「どこだ、どっこだ~?」
建物を破壊しながら、アシェンは逃げた二人を探し回る。
まるで狩りを楽しむかのようなその姿は、実に異質なものだった。
そんな彼女に、聞き覚えのある声がかけられる。
「アシェン!?アシェンじゃないのか!?」
「……艦長?」
――ハーケン・ブロウニング。
「ご無事でしたか、艦長」
「あ、ああ、そっちも無事なようで何よりだ」
「ところでそちらの娘は?」
アシェンはハーケンの隣にいた娘……かがみに目を向ける。
「この子は
柊かがみ……最初の5分で出会ってから、共に行動してるわけだが」
「乳牛姫に飽きて、ついに女子高生を誑かすまでに堕ちましたか」
「そんなわけあるか」
「なるほど、確かに艦長の言動には、普通の神経なら誑かされるより先に呆れるのが筋です。
安心しました、どうやらこの子はまともな人間のようですね」
「おいこら」
「……どうも」
「どーもぉ~。ってえらい無愛想でやんすねこのガキャ」
「……さっきの放送で、彼女の妹や友達が呼ばれてたらしくてな」
「はぁ?何言ってんのさ、これがバトルロワイアルというものだ、でしょ!?
その程度のことでいちいち凹んでどうすんの!」
「その程度……ですって……!?」
「お、おい!」
アシェンの発した言葉に、かがみは沈んでいた感情に怒りを芽生えさせ、ハーケンは耳を疑った。
瞬時に険悪化する空気に、ハーケンは慌ててアシェンを窘める。
「暴言が過ぎるぞ、不謹慎シスター!……今は彼女はそっとしてやってくれ」
「艦長、とりあえず情報を交換しましょう。あまりよくない話もあります」
「あ、ああ……」
今の言葉は何だったのか?ハーケンは、目の前の仲間に違和感を感じざるを得なかった。
「あのヘソプリンセスが、殺し合いに乗っているだと……何かの間違いじゃないのか!?」
錫華姫が殺し合いに乗った――アシェンの話す情報に、ハーケンは驚愕する。
悪意を込めた嘘が多分に含まれている、衝撃的な情報に。
「残念ながら事実です。ふんどしを付けた女と共に、次々と参加者を手にかけているようです。
私も襲われました」
「ふんどし女だと!?あの女が……」
「恐らく、艦長達を襲ったというふんどし痴女と同一かと思われますです」
ハーケンは思い返す。最初にふんどし女に襲われた時のことを。
あの時、5分以上経っているにも拘らず、彼女にはチームを組んだと思われる参加者がいなかった。
なにやら丸い機械が傍で跳ねていたような気がしたが、まさかあの機械が参加者などということはあるまい。
ふんどし女は錫華と組んでいたのだろうか?
そうすると……錫華は、ふんどし女が自分達を襲うことを承知していたというのか?
(いやまさか……考えすぎだ。あの時から二人が組んでいたと確定したわけじゃない。だが……)
「ですがご安心を。そのふんどし女のほうは、既に始末しておりますです」
「何……?」
ふんどし女は、アシェンの手によって倒されていた――
その言葉に、今度はかがみが反応した。
「それって……殺したってこと……?」
「何さ、それが文句あるわけ?」
「よせ、彼女はこの手の荒事には慣れていないんだ」
再び険悪化しそうな空気を、二人の間に割って入り緩和させるハーケン。
事も無げに自らの殺人を話してのけるアシェンに対する、かがみの感情。
不信感……いや、恐怖に近いだろうか。
「話は大体わかった。何にせよ、疑惑のヘソ姫様に会ってみないことには、判断できないな」
「十分ご注意を。仲間だと思って気を許すと、その隙を突かれることになります。
私の最初の同行者も、それが原因で殺されました」
「……とにかく、お前の言っていた熱血男と緑のヒゲとやらを探すぞ」
「ラジャー!アーきゅん、がんばっちゃうぞー!!」
コードDTDを発動させながら、アシェンはハイテンションで二人の捜索を再開した。
「すまないな。少々口は悪いが、根はいい奴なんだ。気にしないでくれ」
「……」
かがみは何も喋らない。
放送前まではハーケンの言動に逐一突っ込んでいたツッコミプリンセスとしての影はまるで見られなかった。
今の彼女を取り巻く境遇を考えれば、ショックを受けるのは無理もないだろう。
それにしても……アシェンだ。確かに彼女の毒舌ぶりは毎度ながら目に余るものがあったとはいえ、
知人を殺されショックを受けている人間に平然と鞭打つような奴ではなかった。
殺し合いに乗った錫華のことを語る時も、感情一つ伺えない淡々としたものだった。
……錫華が殺し合いに乗ったというのは事実なのだろうか。何かの間違いではないのか?
アシェンを疑うつもりはない。彼女が嘘をつく理由がない。……そうだろう?
そう自分に言い聞かせるたびに、ハーケンの中で違和感が頭をもたげてくる。
(目の前にいるのは、本当に俺の知っているアシェン・ブレイデルなのか……?)
ハーケンは二つのことに気付かないでいた。
一つは、アシェンの中に新たに芽生えた、恐るべき悪意。
その悪意が、今まさに彼らの絆を破壊しようとしていることに。
そして、もう一つは。
(何なんだろう、この人達は)
柊かがみ。彼女は平和な日本で暮らしていた、一介の高校生でしかない。
つかさが、こなたが、日下部が死んだという悲しみに打ちひしがれる今の彼女にとって、目の前の光景は異質だった。
人を殺して平然とし、仲間に殺されかけたと言いながら何の感情の揺らぎもないアシェンは、彼女の目にはあまりに異常に映った。
この女は何だ?かがみはアシェンに対し、本能的に恐怖していた。
そして……ハーケン・ブロウニング。彼はこの女と仲間同士であるという。
この状況下で、ああも軽いノリで会話できるこの人達は一体何なのだ?
本当に……この人達についていっていいのだろうか。
波紋のように広がっていく、恐怖と不信感。
その中で、アシェンの中に巣食う悪意はただ静かに笑っていた。
【一日目・3時10分/兵庫県神戸市内/天候・雨】
【アシェン・ブレイデル@無限のフロンティア】
【状態】シグマウィルス感染
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】
1:破壊と殺戮
2:ハーケンを陥れ、彼らの絆を破壊する
3:修造とルイージからヘソ姫の居場所を聞き出す
4:聞き出したら二人を殺す。聞き出せなくても殺す
※ミネアをマーニャと間違えて殺したことに気がついていません
【ハーケン・ブロウニング@無限のフロンティア】
【状態】健康
【装備】ナイトファウル、ロングトゥーム・スペシャル
【道具】支給品一式
【思考】
基本:
ゲーム破壊・打倒主催
1:かがみ、アシェンと行動。修造とルイージを探す
2:錫華と会って話をする。殺し合いに乗っていたら……?
3:アシェンに違和感。錫華は……?
【柊かがみ@らき☆すた】
【状態】健康
【装備】大根
【道具】支給品一式
【思考】
基本:生き延びる
1:ハーケン、アシェンと行動し、仲間を探す
2:アシェンとハーケンに不信感。アシェンには本能的に恐怖
最終更新:2011年02月05日 00:53