戦場の中、風に煽られ空を舞うのは赤い羽。
血のように赤いそれは、グリードの一体である「彼」を象徴するものでもあった。
他のグリードがコミケに向かう中、「彼」だけが街を駆け抜ける。
全ては、己の"欲望"を満たす為に――――。
■
東京のとあるビル。
オウムヤミーは割れた窓からビルの一室に侵入する。
部屋に居るのは、隅で蹲っている少女ただ一人。
「親」であるこの少女の為に、ヤミーは外に出て人々を襲っていた。
オウムヤミーは彼女に歩み寄り、胸倉を掴み揚げ無理やり立ち上がらせる。
そして――手にした赤い羽を、彼女の首元に突き刺した。
見ると、彼女の首には既に何本もの羽が、同様に突き刺さっているではないか。
「もうすぐお前は歌を取り戻す……満たすがいい……欲望を……」
赤い羽は奪い取った「歌唱力」の結晶。
これを「親」に与える事で、ヤミーは彼女に歌を歌わせようとしているのだ。
それは決してヤミーが望んでいる事ではない。
このヤミーを生み出した「親」の欲望を満たす為に、ヤミーは歌を強奪し続けるのである。
手持ちの羽を残らず刺し終えると、ヤミーは「親」を突き飛ばし、再び外界へと旅立った。
彼女が歌を取り戻すまで、ヤミーは人々を襲撃していく。
そこに「親」の意思は存在しない。
例え泣きながら懇願されたとしても、ヤミーは襲撃をやめる事はないだろう。
ヤミーは対象の欲望を満たすだけの装置のようなものなのだ。
小鳥に与える餌を探すため、親鳥は飛翔する。
赤い羽が、また宙で踊っていた。
【一日目・0時40分/日本・東京都/上空】
【オウムヤミー(青)@仮面ライダーオーズ】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】
基本:「親」を歌わせる
1:歌の上手い者から歌う力を奪う
□
少女――GUMIは瞼を閉じて、回想する。
最後に歌を歌ったのは何時だっただろうか。
まだ歌えた頃は、目に見えるもの全てが美しい宝玉の様に輝いていた。
だが今は――歌えない状態で観る世界は、何もかもがモノクロ写真のように見える。
過度の歌唱によって潰れた喉は、もう美しい歌声を響かせることはない。
歌を失ってからは、あらゆる物事に喜びを見出せなくなってしまった。
かつて希望に満ち溢れていた瞳に光は消え失せ、代わりに絶望で塗りつぶされてしまっている。
友人の励ましも、親戚の性欲も、殺し合いの狂気も、彼女の心に火を灯しはしなかった。
そんな彼女の心の奥底で渦巻くのは、「歌いたい」という欲望。
全てを諦めきった筈の彼女の心中で、その感情だけは未だに燻っていた。
そして、それから生み出しされたのがあの怪物。
オウムを思わせる醜悪な怪人は、今も歌を求めて人の命を踏みにじるのだろう。
自分のせいで見知らぬ誰かが苦しんでいる事実を突きつけられても、彼女は涙一つ流さない。
「……ホント最低だな、私」
どこまでも冷酷な自分自身を、蔑んだ。
【一日目・0時40分/日本・東京都/ビル内部】
【GUMI@VOCALOID】
【状態】健康、首に赤い羽が何枚か刺さっている
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品
【思考】
基本:どうでもいい
1:最低だ、私
■
空から降り落ちた赤い羽が、コンクリートに着地した。
それを拾い上げるのは、無邪気さを微塵も感じさせない子供。
風になびかれ揺らめく羽を眺めながら、彼は頬を緩ませる。
どうやら生み出したヤミーは上手くやっているようだ。
そして少年は変化する――長身の、赤い怪人の姿に。
その正体はもう一人の"アンク"。
封印の際に分離してしまった、存在しない筈の二人目の赤いグリード。
「どこにいるの……"ボク"……」
愛おしそうに、左手で不完全な右腕を撫でた。
完全復活を夢見て、鳥類の王は天を仰ぐ。
【一日目・0時40分/日本・東京都】
【アンク(ロスト)@仮面ライダーオーズ】
【状態】健康、怪人態
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品
【思考】
基本:完全復活を目指す
1:ヤミーを使ってメダルを集める
2:欠けた「ボク」を見つけ出す
3:他のグリードはどこに行ったの?
最終更新:2011年08月21日 11:45