「……え? 何これ、ドッキリ? 笑ってはいけないやつ?」
東京はTBSの楽屋。
そこで事情を知った男――ダウンタウンのボケ・松本人志は、状況をよく理解できていなかった。
TCBR法案自体、あまりに突拍子もなさすぎるものだし、そのようなドッキリを仕掛けられるのも、芸人として既に慣れっこなのだ。
だからこそ、松本は自分に降りかかった殺し合いの事実を、真実と見なすことができなかった。
「ホンマやったら困るけどなぁ」
故に、松本の行動は暢気なものだ。
気がついたらすぐ傍にあったデイパックを、気のなさそうな表情でガサゴソと漁る。
相方である浜田の方は、バリバリの警戒態勢に入っているというのに。
「うわ何これ、メトロン星人やん」
彼の手に握られているのは、ウルトラセブンの怪獣ソフビ人形だ。
このメトロン星人という宇宙人は、自ら番組でも公言している、松本お気に入りの宇宙人なのである。
「……でも、これが何? これでどう殺し合えっていうの?」
とはいえ、所詮はそこまでだ。
こんなものがあったところで、殺し合いの役には立たない。それに大して面白くもない。
早々にメトロン星人をスルーすると、次なる何かを見つけんとする。
「……wwwwww」
今度は思わず噴き出した。
役には立たなさそうなものだったが、それでも笑えるものではあった。
「だから、何でこう人形縛りなわけ!? 何やこだわりでもあんの!?」
次に松本が手に取ったのは、懐かしきガキの使いスペシャルのアイテム――浜田雅功人形だったのである。
そこそこのサイズを有している上、驚きの可動ギミックつき。
上下スーツのズボンを降ろせば、いちごパンツが見られるという、マニア垂涎の代物だ。
……本当はバンダイのホームページで買えるのだが。
「もぉ~こういうのはいらんてホンマに~! 殺し合いさせたいんとちゃうの~!?」
ぶつくさ言いながらも、だんだん乗り気になってきた松本。
手元に浜田人形を置くと、三たびデイパックの中を漁る。
すると今度出てきたのは、タッパーに入ったスープのようなものだ。
「おお、何やろこれ。ちょうど腹は減っとるけど」
これがお笑いの企画なら、きっとろくなことにはならない。それは今までの芸歴の中、散々味わわされてきた。
それでも今の松本にとっては、警戒心よりも食欲だった。
ちょうど空腹だったところに、食べ物が出てくるのはありがたい。ならばいっそいただいてしまおう。
そんな風に結論付けて、スープに口を付けたのだが――
◆ ◇ ◆
「ちょっと兄さん!? 何してはるんですか!? あきませんてこんな――」
ぐしゃっ――と響く鈍い音が、男の声を遮り掻き消す。
ぼとりと地面に捨てられたのは、芸人仲間の亡骸だ。
矢継ぎ早に喋る口も、そこそこの部類の面構えも、今はそこには残されていない。
頭部を握り潰されたその遺体が、雨上がり決死隊・宮迫博之のものであると、理解できる者は少ないだろう。
「……待っとれや、浜田」
その凄惨な亡骸には目もくれず、その場を立ち去る男が1人。
異様に筋肉が膨れ上がり、血管が脈動する不気味な身体は、かつて松本人志と呼ばれていたものだ。
血走った瞳はせわしなく動き、目指すものをひたすらに追いかける。
「守ったる……俺が守ったるからな」
支給された3つ目の支給品――おなじみ、ドーピングコンソメスープを飲んだ瞬間、松本は松本でなくなってしまった。
今の彼の頭の中にあるのは、相方・浜田の存在だけだ。
彼を守らなければならない。
大事な相方が死ぬ前に、戦いを終わらせなくてはならない。
そのためにはこの手で参加者を殺し、日本国民の人数を減らすこと。
浜田が殺されるよりも早く、殺害ノルマを達成し、カオスロワを終了させることだ。
「あいつは絶対に死なせたらアカン……浜田には俺が死んだ時、俺の弔辞を読んでもらうんや……」
左手に握った人形が、ぶらぶらと四肢を揺らせていた。
【一日目・00時15分/日本・東京・TBS前】
【松本人志@現実】
【状態】D・C・S状態
【装備】浜田雅功人形
【道具】支給品一式、メトロン星人人形
【思考】
0:浜田を生き残らせる
1:他の参加者を殺してロワを終わらせる
【宮迫博之@現実 死亡】
死因:頭部粉砕
最終更新:2012年07月26日 02:37