【Side:堕ちて来た男】
「うぅ…レモン……。
はっ、ここは……どこだ?」
深夜、神奈川県のとある繁華街で一人の青年が目を覚ました。
少しタレた眼に赤いソバージュがかかった髪。見る人が見たらこう言うだろう、『赤ワカメ』と。
「と言うより、俺は……『誰』なんだ?
俺の名前は……そうだ、アクセル。アクセル・アルマーだ。
ふぅ、名前だけは辛うじて覚えていたんだな、これが」
自分の名前だけは辛うじて覚えていた青年。
どうやら記憶喪失というものらしい。
「こいつはデイバックか、中身は食料にコンパス、地図、筆記用具……まるでサバイバル訓練だな。
んっ、サバイバル訓練? 俺は訓練か何かを受けていたのか?」
頭部に疑問符を浮かべながら、デイバックを漁るアクセル。
「後は可変式のトンファーと、おっ、ウナギパイがあるじゃねえか! ラッキー、頂いておくぜ!」
浜松名物『ウナギパイ』を見た瞬間、何故かアクセルのテンションが急激に上がった。
念のために言っておくが、これはラッキーでも何でもなく彼に支給されたランダム支給品である。
しかし、そんなことはお構いなしにアクセルはデイバックから一枚のウナギパイを取り出し、袋を開け口いっぱいに頬張る。
……腹が減っては戦は出来ぬという訳では無いが気楽なものである。
「ふぅ食った食った……そこにいるのは誰だ!」
不意にアクセルが物陰に向かって叫び、手から気弾を放つ。
俗に言う、『青龍鱗』という技である。しかし……。
(……んっ、俺は何でこんなことができるんだ? ま、いっか!)
放った当人は頭に疑問符を浮かべていた。
そして、気弾が当たった物蔭から、金属同士がぶつかったような音が響いた。
どうやら防がれたようである。その数十後……
「流石でございましょうことですわね、アクセル『隊長』」
「アクセル……隊長……? お前は誰だ?」
「………………………………へ?」
物陰から飛び出した女性から間の抜けた声が夜の繁華街に響いた。
【Side:元スパイの女】
(データ算出……該当データ無し、か。
くっ、これは随分と厄介なことに巻き込まれてしまったようだな)
アクセルが目を覚ます、数分前の事である。同じ繁華街にて、一人の女性が厳しい顔をしている。
緑かかった長めの銀髪に緑色のスーツ、そして、何よりスタイルが抜群の女性だ。
(……憎み合い奪い合う世界か。
そんな思想は間違っている。ならば私がすべきことは……)
とりあえず、支給されたデイバックを漁る。
尤も彼女としては殺し合いの主催者から渡されたものを使うのは若干、躊躇するのだが。
「一般的なサバイバル用具一式と武器になりそうなのは西洋剣が一本か……」
『Guten Tag!!』
「……んっ!?」
どこからかドイツ語が聞こえた。
周囲を確認するが、誰一人いないようにも見える。
そして彼女は気付いた。もし、声がするのならば……。
「……猫も喋るこのご時世、剣が喋った程度で驚く私ではないでござんすことですわ」
『日本語でおK?』
「構わん、出来れば気にするな……」
『Jawoh!』
変な日本語を話す彼女の名は『ラミア・ラヴレス』。地球連邦軍特殊戦技救導隊のチーフを務めている軍人である。
ドイツ語で話す剣の名は『レヴァンティン』。某ニートが持つインテリジェンスデバイスである。
その後、一人と一本が情報交換が行われた。
そして、このバトルロワイアルをどう闘い抜いていくか、だ。
『これからどうするんですか?』
「とりあえずは人探しだ、主催者を倒すにしても情報が少なすぎる」
『確かにそうっすね』
「レヴァンティン、索敵は出来るか?」
『Jawoh!』
「何故、そこだけドイツ語なんだ?」
『……すんません、何かラミアさんの声が我が主に似ていたもので、つい……』
とりあえずラミアはスタート地点であった繁華街を散策した。
その直後であった。
『ラミアさん、近くに動体反応があります』
「こちらでも確認した、とりあえず隠れるぞ、レヴァンティン」
『Jawoh!』
「静かに!」
ラミアはすぐに近くにあった物蔭に素早く身を潜めた。
「――――――――――――おっ、ウナギパイがあるじゃねえか! ラッキー、頂いておくぜ!」
(ウナギパイって……殺し合いの最中に周囲も確認せず、脳天気なものだな)
ラミアの位置からはその男の後ろ姿しか見えなかった。
しかし、その声はどっかで聞いたことがあり、そのワカメ
みたいな髪はどっかで見たことがあった。
(そう、まさしくあれはアクセル隊長だ……って、え!? アクセル隊長!?)
「――――――――――そこにいるのは誰だ!」
(しまった、気付かれたか!?)
かつての隊長のあまりのキャラの変わりっぷりに動揺したのか。
ラミアは物蔭で音を立ててしまい、背後にいることがばれてしまった。
そして、気弾が目の前に迫っているのを確認した。
(レヴァンティン!!)
(『Jawoh!』)
しかし、ラミアはレヴァンティンで気弾を切り払った。
その際に生じたのが先程の金属音の正体であった。
(くっ、どうするラミア・ラヴレス? ……いや、これは不可抗力だ。
ちゃんと事情を話せば、アクセル隊長だって分かってくれるはずだ)
そして、意を決してラミアは物蔭から飛び出した。
「流石でございましょうことですわね、アクセル隊長」
「アクセル……隊長……? お前は誰だ?」
「………………………………へ?」
【こうして、(元)上司と部下は出会った?】
「すまん、君は俺のことを知ってるみたいだが、俺は君のことを知らないんだな、これが」
「アクセル隊長、この非常事態に冗談を言うのはよしてくださいますのことですわよ」
「……冗談ならもっと気の利いたことを言っているさ。
どうも俺は本格的な記憶喪失って奴らしいんだな、これが」
「記憶喪失……? どこまで忘れちゃったりしちゃったのですか?」
「名前と何かしらの訓練を受けていたことぐらいかな、それにしても変な喋り方だな」
「………………………(好きでこんな喋り方をしてる訳ではない)」
「えっと、それでラミアちゃんだっけ、とりあえず知っていることを話してくれるかい?」
「合点承知!」
「へっ?」
「……いえ、了解した」
その後、ラミアはとりあえずアクセルに数十分に渡り、大まかな説明をした。
その結果……。
「駄目だ、何も思い出せないんだな、これが」
「……そうでござんすか」
ラミアは結構必死で説明したが、アクセル隊長の記憶は戻らなかった。
……何というか、アクセル隊長が悪いとしかいいようがない。
「まあいいさ、記憶なんてそのうち戻るさ。じゃあ、行こうか、ラミアちゃん♪」
「隊長……その……ラミアちゃんと呼ぶのはやめてほしいのことですわ……」
「それを言うなら、その隊長と言うのもやめてほしいんだな、これが」
(バトルロワイアルにアクセル隊長の記憶喪失か……厄介事が二つか、
どちらにしろ大変、分の悪い賭けになりそうだ。だが……)
(この女が言ってること、嘘はなさそうだ。この娘と一緒にいればもっと記憶戻りそうだしな。
……それにしても、戦いが日常の世界か。……随分と頭が痛くなる話だな、これが。まあ……)
(なるようにしかならんか……/なるようにしかならぁねえな!)
こうして、元上司と部下は何の因果か一緒に行動することなった。
【一日目・0時30分/神奈川県/天候・嵐】
【アクセル・アルマー@スーパーロボット大戦シリーズ】
【状態】健康、記憶喪失
【装備】可変式トンファー
【道具】支給品一式、大量のウナギパイ
【思考】基本:記憶を探す
1:ラミアちゃんと行動する
【ラミア・ラヴレス@スーパーロボット大戦シリーズ】
【状態】健康、言語回路故障
【装備】レヴァンティン@魔法少女リリカルなのはシリーズ
【道具】支給品一式、その他不明(本人確認済み)
【思考】基本:主催者を倒し、元の世界へ帰還する
1:アクセル隊長と行動する
2:情報を集める
最終更新:2011年01月26日 01:00