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――ああ、オレはもう死ぬんだな。

金属バットで殴られて朦朧とする意識で、囚人服の盗賊――ハンバーグラーは思う。
生まれ故郷のマクドナルドランドから遠く離れた異郷の地、NIPPONで一生を終えること、それ自体は別に苦ではない。
テラカオスバトルロワイアルが開始した瞬間――いや、正しくは時空振動弾で幾重もの世界がシェイクされた瞬間から、
マクドナルドランドは他の世界と融合し、混ざり合い、この世の何処にも存在しなくなってしまったのだから。
故に、彼の心残りはただ一つ、

――お前に何があったんだ、ドナルド?

同じマクドナルドランドの仲間である、ドナルド・マクドナルドのことである。
彼が知るドナルドは、決して仲間に刃を向けるような男ではなかった。
宿敵であるカーネル・サンダースを、このカオスロワに乗じて殺害する、それ自体はまだ理解できる。
あくまで『まだ』であり、あの心優しい道化師がそんなことをするとはとても信じられないが。
だが、何故自分まで――?

――誰かに操られているのか、それとも何か事情があるのか……?

そうこう考えている間に、ハンバーグラーの意識は急速に薄れていく。

――クソ……この体じゃ、もうオレにはドナルドを止められない……。
――後は頼んだぜ、グリマス、バーディ、キャプテン、市長、プロフェッサー……。

最期に浮かぶのは、マクドナルドランドの仲間達。
そして――盗賊である自分と、日夜逃亡劇を繰り広げていた、一人の警察官の顔。

――お前に頼むのもしゃくだけどよ……必ずドナルドを助けてやってくれよ。
――町の平和を守る……それがお前の仕事だろ?
――なあ……ビッグマックポリス。






『ほっほっほ、諦めてしまうのですかな、ハンバーグラー?』

――!?


いい感じで一生を終えようとしたハンバーグラーの意識に、念話で語りかける一つの声。

『いやあ、マクドナルドランドの盗賊も、この程度でしたか。
 友を救うことを他人に任せて、自分は一人楽になろうとするとは。底が知れますな』
『貴様……こんな時に何のようだ、カーネル!』

それは紛れもなく、ハンバーグラーの隣で同じく死に瀕している老いた男、カーネル・サンダースの声だった。
尋常では無い怒気を帯びたハンバーグラーの声に、しかしカーネルは動じない。

『落ち着きなさい、ハンバーグラー……今ならまだ、手はあります。貴方自身の手で、ドナルド・マクドナルドを救う手が』
『――ッ!? なんだって!?』
『興奮は死を早めます。落ち着いて聞いてください』

一瞬、自らの命が風前の灯火であることを忘れたハンバーグラーをなだめて、カーネルは説明を始める。

『貴方も私も、このままでは遠からず死にます。それは、理解できますね?』
『あ、ああ……』
『死因は両者ともに、超人的な腕力を持つドナルドに金属バットで殴られたことが原因でした……が、
 幸運なことに、私は頭部に、貴方は心臓部にバットの一撃を喰らったのですよ……』
『…………?』
『つまり――貴方の頭部と、私の心臓は無事なのです!
 さあ、ここまで言えば私の言いたいことがわかったでしょうハンバーグラー!』
『……!!! カーネル、貴様ァッ!』
☆『その通りッ! 貴方の能力、複数の物体を融合させる【マックシェイク】で、私と貴方の肉体をシェイクする!
 そうすれば、カーネル・サンダース、ハンバーグラーという個人は死にますが、我々は二人で一人となって、生き続ける!』
『だがそれは、敵である貴様と手を組むということ! それは仲間に――ドナルドに対する裏切りだ!』
『いいえ、真の裏切りとは、ここでドナルドを救う道を選択せず、自分勝手に死を選ぶこと!
 いいですか、これは終戦ではなく休戦! 私はまだ死にたくないし、貴方はドナルドを助けたい! 頭部が貴方である以上、肉体の所有権は貴方にある! 死にたいのならドナルドを救ってから、私もろとも死ねばよろしい!』
『ウ……嘘だ! それでは貴様にメリットが無いだろう!? 貴様、きっと何かを企んで――』

『言ったでしょう、私は死にたくないと! こんなオイボレでも、死は恐ろしい! 一分一秒でも長く、生きていたいのです!
 さあ、我々の命はあと一分も持ちません! 早くマックシェイクを発動させなさい! さあ! さあ! さあ!!!』
『く、くそおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!!!』

最早動くことは無い、そのはずだったハンバーグラーの口が再び開き――そして、叫ぶ。

「オーダーは……『マックシェイク』!!」

カーネル・サンダースとハンバーグラー、地面に転がる両者の肉体が、桃色の光に包まれる。
やがて二つの桃色の光は一つになり、激しく揺れて――揺れて――揺れて、最後に一つの人の形の光となり、

そして、誕生する。

『そうですね、さしずめ……カーネル・ハンバーグラー・サンダースとでもしておきましょうか』
「……ダセェ名前だ」

その姿は、大してハンバーグラーと変わってはいない。
唯一、身を包むものが囚人服から純白のタキシードとなっていることを除いては、だが。

「ドナルドを助けたら、オレはお前ごと自殺する。それまでの間、精々世界を満喫することだ」
『ほっほっほ、感謝していますよハンバーグラー……』

完全に自分の意思で体を動かせることを確認し、ハンバーグラーは何処かへ去ったドナルドを捜し始める。
変則的な形で与えられた二度目の生は、ただ友を救うためだけに。
だが、彼は気付かない。

『……とってもね』

ハンバーグラーとカーネル・サンダース……既にマクドナルド的に黒歴史の彼方に葬られかけている自らと、
道頓堀にて消失した自らの一部が回収され、かつてないほどの力を有しているカーネルの間に生じている絶対的な力の差に。
カーネル・ハンバーグラー・サンダースを構成しているのは、カーネルが98%、ほぼ全てをカーネルが占めているということに。
実を言えば、今すぐにハンバーグラーから肉体の支配権を奪い取ることすら、カーネルには可能なのである。
ならば、何故そうしないのか?

『だって、その方が面白いじゃありませんか?』

道化師ドナルドを殺すのが、カーネルの絶対目的。
しかし、今のドナルドは正気を失っている。それでは殺してもつまらない。
ならば、ドナルドと親しいこの男ハンバーグラーに、ドナルドを殺させてみてはどうか?
自らの手で友を殺めてしまうその苦しみ、その絶望は、きっと愉快なものだろう。
この特等席ならば、その負の感情をダイレクトに味わえるという、つまりはそういうわけだ。

「ん……? 何か言ったか?」
『いいえ、なんでもありません。それよりも早く行きませんか?

 ド ナ ル ド の と こ ろ へ 』



【午前2時00分/日本・大阪】

【カーネル・ハンバーグラー・サンダース@ケンタッキーwithマクドナルド】
【状態】健康
【装備】無し
【道具】支給品一式×2、不明支給品×2
【思考(ハンバーグラー)】
1:友としてドナルドを止める。
2:全て終わったら、カーネルごと死を選ぶ。
【思考(カーネル)】
1:より楽しい方法でドナルドを殺す

※カーネルはその気になればいつでもハンバーグラーから体の支配権を奪えます。
最終更新:2009年05月21日 00:50