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「へー。ここがビワコっていうのかぁ」


滋賀県の有名な湖・琵琶湖を、ウサギ型のスリッパを履いた黄色いウサギが歩いていた。
名前はカドルスといい、元々は違う世界に居た、いわゆる『異世界の住人』である。

ただしかし、彼はその世界では、過酷な運命の星の下にあった。

彼がいる世界。
仮に『ハッピーツリーワールド』と表記するこの世界では――


今現在、この状況のような事が日常茶飯事なのである。

彼のいる世界では、一日に一回、誰か住人が必ず、『死ぬ』。


誰かに殺されたり、事故で死んだり、いつの間にか死んでたり、唐突に死んだり、とにかく死んだり――。
彼は、こんなどうしようもない世界から、この日本に。
そして バトルロワイアル=殺し合い の舞台に呼び出されたのである。


「ふう、さすがに何時間も歩くと疲れるなぁ。
もうどれだけみんなと会ってないんだろう。
ギグルス、ランピーさん、トゥーシー、ナッティー君、ペチュニアさん、フリッピーさん、フレイキー、スニフ……みんな無事だといいけど」

カドルスはそう呟き地面にへたりこんだ。
リフレッシュに湖で泳ごうとも考えたが、以前遊泳禁止の池で泳いで死んだ事があったのでやっぱりやめた。


「はあ……なんでこんな事」



「カドルス君?」

「え?」


カドルスは後ろから聞き慣れた声がしたのに気がついた。
ふと後ろを見たカドルスが見たのは――


「やあ。無事だったんだね」


カドルスがいた世界の住人のひとり、
ベトナム帰還兵、クマのフリッピーだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「よかった。無事だったんですね」

カドルスは笑いながらフリッピーと話をしていた。
自分がよく知る者に出会えた喜びのあまり、いままでため込んでいた恐怖心が漏出して、今にも泣きだしそうになっていた。


「今の所は、ね」

「と、言いますと?」


「キミも聞いただろう? ノダとかいうニンゲンが言った言葉を。
『ニッポンの住人が増えすぎたから減らすために殺し合いをしなさい』。この一言で殺し合いが始まってしまった。
もう僕達は、誰に命を狙われてもおかしくない状況に置かれているんだ。
あまり油断はしないほうがいいね」

「そうです……か。そうですよね…………」

フリッピーのその一言で、少しショボンとしてしまったカドルスであった。
フリッピーはそんなカドルスを見かねたのかディパックからあるものを出した。


「はい。これあげるよ」

「なんですか……これ……?」

「ふうせん。これ、僕の支給品なんだ」


フリッピーは、自分の支給品であるふうせんを、落ち込んでいるカドルスに渡した。
そのふうせんは、どこをどう見ても普通の風船であったが、どこか不思議で包容力があって――

これがあればどこにでも飛んでいけるような。そんな風船だった。



「わぁ。ありがとうございますフリッピーさん!」

「いや、感謝される程の事はしていないさ。喜んでくれてよかったよ」


カドルスは、フリッピーが渡してくれたふうせんを、嬉しそうにその手にしっかりと握っていた。

――が、しかし。


「……え?」

「カ、カドルス君!? どこへ行くの!?」


「知らないよ! 体が勝手に浮いているんだ!!」


カドルスは浮いていた。
文字通り、空中に浮かび上がっていた。


「わあぁ! 助けてぇ!」

「カドルス君!!」


フリッピーの支給品であるふうせん。
実はただの風船ではないのである。

これは特殊な素材で造られているふうせんであり、
身に着けた者の体を浮かせてしまう効果があるのである。


それを知らずに持ってしまったカドルスは状況が分からずに叫んでいた。


「うわぁ! わぁ! 高い高い! 落ちたら死んじゃうよー!!」

「カドルス君しっかりするんだ! 今、助ける!」


フリッピーはとっさに、そこらへんにあった石ころを拾い、カドルスのふうせん目掛けて投げ付けた。


石つぶてはふうせんに当たり、パンッと乾いた音がした。
カドルスは真っ逆様に琵琶湖の真ん中に落ちていった。

「ケホッケホッ、あ~死ぬかと思った」

カドルスは琵琶湖から苦しそうに這い上がってきた。
途中で水でも飲んだのだろう。


「助かったよ。 ありがとうフリッピーさん」

「…………」

フリッピーは何も言わない。

「…………」

なにか様子がおかしい。


「フリッピー、さん……?」

「……なぁ、カドルス」

「はい?」





「お前、"俺"に殺されろよ」


「えっ――」


空に、もうひとつの破裂音が響いた。


「フン。クズが」

発射した後のパーティ用クラッカーを持ちながら、血やら脳みそやらを体中に浴びているクマが、ウサギの死体を眺めながら笑みを浮かべていた。
アクマのような表情で、何もかもをそれだけで殺してしまいそうな邪悪な笑顔で、彼はただ死体を嬉しそうに眺めていた。


「殺すの、何回目か分かんねぇなぁ。
まあ、いつもながら殺しってヤツは良いものだよなァ。
だって楽しいからな。理由はそれしかないよなぁ……」

「クク……ガハハハハ……」


夜の琵琶湖に、アクマのようなクマの笑い声が木霊していた。











「おんみょ~ん(訳:危ないところだったな。出て行かなくてよかったぜ。)」

その草陰で、紫と緑の悪霊のような生物がその一部始終を見ていた。
彼は何も見なかったことにして琵琶湖をあとにした。

【一日目・01時01分/滋賀県・琵琶湖】

【フリッピー@HappyTreeFriends】
【状態】健康、人格交代、返り血塗れ、殺人による恍惚感
【装備】パーティ用クラッカー(発射済)@現実
【道具】支給品一式
【思考】
基本:皆殺し
1:殺す
2:武器の調達


【ミカルゲ@ポケットモンスター】
【状態】健康
【装備】かなめいし@ポケットモンスター
【道具】支給品一式
【思考】
基本:おんみょ~ん
1:当てもなくぶらぶら



【カドルス@HappyTreeFriends 死亡】
死因:クラッカーを口内で発射され頭が破裂


※ ふうせん@ポケットモンスターは割れました。
破片が琵琶湖の水面に浮いています。
最終更新:2012年08月20日 08:15