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キーンコーンカ『フハーッハハハハ!!!』

「のび太くん起きてよ、放送だよ」
「う~ん、あと5分だけ…」

千葉県の民家。夢の話をした後また寝てしまったのび太をドラえもんが揺り起こす。
主催者は死者達の名前を無慈悲に読み上げる。

野比玉子

――読み上げられてはいけない名前をも。

「ま、ママが……?」
「そんな……!」

のび太にとって最も親しい肉親。ドラえもんにとっても、実の母親同然の存在。
たまに怖いときもあるけれど、世界で一番優しく、いつも夕ご飯を作ってみんなの帰りを待っていてくれたママ。
そのママが、死んだのだ。

「う、嘘だ、そんなの――」
『野比玉子』

再び、ママの名前が呼ばれた。
残酷な現実を、少年とロボットに突きつけるように。

「嘘だ、嘘だ、うわああああああん!」
「の、のび太くん」

ドラえもんはのび太を宥めようとする。
本来人間顔負けに感情豊かなロボットであるドラえもんも本当は泣き出したかったが、
母親を失ったのび太を支えなければという想いが感情の奔流を塞き止めた。
それゆえ放送のおかしな点に気付く。

(なんでママの名前が二度呼ばれたんだ?)
そういえばジャイアン(たけし)の名前も三度ほど呼ばれたような…

『…タケシ、泉こなた、野比玉子』

三度目だ。たけしは4度目。この放送は絶対におかしい。
原作第一話で歴史改変を正当化するために並べた屁理屈並におかしい。

結局放送では野比玉子の名前は7回、たけしは9回も呼ばれた。
スネ夫のいとこの名前も呼ばれた気がするが最早どうでもよかった。というか最初からわりとどうでもいい。

「ねえおかしいよドラえもん、なんでママの名前が何度も呼ばれたの?」

さっきまで泣き喚いていたのび太も流石に放送のおかしさに気付いたらしい。

「考えられるのは同姓同名の別人か…」

そうは言っても野比という苗字で玉子という名前の女性など広い日本といえどそう多くはないだろう。
たけしは一杯いそうだが。そして事実放送で呼ばれたタケシはのび太とドラえもんの知っているジャイアンこと剛田武とはまったくの別人なのだが。

「平行世界の同一人物、かな?」
「へいこうせかい……」
「そうだ、平行世界だ!放送で呼ばれたママはあくまで平行世界の別人で、僕らの世界のママはまだ生きてるかもしれない!」
「へいこうせかいって何?」
「ズコー!」

ドラえもんはのび太に平行世界の概念をわかりやすく説明した。

「じゃあ、ママはまだ生きてるかもしれないんだね!」
「そうだ、希望を捨てちゃいけない!」
「じゃあ、嵐も止んだし今すぐにでも探しに行こう!ママのためにも、悪い奴らに殺されちゃったほかの世界のママたちのためにも!」

ドラえもんの考察と激励でのび太はなんとか立ち直ることができたが、当のドラえもんは悲観的だった。
平行世界の同一人物といってもそう多くはないだろう。それが7人も殺されたのだ。その中にこの世界のママが含まれていない保障などどこにもない。
だがのび太には希望を捨てて欲しくなかった。

(大丈夫だよのび太くん。何があっても、僕が守ってやる……)

未来の道具は恐らく主催者により全て没収され、ドラえもんはいまや人間より多少頑丈なだけのただのロボットに過ぎない。
だがそれでも、いやだからこそ、ドラえもんはどんなことをしてでものび太を守ると決めた。

(……その為なら僕は誰かを犠牲にすることも厭わない)

ドラえもんは自分に支給された、自分の知る「20世紀」の科学では実現不可能なはずの光線銃を握り締める。
彼とてのび太を殺人者の家族にすることはしたくない。だが、このバトルロワイアルという地獄で生き残る為には、自分の手を血で汚さなければならない時が――

「ドラえもーん、早く行くよ?」
「あ、ちょっと待ってよのび太くん!」

【一日目・2時30分/千葉県/天候・雨】

野比のび太@ドラえもん】
【状態】健康
【装備】不明
【道具】不明
【思考】基本:ママを捜す
1:何だったんだ、あの夢
※大量に殺された野比玉子は並行世界の別人だと思っています

【ドラえもん@ドラえもん】
【状態】健康
【装備】スーパーガン@ウルトラマン
【道具】不明
【思考】基本:のび太を守る。そのためには誰かを犠牲にすることも厭わない。
1:のび太と一緒にママを捜す
※大量に殺された野比玉子は平行世界の同一人物だと考察しました
ただし、「この世界の」野比玉子が含まれている可能性も高いと思っています
最終更新:2011年02月04日 00:36