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雨が降り続ける。
この殺戮遊戯の無情さを象徴するかのように、降り注ぐ。
フォルカはその中で、ただ一人雨に打たれ続けていた。
その心は、己の無力さに打ち震えていた。

今、彼は一人だ。
二人の同行者とは、場所を離している。

――嘘です、こんなの……ハーケンさんが、死ぬわけないじゃないですか!
――お嬢様……が……い……いやあああああああああ!!!

恋人の死に崩れ落ちる神夜。仕える主人の死に叫ぶ美鈴。
そんな二人に対し、フォルカにはかける言葉が見つからなかった。
大切な人をあまりに理不尽な形で奪われた彼女達に、今の自分の言葉がどれだけ届くというのか。
フォルカは彼女達が落ち着くまで、二人をそっとしておくことにした。
二人とも、強い心を持っていると思う。きっと、立ち直ってくれるはずだと信じて。

拳を握り締め、前へと突き出す。
こんな悲しみが、今もどこかで同じように広がっている。
今すぐにでも主催のもとに乗り込み、奴らを打ち砕きたい。
この拳があれば――決して、不可能な話ではなかった。

「確かに、あなたの拳で次元の壁を破れば……主催のもとまで行くことは不可能ではない」
「!?」

突然、フォルカの耳に届いた声。雨の音に混じりながら、はっきりと聞こえた男の声。

「主催の場所さえ特定できれば可能かもしれません。修羅王でもあるあなたなら。
 だがそれを行うには多大な覇気を消耗する。使えるのは一度きりでしょう」

そうだ。この手を使うには今は時期尚早。だが、この声はなぜそれを知っている?
空気が張り詰める。フォルカの中で緊張が高まる。

「そして闘気転生……心に刻んだ相手の力を体現する奥義をも使用可能。
 いえ、条件さえ整えば、このバトルロワイアルで失われた全ての魂までも味方にできるかもしれない」

闘気転生のことまで知っている。誰だ?
匂いで感じる。この声の主は……自分と同じ、修羅だ。

「原作でも使用しなかった、実際の所本当に使用できるかどうかすらも怪しい、
 ラスボス級の大技の使用を当たり前のように許されるあなたの姿は、もはや異常だ。
 そんな裏技的とも言える能力に、しかし本来あるべき制限が一切加えられないという時点で、
 あなたの力はある意味では異質とすら言えます。
 ……それだけの力を持ちながら、あなたは未だ動こうとしない」

そして……この男は、自分に良い感情を持っていないことは、わかる。


「この殺し合いに憤りを感じるなら、何故あなたは動こうとしないのです?
 あなたがもっと早く動いていれば、少しでも犠牲者を減らすこともできたかもしれない」

その言葉の一つ一つに、確かな苛立ちも感じ取れた。

「買い被りすぎだ。現実は、そう甘くはない」
「はい。甘い考えであることは重々承知です。ですが、それでも……」
「……俺は、今自分にできることをやっているだけだ」
「本当に、そう言えるのですか?」
「……何者だ。何故、俺のことを知っている」

雨は次第に小降りになっていき、やがて止む。
雨で遮られた視界が開け、周囲の景色がはっきりと見られるようになった。
そして。
フォルカの前に、赤い髪の男が立っていた。

「私はあなたと同様、修羅の者です。フォルカ殿。
 そして、このバトルロワイアル……主催者の、手の者です」

赤き修羅……アレディ・ナアシュは言った。

「主催側の人間……だと!?」
「はい。殺し合いを進行・煽動するために遣わされた、いわゆるジョーカーです」

二人の間に戦慄が走る。
フォルカはその言葉が嘘ではないことを察した。こんな嘘をいう理由がない。
何より、真っ直ぐにフォルカを見据えるアレディの目は、嘘を言う者の目ではなかった。

「貴様……何故こんな非道な真似を!!」
「その言葉、甘んじて受けます。自分達の行為は、決して許されることではない」
「既に多くの命が失われた……美鈴と神夜の大切な人達も殺された!!
 どれだけの悲劇を生み出したか……彼女達の悲しみが、わかっているのか!?」


   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


神夜の名が出た時、ほんの僅かにアレディの表情が曇った。
ハーケンの死に、彼女はさぞ悲しんでいることだろう。
主催側にいる者の考えることではないが……かつて共に戦った仲間として、声の一つもかけたい。
だが、それは許されない。今の自分は、もう彼女達とは別の道を進み始めているのだから。



放送が終わって、この会場に降り立つ直前、ネージュ姫に言われた。
神夜とは直接顔を合わさないほうがいい。
合わせてしまえば、多分……決意が鈍る、情けが移ると。
それを抜きにしても、下手に正面から挑めば、自分という敵を前に、逆にフォルカ達の結束を促すことになる。
無論、その中に神夜をも巻き込んで。
それでは、出向いてきた意味がない。フォルカ・アルバーグをさらに調子付けるだけだ。
だが、アレディは器用な駆け引きの行える男ではない。彼自身もそれを自覚していた。
だから、フォルカが一人になるチャンスを待って、接触した。

「答えろ、ジョーカー!!」
「……その問いをそのまま、お返しします。彼女達の悲しみ……本当に理解できているのですか?」
「何だと……!?」
「そして……本当に、この殺し合いに憤っているのですか?
 あなたは本気で、このバトルロワイアルに抗う気があるのですか?」
「ふざけるな!こんな殺し合いを許せるものか!俺は必ず、お前達の目論見を叩き潰す……」
「それにしては、あなたの行動は不自然すぎるのです」

アレディは淡々と話し始める。今フォルカが置かれている、異常な状況を。

「今この東京は、極端な過密状態にあります。
 バトルロワイアルの参加者の大半が、この東京周辺に密集している。
 そして……多くの戦いが勃発し、多くの命が失われた」
「……」
「不自然なのです。これほどまでに大規模な戦いが立て続けに発生するこの地域で……
 その真っ只中で、何事もなく、見事なまでに争いごとを避けて平穏を保つ、あなた達の存在は」

……フォルカの行動の不自然な点の指摘を。

「……偶然だ。俺達の行く先には、偶然何もなかっただけの話だ」
「あなたも修羅の王たる存在ならば、戦いの気配くらい感じ取れるでしょう。
 ……気付いていたはずです。自分の周囲が、戦いの匂いに満ちていることを」
「……」
「あなたが最初にいた地域は、今では破壊と虐殺により廃墟と化しました。
 神夜姫殿のいた場所では、巨大機動兵器の破壊活動が行われました。
 他にもありとあらゆる類の変態が大量発生し、今や東京は異様な空気で充満しています」
「おい最後ちょっと待て」
「あなたほどの方が気付かないとは言わせませんよ。何故それらから目を逸らし続けているんです。
 あなたはすぐにでも、その場に向かうべきだった。共に戦う仲間を求めるべきだった」
「……美鈴と神夜を連れながら、迂闊な行動は取れん」
「彼女達がそれを聞いたら、失望するでしょうね。
 お二人は決して守られるだけの女性ではありません。戦う力も、心の強さも持っている。
 それに、彼女達を理由に他者との接触を避け続けていては、事態は何の進展もしません」
「……」

場の空気が、少しずつおかしくなっていくのがわかる。
理不尽な殺し合いに憤る青年と、殺し合いを煽動するジョーカーの会話……そのはずだ。
だが……フォルカのほうにも、徐々に不審な点が見え隠れし始めていた。


「……それと、もう一つ。どうしても腑に落ちない点があります。
 あなたはこのバトルロワイアルが始まって、まず最初に……ベガと言う男と戦った」
「都庁での戦いか」

――我がシャドルーの野望を邪魔する小僧! 貴様は一体何者だ! 何故私の邪魔をする!
――俺の名はフォルカ……フォルカ・アルバーグ。貴様のような邪悪な覇気を放つ者を放っておくわけにいかないのでな!

「この会話からもわかりますが……あの戦い、先に仕掛けたのはあなたのほうだった。
 私は最初からあなたの行動を見ていましたが……最初の接触の時点で、何の迷いもなく、
 あなたはベガを殺しにかかった。……何故です?」
「言葉通りだ。奴の邪悪な覇気を見過ごすことができなかったからだ。
 放置すれば、あの男は恐らくその邪気のままに、殺戮を繰り返していただろう。
 その前に……悲劇が起きる前に、奴は倒さなければならなかった」
「しかし、かと言って即座に戦いを選択するのは……あまりに浅慮ではありませんか?」

そう。あの場で出会った者を殺すという選択に出ることなど、普通は考えられない。何故なら。

「あの時点では、2人以上3人以下のチームを組まねば……死が待っているのですから」
「!!」

最初のルールだ。ゲーム開始から5分以内に、誰でもいいからチームを組まなければ、
その首輪が爆発していたはずである。

「ゲーム開始から5分しか時間がなかったのですよ?
 あの場に、偶然美鈴殿が居合わせていなかったらどうするつもりだったのです?
 ベガを倒した後、美鈴殿というパートナーを見つけなければ……あなたは死んでいた」
「それは……あの男、ベガとやらも同じことだろう」
「はい。ベガもあなたも、目の前の事に囚われて、死に直結する制限を忘れるような考えなしではない。
 ですから……あなたと美鈴殿を倒すと豪語しつつも……ベガは、攻撃を手加減していた」
「……!」
「万が一にでもあなたを殺し、一人にならないように。あなたを殺さず、死なない程度に痛めつける……
 あるいは、巻き込む美鈴殿を死に追いやらない程度の威力に抑えて。
 彼の放ったサイコクラッシャー……もし本気であれば、あの程度の威力では済みません。
 いかにあなたと言えど、あの男は本来、ああもたやすく倒せるような楽な相手ではないのですよ」

緊張が張り詰める。アレディの提示する疑問点に、フォルカは沈黙を保っていた。
アレディは見抜いていた。フォルカ・アルバーグの異常性を。

「居合わせた美鈴殿をあなた共々敵に回した時点で、ベガの敗北は決定していたのかもしれません。
 ですが、それは問題ではない……あなたは、最初からベガを殺すつもりで戦いを挑んだのだから。
 ここで、考えられることは3つ。1つはあなたが最初のルール説明を聞いていなかったか。
 2つ、最初から都庁内に美鈴殿がいることに気付いていたか。
 そして3つ目はは……」

アレディの眼光が、鋭く光る。

「ルールを違反しようが、首輪が爆発することになろうが……意味はないとわかっていたから。
 そう、自分は死なない……そんな確証か保障が、あなたの中に存在していた」

それは、恐るべき可能性だ。
バトルロワイアル参加者に与えられる最低限の枷をも、免除しているも同然ではないか。
あえて例外を挙げるなら、例の症候群に感染しているという可能性。
だが、フォルカからはその反応は見られない。



「フォルカ・アルバーグ!!お前は何を隠している!!」

アレディの叫び声が響く。
彼はゲーム開始から、フォルカの動向をチェックしていた。最初はほんの興味本位だった。
だが、アレディはやがて気付く。この男にかすかに漂う異常性と、危険性を。
このことに気付いている者はいるだろうか。
脱衣拳やニアラ達も、真の黒幕すらもこの事実に気付いていないかもしれない。

(フォルカ・アルバーグ……やはり彼は、何かがおかしい)

この男には、外部から全く別の、何らかの力が働いている。
フォルカ自身はそれを知っているのか。あるいは無自覚なのか。
それが何かはわからない。しかし、放置しておくと危険な何かであることは確かだ。

しばしの沈黙が、場を支配する。
やがて、俯いたまま黙っていたフォルカが、面を上げた。

「お前が俺に対し何を苛立っているかは知らん。だが、俺は今のやり方を変えるつもりはない。
 俺は共に闘う仲間を探し、この地に蔓延る悪意を撃ち滅ぼしながら……反撃の時を待つ。
 お前達の馬鹿げた目論見は許しはしない……必ず打ち砕く!」
「……答えるつもりはありませんか。いいでしょう。
 あなたを闇に堕とす。本来の目的の前には、それらも些細な問題です」
「闇に、だと……!」

フォルカが構えを取り、臨戦態勢に入った。
そんな彼に対し、アレディは口を開き、一言。

「……ショウコ・アズマ」
「何……?」
「彼女もこのバトルロワイアルに参加している、と言ったら?」

かつてフォルカが心開き、修羅を離脱し新たな道を歩むきっかけとなった少女の名。
アレディの言葉は、この殺し合いがフォルカにとって新たな意味を持たせることになる。

「貴様ッ!!」
「その状況下でも、これだけ悠長にしていられますか?あなたは」
「ショウコはどこだ。どこにいる!!」
「この東京都内のどこかです。それ以上を聞きたいのであれば……」

アレディもまた、ゆっくりと構えを取る。

「お前の目的は何だ。何故、俺に絡んでくる」
「失われた命を背負い、信じる道を進む……それを貫ける人は尊敬に値します。
 ですが、このバトルロワイアルでは……それだけでは、貫き通せない。
 最終的に、さらに強い信念を持った敵対者に、駆逐される事になる」
「……」
「あなたは、バトルロワイアルの本当の闇に触れなければならないのです。
 これから先、このカオスの中で対主催として戦い続けるのであれば……」
「お前の名は?」
「闇の道を歩き始めた私は、名乗る名を持ち合わせていません。もはやその資格もない……」

今、二人の修羅がその拳を交えようとしていた。

「いざ……勝負ッ!!」

【一日目・8時30分/東京都台東区/天候・曇り】

【アレディ・ナアシュ@無限のフロンティアEXCEED】
【状態】健康 ジョーカー
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】基本:ゲーム煽動
0:フォルカを尊敬、同時に許せない。また、その行動に対し疑問・危険視
1:フォルカを闇に堕とす
2:神夜とはなるべく顔を合わせたくない

【フォルカ・アルバーグ@スーパーロボット大戦シリーズ】
【状態】健康 決意 ???
【装備】なし
【道具】不明
【思考】基本:殺し合いを止め、主催者を倒す……?
1:アレディを倒し、ショウコの居場所を聞き出す
2:殺し合いに乗った者は倒す。
3:神夜の仲間を探す
4:???
※何らかの力が外部から彼に働いているようだが……?本人の自覚の有無は不明
※美鈴・神夜とは一時的に離れています

※参加者として、ショウコ・アズマ(@スーパーロボット大戦シリーズ)の存在が東京都内に確認されました。
最終更新:2011年02月19日 17:16