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「十三名か・・・・・・」
第一回の死亡者発表があったのは、阿部が朝比奈みくるを裸にした直後だった。
十三名。途轍もない数だ。中には子供もいただろうし、家族や友人を遺していったものもいただろう。
「これが・・・・・・格差社会だ」
迷わないと決めた。弱みを見せないと決めた。それが自分の決めた生き方だったから。
あらゆる人が、自分の能力に合った幸福を得られる社会。敗者の犠牲に見合うだけの、勝者の栄光がある社会。
それが自分の目指す道だ。たとえ多くの国民を敵に回そうと、たとえ後世の歴史家に罵られようと。
それでも、今、死者に祈りを捧げることくらいは、きっと許されるはずだ。


少しの休憩の後、阿部は図書館らしき建物にたどり着いた。
中には、ひょっとしたら役に立つ道具があるかもしれない。しかし、ゲームにのった人間が待ち伏せをしている可能性もある。
阿部は慎重に図書館の入口に歩み寄った。見たところ、一階に人影は無いようだ。
その時だった。
「ぬ!!」
安部がその場所から飛びのいたのと、そこに液体の詰まった瓶が落下してきたのは同時だった。
瓶はあっという間に割れ、鼻を突く異臭が噴出した。
(劇薬か・・・・・・)
阿部は二階の窓を見上げた。そこから、メイド服を身に纏った少女が身を乗り出していた。
少女は窓枠を蹴って、二階から安部の上に向かって落下してきた。阿部は地面に転がり、すんでのところで彼女の蹴りを避ける。
「なかなか殊勝な未成年だ。それだけの気魄があれば、いかなる経済的不況下でも生き抜けるだろう」
阿部は立ち上がりながら、懐からスタンガンを出す。
「しかし、ここではそうはいかないのだよ。ここには少年法も教育基本法改正案も無い。己の実力だけが生死を左右する、真の意味での競争社会だ。
阿部は引かなかった。ここで倒れるわけにはいかない。自分にはまだやり残したことがある。
しかし、たとえ敵前であっても背中を見せて逃げるというわけには行かなかった。いかなる時も引かず、ただ自分の力だけを頼りに前に進む。
それこそが、彼がずっと培ってきた生き方だったのだから。
「私だって、本当はあなたを殺したくない」
少女は、もう一本の液体が詰まった瓶を構えて言った。
「でも、私は帰らないといけないの!! 私の家に・・・・・・兄さんのところに!!」
ふむ。愛するものと再会するために修羅と化す、か。
しかしこの身はもとより修羅なるもの。一介の女学生ごときに阻めはしない。
「私も、私の使命を果たす為に元の世界に帰る。しかし私はそのために人を殺めたりはしない。
この身は私の国の全ての民に捧げたもの。そんな私が、率先して重罪を犯すわけにはいかない」
阿部の言葉に、少女は合点がいかないように首をかしげる。阿部はかまわず続けた。
「しかし、私の国には正当防衛というものがあるのでね。君があくまでそういう立場を取るなら、私は厳正に対処する」
両者はそのまま、しばらくにらみ合っていた。
お互い、自分のほうから身を引くつもりは無かった。ただ相手が引くのを待つか、さもなくば戦うか。
「・・・・・・私は、あなたみたいに物凄いものを守ってるわけじゃない」
メイド服姿の少女は、思いつめたように口を開いた。
「けど、私には兄さんがいる。私はあの人を守る。たった一人の人でも・・・・・・私にとっては、誰よりも大切な人」
阿部の視界の中で、少女が動いた。即座に目で追う。しかし、間に合わない。
(早い!?)
肉体年齢の差が致命的な差異を生んだ。少女は素早く阿部の背後に回ると、硫酸の入った瓶を振りかざし・・・・・・

その時、すさまじい光の奔流が二人の視界を遮った。

「エクス・・・・・・」
木々の向こうから、低い声が聞こえた。このまま光の中にいては、助からないということはすぐにわかった。
阿部は即座にその場に伏せた。
「・・・・・・カリバー!!」
阿部の頭上、ほんのわずかな上をレーザービームが通過した。さすがに生きた心地がしなかった。
すぐ側で轟音がした。爆弾が落とされたかのような衝撃波が阿部の体を襲う。
恐る恐る顔を上げた阿部の視界に映ったのは、完全に破壊された図書館。
そして阿部の隣では、あのメイド服の少女が気を失っていた。
手にしていた瓶は跡形も見当たらない。恐らくさっきのビームで消滅したのだろう。
「一体、何事だ・・・・・・」
立ち上がって振り向いた阿部の目に映ったのは、巨大な「脅威」だった。
森から姿を現したのは、宝具を手にした怪獣王。
阿部の治める国を、これまで何度と無く破壊した魔王だった。
「撃ち損じたか。不覚」
ゴジラはどこか余裕すらも見える表情で呟く。その威容は、阿部をして足を竦ませるに十分なものだった。
◆6/WWxs9O1s氏とシマリスを殺害するつもりで二人を探していたゴジラは、たまたま人間の声らしきものを聞き、奇襲をかけたのだ。
「悪魔め・・・・・・」
阿部の呟きに、怪獣王は笑って答える。
「悪魔? この俺が? 俺を戦いに赴かせるのはいつもお前達ではないか。
戦争、暴力、利権、環境破壊。俺の周りにはいつでも人間のもたらした悪意が満ち溢れていた。
俺はそういうものから自分自身を守りたかっただけだ」
ゴジラは、徐々に阿部との距離を詰めていた。しかしその心中はけして余裕が占めていたわけではない。
宝具を一度展開してしまった以上、次に魔力が溜まるまでは時間がかかる。それゆえ、先ほどの一撃を外したのは痛手だった。
阿部は気絶した少女を庇うように立った。
「私は一国を預かるもの。それがどれほどの重みか、お前にはわかるまい」
「ほう・・・・・・」
ゴジラは興味深げな笑みを浮かべる。
「私の民に手を出すものは・・・・・・大怪獣であろうとヒーローであろうと関係ない。
そして、今はこの会場にいる人間全てが私の民だ。
強きものが、その強さに見合った富と栄誉を手にする。それが格差社会というものだ。
その勝者の誇りを、お前のような悪魔に踏みにじらせはしない」
阿部とゴジラは、朝靄の中で無言のまま向かい合った。
それは、王と為政者の激闘の前触れに相応しい神々しい光景だった。


不意にゴジラが口を開いた。
「おっと、忘れるところだった。これをいっとかないとな。
このSSはフィクションであり実在する人物・団体・事件その他の固有名詞や現象などとは何の関係もありません。
嘘っぱちです。どっか似ていたとしてもそれはたまたま偶然です。他人の空似です。
あ? もう一度言うのか?
この物語は・・・・・・おい、なんでこんなこと言わないといけないんだ? んなの当たり前だろ」


【一日目 5時30分】
【H-3 図書館の近く】

【安倍@現実】
[状態]:健康
[装備]:スタンガン
[道具]:支給品一式×2、朝比奈みくるの支給品、朝比奈みくるのメイド服と下着
[思考]
1:ゴジラを退ける(殺したくは無い)
2:主催者を打倒し、元の世界に帰る
3:格差社会を全参加者に思い知らせる

【朝倉音夢@D.C】
[状態]:失神
[装備]:硫酸入りのビン一本、メイド服型防弾スーツ
[道具]:支給品一式
[思考] 優勝して、兄の待つ家に帰る



最終更新:2007年05月15日 23:25