「はいはい、カブトボーグはこの粉砕機の中に入れてねー」
「……」
「ん?どうしたのかな?早く入れないと君をこの中に入れることになってしまうが」
「っ!これでいいんだろ!」
ガリガリと嫌な音をたて、一つのカブトボーグは粉微塵に粉砕されていく。
それを眺める一人の少女の表情はとても晴れやかで。
そしてカブトボーグをそこに放り込んだ少年の顔は今にも泣き出しそうだった。
「はいっ!これで君も脱ボーガーというわけだ!
安心してくれたまえ、これで君の身の安全は確保された。主催者は我々が責任を持って倒そう」
ナズーリンにそう言われ、肩を叩かれた少年は力なく建物――ウザイ連合の支部に入って行くのだった。
勇者オルテガの公開処刑の効果は抜群だった。
確かに格好は変態以外の何者でもなかった彼だが、それでも彼は勇者と呼ばれるだけの実績をあげてきた。
オルテガを知らない者でも、その鍛え上げられた肉体を見れば彼の強さがわかるはずだ。
その勇者が、無惨に殺されたのだ。
連合に逆らう=死という式は、カブトボーグに夢中な少年少女の中でも容易に出来上がった。
しかし、それでも刃向かう連中はまだいた。
だから、オルテガの処刑に続き、さらに追い討ちをかけた。
魔理沙の提案により流されたのは、レジスタンス達の死に際のシーン集――紫に見せたものにさらに手を加えたもの。
これも全世界配信。
これはある意味、オルテガの公開処刑よりも効き目があったかもしれない。
彼らは確かに変人揃いではあったが、決して悪人ではなく、どころか善人の方が多い。
街の嘆き声を集めればわかるが、殺害された彼らに命を救われたり、匿われたりした者は連合の想像以上にいた。
だからこそ、効果は倍増する。
自分達を助けてくれた彼らは、もうこの世にいないのだと、無意味な希望を打ち砕く。
中国地方の子供達は、ドヴァイ出現の際に安全圏まで手をひいてくれた狐のお姉さんが撃ち殺される様子に泣き叫んだ。
ジロリアン達は、女性の身でありながら栄誉ある地位を手に入れた赤騎士と亡霊令嬢の戦死に二郎が喉を通らなくなった。
黄色い怪人と同じタイプの男達は、怪人の最期の言葉に激しく同意するとともに落ち込んだ。
決闘者は、色々な意味で伝説となっていたDホイーラーの最期に、勝ち逃げはずるいと叫びながらも号泣した。
ポーランドの人々は、一時でも自分達の嫌な気分を吹き飛ばしてくれたメタルモンスターとファームモンスターの死に絶望した。
イタリアの人々は、悲しまなかった。もはや、誰も生き残っていないがために。
バトルロワイアル中に誕生した新たな国の人々は、ただひたすら国の主の無事を祈った。
アフリカの人々は、勇敢なる波紋戦士の最期をただ呆然と眺めることしかできなかった。
守ってくれた強いあの人が、心の支えとなってくれたあの人が、殺された。
放送後、連合への抵抗はさらに小さくなった。
中には石を投げつけてくる幼い子供から、巨大な剣を振り回す大男まで、怒りと悲しみに我を忘れた連中もいたが、
まとめて全員撃ち殺され、それがまた放送された。
一般人たちの、弱者達の抵抗は、なくなった。
レジスタンスは、確かに強い支持を得ていた。
それを半端に殺せば、反抗は高まっただろうが、こうして全滅させてしまえば話は変わる。
彼らに頼っていた大部分は力を持たない。持つ者はレジスタンスメンバーに志願していた。
さあ、ところがレジスタンスは誰の目にも見ても滅ぼされてしまった。
でも主催者健在、怪しい別の団体もあるよ?
誰が守ってくれるのかな?
「我々が、救ってやろう」
連合は、肉体的にも精神的にも弱った一般人に、そう手を差し出した。
無論、誰もが理解している。
ウザイ連合はある意味、主催者以上に性質の悪い連中だということを。
だが、純粋に手を差し出してくれた【白い】レジスタンスは滅んだ。
【黒い】主催者のバトルロワイアルを生き延びるには、弱者は力を借りなければならない。
たとえそれが【灰色】の連合であってもだ。
一人、また一人と連合に人々は縋っていった。
条件は一つ。カブトボーグに関わらないことだけ。
人間という生き物は不思議で、他人がやっているなら自分もと、ついつい他者に追従してしまう傾向がある。
少なからず力を持つ者であってもだ。
集まる集まる、人が、信者が集まる。
助かりたいが故に、カブトボーグを捨ててでも。
気がつけば、連合の戦力(正確には人員だが)は当初とは比較にならないほどに増えた。
連合は純粋な正義ではない。
だがそもそも、何をもって正義というのだろうか?
それは、おそらく神にも答えられない。
だがあえて、このバトルロワイアルという限られた世界においてのみで。
正義の定義を決めてしまおう。
「そう、【悪】の主催者を倒す我々こそが唯一の【正義】なのだ!」
「た、頼む!助けてくれぇ!」
「誰でもいい……!悪魔でも……!」
連合がレジスタンスを目のかたきにしていた真の理由はこれだ。
連合は、カブトボーグを滅ぼすのと同じくらいに……
目 立 ち た い
その感情が強烈だった。目立ちたい、見られたい、頼りにされたい、崇められたい、拝まれたい。
だからこそ、支持を集めるレジスタンスは邪魔者以外の何者でもなかったのだ。
レジスタンスのボーガー含有率など、全体からみれば本当に微々たるものだったのだ。
だがただ殺してはダメだから、理由を無理やりに作ってやった。それだけのこと。
自らの黒い欲望のために、彼らは他者を容赦なく手にかける。
「さて……こうなると今度はさっき新しく入ってきた情報……ディバイン・カオスとやらが邪魔だねぇ。
ずいぶんとまあ、ご大層な名前だ。……こっちも改名したほうが集客率上がるかな?
おや、君は駄目みたいだね。ならばそのカブトボーグと一緒に粉になるといい」
目の前でギリギリになってカブトボーグを棄てることを拒否した子供を粉砕機に放り込みながら、
連合は着々と人員を増やしていくのであった。
【
二日目・17時20分/???・連合支部】
【ナズーリン@東方Project】
【状態】健康
【装備】ガトリング、ガスマスク、カブトボーグ粉砕機
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】基本:カブトボーグ殲滅
1:星蓮組を目立たせる
2:あとで連合名を変えてみるかどうか上層部に相談する
3:ディバイン・カオスを警戒
最終更新:2012年02月19日 02:15