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 一方、フリッピーがカドルスを殺すところを見てしまい、
 いちもくさんに琵琶湖を後にしたミカルゲは、三重県まで来ていた。 

「おんみょ~ん……(訳:もうちょっとまともな人に会いたいもんだぜ……)」
≪全くだな。僕も早くこの首輪を外して、このくだらない殺し合いを終わらせたいものだ≫
「おんみょ~ん!?(訳:ふええ!?)」

 するとミカルゲも気づかない内に、隣に一人の女子高生が立っているではないか。
 メガネをかけてつんとした表情のその女の子は、ミカルゲの言葉に返事を返してきた。
 おどろきだ。
 初手からねこだましをくらったポケモンの気分だ。
 ミカルゲはゴーストだからくらわないけど。

「おんみょ~ん……?(訳:あなた、俺の言葉がわかるのか……?)」
≪分かるが何か。
 言っておくが僕はさっきの話の少女のように心が読めて悲しいとかはないぞ、
 正直それくらいで悲しんでたら涙が流れっぱなしだからな。もう慣れた≫
「おんみょ~ん(訳:誰に話してんだあなた)」
≪そんなことより、問題は僕がこの首輪に制限を受けて、
 何故か女体化した姿から戻れなくなっているという事実だ≫

 ミカルゲの話を無視して、隣の女子高生は語り始める。
 女子高生の本名は斉木楠雄というらしい。
 どうもフーディンよりすごいエスパーで、自分の性別さえも意のままに変えれるのだそうだ。
 だけど、それを主催の野田首相はこころよく思わなかったらしく、
 彼女……いや彼にいつのまにか首輪を嵌め、その能力を制限した上に女体化状態にしたらしい。
 というわけで今は斉木楠子になっている。
 らしい。

「おんみょ~ん……(訳:ぶっちゃけ信じられないぜ……)」
≪だろうな、僕も正直驚いている。この僕の能力を制限できるような仕組みを作り出した政府にな。
 まあ、僕を殺さなかったのは判断ミスと言わざるを得ないだろう。
 首輪さえ外せればこちらのものだ。二十秒でこの殺し合いを終わらせる力が僕にはある≫
「おんみょ~ん(訳:それもそれで信じられないが)」
≪なら見せてやろう。制限されているとはいえ、そこのビルひとつくらいなら≫

 どん。
 ――と音がしたかと思えば、ミカルゲの目の前にあったビルが浮いて、
 みしみしとヒビがそれに入った後、ゆっくりとばらばらになっていく。

「おんみょ~ん!?(訳:うおおお!?)」
≪本来ならばこれはハイジくんの技なんだがな。まあ彼はこのロワには出ないだろうし使ってもいいだろう≫
「おんみょ~ん(訳:だから誰に話してんだあなた)」


 数分後、
 鉄とコンクリートのくず山と化した雑居ビルをしりめに、
 斉木楠子は静かにしゃがみこんでミカルゲの目を見る。
 ……まるでこの世のすべてに絶望したかのような、読み切れない瞳だ。

≪五分かかったか。やはりかなり弱体化しているな……。
 さて、君の望み通り見せてみたが、こんなものでどうだろうか。本来はもう少し早い≫
「おんみょ~ん(訳:あ、ああ、分かった。分かったよ)」
≪そうか≫

≪――では少し、君の力を借りるぞ≫

 急にデイパックからモンスターボールを取り出した楠子は、ミカルゲにそれを投げた。

「おん(訳:え)」
≪力が制限されている現状では一人では危ないからな。
 きみには僕の手持ちになってもらう。ゴースト・あくならエスパーの相性補完としてもまあまあだ≫

 何らかのサイコキネシス的力でマスターボール並みの捕獲力になったそのボールは、
 ミカルゲを難なく斉木楠子の手持ちにしてしまった。
 楠子はふぅ、と一つ息を吐くと、それを支給されたデイパックの中にしまう。

≪全く、僕がまさか、仲間を集めるなんて手段を取らざるをえないとはな……。
 だがこれはこれで面白い。何でもできたふざけた現実より、何もできない非現実のほうが≫

 静かに笑みを浮かべる楠子の心中をもし読めるものがこの場にいたなら、すこしぞっとしたことだろう。
 万能でありながら普通の人間になりたいと願っていたかの少年は、今それをほんの少し手に入れ、
 実際のところけっこうハイテンションになっているのだ――――。


【一日目・05時27分/日本・三重県】


【斉木楠子@斉木楠雄のΨ難】
【状態】健康、かなりの制限、女体化状態
【装備】モンスターボール×5
【道具】支給品一式、ミカルゲ@ポケットモンスター
【思考】
基本:首輪を外して、この殺し合いを終わらせる
1:まず主催がどこにいるかを探すか
2:仲間も少しは集めたいところだが

【ミカルゲ@ポケットモンスター】
【状態】健康
【装備】かなめいし@ポケットモンスター
【道具】支給品一式
【思考】
基本:おんみょ~ん
1:勝手に手持ちにされてしまった……ある意味安全?
最終更新:2013年02月20日 22:22