶるわぁ、となるとオゥレは若本じゃなくなっちまうのかい?」
サラリーマンの男性、
アナゴが答えた。
死人は精霊となって草木、人、動物、あらゆる生命へと生まれ変わる、即ち、輪廻転生。
それを美学としているデスが意味する転生と言う言葉を意味すると、
ここにいる者は全て、別人へと生まれ変わってしまうことになる。
「ふぅん、話を聞かせるために無理やり黙らせて、何かと思ったらやはりそれか。
結局冥府の掃除がしたいだけではないか」
白コートの長身の男性が悪態を突く。
掃除とはそこに住まう魂の排除のことだろう。
だがデスは彼の言うことを否定する。
「話は最後まで聞け。 転生させるときの人格も姿もそのままだ。
また、立場もバトルロワイアルが始まる前の時の所にしておく」
デスが言い終わると今度は死者スレの住人に歓喜が溢れ出す。
だが一部の者はいまだ首を捻って考え込んだままだ。
それに飽きたのか、彼らは自らの意見をデスに尋ねるために前に出た。
「どうしたのだ長門夫妻」
「あんたの言葉にちょっと引っかかるんだけど、
人格も姿もそのままって言うのならそれは"転生"とは言わないよね?」
「それならば"蘇生"と言い換えた方が伝わりやすい。
なのに貴方はそれをしなかった」
「あーそうなのよ。 それを"蘇生"と言うのならば一つ言葉が足りない」
朝倉と長門の言及は続く。
何故という単語は彼女らの中だけでなく、次第に住人達へと広がり始める。
このままではまた怒り出す輩がいるかも知れない。
だからデスは鎌の柄で地面を軽く叩いて場を沈める。
そして口を開いてこうなるに至った経緯を語り始めた。
神が大地を創造し、そこから人が文明を成し遂げて数千年が経過した。
それまでにも人々は争い憎しみながらも同時に笑って互いに支えながら繁栄していった。
しかし2006年、安定していた世界に突如それは現れたのだ。
テラカオスという意識集合体の登場である。
それは幾多の人間に狂気を齎してバトルロワイアルを始められたのだ。
同時に宇宙の法則が乱れ始め、本来出会うはずのなかった世界と世界が衝突してしまう。
漫画やアニメ、小説に
ゲームといった物語が綴られたものが門となる。
そして絵空事であったはずの媒体を通して、それらの可能性が実現した世界からの住人が流れ込んできたのだ。
「なるほど・・・・・・とは言っても俺らにはやっぱり二次元にしか見えないけどな。 まあみなみは俺の嫁だが」
「そこらへんは個人の観念による問題だろう・・・・・・いや、そう映ること自体も一つの乱れなのかも知れないな。
重要な話はここからだ」
「・・・・・・野比玉子症候群だな」
人の観念の乱れ自体は世界全体にとって些細なことだ。
だが概念は違う。
最初は野比玉子という主婦がバトルロワイアルで死んだ、ただそれだけだ。
問題はここから。 あろうことに、玉子は再び現世に戻って行動を始めたのだ。
リビングデッドなどではない列記とした生身の体に内包されている魂。
死という概念自体がテラカオスによって乱されてしまったのだ。
よって自ら生存を選択することができてしまう。
これにより、アカシックレコードが狂い始める。
同一の人間が計り知れぬ程死と生を繰り返すことによって、情報を圧迫し始めたのだ。
一人だけならまだ良いのかもしれないが、何度でも復活できるシステムを自重しないものが使わないはずがない。
野比玉子症候群と呼ばれる者たちを筆頭にした自重無き行動により、
死と再生のサイクルは世界が許容しゆる情報の限界量を超えてしまったのだ。
「むしゃくしゃしてやった、ネタができるならなんでもよかった、今は反省している」
何を隠そう、この6/こそが最初にカオスロワで復活話を書いたのだ。
それがまさか現実に起こっていようなどと誰が想像していたか。
「お前は書き手として一つの物語を書いただけだ、気にするな」
「6/さんあんまり落ち込まないでください・・・・・・」
「うぅぅ・・・・・・ありがとうみなみ、それからデス」
「さて話を続けよう。
そして5期にてテラカオスが倒されることで世界に平穏が戻ったかに思えた。
そのままならば不安定ながらも宇宙の法則は戻っていくはずだったのだ。
そこに現れたのが」
「この極秘書類ですね」
喜緑と呼ばれる少女が紙束をデスに差し出す。
デスは受け取ったそれに魔力を込めて、燃やし尽くす。
「私の渾身の一作がー」
「これにより停止していた宇宙の法則の乱れは再び動き出してしまったのだ。
更に次は世界規模、生き返ることができる仕組みを利用するものも増えた」
「まあ当然だな」
「でもそれはテラカオスの残留思念が倒されることで終わったわよ」
「ああ、テラカオスが世界から消えたことで宇宙の法則も戻っているはずだ」
「じゃあ後はこのまま戻ってしまえば・・・・・・あっ!」
灰を被りながらもかがみは尋ねる。
そして彼女は気づいてしまう。
「バトルロワイアルで死の記憶を持っているお前達をそのまま蘇生させてしまえば、
それが新たな乱れへと繋がるかもしれない。
故に閻魔や他の神々との話し合いの結果、記憶を残さないことにしたのだ」
「待てよ? じゃあなんで俺達を元の世界に戻さないんだ?
記憶を消せば俺達が情報を持ち込むって心配はないだろうが」
「それは私が説明しよう、
692」
「なんだよ
ルーファウス」
692と呼ばれた男の前に黒スーツの男、ルーファウスが立ちはだかる。
「いいか。 例えば記憶を失った私達が・・・・・・死人がいきなり現世に舞い戻ったらどうなると思う?」
「どうなるってそりゃあ・・・・・・あっ!」
「その通りねー。 死んじゃった人は生き返らない、これ世界の常識ね。
世界が戻った今、生き返っちゃったら驚くんだもんねー」
しまっちゃうおじさんがルーファウスに続けてしゃべる。
どうやら692は納得したようだ。
彼だけではない。 死者スレの住人全てがデスの真意を理解する。
「さあ彷徨える魂よ、門は開いた。 後は飛び込め!」
デスが対面する壁から扉が現れる。
死者達にとっては後方側、人々は我先にと駆け込んでいく。
「生まれ変わっても野比ちゃんにご飯を作るわよ」
「生まれ変わっても目指せ、ジムリーダー!」
「そこはポケモンマスターだろうJK。 じゃあ俺はいくぜ」
「あ、
513さん待ってくださいっすよー」
「またゴールデン・エクスペリエンス・レクイエムで死に続ける日が始まるお・・・・・・」
「お前は大変だな・・・・・・じゃあ私は失礼させてもらう」
かつて死に続けていた彼らは死から解放され(一名除く)生へと還る。
「ぶぅぅぅるわぁぁぁぁぁぁぁ!!! 次の世界にいる若本はどんなやつだぁ!?」
極めて濃ゆい魂を持つ者は新天地を目指す。
「おいおいアナゴは何も言わずに行っちまいやがった・・・・・・ん?どうしたんだみなみ」
「一緒に飛び込みましょう」
「ああOKだ。 だがまずは挨拶を済ませてからな」
6/とみなみは振り返る。
そこにいたのは長門、朝倉、南春香、柊かがみ。
皆、彼の戦友であり、頼もしき仲間達だ。
だが彼を見るみなみの視線は何処か冷たい。
「・・・・・・私だけを見ていてください」
「え?」
6/は長門達を眺める。
そしてある共通点に気づいたのだ。
「全員女じゃん・・・・・・」
そう、5期の生還者で死者スレに残った男は6/ただ一人なのだ。
ちなみに他の男性陣であるアカギや遊戯は普通に生きてる。
話したいことは色々あったがこれ以上は嫁であるみなみの視線が痛い。
「まあそう固くならないで。
私達はお邪魔虫にならないように去るからさ」
「人の恋路を邪魔するやつは馬に蹴られて地獄に落ちるべき」
「6/さん。 私達のことを忘れてもみなみちゃんのことは忘れないでくださいね」
「ろ、6/!いいいつかはあんたの1番目になってみせるんだからね!///////」
「ちょっと待て最後のやつ」
かがみの頭に6/が拳を振り下ろす。
頭を抱えたかがみはそのまましゃがみこんでしまう。
「生まれ変わっても結婚しようね有希」
「言うまでもない」
夫婦は互いをエスコートしながら歩いていく。
「ねえ海馬くん、私達また会えるかな?」
「ふぅん、縁があればまたな」
「兄さま、姉さま、一緒に行こう!」
血の代わりに魂の繋がりを持つ兄と姉は弟に引っ張られつつ世話しなく走っていく。
「じゃあ6/、俺も行くぜ」
「692お前いたのか」
「おまwwwまあいいや、生まれ変わったらフルボッコにしてやんよ」
「覚えていたらな」
いつのまにか現れた親友はマイペースに去っていく。
みなみに手を引っ張られた6/も彼らの後を進み、扉を潜るのだ。
歩を進めながら6/は彼らに問いかける。
―生まれ変わっても俺達は仲間だ
神は人を作り、人は物語を作る。
ここに一つの物語が完結したが、それは所詮一つの旅路が終わったに過ぎない。
人によって記された物語はまた次の世代の人間へと渡されて、新たに別の物語が記されていく。
それこそがこの世界に刻まれたアカシックレコードであり、人の歴史なのだ。
さてここに別の本が用意されている。
だがこれはまだ白紙。 タイトルすら決まってはいない。
それを決めるのは物語を記す者。
人生を旅する者全てが持つ称号。
それが『書き手』である。
☆ ☆ ☆
「さぁて冥府に残るは後・・・・・・て誰かいるわね」
柊かがみは見てしまう。
その男が死者スレの住人とは別の扉に入っていくところを。
新たな現世に通じる扉は一つだと聞いた、だとすればあそこは何処なのか。
「ってあいつまさか!」
女漁りばっかしているから忘れていた。
あの男こそかつての宿敵、
混沌の騎士、テラカオスである。
この一連の騒動の元凶なのだ。
確かにそのまま生まれ変わるわけにはいかない。
やつが現世に出てしまえば再びカオスロワが始まってしまうだろう。
「案ずることはない柊かがみよ。 あそこは煉獄の扉」
「煉獄? 初めて聞いたわそんなの」
「覚えがないのは当然だ。 煉獄とは魂を浄化するためにあるところ、カオスロワの死者が態々入るところではない」
魂の浄化と聞いてかがみは納得する。
テラカオスの本体は混沌の騎士となって転生した。
記憶を失った彼は、春香とこなた曰く、生前の残虐性も同時に失ってしまったそうだ。
一旦空っぽになった器は、どのような真実が注がれても壊れることはなかった。
記憶を取り戻しても己の過ちを悔い、オメガモンによって消去されることを選んだではないか。
そんな彼のことだ、浄化という道を辿るのも必然である。
「本当面倒なやつだったわね。
あいつが浄化されてる間に私も生まれ変わろうか」
柊かがみはデスに背を向け歩き出す。
だが直後、彼女の体が魔方陣に包まれてしまった。
「ってあんた一体何をするのよ!」
「神々との相談の結果、皆を転生させることにしたとはいったな?
だが同時に『ただしかがみ、てめぇは駄目だ』という意見が満場一致したのだ」
「ってふざけないでよ! 私は生まれ変わったらこなたや6/を○○して○○して○○しなきゃいけないのよ!」
「ふむ、閻魔の見立ては当たっていたな。
柊かがみよ、お主はカオスロワ7期への参加を強制する」
「カオスロワってもう終わったんじゃ・・・・・・」
「この世界では終わった。 だがまだ見ぬ世界で危機が訪れるかもしれない・・・・・・
そこが新たなカオスロワの会場となるのだ! ちなみにそこが何処の世界かは知らんがな。
もしかしたら並行世界の同一人物に会えるかも知れん」
「ちょ、おま(ry」
そのままかがみは穴に落ちて落ちて落ちて行く。
深さは測定不能だが唯一わかっていること、それは―――
【To Be Continued…TERA KHAOS BATTLE ROYALE 7th】
最終更新:2009年05月04日 09:20