「ほに~……さーて、どないしたもんでっしゃろ」
森の中を歩く、ほっかむりに青装束の胡散臭い姿の男。
彼の名は、エビス丸。天下の大義賊・ゴエモンの相棒にして、自称正義の忍者である。
「いつまでもほっつき歩くわけにもいきまへんなぁ。
早いとこ元の大江戸の時代に戻りたいとこでっけど……
正義の忍者のわてとしては、こないな殺し合いを見過ごすわけにはいきまへんな!」
眼鏡をかけた女性の首がはじけ飛ぶ光景が思い出される。
こんなものを見せられて黙っていられるほど、彼は人でなしではない。
だが、今のままでは彼らに刃向かうことはできないことも理解していた。
自分の首に付けられた、爆弾付きの首輪がある限り。
ちびエビスンの術で自分の身体を小さくしたら、あっさり外れるのではないか……と思って試してはみたが、
首輪も一緒に小さくなってしまった。どうやら、この手で外すことは不可能なようだ。
(これが爆発したら、一巻の終わりでんなぁ。
 これさえなかったら、あとはどうにでもなるんでっけど……
 首輪を外せるような技術を持った人を探さなあきまへんな……しかし、どこをどう探せばええのやら)
ザックの中を見る。彼の支給されたものは……1本の、ハエたたきだった。
「こんなんでどないせーっちゅーねん。先が思いやられまんなぁ……」

ぐきゅるるる~~……

腹の虫が、大きく鳴り響いた。
「ほへぇ……あきまへん、腹減って死にそうや……」
支給された食料は既に平らげてしまった。だが大食らいの彼には全然足りない。
「こらあかん、わてもこれまででっか……」
テンションがどん底まで落ちたエビス丸の前に、ヒーローが現れた。
「やぁ、僕が来たからにはもう大丈夫だよ~!」
現れたのは、緑色の化け物。
死んだ魚のような目は、ドン引きさせるには十分だった。
「はぁ……腹が減りすぎて変な幻覚まで見えてきたみたいでんな……」
「幻覚じゃないよ!大丈夫、僕がこんなゲームは終わらせてあげるから」
緑色の化け物は両手を広げわざとらしく滑稽な動きをしてみせる。
「なんや、化け物が喋ってる。幻聴まで聞こえてきたんでっか?」
こうかはいまひとつのようだ。
「僕はスキューバから何から完璧にこなせるんだ、こんな首輪くらいちょちょいのちょいさ」
「なんや言うてるけど、どうせなら食いもん用意してほしいでんなぁ」
まだ相手にされない。
いくら胡散臭い着ぐるみだからって、そこまで投げやりな態度はいささか無礼じゃなかろうか。

「やれやれ……これだから大きなお友達を相手にするのは嫌いなんだ」
化け物――ガチャピンの纏う空気が、変わった。
「まあいいや……君、ずいぶん太って丸々としてるから、結構美味しそうかもね?ふふっ」
「ほへ?」
彼の瞳に、狩る者の目の輝きが灯った。見た目全然変わってない気がするが、とにかく灯ったのだ。



「君みたいな“悪い子”は……食べちゃうぞ~?」





そして――惨劇が、始まった。



 ぶりっ



オナラの音が、鳴り響いた。


「うぎゃあああああああああああ!!!!は、鼻が腐る~~~~~~~~!!!!!!!」
その臭さに、ガチャピンが狂ったように悶える。こいつに鼻があったかどうかはともかく。
かつて、不死身と恐れられた妖怪世界最強のプリンスを、一撃のもとに葬り去った、エビス丸のオナラ。
それはガチャピンの嗅覚を完全に破壊した。
「くそぉっ!!ふざけた真似を、殺してやるっ!!!」
逆上し、再びエビス丸に目を向けるも……そこに彼の姿はなかった。
「……どこだ、どこに隠れた?」
「隠れてなんておりまへん。ここでっせ」
すぐ近くから声がする。
「どこだ、隠れんぼかい!?きゃははっ、いい子だから出ておいで~!?」
明るい声で振舞うも、焦りは隠し通せない。
声はすれども姿は見えず。ガチャピンは、本能的に絶対的危機を感じ取る。
ガチャピンは気づかなかった。
敵の至近距離までの接近を許してしまっていることを。
周りを気にするあまり……すぐ足元を見ることを怠っていた。
そう、足元には……ちびエビスンの術で小さくなったエビス丸がいることに、気づかなかった。
「ほな、いきまっせ!」
掛け声とともに、術を解除する。豆粒のように小さかったエビス丸の姿は見る見る元のサイズへと大きくなり……
ガチャピンのすぐ目の前に出現する。
「わぁっ!?」
ガチャピンに隙が生まれる。それを見逃すエビス丸ではなかった。
構えたハエたたきを、ガチャピンに向けて思い切り振り下ろした。



 ぐしゃ



「がああああああああああああっ!!!!」
ガチャピンは再び絶叫する。
ハエたたきの一撃が、中の人……じゃない、中の頭蓋骨を完全に粉砕し、脳味噌を叩き潰した。
中だけではない、外から見ても……頭は醜く潰れ、ガチャピンは既に生を続けられる状態ではなかった。
そこに、最後の一撃を加えることは造作もなく。
「ほい、火炎の術!」
エビス丸の手から炎が噴出す。
それは業火と化し、ガチャピンの身体を包み込んだ。
「うぎゃ、ぎゃっ、ぎゃああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

うそだ、何かの間違いだ。
みんなの人気者である、僕が。
今まで大活躍してきた、この僕が。
こんな、前回の最後にちょっと惨劇を一回起こしただけの奴に、ズガンされるなんて。
なにか、の、まち、が――

ガチャピンの意識は、そこで永遠に失われた。


「ふぅー。ごっつぉさんでした。なかなか結構な味でしたなぁ」
こんがりいい具合に焼けたガチャピンの肉を残らず平らげ、エビス丸は満足げに呟いた。
「さーて、腹も膨れたことやし、そろそろ出発しまひょか!」
下がっていたテンションもすっかり戻り、立ち上がる。
ふと足元を見ると……ガチャピンの持っていたザック、そして……ガチャピンが付けていた、首輪が転がっていた。
「およ?これはラッキーでんな!
 それに首輪……わてらが付けてるのと同じものでんなぁ。解析するのに役立つやろし、もろときまひょ」
……どうやらガチャピンのことは、野生動物か何かだと思っていたらしい。
そんなことなど大して気にすることもなく、正義の忍者(自称)は、歩き出す。殺し合いを止めるために。
「ほな、いきまっせぇ!」


【一日目 3時】
【A-2 竹林】

【エビス丸@がんばれゴエモン】
[状態]:……実はまだ腹八分。
[装備]:ハエたたき、
[道具]:支給品×2(食料×1)、ガチャピンの支給品(中は不明)、首輪1個
[思考]:
1:味方を集め、主催者を倒して大江戸の時代に戻る
2:腹が減る前に食べ物を確保したい
3:向かってくる敵には容赦しない

【ガチャピン@ひらけ!ポンキッキ 死亡確認】


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最終更新:2007年02月25日 22:05