( (嫌……なんで殺し合いなんて始まってしまったの……))
滋賀県、琵琶湖のほとりにひとり、
うすい紫色の髪に水色の服を着た少女が座り込んでいた。
少女の目は悲しみに暮れすぎてクマが出来ている。
少女の心臓部には「心の眼」が一つあり、そこから感情線が体を取り巻くように伸びているが、
この心の目も彼女の感情に呼応するように涙を流している。
( (悲しいわ。みんなの悲しみや苦しみが、流れ込んできて、悲しいわ))
少女――古明地さとりはひどく悲しんでいる。
ただしその悲しみは、少女自身の悲しみだけではない。
妖怪・古明地さとりの「さとり」の能力は、周囲の人間の心をフルオートで彼女の心に流す。
その範囲は、広い。あまりにも広い。
日本で例えるなら一つの県まるまるといったところだ。
今は琵琶湖にいるから、滋賀県にいる人間すべての感情が彼女の心を埋めている。
ひどい!どうしてこんな! ボクは死んでしまうんだ……
ムンナが!やめたげてよお! 俺はなにものにも縛られないぞ!
パセリ食べたい
嫌あッ、殺さないでッ! ああああああああ 私を誇り高き戦士と知ってのことか!
もう駄目だー イヤーッ! では問題です。
YOUは死ぬ
どうしても行くっていうんだね <○> だからお前はダメなんだ!
そうか、君は…… | リトマス試験紙の赤ってどっちだっけ?
<<
※聞こえている声はイメージです。実際の声とは違う場合があります
……その心中はまさにカオスの極み。
様々な人の感情が揺れ動くバトルロワイアルであればなおさらだ。
当然、普通に生きていくにも不都合が出る――だからさとりはほんの少し前までは地底に住んでいた。
それが出来なくなったのは、先月の事件が原因である。
このバトルロワイアルが開催された原因でもある、日本以外のすべての国が滅びた事件だ。
( (私はロシアの地底にいたから、詳しいことは分からないけれど……。
誰かがあんなことをしたせいで、私の心は休まる暇がないわ。ペットともはぐれてしまったし、
正直もう耐えられない……特にすることもないし、いっそ自殺しようかしら……)))
さとりは目の前の澄んだ湖と、
水面に映る自分の憔悴しきった顔を見てあらぬことを考え始める。
石を抱いてこの湖に沈めば、もといた地底にも近いし心も静かになれるだろう、と。
頭痛がするほどの感情の渦で思考がまとまらない中、さとりはそんなことを考えてしまう。
( (こいし……今ならあなたの気持ちがわかるわ……こんなお姉ちゃんでごめんね……))
ずいぶん前に生き別れとなった、心を閉ざした妹のことを考える。
古明地こいし……さとりと同じく心を読む能力を持ちながらそれを捨て、無意識となった少女。
元気でやっているだろうか、この殺し合いに巻き込まれて死んでしまっていないだろうか。
そんな心配を少しだけして。
でもどうせ今から自分は死ぬのだから心配しても無駄だと気付いて。
古明地さとりはため息をつきながら、近くにあった大きめの石をいくつかお腹に抱える。
あとは一歩踏み出すだけだ。
さあ。
今から私は、死ぬだろう。
喧騒に塗りつぶされた心に心残りはもうないだろうか、そんなことを考えて。
( (あ))
ひとつだけ思い当たることがあった。
妖怪・古明地さとりはこの能力を持って生まれてきたそのときから、
ペット以外の「友達」と呼べる存在を作ることが、結局一度もできなかった。
( (ああ……こんな私にも、怖がらず接してくれる……そんな友達がほしかったなあ……))
――その瞬間だった。
彼女は不意に股ぐらに風を感じた。
( (え?))
思わず下を見るとそこには、
彼女の股の間から顔を出しているきりりとした顔のクマの姿があった。
「やあ! あなたのパンツを助けに来たヒーロー、クマ吉です!」
( (やあ! あなたのパンツを助けに来たヒーロー、クマ吉です!))
「ぱ……ぱんつ……え……!?」
突然の自己紹介と呼ぶには意味不明なクマ吉の言葉にさとりは動揺を隠せない。
そしてもう一つ、彼女の能力を持って読んだ心が、まったく本人の言葉と同じだったこと、
これにもさとりは動揺を隠せなかった。
「君は自殺するつもりだったようだけど! そうする前にぼくにパンツを渡してからにしろ!」
( (君は自殺するつもりだったようだけど! そうする前にぼくにパンツを渡してからにしろ!))
「わ、渡すって。。。。そんな。。」
あたふたするさとりと、ものすごい剣幕でさとりにパンツを要求してくるクマ吉。
その間も彼女の股の間から顔を外そうとしない鋼の精神力もすごい。
どうにか次の行動を予測しようと彼女が心を読んでも、頭の中には少女のパンツとブルマ、
それにスクール水着しかなかった。クマ吉は比類なき変態紳士だったのだ。
最終的に、さとりは――――――服の中に溜めこんでいた石ころを、落とさざるを得なくなった。
「
ごめんなさいタダで下着を渡すなんて無理です……!」
「ぐああああああああああ」
( (ぐああああああああああ))
当然下にいるクマ吉は石の直撃を受けてあえぐ、その間にどうにかさとりは彼の上から外れる。
が、クマ吉はすぐに気を取り直したかのように立ち上がり、
「では何か対価としてぼくが払えるものがあるというの!? ぼくはもう失うものは無いよ!?」
( (だからぼくにタダでパンツを渡そうよ!))
図々しくも心の中まで使ってスムーズに開き直ってきた。
これに対して、さとりは……
「ふふ」
「?」
( (?))
「あははは、あなた、その、面白いですね」
さとりは笑い、
「じゃあ、クマ吉さん――あなた、私の友達になってくれますか?」
ある日、森のそば。琵琶湖のほとりで、
少女はクマさんに出会って、そして友達になった。
【一日目・04時55分/滋賀県・琵琶湖】
【古明地さとり@東方project】
【状態】健康、頭痛
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】
基本:友達が欲しいです
1:クマ吉さんはわかりやすい人なので友達になれるかも
2:こいしは無事かしら
3:日本以外の国が消滅した事件……一体誰が。
【クマ吉@ギャグマンガ日和】
【状態】健康、狂乱→一周回って冷静に
【装備】全裸
【道具】支給品一式
【思考】
基本:世の中のパンティ(およびスクール水着、ブルマー)を自分のものにする
1:友達になれ、だって……!?
2:そうすればパンツをくれるの!?むしろそれでいいの?
最終更新:2013年02月20日 22:21