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寂れたラーメン屋に入って、国崎往人はカウンター席に座った。
店内には店員は誰もいなかった。照明すらもついていない。
「ったく、ラーメンセットくらい喰いたかったぜ」
そう言って、往人はがっくりと肩を落とす。もう、気力も体力も残っていなかった。
「佳乃……」
思い出すのは、この殺し合いに巻き込まれて死んでしまった知り合いの笑顔。
もともと浮浪者同然の身分である往人は、最近はある海辺の街に腰をすえている。
そこは田舎であることもあって、この殺し合いが始まってからも食料の奪い合いが起こることはなかった。
しかし、二日目になってあの男が現れたのだ。
眼鏡に無精ひげの、いかにもしょぼくれてそうな男だった。
その男が、橋の上で、佳乃の生首を手にしてうれしそうに笑っていた。偶然その現場を目撃した往人は、
「てめえ、佳乃を殺したのか!! 」
と叫んだ。男はあわてたように逃げ出し、往人は後を追った。
しかし男のすばやさは予想以上で、往人はビル街まで来たところでついに彼を見失ってしまった。
「あいつ、まだこの辺にいるのか? 」
このままあいつを探すか。でも、こんな都会まで来れば見つけ出すのは困難だろう。
それに、あの街に残っている観鈴や美凪たちも心配だ。もはやあそこも安全ではない。
そんなことを考えていた往人の耳に、店のドアが開く音が聞こえた。

入ってきたのは、右の翼をもがれたペンギンだった。
「た、助けてください……」
ペンギンが喋るのにも驚いたが、その怪我をみて往人はあわてて駆け寄る。
「おい、一体何があった!! 」
「い、いきなり、日本刀を持った女の人に襲われて……なんで、僕たち動物まで、こんな……」
その時、店にもう一人の人物が入ってきた。
「おらおら、逃げんじゃねーよ!! 楽に死にたくねーのか? 」
少女だった。青い髪をポニーテールにしている。髪についた鈴の飾りが印象的だった。
「あんた、なんでこんなことを!! 」
往人は、ペンギンを背中に庇いながら叫ぶ。
「ああ? 寝言言ってんじゃねーよ、こっちだってこのままじゃ餓死だぜ? 
強い奴が弱い奴を殺すのはまあ仕方ねーだろ? ペンギン一匹にがたがた抜かすなよ。
なんならあんたにだって分けてやるよ、そいつのから揚げを作ってな」
少女は、血のついた日本刀をぶらぶらさせながらそう言って豪快に笑った。
「なるほど。そういう考えなら、俺があんたを殺しても文句はないな? 」
往人はそう言って、腰から拳銃を抜いた。とたんに少女は慌てふためいた。
「おいおい、いくらなんでも飛び道具は反則じゃねーか!? くそったれ!! 」
そう言って、少女は店の外へと逃げ出した。後を追いたいが、深手を負ったペンギンを放置はできない。
「あんた……しっかりしろ」
「あの」
ペンギンは、仰向けに寝て、往人の顔を見上げながら言った。
「僕、上野原動物園のサンペーっていいます。もし良かったら、これから言う人たちに、伝言を頼めませんか? 」
それが何を意味するのか、往人にもわかった。だから、うなずいた。
「みんな、僕と同じペンギンです。まず、ギンペーさんに。今まで本当にお世話になりました。どうか、家族三人で、いつまでも幸せに。
次に、チェザーレさん。ギンペーさんのこと、よろしくお願いします。ギンペーさんの本当の親友は、やっぱり僕じゃなくてあなたでした。
あと、夜遊びはほどほどにしないと奥さんに怒られますよ」
サンペーは、冗談めかしたように言った。
「最後に……ミントちゃん。先に逝って、ごめんなさい。もうあなたの料理を食べてあげられなくて、ごめんなさい。
あなたを、幸せにできなくて……ごめんなさい」
サンペーは、自分でも気がつかないうちに泣いていた。
「でも……僕、頑張りましたよね? ギンペーさんに教えてもらったこと、ちゃんと身につけられましたよね?
ギンペーさん……あなたと一緒に働いた数年間に、僕は一生分、努力しました。だから、もういいですよね?
もう、ゴールして……いいですよね? 」
「さ、サンペー!! 」
思わず、往人は彼の名前を叫んでいた。
「もう、ゴール……しますね。

――――ゴールっ…………!! 」

サンペーはペンギンとして生まれながら、あまり海とは縁のない生涯を送った。
しかし、その最期に彼のまぶたに浮かんだのは、どこまでも広がる海だった。
彼が生まれ育った、南極の海だった。
そしてそれと、彼が毎日見ていた、動物園から見える青空。

(僕が誰よりも遠くに逝っても、動物園からまた笑いかけてくれますか? ねえ、ギンペーさん? )

瞳を閉じると、ふっと夏の日のにおいがした。


往人は、サンペーの亡骸に店にあった布をかけてやった。
「ギンペーにチェザーレにミントか……ペンギンなら、きっと見つけやすいだろ」
そして彼は店の外に出ると、星空を見上げてつぶやいた。
「観鈴、美凪、みちる。俺、まだしばらく帰れねえみたいだ。どこに行くんだって?
そうだな……サンペーに聞いてくれ。俺、これからしばらくは、あいつと一緒にいるつもりだから」


先生がその店の前を通りかかったのは、それから十分ほど後だった。
「血のにおい……そうか、ここでも誰かが……」
そういう先生の顔は曇っていた。
源静香、骨川スネ夫。彼の生徒の名前が、ついに放送で呼ばれてしまった。
自分は結局、また生徒を救えなかった。もうこれ以上、後悔はしたくない。
「野比……」
一番心配なのは彼だ。早くそばに行きたい。

「この東京だけをとっても……この二日間で死んだ人たちには、どれだけの家族や友人や大切なものがあって、
どれだけの夢を育んでいたんだろうなあ」

まあ、教師でありながら何人もの人を殺した自分が言えたことではないか。先生は苦笑した。



「あれ、私、なんでこんな所に? 」
青葉梢は、見知らぬ狭い路地裏で目を覚ました。なぜか記憶が抜け落ちている。
まあ彼女にとっては珍しいことではないのだが。
「早く帰って、白鳥さんたちの無事を確かめないと……」
そう言って立ち上がった梢は、自分の右手に血まみれの日本刀が握られているのを発見した。


三日目 東京都国立市 0時】

【国崎往人@AIR】
〔状態〕健康
〔装備〕拳銃
〔道具〕支給品一式
〔思考〕
1:サンペーの仲間を探し、彼の伝言を届ける
2:直幸か早紀に出会ったら、報復として殺す

先生@ドラえもん
〔状態〕健康
〔装備〕金属バッド
〔道具〕支給品一式
〔思考〕
1:自分の無力さを痛感
2:生徒を助けるため、他の参加者を殺す
3:生徒達、特にのび太のもとへ向かう

【青葉梢@まほらば】
〔状態〕混乱
〔装備〕斬鉄剣@ルパン三世
〔道具〕支給品一式
〔思考〕
1:状況に混乱

※サンペーを襲ったのは、彼女の他人格の一つ「赤坂早紀」

赤坂早紀の思考
1:腹が減ったので、他の参加者の食料を奪うか他の参加者を焼いて食べる
2:弱そうな奴は殺す

【サンペー@バケツでごはん 死亡確認】




最終更新:2007年01月06日 17:49