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「な……なんなのよあの変態2ndは……」

会場の様々な場所の様子をモニターでチェックしていたニアラは唖然としていた。
北海道に、自分が苦戦した変態以上に質の悪い変態がいたからである。
ちなみに主催者本部の機器は独自のシステムで動いているため、デビル電脳の影響は受けていない。

「で、でも主催者として負けるわけには……」


「……ニアラ、少し話がある」

そんなニアラに声がかけられた。
ニアラよりも背が高い、仕方なくタンスの中にあった巫女服を着こんだ銀の髪の少女……
もれなく脱衣拳の美少女化マシンの餌食になった元装真竜ヘイズだった。

ヘイズはニアラを引っ張り、個室へと連れ込んだ。

「な、何よいきなり。私は今、あいつらへの対策を考えて……」
「……確かに強敵かもしれないが、まだ無害。今は目の前の危機を知ったほうがいい」
「危機……?」

ヘイズの言葉にニアラは疑問符を浮かべる。
確かに敵戦力は強大だが、本部にいる限りはまだ安全のはずだからだ。

「落ち着いて聞いて……あの男、脱衣拳は馬鹿のふりをして私たちを油断させようとしている。
今はまだ大丈夫かもしれないけど、いずれ私たちを消す気よ」
「なっ……」

そんな馬鹿なの言葉を言う前に、ヘイズはなおも真面目な表情で話を続ける。

「さっきからあの男、スカイツリースカイツリー煩いから、部下が試しにお茶を持っていった。
そうしたら、反応を示した。カップに描かれた東京タワーを見て、僅かに嬉しそうな顔をしたの。
それで少し疑問に思ってね……調べたら、脱衣拳が何者かと電話していた可能性が浮上。
同刻、予め目をつけていた東京タワーも電話をしていた。内容まではわからなかったけど……
まず二人が何かのやり取りをしたのは間違いない。そうなると次の謎が出来上がる。
あの男は今や主催者。転送装置を使えば、東京タワーをここに連れてくることもできるはず。でもしない。
ロワ会場よりも、本部の方が安全なのは明らかなのに……つまり、彼女はあの場に残らざるをえなかった」
「そんなにアイドルが誕生するのを見たかったってわけ?」
「……ニアラ、人間になって神の頭脳も退化した?」
「何よ!だってあのアイドル企画だって、殺し合いに恐怖して現実逃避した連中の……」
「やはり馬鹿ね。私が最初からマークしてなかったらどうなってたやら……
とにかく、あれはそんな生温いものじゃない。
考えて。ロワを開始して、僅か数分であんな大規模な計画を実行できる?
それに設備、人員、物資……アンチ連盟と同じか、それ以上よ。
それに武器庫まであった。武器の専門家の私でも、あれだけ揃えるのは少し骨が折れる。
もう……理解できた?」
「いや、あんまり……よほど人脈やらアテがあったってこと?」
「はぁ……要約すると、あれは主催者レベルの協力がないと実現不可能ってこと。
真の目的はおそらく、戦力の確保。考えてみればつくづく合理的な方法だ。
アイドルたる者強くあれ……勝ち抜き戦をやらせれば、優れた戦士が生まれる。
力がなければ頭脳、それもなければ技能、特技……最後に残るのは、やはり優れた援護者。
それを説得するなり洗脳するなりすれば、一気に強力な軍団の完成というわけ」
「なるほどね。理解したわ。つまり脱衣拳の奴、私たちの戦力が足りないから……」

ゴッと鈍い音が響く。
ヘイズが頭を抱えつつニアラを一発殴ったのだが、ニアラはその理由がわからなかった。

「この馬鹿……!『カオスロワンアイドルはロワ開始直後から存在していた』!
そして『ニアラが脱衣拳を連れて来たのは第二回放送の時』!
戦力が欲しいなら『私たちドラゴン全員を完全に無力化させる必要』は無い!
つまり最初から脱衣拳は、主催を乗っ取りに……いや、放送の時に名乗ってしまっているから、
乗っ取りを計画している誰かの手駒という線が強い!
自らは表舞台に出ないで、戦力を増強させつつ、誰からも怪しまれず、恨まれず、狙われず……
真の意味で安全なところから、バトルロワイアルを円滑に進ませようとしている黒幕の……
私たちは邪魔者でしかない。だけどロワな以上、参加者の注意をひく主催者は必要……隠れ蓑となるね。
だから脱衣拳は私たちを人間にするだけで、殺しはしなかった。だからまだ生かされている。
……カオスロワンは、アンチ連盟幹部の右代宮譲治を本気で迎撃している点から見て、
アンチ連盟とは協力関係にはない。私兵候補を殺されては意味がないということかもしれないが……
とにかく、アンチ連盟を潰しに行くはず。恐らく、アイドル候補を騙して動かしてね。
同じアイドルを目指していた黒衣マトを殺したのはアンチ連盟だとでも言えば、動くはず。
そして邪魔なアンチ連盟が滅ぶ頃には……私たちは完全なる用済み、一網打尽にされる……」

ヘイズの長い話が終わり、ニアラは何も言えなかった。
全てが推測に過ぎず、ましてや自分たちがいいように利用されたことを信じたくなかったのだ。

「信じられない?なら、追加の疑惑。ニアラに渡した死亡者リストには死者の名前しかないけど……
一部を除けば、実は加害者の名前もわかっている。そして黒衣マトを絞殺したのは……東京タワー。
それと、さっきの脱衣拳の姿を見て違和感を感じたはず。
……私たちをこんなにしたマシンが、装備から消えていた。
本部内に破棄された形跡無し、転移装置も使われた形跡無し……
多分、黒幕に報告か何かをしに行って、その場で落としたか破棄したと考えるのが妥当ね……」

今度こそ、ニアラは言葉を失った。

「それじゃあニアラ、悪いけど私とはここでお別れ。ニアラも自分で考え、動くといい」
「ど、どこに行くつもりよヘイズ!?」

話を終えたヘイズは、手早く荷物を纏め始めた。
一振りの剣に、ロワ参加者全員に配られた支給品一式、そして……首輪。

「私は……自分の推理が正しいと思っている。この本部でぼんやりしててもいずれ殺される。
戦うにしても、今の私たちはもはや少し特殊な力を持つ、ただの人間……認めざるをえない。
一参加者としてロワ会場に行って、誰かと戦って、人間の姿での経験値を積まなければ勝ち目は0。
勿論、会場で戦って負け、死ぬことも当然あるだろう。それがバトルロワイアル。
でも、名乗らず姿も見せない奴に、いつ殺されるのか怯え続けるより数段マシ。
それが元装真竜としての私の意地。運がよければ……黒幕に一矢報いれるかもしれないしね」

そう言い残し、ヘイズはどこかの県へと転送されて行った。
あとには、友の推測を聞き、これから自分は一体どうするべきなのか……
それを考え続ける主催者だけが残された。

【一日目・7時/某所・主催者本部/天候・不明】

【ニアラ@TCBR】
【状態】健康、主催者、美少女 、メイド服、グラハム(レンチ)に嫌悪感、混乱
【装備】不明
【道具】不明
【思考】基本:????



(ついたか……いきなり東京都は危険と思って隣県にしてみたけど、これからどうしよう?
残された私の能力は……せいぜい体の軽い金属化と、ラーニングくらいか……
戦いつつ、且つ低い生存率を少しでも上げるには……やはり対主催として誰かと行動するのが一番ね。
ふっ……主催者の仲間である私が対主催とは、笑い話にもほどがある……
だが、黒幕を討つという意味では対主催と同じ思考なのか?
ま……今の私は堕ちた神、ただの人間、狩られる側だ。
人間は人間らしく、小さな抵抗をさせて貰うとしよう……)

【一日目・7時/静岡県/天候・雨】
【ヘイズ@TCBR】
【状態】健康、美少女、脱衣拳たちを警戒、
【装備】キャリバーン、巫女服
【道具】支給品一式
【思考】
基本:このバトルロワイアルの黒幕に一矢報いる
1:対主催の参加者を探して、共に行動
2:力をつける
※脱衣拳たちの裏に黒幕がいると睨んでいます
最終更新:2011年02月12日 17:36