「のび太くん、のび太くん」
不意に懐かしい声がして、のび太は顔を上げた。
(あれ?
かみなりさんの家にいたはずなのに、なんでこんなところに? )
そこは見知らぬ花畑だった。そして、そこに
ドラえもんがいた。
「ドラえもん・・・・・・」
のび太は、堪えきれなかった。
「ドラえもん、酷いじゃないか!! 僕を置いて逝くなんて!! 僕を幸せにしてくれるって言ったのに!!
ずっと一緒に居てくれるって・・・・・・言ったのに・・・・・・」
のび太は、泣きながら親友に怒りをぶつけた。
彼が生きていた頃は、決して抱かなかったほどの怒りを。
「うん。だから今日は、謝りたかったんだ」
ドラえもんは、諭すでもなく、諌めるでもなく、静かに言う。
「ごめんね、のび太くん。キミが、しずかちゃんが死んで、ママが何度も死んで、一番辛い思いをしていた時に
僕は・・・・・・そばにいて、あげられなかったね」
花畑の中は風も無く、穏やかな空気に支配されていた。
「僕は、キミを幸せにするために未来から来たのに・・・・・・その役目を、果たせなかったね」
「ドラえも・・・・・・」
のび太は、親友の涙を久しぶりに見た。
「でも、僕はキミを幸せにしないといけないんだ。僕のせいで、キミのことを不幸にするわけにはいかない。
だからね、のび太くん」
ドラえもんは、噛み締めるように、名残を惜しむように、その言葉を口にした。
「僕のこと、忘れていいよ」
「ドラえもん・・・・・・そんなこと・・・・・・」
「ドラえもんなんてロボットは、未来からやってこなかったんだ。キミは、そんな奴なんかに出会わなかったんだ。
そうさ、キミは、自分の力で未来を変えていったんだ。そういうことに、してくれていいよ」
自分の思い出が、これからののび太の足枷になってはいけないから。ドラえもんは、心からそれを願った。
「そんなこと、できるわけ無いじゃないか!! キミは僕をいつも助けてくれた、キミが居たから僕は頑張れた!!
なんで、なんでそんなこと言うんだよ!! ドラえもん!! 」
「あーあー、情けないなあ。流石はのび太だ」
「え? 」
振り向くと、そこには死んだはずのスネ夫がいた。
「のび太、キミはドラえもんがいないと本当に何もできないんだね。まったく情けないな」
いつも通りのイヤミったらしい声で、スネ夫は呆然としているのび太に語りかけた。
「そんなことじゃ、ドラえもんも安心して死ねないじゃないか。少しは考えてやりなよ」
そう言って、スネ夫はウインクした。
「あ・・・・・・」
そうか。
「そうよ、のび太さん。私達、もう死んじゃった人のことなんか、忘れたっていいんだから」
ああ、この声は。僕が一番、聞きたかった声だ。
「のび太さん、生きて。私達の仇なんか取らなくたっていい。生きて」
「しずかちゃん・・・・・・」
好きだった人の顔が、もう二度と見れないと思っていた人の顔が、すぐそばにあった。
「野比くん、僕たちは君にあんまり負担なんてかけたくないんだ」
出木杉は、ドラえもんの背後から現れた。
「君は、あくまでも君のために生きて欲しい。それが、僕らみんなの願いなんだ」
ああ、僕は。
やっぱり、弱いな。
だって、ここまで強く言われた約束を・・・・・・守れそうにないんだもの。
「のび太くん。あの時言えなかったから、今言うね。さようなら」
ドラえもんは、涙でぐしゃぐしゃになった顔をゆがませながら言った。
「僕らは忘れないから。のび太君のこと、忘れないから。だから、キミはどうか・・・・・・」
「ドラえもん・・・・・・」
その手を握ろうとして、手を伸ばした。
なのに・・・・・・その手は届かなかった。
気がついたとき、のび太はかみなりさんの家の今に仰向けになっていた。
「やっと起きたか、のび太。いきなり居眠りなんか始めるからびっくりしたぞ」
のび太の顔を、ネコ耳を生やした少女が覗き込んでいた。
「かみなりさん……? 」
「ま、もう夜だし、そのまま眠ってもいいぞ。風呂なら沸いているから、入ってもいいぞ」
かみなりさんはそう言って、のび太に風呂のある方向を指で示した。
「かみなりさん・・・…その格好」
のび太は思わず噴出した。かみなりさんは赤面する。
「な、なんだよのび太!! 仕方ないだろ、あの時変身したら下着がこれに変わっていて、
しかもこれ、脱ごうとしても脱げないんだから」
湿ったスクール水着姿のかみなりさんは、胸元を手で隠してのび太を睨みつけた。
「それにしても、かみなりさんがそんなかわいい女の子になるなんてびっくりしたよ。
胸もお尻もおっきいし、モデルかアイドルにでもなれるんじゃない? 」
のび太が素直な感想を口にすると、かみなりさんは耳の毛と尻尾を逆立てて、
「冗談ではない!! 男であるワシが、男のお前にそんなことを言われても嬉しくもなんとも無いわ!!
くだらんことを言ってる暇があったら、さっさと風呂に入って来い!! 」
そういい遺して、尻尾を振りながら部屋を出て行ってしまった。
「ドラえもん・・・・・・」
のび太は、さっきまで見ていた夢を思い出していた。
そう、あれは夢だったんだろう。それ以外のものではありえない。
「僕、みんなの言うとおり、自分のために生きていくよ。必ず、この
ゲームを生き延びてみせる。
でも、忘れないから。ドラえもんやみんなのこと、絶対忘れないから。そのくらいのことは、
許してくれないかな? 」
それが、弱虫ののび太の精一杯の強さだった。
「それにしても、かみなりさんったらあんなに怒っちゃって、なんだか可愛いなあ」
かみなりさんちの風呂に入りながら、のび太はひとりごちた。
「本当に顔も可愛いし、あの濡れた水着姿、なんだかセクシーだったなあ。あれがかみなりさんだなんて、
イマイチピンと来ないなあ」
目を閉じると、顔を赤らめて身をよじらせるかみなりさんの姿がフラッシュバックした。
あんなに可愛い女の子、しずかちゃん以来だ。
しずかちゃんとはもう結婚できないけれど、かみなりさんとは結婚できるのかな?
そしてのび太は、恐ろしいことに気がついた。
かみなりさんのことを思うたびに、胸が高鳴っている。
こんな気持ちは、しずかちゃんの時以来だ。
「この気持ちは、まさか・・・・・・恋!? 」
【東京都かみなりさんち 3日目 1時】
【かみなりさん@ドラえもん】
[状態]:魔法少女リリカルかみなり化。
[装備]:レイジングハート、ネコミミとしっぽ、スクール水着
(ミニスカメイド服は洗濯中)
[道具]:支給品一式
[思考]
1:のび太を「仕方がないから」守ってやる
基本方針:この馬鹿げたゲームを終わらせ、
織田信長に説教をする
【
野比のび太@ドラえもん】
[状態]:自分の気持ちに動揺
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考]
1:かみなりさん、好きだ・・・・・・
2:かみなりさんをうまく言いくるめて、あんなことやこんなことをさせる
3:生き残る
最終更新:2007年01月12日 12:59