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世界最古の木造建築として名高い法隆寺。
そんな古の香りのする法隆寺の五重塔のそばに、その男たちはいた。
歴史の奥深さとは真逆の浅はかな男たちが。

「……ってなわけで、俺達に今足りないものは何だ? なぁ?」
今口を開いた男、名を吉田山次郎という。
その低い背を補うように金髪をツンツンに立て不良振ってはいるが、その実は弱きを虐げ強気にへーこらする典型的な小物ヤンキーである。
一応、彼にも学校を支配するという壮大な野望があるらしいのだが、それが叶う日は恐らく……。

「ヘッ? この俺様達に足りないものだって? んなの決まってるだろ。なぁ?」
吉田山を小馬鹿にするような口調で答えたのは、二人目の男ヌワンギ。
元いた世界では、一地域を治める藩主の息子、更には國を治める皇の甥として、その七光りで、いやその七光りだけで横暴を極める典型的な小物御曹司である。
一応、彼にも故郷にいる幼馴染をいつかその手中に収めるという野望があるらしいのだが、それが叶う日は恐らく……。

「あぁ。そんなの簡単さ。答えは女だ。僕たちを満足させるような女がいない」
鼻で笑うように答えを言ったのは、三人目の男、間桐慎二。
その一応は様になってる顔立ちと話術から、校内ではプレイボーイで通っており、そのことを鼻にかけ常に同級生や後輩を馬鹿にしている典型的な三枚目小物である。
一応、彼も聖杯戦争参加者で様々な卑劣な手を使って勝ち抜いてゆこうとする野望があるらしいのだが、それが叶う日は恐らく……。

何の因果か鉢合わせになった三人はその似たオーラのせいか、戦闘をすることなく意気投合、こうして行動を共にしていた。
だが先述の通り、彼らの目下の問題として、女日照りという問題を抱えていた。
三人とも、体だけで見たら一応は健全な男子。
こういった状況であっても、欲求不満は溜まるのである。
「そうだ、女が足りねぇ。……ってなわけで、俺たちが取るべき道は一つだよなぁ?」
吉田山が支給されたナイフを取り出し怪しく笑う。
「あぁ。適当にいい女を捜して、こいつでちょちょいと脅して、命令を聞かせて……」
愛用する鉈を取り出すと、ヌワンギも口元を歪める。
「作戦指揮は僕に任せてよ。なぁに、絶対に逃がしはしないからさぁ」
慎二は自信あり気にそう言いながら偽臣の書を片手に、ゆがんだ笑みを浮かべる。

「……お、いたいた。女だぜ。しかも見るからに無防備だ……カモだな」
「……ほぉ。中々の上玉じゃねぇか。……しかし巨乳だなぁ、おい」
「ふぅん、桜くらいあるんじゃないかな。まぁまぁだね」
法隆寺から奈良市街まで移動した三人は、閑静な住宅街を歩く一人の女子高生を発見した。
「よし、あいつをとりあえず手に入れる。……それでいいな?」
吉田山の問いに二人は無言でうなずく。

――作戦はこうだ。
まず、正面から吉田山がターゲットに声を掛ける。
そこで、正面に気をひきつけたところで背後から比較的腕力のあるヌワンギがターゲットを取り押さえる。
万が一、ヌワンギからも吉田山からも逃げられた場合は、慎二が何食わぬ顔でいかにも助けに来た風にやってきて、相手が油断した隙に拘束する。

――作戦というほどのものではなかったが、彼らから見れば完璧な作戦のようだった。

「……さて、それじゃ作戦通りに頼むよ、二人とも」
「チッ、命令すんじゃねぇよ。……最初に声掛けるんだから、俺が最初に手ぇつけるんだからな。いいな?」
「……はっ、んなの早い者に決まってるだろ? そんじゃ、俺も持ち場に着くとするわ。ヘマするなよ……」
「あ、おい! 話が違うじゃねぇか!」
吉田山がヌワンギを呼び止めようとするが、彼はそんな言葉に聞く耳持たんと言わんばかりに走り、遠回りして彼女の後方へと回り込む。
そして、彼が後方に配置が完了したことを示すサインを出すと、それを確認して慎二は吉田山に指示をする。
「よし、作戦開始だ!」
「いちいち命令するなっつーの……ったくよぉ」
吉田山はぶつぶつと文句を言いながらも、角から出て少女へと近づきはじめた。

「よ、よぉ。お前、一人でこんなところ歩いてどうしたんだ?」
吉田山が声を掛けながら近づく。
すると、下を向いていたその少女は、顔を上げて彼の顔を見た。
上げた事によってはっきりと見えるようになったその顔は、遠目で見るよりも格段美人で吉田山は思わず唾を飲み込む。
「へ、へへっ、女の子がこんなところ一人で歩いてたら大変だぜ。あ、当てが無いんなら俺が一緒についていてやっても……」
「…………い。…………ない。………………じゃない」
だが、そんな吉田山の言葉は、その少女には届いていないようだった。
彼女は再び俯くと、ぶつぶつと言葉を唱え続ける。
「……んあ? 何だお前、聞いてるのか?」
「…………君じゃない。誠君じゃない……あなたは誠君じゃない……」
「……は? マコト君? 誰だ、そ――」
そんな彼女にしびれを切らせて、吉田山が腕を掴んだ瞬間だった。
彼の首には、彼女がどこからともなく取り出された鋸が当てられ、そして――
「お前は誠君じゃない!!」
「――へ?」
一気に手前に刃は引かれると、吉田山の首には一本の赤い筋が出来る。
そして、その筋から赤い噴水が水平に噴き出し始め、彼は声も無く崩れた。
「う、うわぁぁぁぁ!!!!」
そんな光景を背後から見ていたヌワンギは仰天し、パニックを起こして走り去っていってしまった。
「あ、ぬ、ヌワンギ! 僕を置いて逃げるな!!」
呆気に取られていた慎二は、その姿を見ると慌てて彼を追いかけるように角から飛び出し走りだす。
少女の背後にいたヌワンギを追うということは、吉田山と少女の横を通るということだが、この時の慎二は何故かそれを躊躇わなかった。
……そして、彼女の横を通過する時に彼は見た。
血だまりに沈む吉田山を見て、口を愉快そうに歪める少女の姿を。


唐突な惨劇からしばらく。
逃走を続けたヌワンギと慎二は奈良駅前の商店街に来ていた。
「はぁはぁ……何なんだよ、あれは……! 何でいきなりあんな真似したんだよ、あいつ!」
「ぼ、僕が知るわけ無いだろ! あ、あんな恐ろしい女生まれて初めて見たよ……」
女を見る目には自信があった慎二にとっては、先ほどの出来事は実にショックだった。
「で、でもどうするんだよ? こ、これからも続けるのか? 二人になっちまったけどよぉ」
「あぁ。このまま引き下がったら僕のプライドが許さないからね。……それに、このままじゃストレスが溜まりっぱなしだ。どこかで発散しないと」
「お前……執念深いな。……まぁいいさ。俺も似たようなもんだしな。――それじゃ、早速女を捜し……って、おい慎二。あれなんかどうだ?」
ヌワンギが指差す先には無人のブティックの前のショーウィンドーを見ている一人の少女の姿があった。
すらりと伸びた足と、綺麗な赤い髪、そして何より先ほどの少女同様にたわわに実ったバスト。
まさに、絶好のターゲットだった。
「うん、いいんじゃないかい? ……それじゃ、僕が今度は声をかける役になろう。いいね?」
「ああ構わねぇ。だけど手をつけるのは早いもんだからな」
「はいはい、了解了解、っと」
そう言って慎二は軽くあしらい、ヌワンギは舌打ちをしながらも所定の位置につく。
「それじゃ、今度こそ行くとするか。今度こそ……な」
慎二は一歩一歩を踏みしめて、女性へと近づくと、いつも学校の女子にする感じで声を掛けた。
「やぁ、どうしたんだい、こんなところで?」
「……え?」
振り向いたその顔は、目鼻がはっきりしたまさに正統派の美少女だった。
慎二は当たりくじを引いたと内心で思うと、背後のヌワンギに指示を出し、彼女にゆっくり接近させる。
「ウィンドーショッピングでもしていたのかい?」
「……え? あ、うん、そう」
――あと百メートル。
「どうせ店に人なんていないんだからさ、中に入ってればいいのに」
「なんか、買わないのに入るのってちょっと抵抗があってさ。へへへ……」
――あと五十メートル。
「ところで一人? 名前は? ああ、僕は慎二。間桐慎二さ」
「ボクの名前は赤坂美月。察しの通り一人だよ」
――あと二五メートル。
「へぇ、一人かぁ。……でも、一人だと寂しくない? それに危険じゃないかい? 何なら僕が一緒にいてあげてもいいんだけど……どう?」
「キミと一緒……かぁ」
――あと十メートル。
「一緒に行動って、何かエッチなこと考えているんじゃないの~?」
「ははは、冗談きついって。僕は紳士で通ってるんだ」
――あと五メートル。
「ふぅん……そうなんだ……」
「ああ。だから……」
――あと二メートル。もう残り僅かだ!
そう思っていたちょうどその時だった。
慎二の胸に肉切り包丁が突き刺さったのは。

「……え?」
その瞬間、慎二は呆気に取られ、背後で両腕を伸ばして美月を捕まえようとしていたヌワンギも硬直した。
そして、そんな二人をよそに美月は今までの表情からは考えられないような冷たい顔になる。
「結局男ってそうよね。女を見れば近づきたくなる……。ほんっとうに男って最低」
「な、なんで……いきなり…………」
心臓に包丁が突き刺さりながらも、慎二は言葉をつむいでいた。
だが、そんな彼の言葉をよそに、美月は包丁を一気に引き抜く。
血がその傷跡から、先ほどの吉田山よろしく激しく噴き出す。
「がはっ!!」
「何で、ですって? あはははははははは! そんなことも分からないの!? 決まってるでしょう、私の志穂を男の手から守る為よ! 素直に立ち去ってくれればこんな目に遭わなかったのに本当に馬鹿よね、あははははは!」
美月の笑い声は、もはや崩れて動けないでいた慎二には聞こえていなかった。
そして、彼が最期に見たのは自分を置いて遠くへと走り去っていくヌワンギの姿だった……。



「ま、またかよ! い、一体何がどうなってやがる畜生!!」
吉田山を見捨て、慎二を見捨て。
ヌワンギは半ばパニックを起こした状態で奈良の路地裏をひたすら走っていた。
自分がどれだけ走っているのかも分からない。
あの女から遠ざかっていればいい。
それが、彼の今の素直な心境だった。
そして、そのように無我夢中で走っていると……。
「わぷっ!!」
「きゃわわ!」
何者にぶつかり、尻餅をついてしまった。
相手はかわいらしい声から察するに、幼い少女だろうか。
ヌワンギは自分が前を見ていなかったことを棚に上げ、勢いに任せて激昂する。
「いってぇなぁ……。てめぇ、ぶつかってくんじゃねぇよ!」
「あ、あわわ、ごめんなさい……」
起き上がったヌワンギが正面を改めてみると、そこにいたのはこれまた立派な胸をした童顔のメイドだった。
その瞬間、彼は本日、巨乳の女性が如何に恐ろしい手口で吉田山や慎二を殺してきたのかを思い出し、硬直する。
「ひ、ひぃ……く、来るな来るな……」
「……はい? ど、どどどうしたんです?」
いきなりのヌワンギの変貌を不思議に思いながら、少女は近づく。
だが、それは現在進行形でパニックを起こしている今の彼にとっては殺人鬼が近づいてくるのと同等の意味を持っていた。
「うわぁぁぁぁぁぁ! 来るなぁぁぁぁ!!!!」
脱兎のごとく――そんな言葉が似合うような素早さで彼は逃げていった。
「……え、えっと私、どうして怖がられているんでしょうか……」
メイド少女みくるは、その光景を呆然と見るしか出来なかった。


三日目 奈良県奈良市 9時】

【ヌワンギ@うたわれるもの
[状態]:巨乳恐怖症 パニック
[装備]:ヌワンギの鉈
[道具]:無し
[思考]:とにかく巨乳から逃げる


朝比奈みくる@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:健康
[装備]:メイド服
[道具]:支給品一式(アイテムは不明)
[思考]:まずは奈良県でSOS団メンバー捜索


【桂言葉@School days】
[状態]:目がうつろ
[装備]:鋸
[道具]:支給品一式
[思考]:誠君……私を捨てたりしないよね?


【赤坂美月@ダブルキャスト】
[状態]:美月人格モード
[装備]:肉切り包丁
[道具]:支給品一式
[思考]:志穂に手を出そうとする人間には容赦ない
[備考]:「志穂」とは美月の中にいるもう一人の人格です。
     美月の体は本来は志穂のものですが、名乗る際は「美月」と呼んでいます


【吉田山次郎@スクールランブル 死亡確認】
【間桐慎二@Fate/stay night 死亡確認】




最終更新:2007年01月06日 18:05