東京お台場。
オブジェとして大地に立つ巨大ガンダムを見上げるようにして真剣な顔をしている男の姿があった。
彼は鳩山元総理。
色物のスーツに焦点の合ってない目、エウレカMADに出てきそうなアヒル口を尖らせて、ちょっと前まで日本の総理をしていた。
「野田総理……影が薄いと思ってたらとんでもない法案を通してくれたものだ。
国民のことをゴミか何かとしか考えていない」
支給されたガンダムの取扱い説明書を片手に、もう片手は怒りによって強く握る。
彼は宇宙からの電波を受信するタイプなので、ガンダムの操縦は可能だ。
お台場ガンダムを操縦し野田総理が居るであろう首相官邸を攻める、それが怒れる彼の作戦だった。
「バトルロワイアルなど終わらせてあげましょう……! 友愛! とうっ!」
決め台詞を叫ぶと荒ぶる鷹のポーズを取り、ガンダムのコクピットへと飛翔しようとする鳩山元総理。
しかし、
“ぐいっ”と。
急に肩を強い力で掴まれ、彼が飛翔することは叶わなかった。
万力のごときその握力、苦悶した鳩山元総理が振り向くとそこには、ピンクい髪を独特の二つ縛りにした美少女。
「――!?」
「ねぇ……あなた、“ユッキー”?」
「だ、誰かね、君はっ」
「忘れちゃったの? 由乃だよ。“ユッキー”の恋人の……我妻由乃」
我妻由乃と名乗った少女は頭にたんこぶ一つ、左手に物騒なナタを携え、鳩山元総理に顔を近づけてきた。
困惑。彼には少女のような恋人を持った記憶はない。今の妻にはべた惚れなのでこれからも無いであろう。
ではこれはなんなのか……鳩山元総理は根源的な恐怖を覚え、由乃の肩を突き返した。
「き、君。私は“ユッキー”ではないっ! 早くその手を離したまえ」
「冗談はダメだよ“ユッキー”。さっき名刺を落としたでしょう? あなたは“ユッキー”のはずよ」
「名刺……? ああ、ジャンプの弾みでポケットから落ちたのか。
いや確かに私の名前は“ユッキー”って呼べなくもないが、君の恋人じゃあないし……」
「え」
「え?」
「“ユッキー”、そんな。“ユッキー”は、由乃のこと、嫌いになっちゃったの?」
「なぇっ゛?」
「嫌いになっちゃったんだぁ」
一閃。
鳩山元総理が返答するその前に、由乃の握るナタが閃いた。
ナタは鳩山元総理の頭部を耳の下あたりから頭頂部にかけて斜めに鋭断した。
ビシュゥウ、切り開かれたそこから、脳漿と共にピンクかオレンジ色の脳髄がぐちゃりと飛び出し、彼は両目をぐるりと白くした。
泡を吹いて倒れ、死んだ。
頭の切片が、次いで地面にぽとり落ちた。
「あなたは“ユッキー”じゃないわ」
我妻由乃は光を失った目でそう言うと、近くに落ちていたガンダムの取説をデイパックに突っ込み、再びどこへなりと歩き始めた。
頭が痛む。ずきずきと。
ロワ開始直後、彼女は路上に落ちていたバナナの皮で珍しく転び、頭を強打してしまった。
その結果頭に大きなたんこぶを作り、そして、生涯忘れることはないと思っていた“ユッキー”のことを殆ど忘れてしまったのだ。
性格や容姿、思い出や境遇まで……おぼろげに覚えているのは彼を自分が“ユッキー”と呼んでいたことと、
彼のためなら神すら殺せると自分が思っていたことくらいだ。
「“ユッキー”……どこにいるの“ユッキー”……?
早く私を見つけて……由乃を助けてよ、“ユッキー”……」
【鳩山元総理@現実? 死亡確認】
【一日目・0時55分/東京・お台場】
【我妻由乃@未来日記】
【状態】記憶喪失
【装備】鉈@ひぐらし
【道具】基本支給品、お台場ガンダムの取扱説明書
【思考】
基本:“ユッキー”を探す
1:明らかにユッキーじゃない人は殺す
2:名前にユキが入ってれば多分ユッキーだ
※天野雪輝のことをほぼ忘れてしまいました。
最終更新:2012年08月01日 16:45