星空の下、奇妙な物体が飛行していた。
例えるなら機械のアンモナイトと言うべきだろうか。
この世界のいかなる飛行物とは一線を画したそれは優雅に真夜中の空を舞っていた。
「もう少し休んでいたほうが良かったんじゃないか?」
飛行物体の操縦席に座る少女が言った。
彼女の名はアーエル。神の乗機『シムーン』を駆る巫女『シヴュラ』である。
もっとも今彼女が搭乗しているのは、シムーンを模して造られた『シミレ・シムーン』であるのだが。
「ううん、ボクは大丈夫」
アーエルの問いに後部座席の少女が答えた。
彼女は芳乃さくら。アイシアに撃墜された後、今まで存在を忘れられていたが彼女はアーエルに助けられ、以後行動を共にしていたのである。
「あの機械人形、あんなものあたしは初めて見た。あの動き、攻撃力。シムーンじゃないと到底太刀打ちできない」
「アーエル、これはシムーンじゃないの?」
「うん、これはシミレ・シムーンなんだ。いわゆるシムーンの模造品。シムーンとは機動力も攻撃力も全然劣る」
「へえ~そうなんだ」
アーエル曰く、アーエルは地球とは違う異世界に住んでいたらしい。
気がつくとこの日本で殺し合いに参加させられたと言うのである。
「こんな事のためにあたしは軍人になったんじゃない」
シミレは巨大な山のシルエット――富士山をバックに西に向かって飛んでいた。
「さくら、今どの辺なの?」
「富士山があそこだから……静岡あたりかなあ」
「で、こんな馬鹿げた殺し合いをさせる連中はどこにいるのさ」
「東京だけど、今とは逆方向だよ」
「うそ!何でそれを早く言わないんだ」
「いきなり乗り込むなんて無茶だよ!」
「無茶かどうかやってみなくちゃわかんな――待ってさくら!」
「どうしたの?」
アーエルは前方にこちらに向かってくる機影を発見した。
無論シムーンではない、そのシルエットは人の形をしていた。
トリコロールカラーのボディ。そしてその身体から伸びる真紅の翼。
「あ、あれは――」
見間違うはずがない、それはさくらを撃墜したアイシアのデスティニーガンダムだった。
「もうっ何だったんだろうあの変なシェフ!」
アイシアは狂気のシェフ、至郎田正影を富士山の火口に投げ捨てたその帰りだった。
夜で視界が悪いがそこは最新型のデスティニーガンダム、レーダー等のサポートで夜間飛行は苦にはならない。
「早く帰らないとジャックが心配しちゃうよ」
アイシアはスピード上げ横須賀に戻ろうとしたその時だった。
「あれ……レーダーに反応が、何だろうこれ」
前方に移る機影、識別信号を発していない飛行物体。
「こっちに……近づいてくる!?」
カタツムリともアンモナイトともつかない奇妙な物体はそのままアイシアに近づき、その周りを回っていた。
「あれってさくらを墜としたヤツじゃないか!」
「アイシアだ……どうしてあそこに……お願いアーエル、あの子と話がしたい。近づけないかな」
「ああ、やってみる!」
アイシアと話したところでどうなるのかわからない、が話さずにはいられない。
二人を乗せたシミレ・シムーンは全速力でデスティニーガンダムに接近していった。
「何なのこれ!?」
周囲を飛び回っていたシミレは一転、デスティニーに横付けするように隣を飛んでいた。
シミレは機体から通信索を打ち出し、デスティニーにそれを固定した。
『アイシア!聞こえる。ボクだよ、さくらだよ!』
『あたしはアーエル』
「その声は……さくら……そんなっ…生きていたなんて」
あの時確かに自分のアロンダイトはフリーダムのコックピットを貫いた。
機体は空中で爆発し、さくらは確実に死んだと思っていた。
しかしコックピットに響く声は間違いなく芳乃さくら本人の声だった。
「まさか生きていたなんて思わなかったです。で、わたしに何かご用ですか?まあどうせバカの一つ覚えみたいに桜の木の復活を止めろと言うつもりなんでしょ」
『お願い!話を聞いて』
「イ・ヤ・で・す。あなたの話なんて聞くつもりなんかありません」
アイシアは操縦桿を握り締める手に力を込める。
そして背中に装備された大型ビームライフルを抜く。
『アイシア!?』
「最後通告ですさくら、わたしの目の前から消えてください。あなたは一度拾った命をまた捨てるつもりですか?」
感情の無い冷たい声でシミレに銃口を向ける。照準は寸分の狂いも無くシミレのコックピットに向けられていた。
『さくら、退くよ』
『アーエルどうして!』
『あの子は…本気であたし達を撃つつもりだ』
『っ……』
『聞こえるかアイシア!あたし達は退く!だから撃つんじゃない』
「……わかりました。アーエル、あなたに免じて撃ちません。だからさっさと消えて下さい」
『わかった』
シミレは通信索を外しアイシアとは反対方向に去って行った。
「とんだ時間の無駄だよ。早く基地に戻ろう」
デスティニーの姿がほとんど見えなくなった頃、アーエルはさくらに尋ねた。
「あいつを追うか?今ならまだ追いつくけど」
「ううん追わなくていい、それよりも東京に向かおう……」
「ああ」
アーエルは機体を反転させ東京へと進路を切った。
【芳乃さくら@D.C.S.S.】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
1:アーエルと同行
2:アイシアの説得
【アーエル@シムーン】
[状態]:健康
[装備]:シミレ・シムーン
[道具]:支給品一式
[思考]
1:主催者打倒のため東京へ
2:さくらとアイシアの因縁が気になる
【アイシア@D.C.S.S.】
[状態]:健康
[装備]:デスティニーガンダム
[道具]:支給品一式、うまい棒コーンポタージュ味×10
[思考]
1:横須賀へ戻る
2:桜の木の復活
最終更新:2007年01月12日 13:02