「ああ、こりゃしもうたぜよ・・・・・・」
土佐の偉人、坂本龍馬はようやく追っ手を振り切った。だが、一息つくような余裕はとても無かった。
左腕は切断。
おまけに、あの男には彼の生徒の敵であると誤解されてしまった。
最悪、他の参加者にまで誤解が広まる可能性もある。
「痛いのう・・・・・・こりゃ叶わんぜよ」
龍馬は左腕の傷口を押さえて唸る。血は止まったようだが、このままでは傷口から壊死しないとも限らない。
それにしても、ここはどこなんだろうか。
闇雲に走り続けたため、自分がどこにいるのかもわからなくなってしまった。
と、その時、龍馬は草むらの中に「それ」を見つけた。
「こ、こりゃあ・・・・・・」
白くて細い、おそらくまだ若い女物であろう手と足。
龍馬は、胃の中に入っていたものを全て地面の上に曝け出した。
流石の龍馬も、惨殺死体を立て続けに見るような経験は初めてだった。
「どうしてまた、こんなことをせなああかんがな・・・・・・殺し合いなんぞ・・・・・・」
龍馬は、吐き気と怒りを抑えることができなかった。自分が作ろうとした世界は、こんなものではないはずだ。
例え「ばぶれもん」と呼ばれようとも、人の道に外れることはしたくない。そう思いながら幕末の日本を走り続けた。
そんな自分が、なぜこんなところにいるんだろうか。
「帰りたい・・・・・・わしゃあもう、帰りたいぜよ・・・・・・」
「そうやって、怯えているだけの人間ですか、あなたは」
突然の声に、龍馬は我に返って振り返る。
石の上に、幼い少女が座っていた。
黒を基調とした、やけにヒラヒラした布がついた奇妙な服。頭にはヘッドドレス。
それは「ゴスロリ」と呼ばれる服装だったのだが、龍馬がそんなことを知るはずも無かった。
「おんし、いつからそこにおった? 」
彼女はその質問には答えなかった。
この少女は殺し合いに乗っている人間ではない。それは龍馬でもわかった。
しかし、彼女からはそれとは全く別の「恐怖」を感じた。
「これを」
彼女は、自分のナップザックから一束の糸を取り出した。
「な、なんぞ? 」
「あなたは左手がなくても平気なの? 」
少女は抑揚の無い声で訊ねる。
「そりゃ困るぜよ」
「なら、この糸と針でそこの腕を縫いつければいい」
「な・・・・・・」
龍馬は絶句して彼女の顔を凝視した。
「この糸は、ちぎれた体の部位を付け直すことができる。他人の体でも同様のはず」
彼女はそう説明したが、龍馬が戸惑ったのは別の理由だった。
それは、他人の死体を侮辱するようなことではないかと思ったからだ。
「あなたは、このままでは死んでしまう。そんなことは許せない。しかし一度死んだものが生き返るのはもっと許せないこと。
それがここでの、最低限のルール。私は無駄な死人も出したくないし、無駄に生き返る者も許せない。だから、あなたを助けたい」
少女はそう言って、石の上から飛び降りた。
そして、草の中に転がっていた少女の左腕を拾い上げる。まったく怯むことなく。
「おんし・・・・・・」
「動かないで」
少女は、硬直している龍馬の体を押し倒し、左腕を取った。そして、龍馬が手にしている糸を伸ばし、それを針に通す。
龍馬があっけに取られている間に、竜馬の腕に少女の手が縫いつけられていく。
「これで大丈夫」
そう言われて龍馬が左手を見ると、繋ぎ目がわからないほどに見事に接合されていた。
まあ、流石に右腕と比べると余りにも違いすぎるが・・・・・・
「じゃあ。その糸はあなたにあげるね」
ゴスロリの少女は、呆然としている龍馬に背を向ける。
「まてや!! おんしは・・・・・・」
「私には私の目的がある。私はここで死んだ全ての者を弔う。そして、生き返るものが出ないようにこの
ゲームを監視する」
「なんでや? なんで死んだもんを生き返らしたらいかんがな? 」
「だって・・・・・・死んだものに、もう一度死の苦しみを味わわされるなんて、残酷すぎるから」
少女はそう言い、再び歩き始める。もう二度と、振り返りはしなかった。
「おお、本当にようつながっとる」
その左手は、自分の手と全く同じように動かすことができた。
西洋の医学書でも、こんな手術方法は見たことが無い。この糸は、一体何物なのか・・・・・・
その時、またしても声が聞こえた。
(あなたが、私の左手をつけたんですね)
また誰かに話しかけられたのか、と思って回りを見渡すも、誰の姿も無い。
「おい、どこにおるぜよ」
(私はあなたの左手です)
その声は、龍馬の耳にではなく龍馬の脳に直接囁きかけていた。
「な・・・・・・あほな・・・・・・」
(私のほとんどは食べられてしまいましたが、この左腕にわずかな人格が残っています。記憶の一部も・・・・・・)
その瞬間、左腕から龍馬の脳髄に、龍馬のものであるはずの無い記憶が流れ込んできた。
学校。教室。それも龍馬の知っているものとは全く違う。
部活動。友人。少し気になる少年。全ての中心にいる少女。
野球場。無人島。破局。危機。奇跡。
メイド服。バニーガール。カエル。水着。胸。
「こりゃあ・・・・・・」
類稀な洞察力を持つ龍馬だからこそわかった。これはこの左手の持ち主である少女の記憶だ。
どうやら自分の自我は、この左手と同化してしまったらしい。
「まいったのう。おんしもやりづらいやろ」
(いいえ。むしろ嬉しいです。もう少しこっちの世界にいることができて)
「おおそうか。そりゃえいわ。わしは坂本龍馬。土佐の生まれじゃ」
(坂本・・・・・・確かその名前は・・・・・・)
左手はなにやらぶつぶつと言っている。
「ほんで、おんしはなんてゆうがな? 」
(ああ、私ですか? )
龍馬の脳髄に、少女の幼い声が響く。
(信じてもらえないかもしれませんが、私はこの時代の人間ではありません。もっと未来から来ました)
【一日目 5時】
【A-8】
【坂本龍馬featuring
朝比奈みくる(左腕)@歴史】
[状態]:接合
[装備]:カリバーン@fate 腕を縫い付けられる糸と針
[道具]:支給品一式
[思考]:
1:情報交換
2:ここから脱出する方法を探る
3:殺生は出来るだけしたくない
【死亡者図鑑氏@テラカオスロワ】
[状態]:ゴスロリ
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考]:
1:死者の復活は許さない
2:生きている人は全員助けたい
3:秩序を守る
4:カオスルートの息の根を止める
最終更新:2007年03月01日 21:44