雫が垂れる音が聞こえる。
フェロモンの臭いが鼻につく。
蜜を獲り尽くされたそれは、かつては人間ではあった。
最早、人としての尊厳を全て奪われ、空っぽに成り果てた。
されどツインテールの女はそれに飽き足らない。
人形となった器の右手が千切り取られる。
咀嚼音が聞こえる。
生臭さが強制的に意識を覚醒、集中させていく。
左腕、右足、足の付け根、あらゆるパーツが女の口に入っていく。
最後に残ったのは首のみ。
女はその頭を撫でる。
微かに笑みを浮かべ、自分の娘のようにと頭だけになった少女を愛でる。
特徴的な癖毛が、薄茶色の髪とともにくしゃくしゃに弄ばされる。
―――ッ!
頭しかない少女の顔が己に向けられる。
それは確かに妹"だった"モノだった。
「千秋ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
「な、なんだ!?」
自分の叫び声とともに私は目を覚ます。
気づけば私は全身汗だくだった。
あの女から逃げ延びて安堵したせいか、ちょっと腰掛けたベンチで眠ってしまったらしい。
殺し合いの最中だと言うのに我ながらだらしないにも程がある。
「どうかしましたか!?」
するとそこに男性が話しかけてきた。
彼は心配そうな表情で私を見つめている。
「まさかゴルゴムのやつらに……いやクライシス帝国か!?」
「いえ違います。 ちょっと怖い夢を見ていただけですから」
よくわからない単語が飛び出してきたが、見たところ悪い人ではないらしい。
でも心配してくれたということはさっきの悲鳴も聞いていたということになるのだろうか。
今思い返すと少し恥ずかしかったかも知れない。
「そうですか……では俺はそろそろ行かなければならないので」
「あっ、その……」
思わず男性の腕を掴んでしまう。
彼は少し困った表情を浮かべ、考え込む。
そして私の肩に手を置き、目線を私に合わせるために屈んだ。
「この世界は織田の……いやクライシス帝国によって多くの罪の無い人が殺し合いを強要されているんだ。
その中で今も助けを求めて苦しんでいる人々がいるかも知れない。
俺はそんな人達を助けたい。 そのためには多くの危険が待ち構えているだろう。
そんなところへ君を連れていくわけには行かないんだ」
一つ一つ彼から言葉が綴られていく。
一見突拍子も無い絵空事だが、彼の瞳を見るとわかる。
半端な決意で言っているのではない。 この人は真剣に困っている人を助けたいのだろうと。
「ホッホッホ、ならばここで死になさい。 仮面ライダーBLACK RX!」
「誰!?」
私達の前に紫色のローブの男が現れる。
ローブの色にマッチした青い肌に異様に細長い顔、そしてその口を歪ませながら放つ嘲笑。
その全てが私には初めてのものだった。
こいつはさっきの女なんかとは違う、別の意味で恐ろしい存在だ。
「ではまず小手調べからいきましょうか」
周囲の気温が上昇する。
乾いた汗が一気に噴出し、ローブの男がなにやら意味不明の単語を綴っている。
そして彼の上空に生まれた大きな火の玉を見て、私は目を見開いた。
危険を感じた私は、掴んでいた男の人のことを忘れてその場から逃げ出そうとした。
「っ!」
「大丈夫ですか!?」
男性から腕を離そうとする、離せない。
走り出すために足を上げようとするが、動かない。
大きな火の玉に燃やされたらとても熱いのだろう。
心の底から生まれるどうしようもない未来が頭の中を駆け巡る。
「ここは俺に任せて逃げてください!」
「あぁ……」
ろくに声を発することもできない。
あのときと、悪い夢を見た時と同じだ。
妹達があの女に『食われる』夢。
手を伸ばせば掴めるのに体が動かない。
圧倒的な暴力は、逃げろという警告も、助けろという本能も全て喰らい尽くす。
無力、己の身すら守れぬ虚無感に浸っていく。
何も無い闇に、何処までも何処までも沈んでいく。
「そうはさせんクライシスの怪人め!」
その時、不思議なことが起こった。
私が掴んで離さなかった男の人が突然光り始めたのだ。
火の玉の輝きをも上回るそれは、満たされていた恐怖を打ち消し、
私の意識を全て集中させてしまうくらい眩しいものだった。
「俺は太陽の子仮面ライダーBLACK RX! いくぞ、クライシスの怪人!」
光の中から出てきたのはバッタを連想させる顔の人。
怪人なんてとんでもない。
黒いボディに夜の闇の恐怖は無く、日食のように見惚れてしまう。
真っ赤な目はプロミネンスの如く激しく輝いている。
妹達が幼いころ、いや今も見ているかも知れない悪を倒す物語。
絵空事でしかないと思った物語の主人公。
ブラウン管の中だけだと思った希望が確かにそこに立っていた。
「喰らいなさい、メラゾーマ!」
ローブの男がそう言った瞬間、私達の元に巨大な火の玉が襲い掛かっていた。
それも一つだけではない。
いつ生み出したのだろうか、空中で静止していたモノだけにならず、真横や背後からも火の玉が私達に迫ってくる。
「ちょっと掴まっててください!」
RXと呼ばれた男の人は、辺りを確認すると同時に私を片腕で抱きかかえたのだ。
そしてそのまま走り出す。
行き先はローブの男の方向……ってえぇっ!?
「貴方、まさかそんなお嬢さんを抱えたまま私と(ry」
「リボルケイン!」
火の玉の群れをサーカスの火の輪潜りみたいにギリギリ超えたRXは、ローブの男のまん前まで来ていた。
直後、彼は光り輝く杖を取り出す。
「ぶっちぎるぜぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「ぎゃあああああああああ!!!!!」
☆ ☆ ☆
「もう行ってしまうのですか?」
「ああ。 この近くに民家があります。 そこに俺の知り合いがいるはずだから事情を話して保護してもらってください」
ローブの男を倒したRXは背中を向ける。
変身を解いたが、以前の雄雄しさは全然変わっていない。
彼はこれからも力の無い人々を守り抜くだろう。
でも、私はどうしてこんなところにいるのだ。
いつまでもこんな危険ところに居ずに、早く彼の言うところに行かなければならない。
『どうして? そんなの決まってるじゃない。アンタは妹のそばにいて、二人を守ってあげるだけで良かったのよ。
妹を守る……守備に専念していれば良かったものを、妹以外を殺す……攻撃にまで手を出した、それがアンタの敗因。
一般人のアンタのキャパじゃ、攻撃と守備を両立させるなんてはなから不可能だった。それだけの話よ』
さっきの女の言葉が脳内で再生される。
そう、私は妹達を守っていれば良いのだ。
それが普通の人間の私ができること。
守ることが私だけの……いや、それは嘘だ。
「またさっきみたいに危険な奴が現れるかも知れないんだ。 だから早く行くべきです」
危険な奴というとローブの男のことだろう。
それだけではない、ここに来る前に会ったあの女もいる。
私を庇って逃がしてくれたグリマスさんは大丈夫だろうか。
私は無力だ。 それこそ自分の身すら守れない程の。
「……」
「そうか! こんなところに一人にしておくわけにもいかない。 俺がそこまで送ってあげます」
でもこの男の人は違う。
私の妹どころか、地球の裏の赤の他人まで守ることのできる力があるだろう。
力が欲しい。 妹達を守れる力が欲しい。
「む? なんだこの紙は」
RXは紙を持ち、その内容を読み上げる。
そして私の掌にもいつのまにか紙が握られていた。
何て書いてあるのだろうか。
『マスター』
? マスターと聞くと英語で主人という意味だ。
でも単語のみで書かれていても、はっきり言って意味がわからない。
何だか端の方に小さく
『聖杯戦争っていうとカオス5期初頭を思い出すよね。 てことでサーヴァントの上限とかどうしようか?』
と書かれている。
『聖杯戦争』やら、『カオス5期』やら今度はこれら単語を知らないので、やっぱり理解できない。
「俺は特別なクラス、『ブッチギルンジャー』だったのか!? 己クライシス帝国め……
あ、ちなみに俺は南光太郎って言います」
クライシス帝国とか言っているが違うと思う。
今更だが、いきなり自己紹介された。
「えと、私は南春香って言います」
とりあえず自己紹介されたので答えておくことにした。
【7時00分/埼玉】
【南春香@みなみけ おかわり】(マスター)
【状態】健康
【装備】拳銃
【道具】支給品一式、不明支給品、かがみのデイバッグ、ハッピーセット×3
【思考】
0:……え?
1:千秋と夏奈を守る
【南光太郎@仮面ライダーBLACKRX】(クラス・ブッチギルンジャー)
[状態]てつを
[装備]キングストーン
[道具]不明
[思考]基本:クライシス帝国を倒す。ついでに主催も倒す
1:マスターである春香と行動する
【ゲマ@ドラゴンクエスト5 死亡確認】
最終更新:2009年05月23日 16:25