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逃走したアシェンを追跡中のルイージとマーニャだったが、すっかりアシェンの姿を見失っていた。

「出発までに時間取っちゃったし、しょうがないわね」
「参ったなぁ。手がかりもないし、どうしたものか……」

途方にくれる二人の耳に、やがてガタンゴトンと、電車の走る音が聞こえてくる……
ちょうど線路の見える場所を歩いていた二人は、その音に導かれて線路に視線を向けた。

電車の代わりに、宿屋が線路を走っていた。

「……は?」
「な、何あれ……」

そう、宿屋である。三階建ての建物が、線路の上を電車のように走っていたのだ。
宿屋は、どうやらすぐ近くの駅に停車したようである。

「何なんだ一体……ちょっと行ってみよう」
「うーん……あの宿屋、どっかで見たことあるような……」


  #  #  #


「ようこそ、旅の宿へ!!お泊りですか!?」

駅のホームに停車した動く宿屋を訪れた二人。
中に入ると、年端も行かない少女の元気な声に迎えられた。
彼女はこの宿の主であり、そしてマーニャにとっては知り合いでもあった。

「あんた……リッカ!?もしかして、リッカじゃないの!?」
「マーニャさん!?マーニャさんもこのロワに参加してたんだ!!」
「マーニャ、この子知ってんの?」
「前にこの宿に泊まったことがあるのよ。道理で、見た宿だと思ったら」

意外な再会を懐かしむマーニャとリッカ。そこに、エレベーターから新たな女性が姿を現す。

「いらっしゃい。……あら、随分懐かしい顔が」
「ルイーダさん!見て、お客さんだよ!しかもマーニャさん!」

宿屋の若き主リッカと、酒場の女将ルイーダ。
この動く宿屋での出会いにより、ルイージの運命は新たな転機を迎えようとしていた。
というか。ルイージとルイーダが出会ったという時点で、既に嫌な予感が彼の中を駆け巡っていた。


  #  #  #

宿屋の3階の一室に集まって、情報交換をすることになった4人。
部屋には電車でGO!のコントローラーっぽいものが置かれている。
どうやらこの部屋が、この動く宿屋の「操縦室」らしい。

「それにしても、閑古鳥鳴いてるわねー。あれだけ繁盛してた宿が嘘みたいだわ。
 まあ、こんなロワの中でゆっくり宿に泊まろうって人自体、普通は……」
「う……うわぁぁぁぁぁぁん!!!」
「ちょ、ちょっとリッカ!?何も泣き出さなくたって!」

マーニャの宿に対する率直な感想に、突然号泣するリッカ。
慌てるマーニャをよそに、ルイーダがリッカを慰める。

「ほらリッカ、泣かない」
「な……何かあったの?」
「そうね……私達の宿が繁盛していたのはもう昔の話。
 今や客足は完全に途絶えたわ。誰も、この宿を利用しようとする者はいなくなった。
 ロワだから、じゃない……もうずっと前から、ね」
「え?え?なんで?」

ルイーダは語りだす。リッカの宿屋が急速に衰退していった、その経緯を。

ドラゴンクエストⅨ……発売直後は大きく盛り上がった。
4日で300万本を記録し、シリーズ最多のセールスを突破した。
その中でも特に盛り上がった要素の一つが「すれ違い通信」だった。
このシステムにより、すれ違った人のキャラを呼び込みと称して、リッカの宿屋に客として
招くことができる……宝の地図のシステムと相俟って、大盛況を迎えた。
だが、その盛況は永遠に続くものではない。流行はいずれは廃れるものである。
発売されてから一年半が経過した。配信クエストも終了して久しい。
ドラクエ9をプレイする人は徐々に減り、ましてやすれ違いなど今や皆無。
すれ違いがなければ、当然リッカの宿屋にも客が入ることはない。
客が入らなくなった宿屋は……衰退していくしかなかった。

「あんたの所の集客はすれ違い頼りだったからねぇ……」
「いつも呼び込みに行ってくれてた私の友達も……ひっく……
 最近は遊びにすら来てくれない……ずっと一緒に頑張ってきたのに……
 最後のほうは一緒に冒険したこともあったのに……うぇぇぇっ……」

泣き崩れるリッカ。ああ、耳が痛い。
これ読んでるドラクエ9の元プレイヤーの方!もうどれだけドラクエ9を起動してませんかー?
たまには遊んであげてください。リッカは寂しがってますよー。

「ほら、泣かないで。気持ちはわかるけど、だからってこのままロワの中で死んだりしたら、
 再起することもできなくなっちゃうだろ?諦めちゃダメだよ」
「ぐすっ……大丈夫、わかってます。私だって諦めたわけじゃありませんから」

ルイージの慰めに、しかしリッカの目は、赤く泣き腫らしつつも強さを失ってはいなかった。

「何だかんだでタフねぇ、この子……で、どこまで話したんだっけ?ルイーダさん」
「ああ、話が逸れたわね。それじゃ、本題に入りましょうか」

仕切りなおし、リッカとルイーダは語り出す。このロワにおける、現在までの彼女達の経緯を。

「私とルイーダさんも、このロワに参加させられました。
 その際、私に支給品として与えられたのが、セントシュタインのうちの宿屋だったんです」
「この宿屋が支給品ねぇ……まあこのロワじゃ別に珍しくもないけど」
「でも、この建物に移動する機能なんてなかったわよね?」
「それは、私の支給品による効果よ」

部屋の中央に置かれたコントローラーに手をかけながら、ルイーダは動く宿屋のカラクリを説明する。
それは彼女に支給されたドラえもんの秘密道具「ブルートレインセット」によるものである。
(ちなみにこれは仮名。道具の正式名称は原作でも明かされていないため不明)
今は亡きブルートレイン「さくら」のヘッドマークを模したワッペンを建物に貼りつけるだけで、
その建物を電車のように、自由自在に移動させられるのだ。
本来この道具は夜しか使用できないらしいが、主催の改造により24時間常に使用可能のようである。

「で、ここにあるこのコントローラーで操作できるの。
 移動中は四次元空間に入ってるらしいから、障害物には当たらないし攻撃を受けることもないわ」
「四次元に入ってるなら別に線路を走らなくてもいいんじゃ」
「細かいことはいいのよ!何にせよ、移動可能な電車風宿屋というのは大きな特色になるわ!
 この機能を前面に押し出せば、さらなる集客が期待できるわね!」
「特急電車のスピードで走ってちゃ、集客もへったくれもないと思うけど」
「ていうか、集客って……このロワでも宿の営業続ける気なわけ?」
「もちろんです!」

力強く頷くリッカ。なんとも商魂逞しい娘である。
それを後押しするかのように、ルイーダは彼女の言葉をフォローする。

「絶望的な状況に置かれた私達の宿にとって、このロワは千載一遇のチャンスとなりえるわ。
 カオスロワなら、否応なしに人が集まる。なんとしても、彼らを呼び込みたいわね。
 というわけで、私達は客を集めるために、東京に向かっているわ」
「なんで東京に?」
「答えは簡単、人が集まってるからよ。地方じゃお客どころか、人っ子一人全く見当たらない。
 私達のスタート地点は九州だったけど……まるでゴーストタウンのような有様だったわ」

そうである。
このカオスロワ8期、既に300もの話が投下されてるというのに……
未だに九州・四国を舞台にした話が皆無にも等しかったりする。
そもそも話の大半が東京他関東地方に思いっきり集中してたり……
誰もいない場所では、待ってても客なんて来ないというものだ。
とにかく、人が集まる場所に行かなければ話にすらならないのが現状である。
その点はドラクエ9のすれ違い通信と同じなのだ。
地方でのすれ違いって、ほんと絶望的なんだから。いや、マジで。

「というわけでせっかくだから、ルイージさんとマーニャさんにも協力してもらうわ」
「なんで!?私達客なんだけど!?」
「あのー……悪いけど僕達他にやることが……」
「大丈夫ですよ!この宿屋が大きくなれば、対主催からマーダーにステルスまでいろんな人が集まります!
 そうなればお探しの神夜さんという人も、アシェンとかいう悪い人も、すぐ見つかりますよ!」
「マーダーやステルスまで呼び込む気なのか……」
「冗談じゃないわよ!なんで私が宿屋の従業員なんかやらなきゃいけないわけ!?私降りるわ!」

一方的に協力を強いる二人に、ルイージは呆れ、マーニャは怒り出した。
だが、歴代ドラクエキャラの接待を熟知しているルイーダが、マーニャにそっと耳打ちする。

「マーニャさん……ドラクエ9発売直後に、確かこんな噂が流れたわよね?
 宿屋を最高まで大きくさせると、地下にカジノが造られる、と……」
「カジ……ノ……?」ピクッ
「そうよ。もしも、その噂が現実になったとしたら?」
「!!!!!!」
「ここで働いてれば、空いた時間はカジノで遊び放題……
 そうねぇ……今うちを手伝ってくれたら、特典としてコイン1万枚がついてくるわよ?」
「……ごくり」

唾を飲み込むと、マーニャは部屋を飛び出し階段を駆け下りる。
地下まで一気に駆け下り、泉があったその場所は……

スロット、ポーカー……色鮮やかなネオンが光り輝くその場所は。
そこは間違いなく、マーニャにとっての桃源郷だった。

やがてマーニャは目を輝かせながら、再び3階の皆のいる場所まで戻ってくる。

「ルイージ、やるわよ!!私達の手で、この宿を大きくしてやろうじゃない!!」
「へ?」
「一緒に頑張りましょう!この宿を立派に育てて、お客さんを、そして仲間を集めて!!
 ゆくゆくは対主催の一大拠点に育て上げるんです!!」

カジノに目が眩んだマーニャ、純粋な想いを燃え上がらせるリッカ。
そして何か不敵に笑ってるルイーダを前に、ルイージは逃げ場がなかった。

「さて……私はこの宿屋の操縦のために、移動中はこの部屋から動くことができないわ。
 だから、通常の宿屋の業務に着手する余裕がない」
「はぁ。そりゃ大変ですね」
「でも心配はいらないわ。今なら、私の後釜として心強い人材がいる……
 そう……ルイージさん、あなたには、酒場のマスターとしての才覚があるわ!!」
「………………はぁ、そうですか」

才覚がどうこうという突っ込み以前に、もうこの後の流れが読めた。
溜息をつくルイージ。そして、その予感はさも当然のごとく的中することになる。

「数多くの仲間が集まる酒場!ルイージさんにはそのマスターを勤めて貰います。
 名づけて……ルイージの酒場!!」
「結局それやらせたかっただけかぁぁぁ!!」

ルイージの絶叫轟く中、リッカは朝日に向かって決意を新たにする。
このカオスロワを舞台に心機一転、再び栄華を取り戻して見せることを誓って。

「さあ、私達の新たな第一歩よ!!頑張りましょうね、ルイージさん!」

【一日目・7時00分/リッカの宿屋(現在滋賀県を運行中)/天候・晴れ】

【ルイージ@マリオシリーズ】
【状態】健康。ダメージ小。覚醒
【装備】ハンマー、ナイトファウル、ロングトゥーム・スペシャル
【道具】支給品一式
【思考】基本:ゲーム破壊
   1:しょうがないからしばらくリッカの宿屋を手伝う
   2:アシェンを追い、決着をつける
   3:楠舞神夜を探し、ハーケンの遺言を伝える

【マーニャ@ドラゴンクエスト4】
【状態】健康、MP消費小
【装備】ふんd……踊り子の服
【道具】支給品一式、カジノコイン1万枚
【思考】基本:どんな手段を使ってでも生還する
   1:リッカの宿屋を手伝う。カジノで遊びたい
   2:ルイージがほっとけないから、とりあえずしばらく面倒見てやる
   3:アシェンを危険視、錫華が心配
   4:自分のスタンスに若干の疑問

【リッカ@ドラゴンクエスト9】
【状態】健康
【装備】リッカの宿屋
【道具】支給品一式
【思考】基本:宿屋を繁盛させ、対主催の拠点にする
   1:関東方面へ向かう

【ルイーダ@ドラゴンクエスト9】
【状態】健康
【装備】ブルートレインセット
【道具】支給品一式
【思考】基本:宿屋を繁盛させ、対主催の拠点にする
   1:関東方面へ向かう

※リッカの宿屋の地下はカジノになっています
最終更新:2011年02月12日 23:31