しばらく経つと呉キリカは、ようやく自分の勘違いに気づいたらしい。
メリーことマエリベリー・ハーンを前に、ぺこぺこと頭を下げる彼女の姿があった。
「いや、本当に申し訳ない……見苦しい姿を見せてしまって、反省する限りだよ」
「えーっと、その……いいのよ、そんなに頭を下げなくても」
「いいや、そういうわけにはいかない。これは君だけの問題じゃないんだ。
よもやこの私が、あろうことか織莉子と他人の姿を間違えてしまうだなんて……ああっ、こんな大失態をしでかすなんて!
私はね、自分で自分が許せないよ! この世とおさらばすることになっても、おかしくないくらいの大罪だッ!」
自分で自分を追い詰める余り、とうとう近場の建物に、ガンガンと頭をぶつけ始めたキリカ。
己を変えてくれた織莉子は、最愛にして絶対の存在である。
それをどうでもいいその他諸々と間違えてしまったなどとあっては、彼女にとっては、万死に値する失態なのだ。
「よっぽどその子のことが好きなのね……よかったらその子のこと、私に教えてくれないかしら」
それで困るのはメリーである。
こうも悲痛な姿を見せられ続けては、まるで自分が悪人のように感じられて、どうにもいい気分はしない。
故にここは何とかして、話題を転換しようと考えたのだ。
「何だって!? よっぽどとはまたぞんざいな言い方だな!」
それがよくなかった。
何の気なしに放った言葉が、常人には理解できないキリカのスイッチを、うっかり押してしまったのだ。
「いいかい君! 君は愛の定義というものを、正確に理解しているの!?」
「あ、愛の、定義? 哲学の話なら、一応大学で習っ……」
「ぜんっぜん駄目、お話にならない! ソクラテスだのユーフラテスだのは、あんなのただの大嘘つきだ!
愛は無限にして有限! 好きとか大好きとかよっぽど好きとか、数値化できる事象じゃない! そしてその無限の愛に、有限の――」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
それから約20分後。
「――というわけだよ。分かってくれたかい?」
「え、ええ、まぁ、ね……」
ようやく気が済んだようで、キリカはそう締めくくった。
彼女の話の内容は、いちいち触れていてはキリがないので割愛するが、メリーの引きつった顔を見てみれば、大体想像はつくだろう。
「それはよかった。では君、私はこれで失礼するよ。一刻も早く織莉子を捜さなければ……」
「あ、ちょっと」
「?」
その場を発とうとしたキリカだったが、メリーに呼び止められ、振り返る。
「もしよかったら、その織莉子というお友達のこと……私も一緒に捜してあげましょうか?」
「ん、いいのかい? 元はといえば私の事情だ。無関係な君を巻き込むのは、少し気が引けるのだけど……」
「いいのよ。貴方がその……愛しているというお友達がどんな子なのか、興味があるのは確かだしね」
「ふむ……そこで詰まったのが引っかかるけど、そういうことなら、お願いしようかな。
きっと君も織莉子に会えば、私の言う愛の本質を、ちゃんと理解してくれるに違いないからね。
……それで、君の名前は何だったっけか?」
「マエリベリー・ハーンよ。私の友達は、呼びにくいから、メリーっていう風に呼んでたわ」
「いいね、じゃあそれに乗っからせてもらおう。私の名前は呉キリカだ。よろしく頼むよ、メリー」
メリーの差し伸べた手を、素直に握り返すキリカ。
基本的にキレさせなければ、いい子であることに違いないらしい。
生き残りのかかったこの場では、戦力を増やすことは重要だ。
この子がこのカオスロワの中で、どれほど役に立つかは分からないが、1人でうろつき回るよりは気が楽だろう。
「さぁっ、それじゃあ行こうかメリー。さてさて、織莉子はどこにいるのかな……」
「日本人なら、まずは日本に行くんじゃないかしら」
「そうか、それもそうだよね。それじゃあ日本に戻ってみよう。
待ってておくれよ、織莉子。君に会えないだけで私は、寂しくて胸が抉られて、張り裂けミンチになりそうな心地なんだ。
きっと君もたった1人で、こんな思いをしているに違いない。でも安心してよ織莉子。私がすぐに行くからね。
ああっ、織莉子織莉子織莉子織莉子織莉子織莉子織莉子織莉子織莉子織莉子織莉子織莉子……」
この子の前で愛という言葉を口にするのはもうやめよう。
うっとりとした顔つきで、想い人の名を連呼するキリカを前に、メリーは固く胸に誓った。
【一日目・0時42分/中国・上海】
【呉キリカ@魔法少女おりこ☆マギカ】
【状態】健康
【装備】ソウルジェム
【道具】支給品一式、カオスロワ8期のSS集、その他不明
【思考】
基本:織莉子を目立たせる
1:邪魔する奴はぶっ殺す
【マエリベリー・ハーン@東方Project】
【状態】健康、困惑
【装備】なし
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
基本:とりあえず生き残ることを考える
1:キリカの友達を捜すのを手伝う
2:蓮子と合流したい
一方その頃、当の織莉子は。
「あら……ひょっとして、キリカ?」
「ん? 誰よ、それ。私はそんな名前じゃないわよ?」
似たような勘違いをしていた。
【一日目・0時42分/日本・北海道】
【美国織莉子@魔法少女おりこ☆マギカ】
【状態】健康
【装備】ソウルジェム
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
基本:?????
1:どうしようかしら
2:キリカと合流したい
【宇佐見蓮子@東方Project】
【状態】健康、困惑
【装備】なし
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
基本:とりあえず生き残ることを考える
1:何この子?
2:メリーと合流したい
最終更新:2011年08月21日 11:07