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キョウスケとLilyは情報を集めるために人の多い都心に移動をしていた。
神奈川県から隣接した東京都にまで歩くのに何故数時間もかかるのかというと
実際歩いてみればわかる。
記憶にも新しい、かの東北大震災の時も、関東の県で働いていた人は
実家の東京都に帰るまで徒歩で何時間もかかったという。
交通が発達した今、隣の県に行くのに大して時間はかからないが、
昔は関東圏内でさえ何日もかけて歩いて移動していたのだ。

「そういえばお前の親戚はどういう奴らなんだ?」

ただ黙々と歩くことに痺れを切らしたのか、
キョウスケはLilyの知り合いについて問いただす。
事前に聞いた話だと、なんでも芸能界に所属しているらしいとのことだ。
詳しく聞こうとしたのだが、適当にはぐらかされて終わってしまった。

「なんで今更そういうこと聞くんたい?
 あんたも知ってる奴なんよ」
「だからそれは誰だと聞いている」

知っている人だというのは聞いているが、
それが誰だかまでは知らされていない。
今の芸能界なら有名な人物でも何十人といるし、
そもそもそういったサブカルチャーにさほど興味を持っていないキョウスケにはどうもピンと来ないのだ。

「いやそれくらい自分で考えて欲しいたい」
「ならせめて特徴ぐらい言え」

こうしたやり取りが東京にたどり着くまで何度か行われてきた。
そして今度もキョウスケが折れて再び黙々と歩を進める結果となったのだ。

されどそれもここまでの話、周囲の空気が変わり始めたことにより、
二人は緊張に包まれることになる。


(この臭い・・・・・・火薬か?)

キョウスケ・ナンブも一介の軍人だ。
いくら巨大機動兵器専門の兵士だからとはいえ、重火器の扱いに覚えがないわけがない。
江戸川区に入りしばらく進んだ矢先、周囲に異臭が立ち込めてきたのだ。

(まさか・・・・・・!)

鼻を付く焦げ臭さは火事だとかそんなものではない。
一定量の火薬を爆発させた時に発生した物の残り香だ。
臭いの中心を探しキョウスケが周囲を見渡していると、Lilyが視界の奥へと駆けて出していく。

「おい!どこに行く!?」


金髪を追いかけて行くと、二つの黒ずんだ物体へとたどり着く。
当初は瓦礫か何かだと思っていたが、よく見てみるとそれは人の形をしていた。

(やはりか)

見つけた二つの死体は体の大部分が上半身を中心にえぐれており、
僅かに人の原型を留めていたものだった。
片方は男性だろう。
僅かに見える肌色の腕は、女性にしては大きい。
大分シワも見えるから壮年の男性といったところか。
焦げている布切れが付着していたが、彼のつけていた着物の成れの果てだろう。
そしてもう一人は・・・・・・

「ルカ」
「何?」

大きく形の歪んだ金属片を持ったLilyがポツリと漏らした。
ルカという名はキョウスケも聞き覚えがある。
最近流行しているアイドル歌手の一人だ。
芸名、巡音ルカ、20歳。
兄弟全員が歌手という歌手一家の次女で、抜群の美貌と驚異の歌唱力を誇る女性である。
少々きつい性格ではあるが家族想いだと有名で、時折『女神』だと呼ぶ者もいるとか。
軍部でも何人か熱心なファンが彼女の歌を口ずさんでいたこともある。

「やっぱりこれ、ルカのだ」
(これが巡音ルカだと?)

Lilyの持つ金属片は熱により変色しているが、金管楽器を思わせる∞の字のような形をしている。
彼女の服の胸に取り付けてある、特徴的なアクセサリーに似ているといえば似ている。
もう一つの遺体を見てみても肉体の大部分が消失していたが、残った足首は女性の形をしている。
無造作に捨てられていた焦げた糸屑も、ススを払うと綺麗な桃色が姿を現した。

(・・・・・・こんな奴でも死んでいくんだな)

芸能界の人々は自分達一般人とは別世界の人間だと半ば絵空事のように思っていたが、実際はただの人。
人気アイドルだろうがトップ歌手だろうが当たり前のように死んでいくのだ。


「Lily、お前の知り合いはもしかして・・・・・・」
「うん、ルカよ」

一目で遺体を巡音ルカだと判別したLilyに、キョウスケは慎重に問いただす。
Lilyは曲りなりにもアイドル歌手、その知り合いも同じ分野の人間だろう。
少なくとも、他のファンや自分よりはずっと巡音ルカに親しい人物なのだ。
もしかしたらショックで放心しているのかもしれない。
慰めることはあまり慣れていないが、彼女の心をこれ以上傷つけないようにうまく言葉を選ぶ必要がある。

「俺が言うのもなんだが、悔しいのはよくわかる。
 だから良ければしばらくここで休んで・・・・・・」
「あーそういうのは別にいいから」
「は?」

全く予期していなかった答えに思わず呆けた声をあげる。

「確かに知り合いだったけどたまに顔合わすぐらいで
 そこまで親しいわけじゃないから気にする必要はないたい」
「それでいいのか?」
「いいんたい。むしろ心配するべきはルカの家族たい」

ルカの家族、即ち初音ミクを筆頭とした『VOCALOID』のグループである。
『VOCALOID』とは、今現在日本でヒット中のアイドルユニットの名前だ。
メンバーのほとんどがソロで活動しているが、その最大の特徴が身内とその親戚で固められているということである。
元々彼らの一族は音楽に関しては天性の才能を持っているらしく、
それに目をつけた事務所が彼女達を集めて芸能界に売り出したのだ。

「ルカの家族の仲の良さはわかるんたい。
 だから、彼女が死んだら悲しむんたい。
 特にまだ幼いレンやリンがそれを知ったらどうなるか・・・・・・」

ルカの亡骸を見てLilyが嘆く。
中学生という多感な時期に姉の死に直面したら
ロクな結果を産まないことは容易に想像できる。
特に今は殺し合いの真っ最中だ。後を追うように自殺したり、はたまた殺人に走る可能性も否定できない。

「だから今はレン達を説得する方が先たい。
 でもその前に・・・・・・」

Lilyは遺体を抱きしめ、キョウスケに向けて口を開いた。

「ルカを眠らせに行くたい」





「ナンマンダブ、ナンマンダブ、ナンマンダブ」

Lilyは両手を組んで、目を瞑り一心に念仏を唱え続けている。
キョウスケも彼女にならって二人の死者の冥福を祈った。
当初はルカだけを埋める予定だったが、野ざらしにするのも気が引けたため、
もう一人の男の遺体も埋葬することになった。
彼とルカの関係は不明だが、バトルロワイアルの犠牲者ということには変わらないだろう。
願わくば、ルカとともに成仏することを願う。

「そろそろいいか?」
「いいじゃけん」

顔を上げたキョウスケはLilyとともに歩き出す。
主催を打倒するために。そしてルカの死をその家族に伝えるために。
朝焼けの日差しを背に受け、彼らは明日に向かって進み続けるだろう。
二人が眠る空き地に振り返り、Lilyは軽く微笑み言い放った。

「私が売れたら立派な墓を立ててやるじゃけん。
 だから今はそこで眠るんたい」


【一日目・5時20分/東京都江戸川区】
【キョウスケ・ナンブ@バンプレストオリジナル】
【状態】普通
【装備】護業@NAMCOxCAPCOM
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
基本:主催者の打倒
1:知り合いの捜索
2:危険人物の排除
3:ルカの家族に彼女の死を知らせる

【Lily@VOCALOID】
【状態】疲労(小)
【装備】斬鉄剣
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】基本:生き残る
1:キョウスケに着いていく
2:ルカの家族に彼女の死を知らせる
3:新感覚アイドルとして売り出したい
※普通に喋れますので、面倒だったら標準語で喋らせようぜ。



「なあ、そういえばどうして今までVOCALOIDの一員だということを隠していたんだ?」
「だって私みたいな落ちこぼれがVOCALOIDだなんて恥ずかしいじゃけんの」
「・・・・・・そうか」
最終更新:2012年11月11日 19:53