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阿鼻叫喚の騒ぎとなった羽田空港。
下の階の絶叫を聞きながら、レストラン街を走る4つの影があった。
白銀の髪から絶えず血を流し続ける上白沢慧音、ニコロワでは主催者側だったゆとりが二人、
そしてそのゆとりの運ぶ車椅子の上には伊吹萃香だ。

4人はロワが開催して間もなく合流し、対主催を決意したまでは良かった。
しかしゴジラの襲撃により慧音を庇った萃香が両足を欠損。
以降移動が困難となる。

そして、羽田空港にて同じく打倒主催を志す者が多数集結したと言う情報を経て、
空港メンバーの何人かは外部の探索し、慧音は空港の集団の守護についた。
萃香はあれからずっと気を失い続け、
しかし692の襲撃までは何事も無く過ごしていたのだが……。

「っ…………」
「お、おい大丈夫かよ!」

めまいを起こしたかのように、慧音は頭を押さえて膝をついてしまう。
それにゆとりの1人が肩を貸した。

「あ、ああ……大丈夫だ」
「そんな訳ないっすよ、あんなモンで殴られて……」

692がいかにチートとは言え、正面からぶつかれば慧音が負けるはずは無い。
というか、冷気を操る能力ではチルノにも劣る程度だ。
怪力にしたって中級妖怪ほどでは無い。
しかし692は馬鹿では無い。

だが偶然か、それとも集団で一番力があるのを見抜いたのか、
何かの気配を感じ取り駅のプラットホームまで降りた所で背後から一撃を食らった。
その後戦闘となったが、2トンのトゲ付きバットで負傷した慧音は苦戦を強いられた。
騒ぎを駆けつけた他メンバーが来てくれなければあのまま倒されてしまったかもしれない。

「お前達はここに隠れていろ……、私はアイツの相手を」
「ちょwwwww!! その怪我じゃ無理ですよ」
「もう逃げましょうよ、あんなの勝てませんって」
「いや、ウカツに動いたら却って見つかる。お前達はここに居るんだ。心配ない……」
「でも、俺じゃこの幼女を守れませんって」
「おおお、俺も一緒に行きます!」

そんな感慨に浸っている暇は無いが、慧音は嬉しく思った。
ゆとりの1人は、出会った当初は自分の保身だけしか考えておらず、
もう1人は『おっぱいは正義』などとしつこくほざいて、萃香とトラブルが絶えなかった。
おそらく、あのゴジラの一軒が二人を大きく変えたのかもしれない。

「心配無い、すぐ戻る。お前達二人はここでその鬼を守ってやってくれ」
「「けーね」」

肉が一部抉れている足に力を入れて、もう一度立ち上がる。
ここで死ぬつもりは無い。
ここに来ている悪友にも、伝えたい事はある。

「いいか、お前た──────」
「安心しろ、二度とどこへも行けない」

側頭部が捕まれる感覚。
ごきり。
言葉は途中から、短い呻き声になった。
気が付くと慧音の目の前には、機械のような淀んだ眼が

そして何も見えなくなった。


「ひ、ひ、ひ」
「このぉあああああああああああ!!」

叫びを上げながらゆとりの一人が692に、自分の支給品である特殊警棒を振りかぶる。

「は」

しかし、背中まで振り上げられた警棒は、そこで止まった。
何時の間に手に入れたのか。
ぐじゅり
692に腕に装着されていた鉄製の爪は、ゆとりの顔面の皮膚から進入し途中にあった
眼球、脳髄を全て破壊、後頭部を付き抜け、腕をそのまま『縫い付けた』。

人は突然死ぬと肺に溜め込んでいた空気が抜けて、それが声帯をくすぐって奇怪な声を鳴らす。
慧音のそれはアヒルのように、ゆとりのそれはカエルのように。
顔面からどちゃりと床に崩れてもそれは続いた。

「っっっっ!!」

我に返ったもう1人のゆとりが取った行動は、伊吹萃香の乗る車椅子に手を伸ばした事だ。
しかし、脇腹に強い衝撃。
脳が苦痛と吐き気で満たされ、理性が侵食され、床と天井が分からなくなった。
彼の身体はゆかで一回跳ねて、そのままレストランのメニューの展示ガラスへと突っ込んだ。
再び床に落ちた時、彼の後頭部や背中に刺さっていたガラスが更に食い込んだ。

「っ! っ!! ぅんぅっ!!」
「始めまして、オレ692」
「うう…………」
「生年月日でも今月のラッキーナンバーでも無い、それが名前だ」

そう言って、692はゆとりの足を思いっきり踏みつける。
その一撃で、ゆとりの骨は砕けてしまった。
絶叫を上げて、その場から逃げ出そうとするが、そのままグリグリと踏みつけられてそれも叶わない。

「なあ、HALって奴を知ってるかあ? ずいぶ~ん、世話になったらしいなあ」

ゆとりの耳には入っても、答える事はできない。

「オレの昔の悪友みたいなもんさ」

もう一度、今度は反対の足を踏みつけられた。
両足を砕かれたゆとりは、もう動く事もできない。

「はっ、はっ、はっ、はっ、はひゅ」

足に連動して肺まで瞑れてしまったのでは無いだろうか?
息を吸うのに全身のエネルギーを使っている。
それでも、692の音割れしているかのような声はよく耳に入った。

(HALって…………まさか)
「なぁ、おかしいとおもわねぇ?」
(な、何がだよ……)
「一応アイツ、何だかんだでロワに巻き込まれた被害者だぜえ? 当然同情できる立場だよなあ?
そして、オレの知る限りでは『胸がでけえから』だの、『男とヤリたい』だの、そんなクズい理由で
人殺ししまくってさあ、それで幸せな幻覚を見ながら死んだり、まるで罪が帳消しになったかみてえに
仲間面しまくるタコがいたりよぉ……。
反対に、騎士道精神溢れた相撲取りは化け物だの何だの言われる始末……」

(…………)
「世の中ってのは不条理すぎるんだよ? 分かる? だったらそんな不条理はぶっ壊さなきゃいけねえよな?
なぁにが『少数派による多数派の打開』だ。ぬかしやがる。マーダーと対主催、どっちが多いか考えろってんだ。
今時クサいお言葉を使うならば、1人の仲間に恵まれなかった少女をニコレンジャーとかいう多数派のクソの集団リンチ……
陳腐なお涙頂戴でごまかしってっがよぉ、それがニコロワのクライマックス、と」
合間合間にキャハハとまるではしゃぐ子供のように笑いながら、692は続ける。
が、その表情からは明らかに笑みが無い。
(…………)
「なにが『私はあなたとは違う』だ、どこぞの首相かっつの。なにが『もう、誰にもあなたは許される存在じゃなくなったの』だ。
テメーらはたまたま周りにお人好しが大量に居たから、そいつらに傷を舐めてもらえただけだろ。
そういう奴に限って『死んだみんなの分も苦しんで生きていくのが罪滅しです』とかナメた事ほざくんだぜえ?」
(…………)
「分かったか、それがお前の罪だ、邪悪野郎……と言った所だ。
そんなのが正義扱いされてる世の中ってのはムカつくんだよ。
分かるよなぁ?」
「そ、そんな事で……」

こんな奴のために、みんな…みんな…!

「は、オレもよぉ、粗大ゴミみてーなのから粗大ゴミとして生まれたからよぉ……HALの気持ちがよく分かるんだ」
「お前……」
「あん?」

もう意識も遠くなって来たが、692に対してこれだけでは言っておいてやる。
ゆとりにとっても、692に比べたらHALの方が数段はマシだった。

「お前は間違ってる、HALに比べりゃ────」
「書き手エクスクラメーション」

その一言を最後に、692から発射された光弾は、ゆとりの上半身を骨も内臓も血も、紅い花火にした。

「テメーの発言を許した覚えは無い」

お気に入りのパンクシャツが汚れてしまったのと、言いたい事の半分も言えなかったのは失敗だった。
692は多少不機嫌になった。

「オレが間違ってる? は、何を言ってるんだ……、オレはお前の考えに賛成してるんだぜ?」

誰も聞いてはいない空間で、足だけになったゆとりに言葉を向ける。

「ゴミはゴミ箱に……だったよな?」

692によって投げられたゆとりの死体は、綺麗な放物線を描いて、備え付けのゴミ箱へと収まった。
少しいい気分になった。

どうせ自分なんて、書き手が現実世界でムシャクシャした時に鬱憤晴らしのための操り人形なのだ。
だったら精々楽しませてもらうとする。
6/辺りが絡む本筋に関わらなければ、結構長生きはできるかもしれない。
まぁ、できるだけ鈴仙の操り人形でありたいが。

二日目 6時50分/新惑星 羽田空港】
【692@現実】
【状態】健康
【装備】鉄の爪
【道具】支給品一式 エスカリボルグ
【思考】
1:言っとくが、オレはHAL信者じゃねえ。飽く迄も鈴仙一筋だ!
2:そろそろ京急蒲田駅に戻る

【伊吹萃香@東方prject】
【状態】両足欠損 気絶
【装備】無し
【道具】無し
【思考】
1:………………
※一日目から、慧音とゆとり二人と同行していたみたいです

【ゆとり×2@現実 死亡】
【上白沢慧音@東方project 死亡】
【羽田空港の対主催グループ 壊滅】
※全滅したかは、それとも上記3人意外は生き延びたかは不明
最終更新:2009年09月28日 00:18