「くっ……」
アメリカのとある路上、そこのマンホールの蓋が動いたかと思えば、中から人が這い出てきた。
疲れきった様子だが、目は死んでいないその男――イシドシュウジは汚れを払うとアメリカの地に立った。
レジスタンススイス基地で消息を絶った彼は、無事だったのだ。
「藍さん……みんな……」
基地が内部から爆破された直後、八雲藍は数名のレジスタンスを地下の隠し通路に避難させていたのだ。
イシドもその一人であり、途中生き残りとははぐれてしまったが、こうして生きている。
彼もまた、ウザイ連合の放送を地下で確認していた。
自分を逃がしてくれた八雲藍をはじめ、多くの仲間たちが虐殺される様子に彼は激しい憤りを感じた。
だが冷静さを欠いてはすぐに死んでしまうと自らを戒め、今まで地下に潜んでいたのだ。
しばらく待機していたおかげか、少しは頭も落ち着いている。
「まずは……誰か生き残りを探さなくては……」
イシドは助かったとはいえ一人だ。
周りに転がる死体の山を見れば、ウザイ連合がどれほどの勢力を持っているのかがわかる。
とてもではないが、まともにやりあって勝てる相手ではない。
少なくとも、仲間を集めるまでは。
「ん?」
そんな時、イシドは必死に走っている少女を見つけた。
「おい君……」
「!?」
そして突然声をかけられた少女、柊つかさはびくりと身体を震わせた。
なにしろ彼女は今、過激派の連合兵に見つからないよう必死だったのだから。
慌てて声のした方向に振り向き……
「レ、レジスタンスの残党!?」
再びその身体を震わせた。
穏健派とはいえ、自分はウザイ連合の一員。
そしてレジスタンスがウザイ連合に必ずいつか逆襲をしかけてくるであろうことも想像できていた。
つかさ自身、連合が放送した公開処刑と死に際集には嫌悪感を憶えていたからである。
レジスタンスの仲間であれば、その怒りは尋常ではないだろう。
このままでは、自分は確実に殺される。
「こ、こないで!」
だから彼女は、無我夢中でアサルトライフルの引き金をひいた。
パァン
つかさは何が起きたのかわからなかった。
確かに引き金をひいたと思ったらその瞬間にライフルは弾きとばされ、遠くに転がっている。
「……随分と物騒だな」
ころころと転がるサッカーボールを回収し、イシドはため息をついた。
彼は驚異的な動体視力で、ライフルをサッカーボールで破壊したのだ。
「あ……あぁ……!」
つかさはその場にへたりこんでしまう。
そういえば魔理沙から確か聞いた気がする。
『あいつら、みんなどこかしら変だけど、結構すごいし面白いんだぜ?
とんでも○○○ーとか、大豚ダブル全マシマシ5秒で食ったりとか、絵札が実体化したり……』
彼女は最後の締めくくりに、ボーグさえなけりゃ、みんな即戦力なのになぁとぼやいていた。
連合は確かに現存する組織では最大派閥であり最大戦力を保有しているであろう。
しかし、レジスタンスやDCと異なり、構成員単体の質は明らかに見劣りしている。
大量の重火器と人員の多さで、実力差をカバーしているにすぎない。
連合の一部には勿論強力な幹部がいるが、下っ端は複数人で一人を囲んで銃撃が基本だ。
さて、特に目立った実戦経験もなく、武器を弾かれた非力な自分が。
目の前の復讐に燃えるレジスタンスに一対一で勝てるだろうか?
答えはノーだ。
「た、助けて……」
だからできることは、命乞いしかなかった。
無駄だとわかっていても、本能がそうさせる。
「……」
イシドの手が、無言のまま伸びてくる。
「ひっ……」
「……安心しろ。そんなに震えなくても、殺しはしない。
君は何故、そんな似合わない格好でウザイ連合に手を貸しているんだ?」
「え……?」
だがつかさの予想とは裏腹に、イシドは少し屈むとつかさの頭をくしゃりと撫でた。
「嘘……」
「悪いが本当の話だ。俺が知る限り、主だったレジスタンスメンバーにボーガーは一人もいない」
イシドとつかさはとりあえず並んで腰掛け、ぽつぽつとお互いの知っていることを話し始めていた。
つかさもまだイシドへの恐怖が完全になくなったわけではなかったが……
よく考えれば、連合内の仲間以外でここまで自分の話を聞いてくれた人は始めてであることに気がついた。
つかさからイシドに話されたのは、連合内部でも複数の派閥があり、過激派の勢いが特に強いこと。
そして謎の女に、首領の正体がケンであると明かされたことだ。
(内部分裂……首領の疑惑……そしてこの子は一応穏健派ということか)
イシドからつかさに話されたのは、レジスタンス内に目立ったボーガーはいなかったこと。
そして少なくとも自分は今は連合に戦いを挑むつもりはないということだった。
これにはつかさも驚いた。
レジスタンスは大量にボーガーを匿っていたために滅ぼしたと聞いていたのに……
もしレジスタンスがボーガーの集まりでもないのに滅ぼされたのだとしたら、つまりそれは……
「……ただ……目立ちたかっただけ……なの……?それだけで、ボーグと無関係の人を……」
つかさの脳裏に、連合が放送した映像が鮮明に蘇る。
まわりの仲間は、ボーガーを匿った罰だ、神罰だとおおはしゃぎだった。
だが、短い時間だが話していてわかった。イシドの言葉に偽りはない。
「そもそも疑問なんだが、何故そこまでカブトボーグを嫌悪する?」
「だ、だって……カブトボーグは危険な玩具だって、それにカブトボーグがある限り……
私達は目立てないって……」
それを聞いたイシドは、やれやれと言った様子で立ち上がった。
「……俺は生粋のボーガーではないが、ボーグバトルをしたことがある」
「え?」
「……作戦の一環とわかってはいたが、とても充実していた。まあ、サッカーには負けるがな」
イシドは語りながら、足元にサッカーボールを置く。
「はっ!」
イシドがボールを蹴ると、ボールは炎を纏いながらゴールに突き刺さった。
突然のありえないシュートにつかさは目を丸くするが、別の場所を見てさらに目を丸くした。
たった今燃えるサッカーボールが凄い勢いで刺さったというのに、ゴールは新品同様ピカピカなのだ。
「ど、どうして……!?」
「要は、なんでも加減が大切ということだ」
2発目のシュートが、全く同じシュートが再びゴールに迫り……
「!?」
そして今度はゴールネットを焼ききり、ゴール全体を衝撃で原型崩壊させてみせた。
「……わかっただろう。カブトボーグが駄目だというなら、サッカーも駄目だとは思わないか?」
イシドの言葉に、つかさはただ唖然とすることしかできなかった。
「……なら、右を見てみろ」
「滅びよ……!」
右側にはテニスコートがあった。
物騒な掛け声で
リベンジを狙う高校生のラケットが振るわれると……
「ごふっ!」
対戦相手が滅び去った。
【安心院なじみ@めだかボックス 死亡確認】
「え?……テニスで……人が死んだの……?」
「次、そのままもう一度右を見てみるんだ」
「最初はグー、ジャンケン……」
次のグーの掛け声の瞬間、もはや識別不可能な何かがばらばらになって吹き飛ばされていた。
「……え?」
「じゃんけんでも人が死んだな。サッカー、テニス、じゃんけん、そしてカブトボーグ。
みんな子供だってやる。そしてみんな大好きだ。だが、その度に死者がでるか?」
イシドの問いに、つかさはぶんぶんと首を横に振る。
もしそんなのが現実に起こったら、世界はとっくに破滅している。
「……あれ?」
「そうだ。どんなものでも、使い方を誤れば人を殺める。だが誤らなければ、とても楽しい。
カブトボーグが駄目ならサッカーもテニスもジャンケンも似たようなもの、許されないから滅ぼす?
そんなことできるものならやってみろ。誰一人生存できないぞ」
「じゃ、じゃあどうして連合はカブトボーグだけを……」
「言っただろう。君の所属している組織の大半は目立ちたがりやなだけだ。
そしてあのドゥバイがカブトボーグに倒された……カブトボーグが当時一番活躍したからこそ。
連合はカブトボーグを妬んだだけにすぎない。連中は、なにかと理由をつけて……
自分達が目立ちたいだけなんだ……俺の仲間を、レジスタンスを滅ぼしたのも、な……」
イシドは悲しげに顔を伏せた。
その様子にもはやつかさは二の句がつげなかった。
あの処刑もただ『連合はレジスタンスより力がある』ことをアピールしたいがため。
二度目の放送も『レジスタンスは滅んだ。諦めてうちに所属しな』という悪質な勧誘のため。
連合はとにかく自分達を強く見せたかった。目立ちたかった。
自分も、確かに目立ちたい願望がある。あるのだが……
「仮に君が目立てたとして……」
「この屍の山、他者を踏み台にして、恐怖の対象として目立って、本当に満足か?」
「嫌だ!」
つかさの口から、考えるよりも先に言葉が出ていた。
「こんな、こんなこと……!」
確かに目立ちたいという願望はあった。
だけどつかさが目指していたのは、もっと別の……言い方を変えれば頼られたかった、認められたかった。
一般人の身でありながら次々に人を助けてみたり、主催の強敵を倒してみたり。
でもそれが難しい世界だから、ついつい逃げてしまい……そして連合の甘い言葉に惑わされた。
『カブトボーグは悪』たったそれだけの言葉に。
任務を始めて最初のうちだけは酔えた。だが今や、連合のやっていることは無差別テロだ。
そして今、唯一信じられていたカブトボーグが悪だということすら否定された。
首領がもし本当にケンだとすれば、当然彼もカブトボーグを所持している。
もはや、何を信じればいいのか……
「……」
「え……?」
そんなつかさの前に、イシドが手を差し出した。
「もし君が、本当に連合のやり方が間違っていると思うなら……俺に力を貸してくれ」
「で、でも私……!」
「組織を裏切るのが怖いか?それとも資格がないとでも思うのか?
確かに既に罪を犯しているかもしれない。だがそれを悔い改めるのは、全てを終わらせた後でいい。
……俺も、スパイとはいえ一時は主催者側だった男だ」
「!」
「さらに言えば、君ら連合が流した映像の中に、
アンゼロットの姿もあった。彼女も主催幹部だ」
「!?」
「彼女にどんな心境の変化があったかはわからないが……遊星たちは命を捨てて彼女を逃がしている。
つまり、彼らが彼女を『味方』と判断したわけだ。
さあ、このバトルロワイアルの主催幹部が揃ってレジスタンス側に転んでいるんだ。
疑問を抱いている連合から抜け出す方が、よっぽど簡単じゃないか?」
「……」
やがて、つかさはゆっくりとだが、イシドの手を握った。
「……
ごめんなさい、私末端の兵士だから本部の正確な場所も構成員もわからなくて……」
「いや、十分だ。少なくとも君の他にまだ連合に疑問を持っている者がいるだけ救いがある。
とはいえ、反旗を翻すのは待ったほうがいい。連合のやり口を見てわかると思うが、即座に消される」
「ど……どうするんですか……?」
「まずはなにより仲間を集めることが優先だ。
レジスタンスの仲間だろうが、君のように連合を疑問に思って抜ける者だろうが、誰でも構わない。
目立ちたい派におそらく説得は通用しない以上、強行突破できるだけの戦力が」
「一人、アイムさんって人がいるけど……」
「厳しいか……おそらくレジスタンス生き残りも連合は警戒して戦力を各地で復活させているはずだ。
できれば、アンゼロットとも話がしたいところだが……」
イシドとつかさは、連合軍への対処に悩んでいた。
二人が手を組んだところで、連合にはまるで歯がたたないどころか、最悪モブ兵士にも殺されかねない。
イシドがアンゼロットに会いたいもう一つの理由としては、おそらく同行者に黒とベルがいるからだ。
「ところで、イシドさん?」
「なんだ?」
「……あの人、ちょっと誘ってみませんか……?」
(見かけによらず度胸あるな、おい……!)
【
二日目・21時20分/アメリカ】
【イシドシュウジ@イナズマイレブンGO】
【状態】健康、連合への怒り、仲間の死に悲しみ
【装備】サッカーボール
【道具】ジャミング装置
【思考】
基本:まずはレジスタンス残党、新たな対主催との合流
1:つかさと行動をともにする
2:できればアンゼロット一行と接触したい
3:あれは、近寄って大丈夫なのか……!?
※8期世界の住人のようです
【柊つかさ@らき☆すた】
【状態】健康、決意
【装備】手榴弾×10、コンバットナイフ、ガスマスク、防弾チョッキ
【道具】支給品一式
【思考】基本:連合を変えるために仲間を集める
1:イシドと行動をともにする
2:アイムさんとも合流したい
3:滅びよ……とか言ってるけど悪い人じゃなさそうだし……
※謎の首領の正体を聞かされました
【平等院鳳凰@新テニスの王子様】
【状態】健康、正真正銘本物の天才、髭が剃れた
【装備】日本代表のバッチ(No.1)、テニスラケット、テニスボール×∞
【道具】支給品一式、リバースドール(使用済み)
【思考】基本:主催者達を滅ぼす
1;マーダーも滅ぼす
2:ステルスマーダーも滅ぼす
3:こっちを見ている小娘たちはなんだ……?
最終更新:2012年02月22日 22:32