ルイージを背負って、逃亡を続ける修造。
雨の中を走り続けたことで、テニスで鍛えた修造の体力も激しくすり減らされていた。
「ぜぇ、ぜぇ……とりあえずは撒いたかな」
「……修造さん、降ろしてよ。もう自分で歩ける」
「おお、そうか!」
ろくに感情もない声でルイージが一言。
それでも少しは立ち直ったかと、修造はルイージを降ろし、再び声をかける。
「……気にすんなよ。くよくよすんなよ。大丈夫、どうにかなるって」
「……」
「今ここを乗り越えていこうぜ。一所懸命!そうだ、ここを乗り越えれば、イキイキする造!」
「……もういいだろう。僕に構わず行ってくれよ、修造さん」
しかし修造の励ましに対するルイージの言葉は、やはり冷め切ったものだった。
「いつまでも僕なんかと一緒にいたら、ミネアみたいに死んじゃうよ」
「どうして諦めるんだそこで!!ダメダメダメ諦めちゃ!!
兄ちゃん殺されて!このまま何もせず黙ってるのかよ!」
「さっきも言っただろう……僕の中に、身に覚えのない感情が芽生え始めてるって」
そう言って、ルイージは笑い出す。乾いた、空っぽな笑い声が雨の中に広がっていく。
「はは……兄さんが死んだことでさ、ドス黒い悦びが、僕の中に広がり始めてるんだよ。
これで僕が光を浴びられる。僕が主役だ。世界は僕のために回り始めるんだ。
このままみんなを皆殺しにして、優勝して、栄光を掴もうと……」
淡々と恐ろしいことを話し続けるルイージに、修造の背筋が凍った。
「おかしいだろう?自分でもなんでこんなこと考えるのかわからない。
人を殺すなんて嫌だし、兄さんが死んで悲しいはずなのに。
わかっただろう?今の僕じゃ、そのうち自棄になって、修造さんを殺すかもしれない」
それでも、彼にはまだ理性が、自分の意思が確かに残っていて。
その意思は、修造を拒み続けていた。
「さっさと消えてよ。鬱陶しいんだよ、そういうの」
――沈黙。小降りとなった雨の音だけが鳴り響く。
やがて……修造が、折れた。その心と共に。
「もういい……勝手にしろ!」
そう言って……修造はルイージのもとから駆け出した。
――これでいい。
わざわざ自分などに構って、彼が死ぬ必要なんてないのだ。
(ありがとう、修造さん。こんな僕に必死に呼びかけてくれたあんたは、いい人だよ。
だからせめてあんたは生き延びてよ。僕
みたいな奴に構ってないでさ)
心の中で彼に感謝しつつ、別れを告げる。
ルイージが修造と決別した、本当の理由。それは。
「見つけたぞ。そこの陰気な緑のヒゲ」
修造の走っていった、反対側の方角から声がする。
振り返れば、緑に身を包んだアンドロイド――アシェンの視線がルイージを捉えていた。
「ヘソ姫の居場所、吐いてもらうぞ」
「なるほど、彼か……オーケイ。確かにこいつは、緑のヒゲだな」
アンドロイドの隣には、他にももう一人、男が立っている。
カウボーイ風の格好をした気障な印象の男――ハーケン・ブロウニングだ。
「で、もう一人の暑苦しい男ってのはどこにいるんだ」
「姿が見えないようです……そこのヒゲ、どこへ行ったか答えて貰おう」
「いや……そもそも俺達が探しているのはそっちじゃない。
錫華姫……ヘソを出した鬼のお姫様だ。彼女の居場所を知っているか、マスタッシュマン?」
「……何を言ってるのか、わからない」
ハーケンの質問に、ルイージはただ一言返す。
「答えになってないな。一緒にいたんじゃないのか?」
「知らない。暑苦しい男はともかく、ヘソの鬼なんて見たことがない」
ルイージの返答は変わらなかった。当然である、実際に会ったことなどない……
ハーケン達の誤解、アシェンの手で歪められた情報でしかないのだから。
(本当に知らないのか?嘘をついているようには……)
やがて埒が明かぬと判断したか、アシェンがルイージに向かって一歩前に出る。
「答える気はない、か。ならば力ずくでも吐き出させてやる」
「!?おい、アシェン!」
ハーケンが止める間もなく。
アシェンは緑の弾丸となって、ルイージに向けて急接近する。
「ダイグレス・バイト!」
彼女の拳が、連続でルイージに次々と叩き込まれる。
ルイージは防御一つ取らない。声一つあげず、ただ打たれるがままだった。
流れるような連続攻撃、その締めに回り蹴りを一閃する。
ルイージの身体が数メートル吹っ飛んだ。やはり、受身一つ取る様子はなかった。
「やめろアシェン!!……命令だ」
ハーケンの怒声が飛んだ。普段、身内にはあまり見せない厳しさが込められていた。
その言葉に、アシェンは小さく舌打ちし、手を止めた。
そんな彼らの姿に、ルイージは身を起こしながら、やはり感情一つ見せずに問いかける。
「殺さないのかい?」
「ああ。あいにく俺達はマーダーじゃないからな」
(やはりこいつからは生きようとする意志が感じられない。
まるで何か支えを失って、生きる望みでも絶たれたかのような……)
「艦長、あまり時間もかけてられんでげす。さっさと引導を渡してやりやしょう」
アシェンが宣告する。まるで、一刻も早くルイージを殺したがっているかのように。
「やめろと言っているんだ!今そいつを殺したら、お前も俺もただのバーサーカーと変わらん」
「対主催活動を行うにあたって、その妨げとなる分子は今のうちに始末しておくべきです」
「!?お前……」
その冷酷な言葉に、そしてルイージを見据える冷酷な瞳に、ハーケンの背筋に冷たいものが走った。
そして、自分がアシェンに対して抱いていた違和感が、疑問から確信へと変わる。
だが彼に一刻の猶予も与えぬまま、アシェンの緑色の塗装が剥がれ、熱暴走を起こす。
コードDTD――底抜けに明るい殺意が、発動する。
「よ~っし、排除開始ィ~!!」
「やめろぉぉぉっ!!」
刹那、閃光が煌き、炎が踊った。
炎はルイージとアシェンの間を分断するように地を走る。
デジャヴ――錫華を殺そうとした時と同じだ。
その閃光にアシェンは見覚えがあり……目を疑った。
「ったく……よってたかって弱い者イジメか。見てらんないわね」
女の声が響き渡った。その場の人間の視線が、声の方角へと注がれる。
そこには、美しい褐色の肌と、その妖艶さを引き立たせる露出度の高い服を着た踊り子の姿。
そう、彼女の容姿を一言で言うなら。
「ふんどし!?」
「あの時のふんどしマーダーか!」
「ふんどし女!!何故お前が生きている!?」
「ふんどしふんどしとやかましいわ、お前らぁー!!」
あまりの言われように、踊り子は思わず絶叫していた。
だが、ハーケン達としては踊り子のふんどし云々に構っている場合ではない。
「アシェン、これはどういうことだ!?彼女はお前が……」
ハーケンの表情が変わる。彼女の登場は想定外だった。
何せ彼女は、アシェンが始末したと聞かされていたのだから。
それはアシェンもまた同様であった。
「そうです……お前は私がさっき殺したはずだ。生きているはずがない」
「ああそう……つまりミネアを殺したのはあんただったってわけね」
「ミネア、だと……?それは確かお前の名前じゃ……」
疑問符を頭に浮かべるハーケンに、踊り子は初めて自分の名を名乗る。
「私の名はマーニャ。そいつが殺したのは多分……私の双子の妹、ミネアのほう」
「双子の……?」
マーニャの発した言葉に、ルイージが小さく反応した。
だが、そんなルイージに構うことなく、事態は混乱の一途を辿る。
「つまり何だ、アシェン……お前が殺したのは、何の関係もない妹のほうだったと……」
「……世の中誤解はつき物だよん、艦長!気にしない気にしない」
「それで殺された妹のほうは災難どころじゃ済まないだろうが……!気にしないで済む問題だと思ってるのか!」
ハーケンの諌める言葉にはもはや怒声すら込められていた。
「もう!過ぎちゃったことはしょうがないじゃん!こまけぇこたぁいいんだよ、っていう!」
「いい加減にしろ……!!」
当のアシェンとしては、明るい対応とは裏腹に、内心焦りを渦巻かせていた。
自分に対するハーケンの疑念は、怒りが加わることで確実に強まっている。これ以上は危険だ。
いや、そんなことはどうでもいいのだ。そんなことよりも――自分の中の殺意が抑え切れない。
既にその身に感染し切ったシグマウィルスが、悪意が、急かしてくる。
壊したい。暴れたい。全てを破壊したい――
「狼狽えるでない」
混乱を極める二人の姿を見かねて、声がかけられた。
それは彼らにとって仲間であり、探し人であり、疑惑の渦中の人物でもあった。
「ほれ、しっかり立たぬか緑のヒゲ。大の男が情けない」
二人の向けた視線の先には、ルイージを起こす錫華姫の姿があった。
「やれやれ……本当に、このふんどしマーダーと行動していたとはな……
で?どういうことか、説明してもらえないか?疑惑プリンセス?」
「わらわ的には、むしろそち達の行動を追求したいところである。
仮にも無抵抗の人間を嬲り殺しなど、さすがに趣味を疑うぞチャラ之助よ」
「人海戦術、数の暴力は我々にとっては毎度のことですが、裏切り姫様」
「そういう問題ではない!というかドサクサに紛れて何を言っておる二枚舌が!
裏切ったのはそちの方であろう!」
「私の最初の仲間を殺しておいて何を言うか」
「出鱈目を!最初からわらわと行動していたであろうが、このポンコツめが!」
「いい加減にしろ!二人とも黙るんだ!」
そこには、かつての和気藹々としたお気楽集団の面影などまるで感じられなかった。
疑念が、誤解が、嘘が、悪意が、殺意が荒れ狂う、実に殺伐としたやり取りだった。
気付けば、ルイージとマーニャは完全に蚊帳の外に追いやられていた。
「何だかねぇ……」
呆れてため息をつくマーニャ。
対照的に、ルイージは唖然としながらその光景を眺めていた。
「あの3人は……仲間なのか?」
「ああ、どうもそうみたいね。ていうか、あんたまだいたんだ。
今のうちに逃げたら?あいつら、もうあんたのこと眼中にないわよ」
マーニャの警告が聞こえているかどうか。
ルイージはどこか冷ややかな目で、ハーケン達の言い争いを見ていた。
「ちょっと、聞いて……」
「オーケイ、大体事情はつかめた」
キリのなくなってきた言い争いの中で、やがてハーケンは手を叩きそれにストップをかけた。
「これ以上、感情に任せて言い合っても仕方がない。ここはインターミッションを挿もう。
互いの情報を持ち寄って、何が真実か話し合おうじゃないか」
「よいよい。それが一番妥当な線であろう。」
「……」
「そっちのふんどしレディとミスターグリーンも、ご一緒願えるかい?」
蚊帳の外にいた二人にも、ハーケンは話を振ってくる。
「で?それで私が納得するとでも思ってるのかしら?妹を殺したかもしれない仇を前に」
「納得してもらうしかないさ。あんたは俺達に牙を剥くことはできない。
ここにいる俺達全員を相手に勝てるかい?マーダーともなれば、俺達も容赦はしないぜ?」
「……」
「……わかりました。止むを得ません」
返事をしたのは、アシェンだった。
「このまま泥沼に潜り続けるよりは、この事態をそれなりにでも進行させたほうがいいでしょう」
「やれやれ……ようやくわかってくれたか」
「――ロビン……レ……ービ…ム」
「ん?アシェン、今何か――」
ハーケンが台詞を言い終える前に。
彼らの頭上で、何かが光った。
その瞬間、その場の誰もが『新たな敵』の危険を感じ取った。
だが、その敵の正体を確認する暇もなく――
上から放たれた『光』――レーザービームが、地面を割るように走った。
5人のいる場所の真ん中を分断するように抉られた地面から、土砂が舞い上がる。
「ちっ……!」
舞い上がった土砂は、一瞬、ほんの僅かに視界が阻まれる。
(来るかっ!)
愛用の二丁の銃を構え、ハーケンは次にアクションを起こしてくるであろう敵に備える。
(どこのどいつかは知らないが、俺達に仕掛けてくるとは運のない――)
しかし、その殺意は。
「――ディバイン・ランサー」
ハーケンの全く予期せぬ方向から、叩きつけられた。
「がっ……!?」
立て続けに、身体に衝撃が走る。
膝蹴り、サマーソルトキック、さらに無数の蹴りが叩き込まれ。
最後の一蹴りで、彼の身体は大きく吹っ飛ばされた。
吹っ飛んだ身体はビルの壁に叩きつけられ、壁は衝撃で皹が入る。
(何……だ、と……)
突然の襲撃……いや『裏切り』に受身を忘れたハーケンのダメージは大きかった。
壁に頭をぶつけたせいで、軽い脳震盪を起こし、ほんの一瞬だけ意識が飛んだ。
その一瞬が、彼にとって致命的な隙を生み出すこととなる。
「スラッシュリッパー!」
聞こえる。アシェンの声が。その声が聞こえた、直後に。
刃が、彼の身体を斬り、裂き、貫いた。
「な……」
「あ、あんた……」
アシェンの突然の謀反を目の当たりにして、ルイージとマーニャは絶句した。
致命傷を負い倒れたハーケンを見下ろすアシェンの目には、狂気の光が灯っていた。
「このポンコツが……そこまで壊れておったか……!」
拳を震わせ、錫華が怒りを顕にする。
そんな彼女を見据え、アシェンは邪悪な笑みを浮かべていた。
錫華は悟る。こ奴はもう駄目だ、と。
「うっふっふ、スージー駄目だよよそ見しちゃ!」
「何を!?」
「!!ヘソ姫、上ッ!!」
マーニャの叫びが響く。だが、反応が遅い。
上空から飛び降りてきた青い影が、その腕に装備された刃を錫華目掛けて振り下ろす。
一閃――続いて、錫華の背中から鮮血が飛び散っていた。
「錫華ッ!?」
「うわっはぁ!ロビン、グッジョブ!」
錫華を斬ったのは……キラーマシン。
数時間前、アシェンが倒したはずの機械モンスターの片方だった。
一番最初にアシェンに支給されたアイテムは、二つあった。
一つは、復元光線。22世紀のひみつ道具で、壊れた機械を瞬く間に修理することができる。
この復元光線で、アシェンはキラーマシンを修理・復活させた。
もう一つは……モンスターボールだ。それを使ってキラーマシンをゲットし、手駒とすることに成功した。
ロビンと名づけたこいつを、アシェンはルイージと修造を追跡する際に放っていた。
ちょうど、ハーケン達に出会う直前のことである。
そして、ハーケン達と出会い、ルイージを発見した時。
アシェンは人間には聞き取れない、機械にしか聞こえないであろう声で、ロビンに命令する。
上空から、レーザービームを放つように。
錫華の力の抜けた小さな身体は、重力に従ってその場に前のめりに倒れる。
そんな彼女の頭を、アシェンは力任せに引っ掴んだ。
「気が変わったよ、スージー!役立たずのお荷物だけど、やっぱり連れて行くことにする!
あの駄乳を殺す時に役立ちそうだからね!もっとも、必要ないかもしれないけど!!」
そう言って、瀕死のハーケンに視線を移す。
最愛の男が死ねば、あの神夜姫もその精神はタダでは済みはしないだろう。
この能無しヘソ娘は、そんな彼女を追い詰めるのに一役買ってくれるかもしれない。
「ははっ、あははははっ」
狂気の高笑いが響く。シグマウィルスに完全に取り込まれた彼女は、魅入られてしまった。
破壊という行為に。信頼し合っていた仲間の絆が壊れていく、そのエクスタシーに。
彼女の姿は――まさしく『イレギュラー』と呼ぶに相応しかった。
「こいつ……」
「どういうつもりなんだ、お前」
マーニャが怒りをぶつけようとするより前に、ルイージが一歩前に出た。
「んん~?何、まだいたの鬱ヒゲ?」
「その二人は、仲間じゃなかったのか!?なんでそんなことができるんだよ!」
アシェンに対し見せるルイージの感情。それは怒りか。
「なになに?さっきから何一人でマジになってんのさ」
その怒りの向ける先は、アシェンか?いや、違う。
「僕はこんな真似を……こいつと同じことをしようとしてたのか?兄さんを裏切って?」
自分自身だ。これと同様の真似をしようとしていた、自分自身が許せなかった。
「兄さん?何わけわかんないこと言ってんだか。もういいよ!
吹っ飛んじゃえ!ドラゴン・スケイル!!」
アシェンの身体から、誘導ミサイルが一斉発射される。
大量のミサイルが、ルイージ一人目掛けて撃ち込まれた。
「!!バカ、あんた突っ立ってないで避け……」
響くマーニャの声。
しかし、ミサイルがルイージに当たる直前。
マントが、翻った。
それは、ルイージの取り出した『スーパーマント』……兄、
マリオに支給されていたアイテムだった。
マントの動きに従うように、ミサイルは軌道が逸れ、あさっての方向へと飛んでいく。
「!!」
アシェンは、今の動きだけで即座に相手の強さを判断した。
あの緑のヒゲ、ただの無気力なヘタレかと思っていたが……できる。
高速で迫る大量のミサイルの軌道をマント一振りで逸らすあの反応は、決して常人にできるものではない。
だとしたら、ここで彼を相手に戦うのは得策ではないだろう。
ここにはもう一人、ふんどし女がいる。ハーケンを倒した今、実質的な敵は彼女一人と踏んでいたのだが、
今あの二人が結託すれば、不利な戦いを強いられることになる。
ロビンは所詮、仲間になりたての雑魚モンスター。じっくり育てれば成長したかもしれないが、
現状では過度の期待はできない。……そう判断するや否や、アシェンは撤退することを決め込む。
「ロビン!後は任せる!」
キラーマシンに時間稼ぎの捨て駒役を命じ、アシェンは錫華をかついで逃走した。
「待て、逃げるなっ!!」
怒りを燃やし、アシェンを追うべく走り出すルイージ。
その前に、捨て駒となったキラーマシンが立ち塞がる。
キラーマシンの左手のボウガンが、ルイージに狙いを定め……
「ああもう!メラミッ!!」
マーニャの放った呪文が、キラーマシンの左腕のボウガンを吹き飛ばした。
横槍によるダメージで、怯む。その隙を逃すルイージではない。
一気にキラーマシンの懐に飛び込み――その右手に、力を宿す。
「邪魔をするなぁぁぁぁぁ!!!」
右手に力を込め、自身のマリオをも上回る圧倒的な跳躍力を勢いに拳を叩き込む。
スーパージャンプパンチ。
ルイージのそれは、技の出だしの瞬間に絶大な破壊力が発動される。
その必殺の一撃のもとに、キラーマシンは火達磨になって上空へと吹き飛ばされ、そのまま爆発四散した。
【キラーマシン@ドラゴンクエストシリーズ 完全破壊】
「へぇ……やるじゃない、あんた」
半ば呆気に取られながら、マーニャは感心する。
さっきまでヘタレてた姿とは、随分と印象が違った。
「あの女は……逃がしたのか」
既に、ルイージとマーニャの視界からアシェンと錫華の姿は消えていた。
「ブラボー、上出来だぜマスタッシュグリーン」
ルイージに声がかけられた。ハーケンの声だ。
「君は……無事だったのか!?」
「ご挨拶だな……もっとも、この有様じゃそう長くは持たんだろうが……」
酷い有様だった。既にハーケンは虫の息だった。
出血は大量、特に左腕はスラッシュリッパーの斬撃によりもげかけていた。
「しっかりするんだ、キザなお兄さん!」
「ハーケン・ブロウニングだ……」
「だったら、僕だってルイージという名前がある!」
「オーケイ、Mr.ルイージ。なら、勝手で悪いが二つほど頼まれて欲しい……」
「頼み……?」
「そうだ。あいつを……アシェンを、助けてやってくれ」
ルイージは驚いた。今しがた、自分を裏切り手にかけた相手ではないか。
「けど、あいつは」
「わかってるさ。だが、今のアイツは本当のアイツじゃない。
本当のアイツは、殺し合いを楽しんだりはしない……寂しがりやの、シンデレラさ」
ルイージは理解する。彼が、アシェンを……仲間を信頼しているということを。
「アイツを止めてやってくれ。それが……本来のアイツ自身もまた、望んでるはずだ。
俺の銃も使ってくれていい。……できるなら、正気に戻してやってほしいがな」
「何言ってるんだ、そういうのは仲間である君の役目じゃないのか!?」
「そうだな……初対面のお前さんに何もかも託すってのもないが……もう、余裕がない」
そう言ってハーケンは血を吐き、むせ返る。既に彼の目は霞み、焦点は合っていなかった。
「それともう一つ……ナンブ・カグヤに会ったら、伝えといてくれ。すまない、ってな……」
「カグヤ……?」
「女の名前だ……あいつを……泣かせちまう、か……」
そう言い遺して、ハーケンは動かなくなった。その目がもう一度、開かれることはなかった。
【ハーケン・ブロウニング@無限のフロンティア 死亡】
「あんた、これからどうすんのよ」
ハーケンの二丁の銃を受け継いだルイージに、マーニャが話しかけてくる。
「あのアシェンとかいう女を追う。どういう結果になるにしても、あの女とは決着をつけなきゃ。
連れ去られた、君の連れだった子も気にかかるしね」
「こいつの遺言を実行しようってんだ。律儀なもんね」
「君はどうするんだ?アシェンは、君の妹の仇、とか言ってたけど」
「……さあて、ね」
ばつが悪そうに目を逸らし、息をつく。
その態度が何を意味するのか……漠然とながらルイージは理解し、話し始める。
「僕にもね、双子の兄さんがいるんだ。僕は最初兄さんを殺そうとしてたんだ」
「?あんたが?」
意外な言葉に、思わず振り返り聞き返す。
「なんでそう思ったのか……動機は未だによくわからない。僕の中で根付いてた嫉妬なのか……
本当に僕の意思だったのかすらわかんないけど、でもそう考えたってことは、
やっぱり僕の中のどっかに、そういう黒い感情があったのかもしれないな。
でも、さっきのアシェンの行動を見て、やっぱり親しい者同士の殺し合いなんて間違ってると思ったし、
もし僕もそれを実行に移してたら……絶対に、後悔してたと思うんだ」
何かに吹っ切れ、そして受け入れたような表情でルイージは言った。
そんな彼に、マーニャは試しに尋ねてみる。
「もし、あんたのお兄さんが……あんたの信頼を裏切って、殺し合いに乗っていたとしたら?
あんたを陥れようとしていたら、どうする?それでもその考えを貫けるの?」
「その時は、なんとしても兄さんを止めるよ。そして考え直させる。
それを許したら……どちらに転んだとしても、後味だけは悪くなると思うから」
「……」
「まあ、今だから言えることだけどね。もう、兄さんは死んじゃったし」
「ああ……そうなんだ」
ルイージと話していることで、マーニャは自分のスタンスが揺らいでいることを自覚していた。
マーニャもルイージも、自分の双子の兄妹を貶めようとしているという点は共通していた。
ルイージは何らかの答えを見つけたらしいが、私はどうなのだろうか?
生還のためには殺し合いにだって乗る、そこまで考えておきながら何かしたわけでもなく。
元来のお人好しが災いしてか、結局襲われてる参加者を二度も助ける側に回って。
挙句、ミネアの死で自分の中にぽっかりと穴が開いたような気分になっている。
悪事を擦り付ける利用対象がなくなって、我が妹ながら不甲斐ない……
頭ではそうやって非情を保っているはずなのに。
「じゃ、僕はもう行くよ。マーニャだっけ?君も死なないよう、気をつけてね」
そう言ってルイージは荷物をまとめ、アシェンの逃走した方向へと歩き出す。
どうにも気が抜ける男だ。大丈夫なのか、あいつは。
それより私はこれからどうしよう。ミネアもいないし、錫華もいなくなってしまった。
これ以上この辺で立ち尽くした所で、何もやることがない。
……あのルイージって奴、どうも危なっかしくてしょうがない。一人で行かせて大丈夫かしらね?
アシェンも、妹を殺した可能性がある。
錫華も、僅かな間とはいえ一緒に行動していた、心配といえば心配か?理由はいくらでも付けられた。
「やれやれ……しょうがない。しばらく付き合ってやるとするか」
わざとらしく溜息をついて、マーニャはルイージの後を追っていた。
【一日目・5時20分/兵庫県神戸市内/天候・曇り】
【ルイージ@マリオシリーズ】
【状態】健康。ダメージ小。覚醒
【装備】ハンマー、ナイトファウル、ロングトゥーム・スペシャル
【道具】支給品一式
【思考】基本:
ゲーム破壊
1:アシェンを追い、決着をつける
2:楠舞神夜を探し、ハーケンの遺言を伝える
【マーニャ@ドラゴンクエスト4】
【状態】健康、MP消費小
【装備】ふんd……踊り子の服
【道具】支給品一式
【思考】基本:どんな手段を使ってでも生還する
1:ルイージがほっとけないから、とりあえずしばらく面倒見てやる
2:アシェンを危険視、錫華が心配
3:自分のスタンスに若干の疑問
「……あれ?何かを忘れてるような……ま、いっか」
「ハロ、ハロ!」
「ん?」
錫華姫をかついで逃走するアシェンに、丸い物体が跳ねながらついてくる。
マーニャと共に行動していたはずの、ハロだった。
「何だお前は?なぜ私についてくる?」
「オマエト一緒ニイタホウガ、ヴィンデルヤアクセルト早ク合流デキソウナ気ガシタンダ!」
「ヴィンデル?それに……アクセルだと?」
どこかで聞いた名前、そしてよく知った名前が飛び出し、アシェンは驚いた。
ハロは気付いたのかもしれない。アシェンが彼らと何らかの強い因縁を持っていることを。
彼女がWナンバーズ……シャドウミラーから連なる所縁の人物であることを。
「……お前はアクセルのことを知っているのか。ならば、来るか」
「オウヨ!ドコヘムカウンダ!?」
「そうだな。この辺りにはモブ以外の参加者はあまり残っていないようだ」
「ナラ、東京ニムカオウゼ!多分、他ノ参加者モタクサンアツマッテルハズダ!」
「東京か……いいだろう」
アシェンは心を躍らせ、再び走り出す。神夜のみならず、アクセルも壊せる芽を発見した。それで十分だ。
イレギュラー化した今の彼女には、破壊と殺戮は何者にも勝る快楽だった。
【一日目・5時20分/兵庫県神戸市内/天候・曇り】
【アシェン・ブレイデル@無限のフロンティア】
【状態】シグマウィルス感染、イレギュラー化
【装備】なし
【道具】支給品一式、復元光線
【思考】基本:破壊と殺戮
1:東京に向かい、神夜とアクセルを探す
2:神夜とアクセルを壊す
【ハロ@スパロボキャラバトルロワイアル】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】1:アシェンと一緒に行動
2:ヴィンデルかアクセル、あるいはユウキを探してまた弄り倒したい
【錫華姫@無限のフロンティア】
【状態】気絶。左腕骨折、顔面強打、背面部裂傷
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】1:……
「……ところで、誰か一人忘れていたような気がするが……ま、いーよね!」
さて……今回の話、誰かを忘れていないだろうか。
この場にいるべき、あと一人の人物の描写が、丸々省かれているのである。
ハーケン、アシェンと共に行動していた女子高生……
柊かがみ。
彼女はどこに行ってしまったのか?
「おっと、マイシスターが何かを見つけたらしい。俺達の追ってる連中かもしれない」
「……」
「しばらく、どこかに隠れてな。戦いになるかもしれないからな」
「……殺すの?」
「まさか。俺達はこの馬鹿げたゲームに乗っているわけじゃない」
「……でも、あのアシェンって人は」
「……殺しはしないさ。そう、俺が殺させない」
ルイージと遭遇する直前、ハーケンはそう言って、かがみを戦場から離した。
そして彼女は、今回の戦いの一部始終を、少し離れたビルの影から隠れて覗くという立ち位置に収まることになる。
しかし……今の彼女を一人にするのは、あまりにも危険すぎた。
つかさが、こなたが、日下部が、さらに黒井先生までが放送で呼ばれ。
加えてアシェンと、それに伴うハーケンへの不信で、既に彼女の精神は崩壊寸前のところまで来ていた。
アシェンが、緑のヒゲを殴りつけた。
なんだ、やっぱり殺すつもりなんじゃない。
ハーケンが声を張り上げてアシェンを止めている。でも止め切れてない。
アシェンは何でああも楽しげにしていられるんだろう。どう考えてもありゃまともな神経じゃない。
そもそも、あの二人の格好はおかしい。何なんだろう、あのコスプレは。
特にアシェンなど、よくもあんな奇抜な格好ができるもんだ。しかも時々露出度が高くなったりするし。
そうこうしてるうちに、新勢力が乱入してきた。
あいつ、最初に私達に襲い掛かってきたふんどし女じゃない。
なんであんな恥知らずな格好ができるんだろう。あれが踊り子さんか何かにしても、普通上着とか着るわよね?
そしてふんどし……あ、もう一人出てきた。どうやらハーケン達の探してた錫華姫って人らしい。
あの人達の仲間だというだけあって、ヘソやら腰やら出るとこ出まくりである。
……何だろう、この光景。この殺伐とした殺し合いという状況の中で、あの露出狂達は何なのか。
なんであんな風に、軽いノリで言い合っていられるのだろうか。
それとも……
彼女達のように振舞えば、私もこの苦しみから逃れられるのだろうか。
擦り減らした神経は彼女を現実から逃避させ、心の中の何かを壊し始める。
後の状況は、かがみの頭の中には入っていなかった。
ハーケンが殺されて、アシェンが逃げ出して。
気が付けば、殺し合いに乗ったふんどし女と、そいつと手を組んだらしい緑のヒゲだけが残ってた。
その場には、もうかがみの居場所はなくなっていた。
やがて二人もアシェンを追って移動し、そこにはかがみ以外は誰もいなくなっていた。
――アシェンや、ふんどし女や、錫華姫のように振舞えば、苦しみから逃れられるのだろうか。
振舞う?どんな風に?……あの女達の共通点はなんだろうか。
考えるまでもない。『露出狂』ということだ。
ならば……試しに服を脱いで――
「……って脱げるかぁぁぁぁぁ!!!」
慌てて絶叫し、思い止まる。いくらなんでも、これじゃただの変態だ。
彼女の常識と倫理観が、当たり前のようにストップをかける。
……だが、本当に当たり前なのか?
だったらあの女達は何なのだ?ここで出会った女は皆、露出度の高い怪しい格好ばかりではないか。
このバトルロワイアルでは、むしろそっちのほうが自然なんじゃないか?
ほら、コミケで奇抜なコスプレしてても違和感なく感じられるように。
私の常識のほうが、この場ではむしろ浮いているのではないだろうか?
そうなの、こなた?そうなんでしょ?
何かに導かれるように、かがみの手が衣服の中へと動いていった。
背中のブラのホックに手をかけ……外す。
昔を思い返す。
以前はアニメショップなんて前を通るだけでも抵抗があったくらいなのに。
こなたの付き添いで頻繁に足を運ぶようになってから、特に抵抗もなくなっていた。
ブラジャーが肌を伝って下がっていき、やがて地面に落ちた。
彼女の服の上から二つの突起がうっすらと見えるようになった。
何だろう。下着を一つ外しただけなのに、おかしな解放感がかがみの中に生まれていた。
自分を縛っていた何かが、ブラと一緒に外れたかのような。
今度は、スカートの中に手を入れる。
もう一枚の下着のほうに、手をかけた。
最近、こなたによく言われるようになっていた。
「かがみも十分オタクだよね~」と。
そんなはずはない。年中その手の話ばかりで、私はそれを聞かされ、突っ込んでいるだけだ。
……でも、本当にそれだけだっただろうか。
いつしか、私もあいつに染められていたんじゃないだろうか。
震える手で、パンツを下ろしていく。
ゆっくり、ゆっくりと。
若干の躊躇が感じられたのは、背徳感からか。
だが、下りていくごとにその躊躇は薄まっていき……
膝にかかった頃には、ほとんどなくなっていた。
そしてやがて、パンツはかがみの手を離れ、地面に落ちる。
大きく、深呼吸。震えは、いつの間にか止まっていた。
代わりに、心臓の鼓動が高鳴る。得体の知れない期待感が、かがみを満たしていた。
これでいいんでしょ?
周囲の違和感が、いつしか違和感ではなくなるように。
私も、周囲の空気に溶け込めばいい。そうしたら、新しい世界が開けるかもしれない。
ましてや、ここはどうやら私達の世界とは別の世界だ。
いいよね?いいんだよね?ほら、旅の恥はかき捨てだとか、よく言うし。
風が吹いた。パンツとブラジャーが、風に乗って飛ばされた。
同時に、かがみの身体にも吹き付ける風が新たな感覚を与えていた。
覆う物がなくなった下半身がスースーして、冷たい。
でも、何だろう。全身に、たまらないゾクゾクが走り抜ける。
さっきまで自分を縛り続けていた恐怖や悲しみが、上書きされていく。
服の上から見える二つの突起が、よりはっきりとわかるようになっていた。
ふと、視線を横に移す。ハーケンの死体があった。
頭の中で何かが一線を越え、現実から目を逸らした彼女は、その無惨な姿に感情を動かすことはなかった。
そのハーケンの死体に向けて……
スカートをめくり上げる。その下には、なにもはいてない。
ただそれだけの行為で、動悸が激しくなる。頬が紅潮し、呼吸も荒くなる。
見て欲しい。誰かに見てもらいたい。もっと誰かに、死体ではなく生きている誰かに。
このまま全てを脱ぎ去ってしまえば……今以上の快感が得られるのだろうか?
『朱に交われば赤くなる』……そんな諺がある。
赤くなってもいいんだよね、こなた?
【一日目・5時30分/兵庫県神戸市内/天候・曇り】
【柊かがみ@らき☆すた】
【状態】健康。興奮。
【装備】大根(@魔界天使ジブリール)
【道具】支給品一式
【思考】基本:露出の悦楽をもっと知りたい
1:誰か見てくれる人を探してみる
2:そういや支給品、大根なんだっけ。そうかぁ、大根かぁ……
※ノーパン、ノーブラです
「はは……あはははぁ~ん……」
一方その頃、修造はただ一人、あてもなく歩き続けていた。
結局、ルイージにかける言葉が見つからないまま別れてしまった
修造自身もまた、人の死という現実に直面し、悩み苦しんでいたからだ。
戦争もない、平和な日本で生きる彼にとって、取り巻く状況はあまりに重すぎた。
目の前で兄を殺された男に、自分の言葉がどれだけの慰めになるというのだ。
それでなくとも、自分の声は初めからルイージに何一つ届かなかった。
彼の深い苦悩に、何も知らない自分が踏み込める資格があるというのか。
結局の所、安い自己満足だ。ルイージを立ち直らせられるほど、自分の言葉には中身がなかった。
「バトルロワイアル、かぁ」
どれだけ、ルイージから離れただろう。修造は立ち止まり、ここに至るまでの出来事を思い返した。
ミネアがあの緑の女に蹴り殺された時の光景が目に浮かぶ。
酷いもんだった。少し前まで普通に話してた女性が、ただの肉片になった。
そして二度目の放送で彼女の名前が呼ばれて……いや、最初の放送でマリオが呼ばれた時からそうだ。
この殺し合いが紛れもない現実であることを受け入れざるを得なかった。
「はは……まさに人生崖っぷち……だよなぁ……」
そう言って笑う彼の目は、イキイキとは程遠い、生気を感じられるものではなかった。
その時。
「ん……ぶわっぷ!?」
ちょうど風下にいた修造の顔に、布のようなものが飛んでくる。
なんだこれは。これは……ギャルのパンティだ。
「クンカクンカ……フオオオオオオオオオ!!!!!」
修造は再び燃え上がった。
何か方向性が決定的に違うような気がしたが、とにかく彼の中に活気が戻ったんで、まあ良し。
【一日目・5時40分/兵庫県神戸市内/天候・曇り】
【
松岡修造@現実】
【状態】健康。精神疲労。極度の興奮状態
【装備】かがみのパンツ(頭部に)
【道具】支給品一式
【思考】
1:熱くなってきたー!俺もう何やっても大丈夫だ!!
※7期とは別人です
最終更新:2011年02月10日 00:44