「がっ、は……」
トマトケチャップのように赤い鮮烈な血液が男から吹きでる。
その男の体から生えているのはフライドポテト。
その男の腹部を抉り喰ったのはハンバーガー。
その男の左腕を捻り絞って作られたのはマックシェイク。
ケンタッキーのチキンナゲットは粉砕され、挽き肉に戻り、豚の餌になり、ハンバーグへと変わった。
それはマクドナルドの、マクドナルドによる、マクドナルドのための侵略。
「ケンタッキーのフライドチキンなど、マクドナルドのチキンバーガーにも使えん」
「……なぜ、これほどまでに差がある」
アーカードナルドがマクドナルドと吸血鬼の融合ならば、
マクドナルドとケンタッキーのコラボレーションである己が劣る筈は無い。
ハンバーグラーはそう考えていた。溢れ出る力に敵はいないと、そう確信していた。
しかし、現実には違った。
マクドナルドとケンタッキー、その衝突の先にあったのは、戦いとは言えぬ、ただの蹂躙。
圧倒的な「マクドナルド」によって侵食される「マクドナルドとケンタッキー」。
「私は裏切り者が嫌いでね」
「なぜ、俺達にこれほどの差があると聞いている! なぜ、俺とお前に……」
「偽・螺旋鳥(フライドチキンⅡ)」
問い掛けるハンバーグラーに、フライドチキンを返すアーカードナルド。
そのチキンは異常に捻れ、歪な形、鈍い色だった。
『これは……!』
飛んでくるチキンに、ハンバーグラーの中のカーネルは顔を歪める。
「壊れた信用(ブロークンクレジット)」
それはケンタッキーのフライドチキンだった。
間違いなくケンタッキーのフライドチキンであった。
ただし、それはとても客に出せる代物ではなく。
故に現界したそれは、ケンタッキーの信用を破壊しつくした。
「げぼっ! げはっ、げぇっ!?」
カーネルの体のケンタッキー力を司る回路が破壊され、激しい痛みがハンバーグラーを襲う。
顔面の穴という穴から血液を垂れ流し、ハンバーグラーは激しくのた打ち回る。
『おのれ、ドナルド……!』
「が! ぎぃ!?」
ケンタッキーの信用を壊され怒ったカーネルは、すぐさまにそれを回復させるべく体にケンタッキー力を通す。
ズタズタにされたケンタッキー力回路を通るケンタッキー力(以下ケンタ力)は、痛みを伴い体を再生させる。
それは体の感覚を司っているハンバーグラーにとってはただの拷問でしかない。
「哀れだな、ハンバーグラーよ。化け物(フリークス)までに身を貶し、しかしそのザマか」
「黙、れ……!」
「ほう、口が聞けるか。元、とは言えさすがマクドナルドの者と言ったところか」
「黙れ!」
(お前が……! 今のお前がマクドナルドを語るんじゃねえ!)
怒りに身を任せ、気の遠くなるような激痛を意識の外に追いやり、
マクドナルド力とケンタ力を全開に一撃 を打ち込むハンバーグラー。
その攻撃はアーカードナルドの顔面を吹き飛ばし、上半身を肉片へと変えた。
しかし。
「いい攻撃だ。ククク、しかし残念だ」
吹き飛ばされたアーカードナルドの肉片はハンバーグへと、ポテトへと、マクドナルドのメニューへと姿を変える。
撒き散らされた赤い液体がハッピーセットのオマケへと姿を変え……。
「マクドナルドを食べるのは、いつだって人間でなくてはならない」
「う、うわあぁぁぁあああ!?」
アーカードナルドへと姿を変えた。
「ほう」
「へ?」
「ハァッ、ハァ……!」
吸マック衝動が満たされ、正気に帰ったかがみ(七期)の目にまず入ったのは、食べ物達のぶつかり合いだった。
飛び交うポテト、チキンにハンバーガー。
一種ギャグにしか見えない光景にかがみ(七期)はすっかり思考を停止して見入っていた。
そしてハンバーガーがチキンを喰らい尽くし……
『そうです、それでよいのです』
「うる、せえ……!」
気が付けば、首筋にフライドチキンが当てられていた。
かがみの細い首に当てられたチキンが、皮一枚を裂き、血に濡れる。
「ひっ!」
『見た所、この娘はドナルドと力を共有している様子。こうして盾にしていれば奴も迂闊に攻撃できますまい』
「黙れと言っている!」
「ちょっと、なんなのよ! 一人で勝手にペラペラと!」
カーネルの声はハンバーグラーにしか聞こえない。
そのためかがみには
ハンバーグラーが一人事を喋ってようにしか見えなかった。
アーカードナルドは何を考えているのか、それをニヤニヤと見つめている。
「店員」
「おっと、動くな!」
「きゃっ!」
『なかなかどうして、様になっていますなあ』
アーカードナルドの言葉に反応してハンバーグラーがかがみを抱きよせる。
フライドチキンがかがみ(七期)の肌に一層食い込み、いつの間にか着ていた服の襟を赤く染める。
「いいだろう。俺は一切動かない。だがいいのか?」
「なんだ!」
「その女も、化け物だぞ?」
「ぎゃああぁぁああああ!?」
気が付けば、あたしは白いスーツの男のフライドチキンを持っていた手を思いっきり握っていた。
あたしとしてはただ掴んで引き剥がそうだけだったんだけど、男の肉は予想外に脆く、豆腐のように潰れた。
「さあ、店員よ。接客の時間だ。いらっしゃいませはどうした? メニューはまだか?
ハンバーグを温めろ! ポテトを揚げろ! ドリンクを注げ!
開店の狼煙を揚げるのだ!」
「Yes.my master」
いつの間にかあたしはマクドナルドの制服を着ていた。
私を化け物にした主の言う店員というのは私の事なのだろう。
「くそ、この!」
四方から、八方から、十六方から、三十二方から、六十四方からフライドチキンが襲いかかる。
無限の軌道を描き飛来するそれをあたしは目ではない目で捉えていた。
「いらっしゃい、ませえ」
ケンタッキーのフライドチキンはゴミ箱に。
お客様にはメニューを。
淀みなくあたしは仕事をする。
「さあ、メニューは来たぞ? 注文はなんだ? 言ってみろ。 Harry! Harry!」
「死ね」
「では、本日のオススメを」
ファーストフードの売りはその早さだ。
世界一のシェアを誇るマクドナルドならばその速度は時間すら逆行する。
当然、客がテーブルに着くまでもなく、メニューは完成する。
アーカードナルドの右腕にマクドナルド力、マ力が収束する。
膨大なマ力に陵辱し尽くされた世界が、その姿を崩していく。
無風、無音、無明。
広がる暗闇の中に存在するのはただ三つの生命のみ。
「メガマック、ギガマック、テラマック」
収束したマ力はバンズ、ハンバーグ、レタス、トマトへと姿を変え積み重なっていく。
天へ天へと伸びるその姿はまるで一つの長槍。
「ペタマック、エグザマック、ゼタマック、ヨタマック」
『なにをしている、ハンバーグラー! 死ぬぞ、退け!』
「――……ハ?」
「さあ、喰らい尽くしてみせろ。これがマクドナルドのハンバーガーというものだ」
インフィニットマック
―― 穀 物 で 挟 ん だ 挽 肉 と 野 菜 ――
一個のハンバーガーがハンバーグラー巻き込み宇宙へと消え、光に変わった。
【水星@太陽系 消滅確認】
「なに、これ」
夕日が沈み、闇夜に瓦礫と死骸とファーストフードに沈んだ秋葉原が昼間と変わる。
天に煌々と輝く太陽は、アーカードナルドの宝具を受けた水星だった物。
死んだ街を照らす眩しい灯りは、この地に芽吹く新たな生命を予感させた。
人さえいるならば、街は何度でも蘇るだろう。
「って、いくらなんでも
これはないわよ……」
かがみ(七期)は首を振り、有り得ない光景を否定する。
しかし、有り得ない光景は現実に彼女の目の前に存在している。
かがみ(七期)は、己の主が改めて規格外(版権的にも)の怪物である事を認識した。
「さあ往くぞ、我が主(マイマスター)よ」
「え、ますたー?」
そして、意味の分からない関係も認識した。
アーカードナルドは「支配者(マスター)」のサーヴァント。
そしてそのマスター(主)であり、吸マック種として支配を受けるかがみ。
互いに主であり、互いに奴隷であるという矛盾。
その矛盾の先にあるマクドナルドの運命は誰にも分からない。
「どうするのだ、主よ。特に方針は決めていないから私はお前に従おう」
「いままで散々破壊の限りを尽くしといて突然なに言いだしてるんですかマスター!?」
「う、ぐ……」
ハンバーグラーは生きていた。
右腕に全てのマ力とケンタ力を集中させ、暴走させる事で自分を吹き飛ばし、
インフィニットマックから抜け出しだのだ。
結果、インフィニットマックとは真逆の方向に吹き飛ばされ、水星爆縮の余波を受け……
火星に落ちた。
「ドナ……ルド……! クソッ……!」
今の自分では決してドナルドは救えない。
ハンバーグラーは堕ちた衝撃で出来たクレーターの中でその事実を噛み締めていた。
「ぐっ……!!」
搾り滓のようなマ力、ケンタ力をかき集め先の無い右肩の止血を試みる。
しかし、再生はおろか止血さえする力は 残っていない。
「……ならば……」
これ以上血液を失えば、いかにハンバーグラーといえども死にかねない。
方法は選んでいられない。残った力を振り絞り、チキンを揚げるための、煮えたぎった油を投影する。
「ぎぃやあああぁぁぁぁあぁぁぁぁああああ!!」
辺りに聞くに耐えない苦悶の悲鳴が木霊する。
ハンバーグラーが煮えたぎった油に強引 に右肩を突っ込み、消毒と止血を試みたためだ。
(これでいい……。これで……)
余りの痛みにハンバーグラーの視界が明滅する。
しかし、絶え間なく襲う耐え難い痛みが彼の意識を引き止める。
(ここで、気絶すればもう戻ってこれない。死ぬ訳にはいかない。決して)
ドナルドを救うまでは決して死ねない。
友情がハンバーグラーの生存を繋ぎ止める。
「まずは傷の治療だ。そして、アイツを止める力を……」
死に瀕した体を引きずり、ハンバーグラーは動きだした。
一方……
(これはもう駄目ですかな)
カーネルはハンバーグラーを冷ややかな目で見ていた。
(今のドナルドを相手にするにはこの男ではあまりにも力不足。何より……)
「ドナルド」を思い出す度にハンバーグラーの体は小刻みに震えた。
ハンバーグラー本人は気が付いていない。
その原因にハンバーグラーの心の奥に潜むカーネルは気が付いていた。
(ドナルドの力に対する圧倒的な恐怖。このトラウマは一石では拭えまい。
いざとなれば切り捨てる事も考えなければならないか)
ハンバーグラーの命は、刻一刻と削られていた。
【一日目・午後8時10分/金星・秋葉原】
【
柊かがみ(七期)@らき☆すた】(マスター)
【状態】記憶喪失、吸マック鬼化、アーカードナルド(クラス・マスター)と契約、マクドナルドの制服
【装備】無し
【道具】無し
【思考】基本:マクドナルドを広める
1:とりあえず、どうしよう?
※吸マック鬼がどんな性質の生物かは不明です。
とりあえずマクドナルドのファーストフーズが大好きなようです。
【アーカードナルド@ヘルシングとかマクドナルドとかそこらへん】(クラス・支配者(マスター))
【状態】吸血道化師、絶好調、柊かがみと契約、マ力消費(極小)
【装備】なし
【道具】なし
【宝具】穀物で挟む挽肉と野菜(インフィニットマック)、他
【思考】基本:マクドナルドのマクドナルドによるマクドナルドの為の闘争
1:マスターに従う
【一日目・午後8時10分/火星】
【カーネル・ハンバーグラー・サンダース@ケンタッキーwithマクドナルド】
【状態】ハンバーグラー精神消耗(中)、重傷、右腕消失(焼灼止血済)、疲労(極大)
衰弱、血液不足(トマトケチャップで補給可能)、
マ力消費(極大)、ケンタ力回路破壊(再生中、使用すると激痛)
【装備】無し
【道具】支給品一式×2、不明支給品×2
【思考(ハンバーグラー)】基本:友としてドナルドを止める。
1:アーカードナルドに対抗しうる力を得る
2:全て終わったら、カーネルごと死を選ぶ。
3:(アーカードナルドへの恐怖)
【思考(カーネル)】
1:アーカードナルドに対抗しうる力を得る
2:より楽しい方法でドナルドを殺す
3:使えないようならハンバーグラーは切る
最終更新:2009年07月19日 00:32