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「アライグマくん、まってよ~」
「ったく、トロトロ歩いてんじゃねーよ!! 殺されるぞ!! 」

アライグマとぼのぼのは、人間が多くいそうな車道は避けて、山の裾に沿って走っている
農道を移動していた。街灯もロクに無いが、彼らはもともとが野生動物なので問題は無い。それに、今夜は満月だった。
ここまで人間に会わなかったのは幸いだったが、シマリスの行方の手がかりも掴めないままだった。

「おい、ぼのぼの、とりあえずここで少し休むぞ。朝日が出たら、今度は車道のほうへ行ってみようぜ」
アライグマは、このままでは埒が明かないと判断してそう提案した。
ぼのぼのはよほど疲れていたのか、ぐったりと座り込む。
「ったく、しゃーねー奴だな。ほら、水でも飲めよ」
アライグマはぼのぼのの隣に腰を下ろした。
「ねえ、アライグマくん、僕たちシマリスくんに会えるかなあ。その前に殺されないかなあ」
またぼのぼののいつもの心配性が始まったな、とアライグマはため息をついた。
「心配すんなって、絶対にあいつを見つけてボッコボコに殴って森に連れて帰るからよ。
それより、今のうちにメシを喰っとけ。鞄の中に入ってるだろ」
「あ、うん」
ぼのぼのとアライグマは同時に食事に口をつけた。その時だった。


一本のボーガンが、アライグマの背中に突き刺さった。



うめき声を上げて倒れこむアライグマ。
「あ、アライグマくん!! 」
「に……逃げろ、ぼのぼの!! 」
アライグマは、痛みをこらえて必死に叫んだ。そんな彼らの目に当てられる、まぶしい人工の光。
懐中電灯を片手に、タマネギのような頭をした奇形の少年が近寄ってきた。
「や、やあ。どうしたんだい? 怪我をしているのかな? 」
その少年の声は、なぜか震えていた。目もうつろだし、台詞も棒読み。
しかし、ぼのぼのにはそれがわからなかった。
「あ、アライグマくんが・・・…た、たす、たすけて……」
「そ、そうかい。実は僕は傷によく効く薬を持ってるんだ。でも、き、貴重なものだから、
ただじゃああげられないな。だ、だから僕の言うことを……」
奇妙な頭をした少年は、なおもおどおどと言葉を続けた。そんな彼の台詞を断ち切るかのように。

「まったく、永沢くんは全然駄目だね。かわりに僕が説明してあげるよ」

そんな言葉と共に、唇の青い少年がタマネギ頭の少年の背後から現れた。
彼の手には、ボーガンが握られていた。
「ふ、藤木くん、作戦と違うじゃないか!! 」
「キミがいつまでもオドオドしてるからいけないんだよ!! もう僕が一人でやるから引っ込んでてよ!! 」
藤木と呼ばれた少年は、そう言って永沢というらしい少年を押しのけた。
「ねえキミ、この子を助けたいんだね? 」
藤木は、ぼのぼのの目をみて笑いながら言う。その顔には、おおよそ人間らしいところが無かった。
「てめえ、ぼのぼのに何を……」
「死に損ないは引っ込んでてね」
藤木はアライグマの背中をふんずけて黙らせると、話を続けた。
「この子を助けたいなら、まずはキミたちの食料を全部僕に渡してもらおうか?それと、それだけじゃとても
僕たちが清水に帰るまでもたないから、もうちょっとだけ食べ物を探してきてもらいたいんだ」
「え、どうやって? 」
疑問を口にしたぼのぼのに、藤木は当然だろうという顔で、
「決まってるだろ。他の誰かを殺して、そいつの食料を奪って来るんだよ」
「え……」
ぼのぼのは固まった。
「ぼ、ぼのぼの、逃げろ!! こんな奴のいうことなんか聞く必要ない!! 俺なんかほっといて逃げるんだ!! 」
アライグマは、藤木の足を跳ね除けて体をなんとか持ち上げ、そう叫んだ。
「ええい、うっさいなあ!! 黙ってろよ、このくそタヌキ!! 」
藤木はそういうと、背中にボーガンの刺さったままのアライグマを蹴り上げた。
サッカーボールのように飛んだアライグマを、さらに気の済むまで蹴り続ける。
アライグマの口からは血が滴り、手足は痙攣を起こした。
「や……やめてよ!! 」
いつもは自分やシマリスに大して横柄な態度を取っているアライグマが、ぼろ雑巾のようにされていくのを見て
ぼのぼのは涙を流しながら藤木を止めようとした。
「だったら、人を殺して食料を奪ってこい」
自分にしがみついたぼのぼのに、藤木は冷徹に告げる。
「そ……」
「お前がちゃんと約束を守れば、こいつの手当てをしてやるよ。嘘はつかない。
武器がないんなら、こいつを貸してやるよ」
藤木はそう言って、ぼのぼのに一本の槍を投げてよこした。
「さあ、早くしないとこいつしんじゃうよ? 」
少年は、青い唇をゆがめて醜く笑った。
ぼのぼのは、槍を抱えて、呆然とした顔のままで藤木に背を向けて歩き始めた。
最初はゆっくりと。次第に速度を上げて、ついには全力で駆け出した。
それがぼのぼのの、大切な友人と、見も知らぬ人の命とを秤にかけて、出した答えだった。
ラッコは卑しく笑う少年に見送られて、夜の闇へと分け入っていく。哀れな獲物を求めて。



「藤木くん、こ、こんなやりかたはいくらなんでも卑怯すぎるよ!! 」
呆然と親友の行為を見ていた永沢は、ぼのぼのが走り去った後、そう藤木に詰め寄った。
「ああ、そうさ。僕はいつもキミやさくらに卑怯卑怯と言われていたからね。だからそのとおりに行動してるだけさ。
僕を卑怯だと言ったのはキミじゃないか」
藤木は、逆に永沢の胸倉をつかんで彼を責めるように言った。
「で、でも、こんな自分の手を汚さずに助かろうなんてやり方……」
「仕方ないじゃないか? そうでもしないと僕らみたいな弱い子供が生き延びるのなんて無理なんだから。
大体、永沢くんに付き合って東京旅行に来てみればいきなり殺し合いだよ? いわばキミは僕を巻き込んだようなもんだ。
責任はキミにあるよ」
「な……こ、こんな状況でそんなことを言ったって仕方ないじゃないか!! それこそ卑怯だよ!! 」
「ふん」
その一言を聞いた藤木は、永沢を地面に叩きつけた。

「ああ……僕は卑怯者さ。親友のキミにずっとそう呼ばれてきたんだから、きっと僕は世界一の卑怯者なんだ。
ずっとずっと、誰もがいつも僕を見るたびに、卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯
卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯卑怯!!!
もう何度うんざりしたことか!! だから僕は決めたんだよ、とことん卑怯な方法でこの殺し合いを生き延びて
やるってね!! ふ、ふ、ふ、ふあーひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!! 」

藤木はついに、大声を上げて笑い出した。壊れてしまった人形のように、悲しげな声で。
永沢は、その魔獣を見上げながらがくがくと震えていた。
(も、もう殺し合いなんてどうでもいい……誰か、誰でもいいから藤木くんをもとの藤木くんに戻してくれ。頼む……)

満月の晩。街灯すらロクにない農道で、腹を抱えて笑い続ける少年と、そんな親友を遠く感じる奇形、そして意識を失ったアライグマが同じ月光に照らされていた。


【東京都郊外 農道 三日目 2:00】
【アライグマ@ぼのぼの】
[状態]:失神。矢は急所を外しているが危険な状態。
[装備]:スペツナズナイフ
[道具]:支給品一式
[思考]
1:ぼのぼのだけでも逃げ延びてほしい。

【ぼのぼの@ぼのぼの】
[状態]:健康
[装備]:スタンガン、ゲイボルク@Fate/stay night(永沢の支給品)
[道具]:支給品一式
[思考]
1:誰かの食料を奪う。場合によっては殺す。

【藤木@ちびまる子ちゃん】
[状態]:卑怯
[装備]:ボーガン
[道具]:支給品一式
[思考]
1:自分の手は汚さず、他人を使って食料を集める。
2:食料を集めながら、清水へ帰る(電車やバスは警戒して使わない)

【永沢@ちびまる子ちゃん】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考]
1:藤木の豹変に呆然。もう何も考えたくない。
最終更新:2007年01月07日 11:47