「はぁはぁ……積極的に殺人だなんて、少しは頭冷えたかしら?」
「……むしろ燃えて熱いんだけど」
「た、たすけてー!」
魔法少女と魔女、そしてアルター使いの戦いは魔女の勝利で終わった。
いくらネルの肉体が強化されているとはいえ、首から上が未強化なのが致命的だった。
相手は本物の魔法を使う歴戦の上級魔女。杖の打撃もかなりの威力だったのだ。
ネルは筋肉から煙をあげ、頭には大きなこぶができて、さらに正座をさせられた。
休戦のためにキュゥべえ(以下QB)は殺されず、彼の支給品だった有刺鉄線で束縛された。
そしてジグマールは早々に戦いから離脱していた。ある意味それが一番正しい選択だろう。
「全く……その淫獣が何を吹き込んだのか知らないけど、貴女の願いってなんなの?」
「……戦闘力B、レンきゅんが見ても反応する可能性は0……いいわ、教えてあげ
「心の声が表に出てたわよ。丸焼きにしてあげましょうか?いいから素直に教えなさい」
◆
「……要するに、愛しの彼の好みがわからなくて不安で、でも最終的に結ばれたいのね?」
「そうよ!そのためにはQBがまだ必要なの!」
ネルは結局、自分の行動方針をアルティに打ち明けさせられる。
全てはレンきゅんを手に入れるためだと、ネルは信念を持って答えた。
「馬鹿ね……愛の魔法に関しては私のほうが先輩だから、一言言わせて貰うわ。
貴女、根本的に間違っている」
「なっ!どこがよ!?」
だがアルティはネルの言葉を一蹴し、諭すように言葉を続けた。
「もし、仮に貴女が邪魔者を全て排除できて、愛しい彼と結ばれたとして……
彼は、周りの人は喜ぶ?いいえ、殺人狂の夫とその彼まで罵られ、避けられる。それで幸せ?」
「!!」
「愛の魔法は誰かを幸せにする魔法。魔法は使い方を誤れば悲劇しか生まないの……」
ネルはショックを受ける。
全ては自分とレンきゅんが結ばれるためだと思っていた。
彼に近寄る悪い虫を全て叩き潰せばいいと思っていた。
だけど、それは全部自分中心の発想。肝心の相手の気持ちを全く考えていなかった。
「で、でも私はどうしても……!」
「貴女、もっと自分に自信を持ちなさい。せっかくかわいいんだから。
それにとっても一途。愛すら人のためだったら何だってできる強さを持っている。
QBの力を借りなくても、十分な愛の強さ。
彼を誰かにとられないか心配?取り返せるわ。貴女の愛の炎は、誰にも負けないものなんだから」
自分に自信を……
そうだ、自分はレンきゅんを愛している。自惚れでもなく断言できる。
この世界の誰よりも、他の家族の誰よりも愛している。
愛の強さの勝負なら、真っ向から正々堂々挑んで負ける道理がない。
そうさ、ルカ達より胸が小さくとも、大切なのは体じゃない、愛の強さ、想いの強さ!
ああ、私は一体何に惑わされていたんだろう……
ネルの中で、何かがふっきれた。
◆
「……ありがとう師匠!おかげで目が覚めたわ!」
「し、師匠?」
「うん、筋肉の師匠はもういるから愛の魔法の師匠かな。
私、愛の魔法でレンきゅんを絶対に幸せにしてみせるわ!」
晴れ晴れとした笑顔で、ネルは立ち上がる。
「でもまずはレンきゅんを見つけないと。今もどこかで悲しみにくれていたら……」
「そうね……こんな世界、彼の命を狙う奴もいるでしょうね。
幸い貴女は戦う力を手に入れてる。敵を壊すんじゃなくて、彼を守るために力を使いなさい。
それとこれは、新しい愛の魔法の使い手への餞別……持っていきなさい」
アルティがネルの胸に触れ、魔力を流し込む。
「これは……凄い、なんだかさらに愛の力が強くなった気がする!」
「私の愛の魔法の力を分けたわ。これでQBがいなくなっても魔法が使えるはず。
愛の魔法の強さは想いの強さに直結している。貴女ならすぐに使いこなせるはずよ。
でも蘇生魔法は止めときなさい。私ももう魔力残ってないし、失敗したら大変なことになるから」
「ありがとう師匠。このたぎるラヴ・パワー!待っててねレンきゅん!」
「一緒にいて守ってあげたりすれば、愛もより深まるわ。……最終手段で既成事実を作るのも手だけど。
とにかく頑張ってね。貴女達の幸せを祈っているわ」
「「愛の魔法に不可能はない!」」
そう高らかに宣誓し、二人は別れた。
【一日目・6時45分/東京都/天候・雨】
【亞北ネル@VOCALOID派生】
【状態】魔法少女、首から下は超肉体、頭にこぶ、魔力上昇
【装備】妖しく光る肉体、金のブーメランパンツとマント
【道具】支給品一式、他不明
【思考】基本:この世界のレンきゅんと結ばれる
1:レンきゅんをみつけ、守る
2:魔法を正しく使い、レンきゅん達が幸せになれるようにする
3:ただし反撃が必要な時は容赦しない
「頑張ってね、ネル……さてと」
ネルが凄まじい速度で走り去るのを見届けるアルティ。
その姿が見えなくなったところで、彼女は後ろへと振り向いた。
その先には、縛られたQBが転がっている。
「私の愛の魔法に(笑)をつけただけじゃ飽き足らず、純粋なネルの愛まで利用するなんて……
貴方、覚悟はできてるんでしょうね?」
炎を撒き散らしながら、アルティはゆっくりとQBに近寄り……
「ぁぁああ……!なんだかこのトゲトゲが体に食い込んで気持ちいぃ!」
「まさか目覚めたの!?」
逃げ出した。
【アルティ@Luminous Arc2】
【状態】健康、覚醒後、魔力消費(大)
【装備】炎杖エクリクシス
【道具】支給品一式、他不明
【思考】
基本:愛の魔法で世界を救う
1:キュゥべえは放置
※蘇生魔法は当分使えません
雨にうたれながら、新たな世界、未知なる感覚を手に入れたQBはただ転がり続ける。
「……放置プレイか。それもなかなかいいね」
【キュゥべえ@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】焦げダメージ、火傷、片耳手損失、恍惚、目覚め
【装備】有刺鉄線
【道具】支給品一式
【思考】
基本:この未知なる感覚を楽しむ
最終更新:2011年02月12日 00:49