アットウィキロゴ
不思議な気持ちだった。
人を殺したのなんて、言うまでもなく初めての経験なのに。
恐怖も、後悔も、沸いてこなかった。ただあるのは、
「ああ、これで朋也くんを殺すかもしれない危ない人がまた減った。よかったなあ」
という安堵だった。
岡崎直幸は、四人分の人間の頭部の入ったバッグを片手に黄昏の街を行く。
まだまだ足りない。息子夫婦を確実に守るには、もっともっと殺さないと。
「おや・・・・・・誰かいるねえ」
ゴミが回収されないままに残っているゴミステーションの中に、ごそごそと動く人影があった。
「殺せるような人だったらいいんだけど・・・・・・」
直幸は、用心しながらゴミステーションに近づいた。その人影は、随分と小柄で、どうやら少女のようだ。
これなら殺せそうかも。そう思い、直幸はバッグの中に手を入れて武器を取ろうとして、背後の気配に気がついた。
「うぁっ・・・・・・!! 」
振り返ると、そこには見たこともない巨大な生物が立っていた。
茶色い毛むくじゃらな体、プリンのような形をした頭の上に黄色い防止を載せている。
妖怪か何かだろうか? なぜこんな生き物がここにいるのか?
恐怖のあまり身動きの取れない直幸の肩に、その生き物はおもむろに手を置いた。
あわてて飛びのいた直幸の耳に、少女の声が届いた。
「あれ、ゴン太さん、その人は? 」
ゴミステーションの中では、ゴミにまみれた背の低い少女がゴミから頭を出していた。


「へえ、彼はゴン太くんっていうんだ・・・・・・」
「はい。全然危ない子じゃないのです。直幸さん、とっても早とちりです」
「ああ、すまないねえ・・・・・・」
なんて一応納得したふりをしているが、とても信用はできない。
ゴン太とかいうやつはさっきからずっとフガフガ言ってる(鳴いてる? )だけだし、まあおとなしそうではあるが
素性は知れない。
しかし、それ以上に困った問題が起きていた。
(まいったなあ。これじゃあ殺せないよ)
今この子を殺すとすれば、このゴン太とかいう妖怪まで殺さないといけなくなるが流石の直幸でもこんな巨大生物に
勝てる自信は無かった。
おまけに、ゴミ捨て場から出てきたこの少女から
「せっかくですから、お茶でも飲んでいけばいいです。風子が案内します」
なんて言われて、逃げ出す間もなく連行されている途中である。後ろからは両手にゴミを抱えたゴン太がぴったりとついてくるし、
どうしようもない状況だった。
(やれやれ。なんとかやり過ごすしかないなあ)
風子と言うらしい少女は、一軒の大きなビルの中に入っていった。直幸には今まで縁が無かったような、巨大な建物だ。
「そういえば、君の名前は風子でいいのかい? 」
「はい。伊吹風子です」
「風子ちゃん、君がさっきから手に持っているそれって・・・・・・」
直幸は、彼女が手にしている木でできた星のようなものを指差す。
「これですか? これはですね、大好きな・・・・・・」
そのセリフの途中で、風子は顔をぽわーんとさせたまま固まってしまった。
三十秒以上もそのポーズのままなので、困った直幸が肩をゆすっても一向に反応しない。
どうやら彼女、軽くトリップしてしまったらしい。
「・・・・・・というわけです。わかりましたか? 」
「全然わからん」
ようやく戻ってきた風子に、岡崎直幸、人生初のツッコミだった。
「それはお星様なのかな? 」
「星じゃありません。ヒトデです」
「ひと・・・・・・」
直幸はますます顔をしかめる。どうもこの子の感性にはついていけない。
「なんでそんなものを持ってるんだい? 」
「これは風子が作ったものです。だから、直幸さんにはあげられません」
「いや、別に、ヒトデなんてそんなにかわいくもないし・・・・・・」
「そんなことありません。あなたみたいなしょぼくれたおっさんには、ヒトデのかわいさはわからないかもしれませんが」
「いや、でも・・・・・・」
「ヒトデの良さがわからないなんて、そんなんではきっと家では息子夫婦にいびられて肩身の狭い思いをしているに違いないのです」
なんか今のセリフはものすごく胸に刺さったが、風子はヒトデの良さを熱弁しているうちにまたしてもトリップしてしまったので
直幸には反論することも歩くように促すことも出来なかった。
そんな直幸と風子の背を、両手一杯にゴミを持ったゴン太がフガフガいいながら蹴飛ばした。

あのヒトデを、以前にどこかで見たことがあると直幸が思い出したのはそれからしばらく後だった。
「♪一万年と二千年前から作ってる~♪」
風子とゴン太に案内されたのはそのビルの屋上だった。
もうすっかり暗くなったそこでは、眼鏡をかけた男が歌いながらガラクタをいじっていた。
「やあ風子ちゃんにゴン太くん、戻ってきたのかい? あれ、そっちの人は、もしかして仲間かな? 」
直幸たちに気がつくと、黒い眼鏡の男は歌と作業を中断して振り返った。
「はい。ぜひとも私達の作戦に協力したいと言っていたのでつれてきました」
そんなこと言ってないんですけど、などと突っ込む気力すら直幸にはもう無かった。
それにしても、彼らは一体何をしているのだろう。眼鏡の男の前には、ガラクタを張り合わせて作ったような、小学生の夏休みの
工作をでっかくしたようなものがあった。
「わくわくさん、下のゴミ捨て場にはまだまだ使えそうな材料がありました。この風子が確かな眼力で選んだので心配しないで下さい」
風子がそういうと、ゴン太は抱えていたガラクタを屋上のコンクリートの上に置いた。
「いやあありがとう二人とも、これでますますいいものを作れそうだよ」
わくわくさんとかいうらしいその男は、それらのガラクタを満足そうに見下ろした。
「あの・・・・・・あなたは一体、何をするつもりなのです? 」
恐る恐る直幸は訊ねた。

「ああ、これはですね、このバトルロワイアルの主催者を倒せるような武器を工作しているんですね」

その言葉を、直幸はすぐには信じなかった。
主催者を倒す? 馬鹿げている、一体どうやって?
「これはですね、ここから半径三キロ以内を射程距離に出来る投石器です。特別な細工をしたので、破壊力は通常の投石器の
三倍以上あるんですね~。もちろんこれだけでは不十分なんで、もっと他の工作も作りますね。偵察用のロボットも欲しいですね~」
「そんなものが、本当に作れるんですか? 」
「作ります。私は、わくわくさんですからね~」
眼鏡の男は、さわやかに笑ってそう答えた。
「私の相棒も、今頃どこかで主催者妥当のための工作を不器用ながらも作っているはずなんですね~。私は彼を探したい気持ちも
あるんですけど、それよりも今は工作をしたいんですね~、それがみんなの希望になるはずですからね~」
そこには、自分と仲間への限りない信頼があって、直幸にはそれが不愉快だった。
しかし、
(主催者を倒す? そんなことが・・・・・・そんなことが、できるんなら)
もしそれが可能だとしたら、もちろん朋也と渚は助かる。そして、自分も、これ以上人殺しをしなくてもよくなる。
それはあまりにも胡散臭い甘言。そんな可能性に賭けるよりも、片っ端から参加者を殺したほうが効率はいい。
けれど、直幸は、その甘言を切り捨てることは出来なかった。
(もし、主催者を倒せれば、もう殺し合いなんて起きない。みんな助かる。そしていつかは、また昔みたいに、朋也くんと・・・・・・)
自分が人殺しを続けていると知れば、あの潔癖な息子のことだ、自分のことを今以上に忌み嫌う。
でも、自分が主催者を倒したのだと知ったら?
また、昔のような親子に戻れるんじゃないのだろうか?
「じゃあゴン太くん、ちょっと手伝ってくれませんか、どうしても一人では出来ない部分があるんで」
ゴン太は言われた通りに、わくわくさんに手を貸す。
「いやあ、君と遭えて本当にラッキーでしたよ。ずっと眠っていて退屈だったでしょ? 今は僕と思う存分工作しましょう! 」
二人の手つきは、直幸の素人目にもかなり熟練されたものだった。
『工作』という技能を、極限まで磨いた者達がたどり着ける領域に彼らはいる。
この人達と一緒なら、確かに・・・・・・できるかもしれない。
「それじゃあ、風子はもうちょっと材料を探してきます」
「でも風子ちゃん、一人じゃ危ないよ? 」
わくわくさんの制止を聞かずに走り出した風子に、直幸は背中から声をかけた。
「私にも、手伝わせてくれないかな? 」

「♪カモンわっくわっく、カモンわっくわっく、ゴロリ~♪
ん? どうしたんだいゴン太くん? 何か気になるのかな? 」
再び歌いながら工作を始めたわくわくさんは、ふとゴン太の様子がおかしいことに気がついた。
長き眠りから覚めた、このわくわくさんの先輩格にあたる妖精は、風子と直幸が消えたドアに目を向けて口を開いた。
「あの男、複数人の血のにおいがした。まあまさかとは思うが・・・・・・戻ってきたら、バッグの中くらいは確認したほうがいいだろう」


主催者を倒す。
それは、直幸が考えもつかなかったことだった。そんなこと、自分たちに出来るものかと思っていた。
しかし、わくわくさんに、ゴン太に、風子。この人たちと一緒なら、あるいは。
だが、彼らと行動を共にするなら今まで自分がしたことを知られてはいけない。
せめて、今バッグの中に入っている生首は今のうちにこっそりと捨てておくべきだろう。風子の目の無いところで・・・・・・
「直幸さん、歩くの遅いですっ。風子は待つのは嫌いです」
「ああ、ごめんよ」
そんな考えを抱きながら、直幸がそのビルから出た丁度その時だった。あたり一体のスピーカーが、いっせいに声を発した。

第三回の放送だった。

流石の風子も、言葉が無いのだろう、黙ってうつむいている。
直幸は呆然と、すでに暗くなっている空を見上げた。
122名。それだけの人が、前回の放送があってから今までのわずかな時間に死んでしまったのだ。
もちろん、その中には直幸が殺した四人だっている。胸は痛んだ。
しかし、それ以上に直幸は逡巡した。
これだけの人が死んでいるのに、本当に主催者を倒すことなどできるのか?
そう思うと、一度は希望だと思ったわくわくさんたちの行為にも疑問が浮かんでくる。
そう上手くことは運ぶのだろうか? 本当に、この凄惨なゲームを終わらせることなど可能なのか。
「直幸さん」
自分の心が見透かされたのかと思って、直幸ははっとして風子の顔を見た。
「前に誰かいます」
風子の目は直幸の顔ではなく、夕闇の奥を見ていた。直幸も目を凝らす。すると、そこに小さな動物のシルエットが浮かんだ。
「あれは・・・・・・ラッコ? 」
「ラッコはヒトデを食べます。風子の敵です」
「いや、ラッコが食べるのは貝とかウニだと思うよ・・・・・・」
なんにしても、相手が小動物らしいと思って警戒を緩めた直幸と風子の目に、そのラッコが握っている槍の先端が光ったのが見えた。
そして、そのラッコは宝具を展開した。

「刺し穿つ(ゲイ)――――死棘の槍(ボルク)!! 」


三日目 東京都某放送局 18時】
【岡崎直幸@CLANNAD】
[状態]:健康(やや被爆の可能性も)
[装備]:千枚通し
    鎌
    その他不明
[道具]:支給品一式
[思考]
1:目の前の敵に対処
2:わくわくさんたちに協力するかどうか、まだ心は揺れている
基本方針:息子夫婦を守る

【伊吹風子@CLANNAD】
[状態]:健康
[装備]:ヒトデ
[道具]:支給品一式
[思考]
1:目の前の敵に対処
2: わくわくさんに協力する

【わくわくさん@つくってあそぼ】
[状態]:歌を歌っている
[装備]:不明
[道具]:支給品一式
[思考]
1:カメラ止めろ
2:自分の工作の力で、主催者を倒す
3:出来ればゴロリと会いたい

【ゴン太@できるかな】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:支給品一式
[思考]
1:わくわくさんに協力
2:直幸に若干の不信感
3:できればのっぽさんに会いたい

【ぼのぼの@ぼのぼの】
[状態]:ゲイボルクを展開
[装備]:スタンガン、ゲイボルク@Fate/stay night(永沢の支給品)
[道具]:支給品一式
[思考]
1:誰かの食料を奪う。場合によっては殺す。



最終更新:2007年01月17日 15:21