雛見沢村の古手神社境内。
ここはいわゆる一つの戦場と化していた。
地には二つの死体。
眼鏡を掛けた主婦と、カメラを持った男性の死体だ。
殺人者は
織田信長が配下『明智光秀』その人。
手には禍々しい邪気を放つ剣、皆殺しの剣が握られている。
「前原さん」
殺気を放つ光秀を前に、白衣を着た入江京介が圭一に声を掛ける。
例によって彼ら雛見沢の住人は、前回と前々回のロワでの記憶を持ち越していた。
「どうやら今回は一筋縄ではいきそうにないですね」
「監督! あいつこっちにくるぞ!」
彼らが言葉を交わしている間にも、明智光秀は二人を殺そうと距離を縮めてくる。
「……前原さんは逃げてください」
入江が圭一を押し退けるようにして一歩前に出る。
「監督を見捨てろってのか? そんなの御免だ!」
「いいから良く聞いてください前原さん。私たちだけではこの男に勝てそうにありません、戦えば二人とも犬死にするだけです。
しかしそうなっては、この男のことを誰が村の人間に伝えるのですか?」
普段のふざけた様子を微塵も見せずに、入江が圭一に語りかける。
「……あなたは逃げて、この男のことをみんなに伝えてください」
「だけど監督!」
「いいから早く!!」
滅多に怒らない入江の怒鳴り声に、圭一は少しばかり身を縮める。
「すいません、少し興奮しすぎました。……兎に角、前原さん。今は一刻を争います」
「だけど!」
「私のことなら大丈夫、秘策がありますから死にはしませんよ。それにまだ沙都子ちゃんを私専属のメイドに調教してませんからね」
おどけたように笑いながら、入江は光秀と向かい合う。
圭一は少し躊躇った後に決意を固める。
「……わかったよ監督、絶対に死なないでくれよ。すぐに援軍を呼んで戻ってくるからな!」
入江は振り返らなかった。
圭一の気配が自分から遠ざかっていくのを感じながら、誰にも聞こえないような小さな声で独り言ちた。
「沙都子のことを守ってあげてくださいね……」
入江は死を覚悟していた。
高価そうな和服を返り血で汚している明智光秀が、ゆっくりと入江に接近する。
顔には醜悪な笑みを浮かべており、常人ならば卒倒しかねないほどの殺気を周囲に拡散させている。
だが、入江京介はその場から一歩たりとも退こうとはしなかった。
彼には彼の守るべき物があるからだ。
「お別れの挨拶は済んだのか?」
光秀が、悪魔が何かを言う。
「……」
入江は答えない。
「貴様らは何故この場所に来たのだ?」
「……そこに倒れている男性を迎えに来たんです。あなたに殺されていましたが」
この質問には入江は答えた。
別に作者の辻褄合わせのためだとか、そんな意図は一切ない。
「クククク、それは悪い事をした」
全然少しもこれっぽっちも悪いとは思っていない。
光秀の目はそう言っていた。
「ふん……そろそろ死んでもらおうか。案ずるな、あの小僧もすぐにあの世に送ってやる」
言って、皆殺しの剣を頭上に掲げる。
「死ね」
そして剣を振り下ろそうとした。
「駄目ですね。ご主人様への言葉遣いがなっていません。一度だけ指導しましょう、いいですか?!」
入江が光秀の目を見据えたまま、顔に不敵な笑みを浮かべる。
殺されようとしているのにも関わらずに、笑っている。
「なんだt」
「このお注射はお尻に注射しなくてはなりません。まず四つん這いになってズボンをずらしお尻を出します。
その際、お尻は突き出すようにし両肩はぺったり床に付けるようにします。右手の親指の爪を噛みながら振り返り、そうそう!!
そしてお尻を振りながら、ご主人様、この淫らなメイドにお注射をくださいませと言うのです!」
光秀に喋る隙を、行動する隙を一瞬たりとも与えない。
「言えませんかッ!!!
嘆かわしい、そもそも古来メイドはご主人様への絶対忠誠を誓い滅私奉公によって美徳と文化を築き上げてきたのです!!
そんな素晴らしい社会を作ったのに近年の日本はどうですか!!
メイドの心を忘れた若者は、ガングロ、ルーズソックス、派手派手なハワイ装束!! あぁあぁヤマトナデシコがなさけないッ!!
お肌をすべすべにお手入れして過剰な日焼けには要注意!! ソックスはもちろんニーソですが、ガーターベルトも素晴らしい!!
いやでもたまにはハイソックスも素敵です!! そして培われるメイドの心!!」
「ふざけr」
「思えば日本はわびさびとメイドを忘れました。
その結果がこの低出産率、超高齢化社会!!
今や熟年人口は増え続け、萌えメディアもその層をターゲットにするのは時間の問題!!
今までHビデオコーナーではキワモノ扱いだったオバサンシリーズがやがては一大コーナーを築くようになるのです!!
オバサンとメイドの組み合わせはまさにトイレ用洗剤、混ぜるな危険ッ!!
それを混ぜるとなぜかメイドでなく家政婦になり、家政婦は見ていたシリーズになっちゃうのです!!
それはつまりメイドの絶滅ッ!!」
呆気にとられる光秀を完全に別の意味で圧倒する。
「その時、月は砕け悲しみの雨を地上に降らし、地球をアステロイドベルトが覆う!!
それこそが預言書に記された最後の審判の日ッ!!
全世界を偉大なるメイドカチューシャが覆いし時、真のメイド王が復活する!!
ふはははお静かに、諸君はメイド王の前にいるのだ!! 跪けッ!!
小僧から石を取り戻せッ!!! 困った時のおまじない、リテ・ラトバリタ・メイドッ!!ふおおおおおおおおおおお!!!」
「……その心意気、見事だ」
全てを語りつくした入江を、光秀が縦一閃に斬り捨てる。
斬られた部分から紅い鮮血を撒き散らしながら、入江京介は逝った。
最後の最後まで入江は笑っていた。
結果として彼は圭一が逃げる時間を稼ぐことに成功していた。
だがそんなことは明智光秀にとってはどうでもいいことだった。
「興を削がれた……一度あの方の下へ戻るか」
光秀はデイパックから支給品のどこでもドアを取り出し、目的地を告げたあと中に入った。
古手神社境内には、3つの死体だけが取り残された。
東京都首相官邸の放送室。
安部総理はそこにあるモニターで、各地で巻き起こる戦いを見ていた。
不意に背後に気配が現れ、安部はそちらを振り返る。
「明智光秀、ただいま戻りました」
「早かったな」
安部は感情のない瞳で光秀を見る。
「雛見沢村の様子はどうだった?」
「はっ、やはり彼らは前回の……いやもしかすると前々回の記憶も持ち越していると思われます」
「……どうやらあの村は特殊な環境にあるらしいな」
安部はさも愉快そうな声を出しながら、再び視線をモニターに戻す。
「私は……死にたくない」
「……」
安部の突然の告白に対して、光秀は何も言わなかった。
前後の文章に全く脈絡がない。
それでも安部は告白をやめずに、一冊のノートを持ち出しさらに続ける。
「混沌のテラ……このノートによれば私は明日の1時に死ぬらしい。化け物になって人を殺し、最後には上条当麻とかいう少年に殺される」
ノートをデイパックに収めなおも続ける。
「そんな歴史は御免だ。私はこのバトルロワイアルで生き残り、この国を美しい日本へと変えてみせる。
そのためには弱い国民は邪魔だ、このBR法の力により弱者は徹底排除する」
言っていることが支離滅裂だったが、光秀は混沌のテラに書かれている自分の末路も知っていたので、特に反論もしない。
彼だってなんの描写もなしに、キタキタダンスサイトで首輪爆破なんて結末は嫌なのだ。
「君の力と、私の混沌のテラによって未来を変えてみせる。美しい日本がある世界へとな。
光秀よ、次はこれから先、我らの邪魔となる人間たちを殺しに行くのだ」
「御意」
短く答えた後、光秀はどこでもドアを使いどこかへと消えていった。
【一日目 東京・首相官邸 15時00分】
【安部晋三@主催者】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:混沌のテラ@カオスロワ第一期
[思考]:
1:新国家・美しい日本の樹立を目指す。
2:まずはBR法により国民を選定する。
【一日目 ??? 15時00分】
【明智光秀@歴史】
[状態]:健康 ジョーカー
[装備]:皆殺しの剣
[道具]:どこでもドア@
ドラえもん
[思考]:
1:生き残るための弊害となる者の殺害。
【一日目 石川県雛見沢村 15時00分】
【前原圭一@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康
[装備]:???
[道具]:???
[思考]:
1:監督待っていてくれ!
2:助けを呼んで古手神社へ戻る。
3:惨劇を食い止める。
【
野比玉子@ドラえもん 死亡確認】
【富竹ジロウ@ひぐらしのなく頃に 死亡確認】
【入江京介@ひぐらしのなく頃に 死亡確認】
※「ひぐらしがなく頃に」のキャラクターは、全員前回と前々回のバトルロワイアルの記憶を持ち越しています。
最終更新:2007年04月14日 23:16