アドルフの全身から夥しい血が流れる。
それは、無惨にも死んでいった参加者の怒り。
――否、この
ゲームに殺された、人々の怒り。
全てがアドルフの身体に叩き込まれたのだ。
紅い噴出。
アドルフもただの人だった証。
「終わった……のか?」
一瞬、ドロッチェは安堵する。
「そんな事で終われば苦労はしないと思うがな。忘れたのか? 主催者は何度も代わるんだ。」
M2の言葉にドロッチェはハッと顔を上げる。
そうだ。
毎回毎回、放送の度に主催者は代わっていた。
ならばあと少しでも時間が経てば、また新たな主催者が現れるのだろうか。
「待ってよ! もしもボックスは!?」
ハルカはその電話ボックスを指差しながら、全員の注目をボックスに回す。
「…肝心のノビタがあれでは使いようがないだろうな」
ドロッチェの向いた鼻の先は母の亡きがらに佇むのび太の姿。
もう母は甦らない。
ピクリとも動かないその腕をただ、のび太は握っていた。
「ママ……ママ……」
ハルカはのび太に近づこうとしたが、ドロッチェに腕を出され、止められた。
「…誰だって大切な人を失っているさ。ほっといてやれ。」
ハルカは反論する事が出来なかった。
見ていたからだ。あの姿を。
スピンを惨たらしく殺され、憤慨するドロッチェを――
「そもそもこっちの世界自体が変わる訳では無い。ボックスに願いを伝えたあいつだけが元の世界に帰れるんだ。」
「そんな!」
M2は分かっていた。
一応
ドラえもんから聞いた話ではそうだったからだ。
この世界はのび太の世界とは違う。
のび太の世界が現実世界。
そこに別の世界の住人であるハルカ達が、存在してはいけないのだ。
「……ノビタだけでも現実世界に帰した方が良い。」
そう。
自分達の運命は既に決まっている。
だからこそまだ助かるのび太だけは助けたい。
「ノビタ、もしもボックスを使ってお前だけでも帰えるんだ。」
「え……」
のび太は虚ろにドロッチェを見つめる。
「お前の世界ではこんな卑劣なゲームなんて無い。だから、お母さんだって生きている筈だ。」
のび太はハッとするとボックスの中へ走り込み、受話器を取る。
のび太がボックスの中で叫ぶのが分かる。
「元の世界へ戻して」と言ったのだろう。
それが正しいのだ。
間違ってなどいない。
ただ自分達が巻き込まれたに過ぎないのだ。
もしもボックスは空気へ溶けていく。
「……これで、いい筈だよな、スピン……」
ドロッチェは空を見上げ、今は亡きスピンの事を頭に浮かべる。
「…見て!」
ロザンナが突然ドロッチェとは反対側の空を見ながら、呼びかける。
そこには、空を翔けるヘリコプターの姿。
「もう首輪は外れているし、……後はあのヘリコプターが降りてくるだけか。」
希望の光は突然、視界に入った。
極限状態からの脱出。
それは運命だったのか。
もしもボックスの恩恵だったのか。
――今となってはもはや分からなかった。
2006年 12月12日 23時25分。
BR法により日本国陥落。
A国、調査の途中生存者を数名発見、これを救出。
それ以外は全国民来日客全員死亡。
史上最悪の悲劇となる。
なお、生存者は以下の通り。
ロザンナ
キャプリス・ウィッシャー
ジャック・バウアー
ハルカ・ヘップバーン
上条当麻
アナゴ
アレキサンドラ・ロイヴァス
ミュウツー・ヴィ・ブリタニア
ドロッチェ
神鳴
阿部高和
赤木しげる
ヒビノ・ミライ
アイハラ・リュウ
サコミズ・シンジ
クゼ・テッペイ
リヴァル・カミルモンド
マリア・トレイター
ベア
範馬刃牙
ドネッド・ラディウユ
ナナリー・ヴィ・ブリタニア
剛田武
阿久津真矢
ボストン
シマリス
アシュリー
フグ田タラオ
白鳥隆士
支倉志乃
ジョーンズ
スティーブン
ガッ
前原圭一
大石蔵人
エドワード・ジェラルダイン
ガチャピン
マリオ・マリオ
ホリエモン
東光太郎
レナ・ランフォード
ガルダンディー
南光太郎
エゼル・バルビエ
先生
イリア・シルベストリ
野比玉子
あの極限状態の中で、様々な感情があっただろう。
希望も見えない闇の世界で、悲しみも怒りも関係なく人々が殺されてきた。
私は忘れない。
あの恐怖を。
あの狂気を。
そしてあの勇気を。
2056年12月12日
日本島にて
BR法の犠牲者へ
…敬礼。
著ハルカ・ヘップバーン
【混沌のテラ】より
のび太は元の世界へと帰っていた。
友人と、母親との再会。
あの6日間は少年に何を与えたのか。
いや、のび太は恐らく変わらないだろう。
あの記憶はドラえもんによって消されたのだから。
のび太があの狂気の記憶に耐えられる筈が無い、とその現場に居たドラえもんが判断した故に。
そしてまた、いつもの退屈で平穏な日々が始まった――
「何だろう、このノート……」
ある日、のび太は校庭に落ちていたノートを拾いあげた。
その表紙には、
「TERA CHAOS」と小さく刻まれていた。
To Be contuned
and more...
最終更新:2007年02月16日 10:10