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 崩壊しゆく街を明智光秀は一人歩いていた。
(ここまで状況が錯綜しているとは……。
そう簡単には新聞の発行者を見つけられないかもしれませんね。
 急ぎたい所ですが……)

 光秀は先程から強大な力を感じ取っていた。
 力の質からいって恐らくはサーヴァントの物だろうと光秀は当たりを付けていた。
 サーヴァントである以上、光秀はその力を無視する訳にはいかない。

「出てきなさい、いるのは分かっていますよ!」
 光秀は未だ姿を見せぬその敵に対して力強く声を上げる。
 その中にはその強大に力への気後れなど寸分もなかった。
 そうして、次の瞬間

「ふむ、見つかってしまったか」
 男はその言葉と共に颯爽と現れた。
 その男のことを光秀は知らない。
 が、美しく引き締まった肢体に、バランスよくついている筋肉、そして何よりその柔和な表情の中にある鋭い双眸を見て、光秀は男が相当な実力者であることを感じ取る。

「貴方……サーヴァントですね」
「うん、そうだ。僕はイチローバッターのサーヴァントだ」
 男――イチローは光秀の問いに堂々と答える。
 実のところ、イチローは光秀に手を出すつもりはなかったのだ。
 勿論最終的には倒すことになるが、光秀は見限られているとはいえ信長の部下だ。
 先程のチャレンジャーと違い、聖杯戦争を促進するという目的はイチローと光秀は同じなのだ。
 故に今回は見逃し、別のまだ好戦的でないサーヴァントを探そうとしていたのだが、

「私はユダのサーヴァント、真名は明智光秀です。恨みはあいませんがサーヴァントである以上見逃す訳にはいきません。
 いざ―――――」

 そう言って光秀が刀を抜き放ったのを見てイチローは気が変わった。
 そう簡単には逃げるが出来そうになかった上、相手は正々堂々と自分に戦いを申し込んできたのだ。
 イチローはバッターのサーヴァントである前にスポーツマンである。
 そんな彼が正々堂々と戦いを申し込まれた以上、もはや彼には戦う以外の選択肢はないのだった。

「わかったよ、じゃあ始めようか」
 イチローはそう言って一本のバットをどこからともなく取り出す。
 この距離では『この世全て悪の死球』などの遠距離攻撃では分が悪いと思ったからだ。


両者共に獲物を取り出したことで一瞬その場に静寂が舞い降りた。
刹那

「はぁ!」
 光秀の刀が走った。
 その一撃はまさに練達の物であり、イチローの首へと吸い込まれていく。
 会心の一撃だ、光秀は斬った刹那そう感じた。
 だが、

「な!」
「君の技は確かに速い」

 一瞬の内にイチローは光秀の左側に回りこみ、剣戟を受けるそのバット弾き返していた。
 思わぬカウンターによって光秀は弾き飛ばされる。
 その一瞬の攻防にもしも観客がいたのならばこう見えていたことだろう。
 光秀の剣戟をイチローが打った、と。

「だけど、早くまっすぐであるが故に見切ることも容易いものなんだ」
 打者/バッター。
 そのクラスは決して伊達ではなく、直線的なものであれば打ち返せぬものなどない。

「くっ、だがっ!」
 光秀はイチローの圧倒的な力を目の当たりにしても退こうとはしなかった。
 相手がサーヴァントである以上、光秀にとっていずれは倒さねばならぬ相手。
 彼の主である織田信長の命を達成する為にも、マスターである澪を守る為にもここで負ける訳にはいかないのだ。
 そして、何よりも―――

「私は、裏切者です」

 一閃。
 イチローは難なく回避する。

「だが、それ以前に武士―サムライです」

 回避による一瞬の硬直を狙い光秀は再び刀を振るう。
 しかし、イチローは光秀を上回る俊敏さで一撃を切り払う。

「だから、何を裏切っても私は、サムライとしての矜持だけは裏切れない!」
「!?」

 イチローにそこで初めて動きが止まる。
 光秀の刀が、言葉が終わると共に鈍く光り始めたのだ。

(これは……宝具の真名を開放する気なのか)

 真名開放。
 それは即ちサーヴァントにとっての切り札である。
 いくらスペックで勝るイチローでも宝具の真名開放による攻撃が直撃すれば一たまりもない。

(やれやれ、本当は使いたくはなかったのだけどね)

 イチローはバットを再び構える。
 敵が切り札を切るというのだ。
 ならば自分もそれに応えて、全力で戦うべきだろう。

そして、


「“     ”!」
「“              ”!」


名は開放され、全ては光に包まれた。

「ふぅ、今回は少しハードだったかな」

 全てが終わった後でそこに立っていたのはバッターのサーヴァント、イチローだった。
 辺りにはもはや何も残っていない。
 全てを裏切らなかった裏切者が居たという証はもう何も残っていなかった。


【イチロー@現実?】(クラス・バッター)
【状態】若干の消耗。
【装備】
【道具】
【宝具】バット
【思考】1:マスターに従い、サーヴァントとマスターを殺害する(直接手を下すのは躊躇)
2:織田信長に対して、いくらかの疑念
※規格外ゆえにサーチャーの調査関連のスキルを無効化しています。
※宝具の真名は後の書き手さんにお任せします。ていうかいい感じに厨二にならなかった。

【明智光秀@歴史 死亡確認】
※光秀の死体は消滅しました。
最終更新:2009年07月05日 00:08