一体何がどうなっているのか……。
俺、大十字九朗は『人間のためのデウス・マキナ』(急に脳裏に浮かんできた変なおじさん談)、デモンベインのコクピットの中にいた。
場所は日本、埼玉県。
なぜこんなところに居るのかと言うと、まあ……仕事だ。
ちょっとしたドジでせっかく集めた人外ロリ魔導書アル・アジフのページがバラバラになってしまった。
アーカムシティから日本にうまいこと全てのページが貨物船に乗って移動したと言うので来日している。
そして、目下の問題がこのモニターにある。
急にモニターに割り込んできた安部内閣とかいう偉そうなおっさんがなにやらまくしたてているのだ。
「なんじゃこりゃ?姫さーーーん、なんかテレビ番組がやってますよーーー」
とりあえずデモンベインを製造した機関、覇道財閥の若き女性当主、覇道瑠璃に通信を入れた。
アーカムシティと日本という長距離にもかかわらず、そう時間はかからずに通信が帰ってくる。
『 イコクノチダケド マアガンバッテクダサイ ハチオクドルモ マネーカケテンダッ テーノ 』
「何故昔の電報!?」
突っ込みを入れながらも内容を確認する。
「えー……拝啓大十字様、異国の地だけど まあ頑張って下さい 八億ドルも マネー賭けてんだってーの 」
なんだこれは……。
モニターにもう一度意識をやると、なにやら『殺し合い』だの『焼却』だの『食べ物を取り上げる』だのと物騒な単語が聞こえる。
「ふむ……どうやらこの国で国民同士殺し合いをする法が作られたらしいな」
後ろから先程話した人外ロリ、アル・アジフの声が聞こえた。自分のコクピットから降りてきたらしい。
……今コイツなんて言った?
「全く理解に苦しむ行動だ……国の長が自ら国力を殺ぐなど愚の骨頂だぞ」
ぶつぶつ呟きながらうろつき回るアルに、少し慌てて問い掛ける。
「お、おいおい。そんなやばいことになってるのか?さっさとアーカムシティに帰ろうぜ!」
アルは振り向くと、不快げな顔で返す。
「そういうわけにもいかん。妾の断片も見つかっていないし……」
「そんな場合か!」
こんな国にいればいつ襲われるか分からない。デモンベインの足元では既に殺し合いが始まっている。
デモンベインに乗っていれば大体の事は大丈夫だろうが……日本は他に比するものない程のロボット大国だという話だ。
「ページはこの騒ぎが収まってからまた来て探せばいいさ、今は……」
「――――――それに、汝の首にも首輪がつけられておるしな」
そんな馬鹿な。
首に手をやる。
冷たい感触!首にしっかりフィットした、そして言われなければ気づかない軽さの。
「首輪がついてるーーーーーーーーーーーーーーッ!?首に、首に!」
「うるさい!少しは落ち着け……しかし妾も気付かぬほどの速さでどうやって首輪を九朗に……邪神の仕業か?」
「いや、違う違う。僕はこんなことしないよ」
「そうか……」
何でこんなに落ち着いてるんだこの人外ロリは。
どうやらコイツには首輪はついていないようだ、そりゃ他人事になるよな、畜生!
ていうか今ナイアさんいなかった?
「ハッ!じゃあまさかこの電報は……」
姫さんからの電報をもう一度確認。
『 イコクノチダケド マアガンバッテクダサイ ハチオクドルモ マネーカケテンダッ テーノ 』
「ゲゲェーッ!特権階級!」
なんということだ……知らないうちに賭けの対象にされている。
自由平等主義の国でこんな目にあうとは驚きだ。
騒ぎ続けている俺を見かねてアルが電報をむしりとる。
「むう……あの小娘……おや、これは暗号だな」
「暗号!?」
一筋の光明になるかもしれない言葉をアルが吐く。
「 イコクノチダケド マアガンバッテクダサイ ハチオクドルモ マネーカケテンダッ テーノ
これを区切りごとに縦で読む、すると……
イコクノチダケド
マアガンバッテクダサイ
ハチオクドルモ
マネーカケテンダッ
テーノ
つまり、
イ
マ
ハ
マ
テ
今は待て、ということだな。あの小娘が何を考えているかは知らんが……」
アルが自慢げに説明する。しかし……。
「……なんか普通だな。キバヤシみたくしなくていいのか?」
「何を言っておる?」
まあキバヤシを予約した人が頑張ってくれるだろう、とよく分からない納得をして、何とか少しは落ち着いた。
とりあえずここを動いて、デモンベインから降りよう。
殺し合いに乗る気は無いが、足元に寄ってくる人が増えてきた。
いつマジン●ーやゲ●ターや●ンダムが現れるか分からない。
と、機体を動かすことに意識を遣ろうとして…………。
ふと、コクピットの横に置いてあるディパックに気付く。
「こんなもんあったっけ?」
「この中には支給品というものが入っているらしい。開けてみよ」
アルがディパックを拾ってこちらに放り投げる。
「どれどれ……」
開けてみた。
「やあ、お兄ちゃん」(1カメ。満面の笑みを浮かべるマスターテリオン)
「やあ、お兄ちゃん」(2カメ。上から見た驚愕するアル)
「やあ、お兄ちゃん」(3カメ。野山に分け入り追いかけっこをする仲睦まじい兄弟または兄妹)
支給品:マスターテリオン
「ぬあああああーーーーーーッ!?」
「久しいな、大十字九朗。まさかこのような形で再開することになるとは」
「バックから出てくるな!」
マスターテリオンをバックに押し込めようとするが、時既に遅く、どこからか豪華な椅子を出してコクピットの隅に座っていた。
「そう怯えるな大十字九朗。ルールに従い、貴公の支給品として活躍してやろう」
アルはもはや語る舌なしとばかりに自分のコクピットに帰っていく。
「とりあえずこの足元に群がる虫けらどもを蹴散らかそうではないか」
「おま……」
異議を唱えようとした瞬間。
バギャンッッッッッ!
「うおおおおっ!?」
「きゃあああっ!?」
「ぬぅうううっ!?」
デモンベインが倒れこむ。
群集を巻き込み、その巨体を地面に委ねる。
「な、なんだ!?」
演説は既に終わり、通常画面に戻っているモニターを視界に入れる。
そこには――――――猫。
そこには――――――猫?
そこには――――――え、あれ猫?
というような物体がデモンベインを威圧的に見下ろしていた。
「私は猫だ……猫以外の何者で在り得る?」
いきなり意味不明な言葉を発したかと思うと、両腕(前足?)を伸縮させ、デモンベインの両足を貫き、空中に持ち上げる。
「な、なんだこいつは!?ロボットか?」
魔力を還元させて攻撃態勢を整えながら、悲鳴を上げるように叫ぶ。
「いや、これは……妾の断片が起こした怪異だ!恐らくは『ニトクリスの鏡』……くっ!」
デモンベインの両足を貫いた両腕(前足?)が、空中でデモンベインを振り回す。
周囲の建物が崩壊すると同時に、デモンベインの装甲にもダメージが蓄積していく。
そして、投げ飛ばされた。
割と大きなビルに激突し、粉砕した後地面を削りながら転がっていく。
「なかなか面白いぞ」
マスターテリオンが何か言っているが、無視だ。
「ちっ……ニトクリスがアリスンを虜にしたときと同じ現象なのか?だったら……」
デモンベインを何とか立たせ、最悪の想像をしながらきょろきょろしている猫の化物の姿をモニターで拡大する。
想像は……当たった。
化物の肩の上に、15、6位の女の子が立っている。
泣き喚いているようだ。
「大阪からきたからあだ名が大阪!?なんやそらー!こんなまちこわしてまえーーー!!」
事情は良く分からないが、とにかく彼女もニトクリスに心を囚われているらしい。
「九朗!あの時と同じだ、あの娘の幻想を砕くぞ!」
「応!」
「あの娘を砕いた方が早い」
マスターテリオンが何か言っているが、無視だ。
デモンベインの脚部シールドに魔力を供給し、術式を発動する。
「断鎖術式壱号ティマイオス、弐号クリティアス!」
跳躍し、刹那かからず化物の眼前に移動する。
唯一散らばらなかったネクロノミコンの断片、クトゥヴァとイタクァを顕現させ、二挺の拳銃に封じる。
破壊と殺意の象徴を二挺並べて化物に構え、ほぼ零距離で発射する。
銃声。
銃声。
銃声。
銃声。
赤の檄熱の弾丸と、白の極寒の弾丸が、それぞれ二発ずつ化物に迫る。
―――しかし。
「何っ!?」
化物に弾丸が迫った瞬間、該当箇所の皮膚?がなにかにコーティングされているかのように光り、四発の弾丸全てを弾き落とした。
「血、血、血、血……赤い……こんなに赤いのに人は殺しあう……」
化物はデモンべインに全く興味を示していないかのように地面を見下ろし、この戦闘で死んだ人が流した血を踏みつけている。
「この野郎、眼中にないってか?」
「情けないぞマスター・オブ・ネクロノミコン!もっと余を楽しませよ!」
マスターテリオンが何か言っているが、無視だ。
悪態をつきながらクトゥヴァとイタクァを直接呼び出す必殺技、神獣弾を放とうとする。
「丸焼きにして喰ってやろうか、氷漬けにして解体して喰ってやろうか!喰らえ!」
「いや九朗、あの大きさは無理だろう。大体猫は喰えな……」
「俺は猫を喰った男だ!」
途端、化物がこちらを振り向く。
「君、猫を食べたのかね?」
突然話しかけられ、攻撃の手を止めてしまう。
「あ、はい……昔のことですけど……」
「その言葉は私を猫と知ってのことか?」
「はい……」
「猫はクトゥルー神話ではかなり恐ろしい存在らしいぞ、大十字九朗」
マスターテリオンが何か言っているが、無視だ。
猫の化物は動きを止め、ぶつぶつと一人言を言い始める。
「私は猫だ……しかし彼は猫を食べたと言う。私は猫だ……では何故生きている?私は……私は……」
「ど、どないしたのんー?」
「私は……猫ではない? 自 己 矛 盾 」
猫の化物が破裂した。
ページの断片に戻り、アルが回収する。肩に乗っていた少女はどうやら無事に街のどこかに着陸したようだ。
「…………」
「…………」
「…………」
事件解決!
「うわー……あんなロボット本当にいるのねー」
埼玉の市街地で、金髪の女性がデモンベインを見上げていた。
彼女の名はセラス・ヴィクトリア。
彼女もまた任務で日本に来ていた。
襲ってくる住民を上手くいなしながら、なるべく人がいそうもない路地裏に入り込む。
「マスターはどこにいったんだろう……」
船で一緒にこの国まで来た彼女の主は、いつの間にか一人でいなくなってしまっていた。
(婦警、何故隠れている?)
頭の中に直接、いなくなったマスターの声が響く。
(マスター!?どうしたんですか急に居なくなって……今どこに居るんですか?)
セラスも同じく言葉ではない、テレパシーで返す。
(新幹線に乗ったら寒いところに着いた……どうせこの混乱だ、任務など放り出してしまえ、婦警。
私は強い人間を見つけて、今戦っている。なかなかの強敵だ。話している場合じゃないんだが……お前が楽しんでいないようなのでな)
快楽的な主の台詞に、セリスは少し退いて答える。
(そんな、この状況を楽しめなんて……もしかしたら私たちの標的の日本に集結した吸血鬼やナチスが内閣を洗脳してるのかも知れない
のに……無理ですよ)
(フン、だからお前は婦警なのだ)
一方的にテレパシーが打ち切られる。
溜息をついて立ち上がったセラスの前に、いつの間にやら一人の男が佇んでいた。
「あなたも殺し合いなんて馬鹿げたことをやってるの?悪いことは言わないから……」
今日何度目になるかも忘れた言葉を告げる。
しかし返ってきた言葉はいつもとは違った。
「わたし……吉良吉影って者ですが……『平穏』な暮らしってやつに憧れてましてねェ~~~。ずっとそれを叶えてこれたんですが……」
男は明後日の方向を向きながら喋る。
「今年はとてもツイてない年でね……色々あって引っ越すことに決めたんですよ、苦渋の決断ってやつです。
厄年までにはまだえっと……9年か。9年あるんですが……女性の厄年は33歳だったかな?」
訳のわからないことを話し続ける男に、セラスは痺れを切らして強い口調で言う。
「何言ってるの!?用がないならさっさと消えろ!」
「ああ失礼……あんまり綺麗な人だったので、ついいつもの癖が……」
ボソッと呟いた男の声に、セラスは少し満足気に笑って、手を振りながら答える。
「え、美人?いやいやそんなこと」
ボンッ
「本当に……つい、いつもの癖が」
木っ端微塵に吹っ飛んだセラスの死体の中から、唯一無事な右手の手首だけを拾い上げながら言う吉良吉影。
手首に頬ずりしながら至高の笑みを浮かべる。
「フ~~~。外国の女は珍しいからつい焦って名前を聞くのを忘れてしまった……」
ガタッ。
背後から物音が聞こえる。
「!!」
振り向くとそこには、学生服を着た少女が腰を抜かしていた。
吉良は笑顔を浮かべながら近づく。
「今度は名前を聞かなきゃね……」
「う、うちはなにもみてへんよ!?」
少女、大阪は首を振りながら後ずさる。
「嘘はよくない……さあ君の名前を教えてくれ」
大阪の背が壁に当たり、追い詰められた形になる。
「さあ早く!私はこの混乱に乗じて女性の手首を沢山集めたいんだ!」
「でやあ」
「何を」
「なんとかなった……」
大阪は足元に転がったボールを拾う。
大阪は吉良吉影をゲットした。
【埼玉県市街地】
【大十字九朗@デモンベイン】
[状態] 本体:異常なし 機体:両脚部小ダメージ
[装備] デモンベイン(初期装備)、アル・アジフ(初期装備)、マスターテリオン
[道具] 支給品一式
[思考] 1:殺し合いには乗らない
2:移動する
3:散ったページを集める
【大阪@あずまんが大王】
[状態] 疲労
[装備] スーパーボール(吉良吉影)
[道具] モンスターボール×5、スーパーボール×4、ハイパーボール×5(自分の支給品)、支給品一式×3(うち不明支給品2)
[思考] 1:「春日です……春日……うちの名前は、うちの名前は春日 歩です」
2:死にたくない
【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態] 洗脳、捕縛
[装備] セラスの手首
[道具] なし
[思考] 1:大阪に従う
2:でも手首は集める
【セラス・ヴィクトリア@HELLSING 死亡】
最終更新:2006年12月17日 15:18