アットウィキロゴ
小町と影薄な仲間たちを載せた舟は、某ズガン師の魔の手から逃れるべく大阪府の沿岸まで移動していた。
その間に暇つぶしとしてそれぞれの情報交換を行なった。
出自のこと、知り合いのこと、幻想郷のこと、バスケのこと、麻雀のこと、チートだらけな生徒が多い学園のこと、主人公のことetc。
……ただでも影の薄い連中だらけなので小町には話の半分も聞けてなかった気がするが、影薄たちは十分な情報を得ることができたようだ。

「幻想郷にもバスケはありますかね?」
「麻雀できる人はいないっすか?」
「幻想郷でバスケは聞いたことないね、将棋打てる奴なら心当たりあるけど麻雀はどうなんだろ……」
「ウチの学校みたいに反則級な力をもった妖怪がごろごろいるらしいな」
「殺しても死ななかったり、人の心を読んだり……色々いるが、たぶん能力者の質と量はそっちと同じ程度じゃないのかい」
「あかりはね、あかりはね!」

あかりが小町に質問しようとした、ちょうどその時、最初の定時放送が流れた。
死者の発表・禁止エリアの追加・野田からの捜索依頼が流され、やがて放送が終わると小町はホッと胸をなでおろす。

(とりあえずあたいの知り合いはいないみたいだね、一先ず安心だが……)

チラリと同行者である影薄たちを見る。
今の放送で大切な友人や家族の喪失を知ったのかもしれないのだ。
もしそうならば精神的に支える必要があるだろう、自棄になってそいつが目の前で自殺したり他者を殺したりするのは目覚めが悪いからだ。
だが小町の心配を他所に、影薄たちに暗い雰囲気は一切なかった。

「あかりの知り合いは大丈夫みたいだけど、みんなはどう?」
「私の知り合いはみんな無事のようっすね、末原さんが盗み働いて指名手配はされてたけど」
「僕もです」
「俺はいたが、元より気まぐれで死んでは生き返るような奴らだし、たぶん問題ねぇな」
「全然大丈夫そうだね、あんたら」

日本の各地は今でも殺し合いが続いてるというのに、この一行は暢気なものだった。
影は薄いが船旅の仲間としては悪くない連中との気ままな現状に彼女は声を漏らす。

「このままずっと、こんな時間が続けば良いんだがねぇ~」

仕事嫌いな死神の囁かな願いであった。

「……?」

そんな願い事をした後、ふと海上に目をこらすと何者かがいた。
何者かは歌いながらこっちに向かってきている。

「なんだいありゃ?」
「まさか、あのズガン師が追ってきたんすか!?」
「……いや、体格がまるっきり違うし別人だな」
「よく見ると海の上歩いてませんか?」
「何を歌ってるんだろう?」

近づいてくる者の歌に皆が耳を傾けてみると……


「チーチッチ おっぱーい ボインボイーン」

その奇妙奇天烈な歌に小町はズッコケた。 日之影は腹を抱えて笑っている。 黒子は無反応。 桃子はドン引き。 あかりはリアクションに困っている。

「まーた変なのが現れたね、まったく」
「こちらに害意はなさそうだし、いいじゃないっすか小町さん」

例の者は、顔色と姿がわかるくらい一行に接近していた。
その少女は真顔で頭の悪そうな歌を口ずさんでいることはともかくとして、その様子から敵意や殺意は伺えず、それらを隠している様子もなかった。


……敵意や殺意がない故に、一行の油断を招いた。

「優しくもげ!」
「……え?」

わずか一瞬の隙に、少女――長門はとてつもない速さで船に乗り込み、手始めに桃子の乳房をもごうとし。

「危ない!」

いち早く反応できた黒子が、バスケ由来のインターセプト技術で桃子と長門の間に割り込むことで、長門の乳簒奪行動は未遂に終わる。
――代わりに、黒子は顔面の皮をベリベリと「もぎ」とられてしまった。

「がはッ」
「く、黒子君……いやああああああ!!!」

元々タフな部類ではない黒子はダメージによって失神し倒れた。
桃子は目の前で起きた惨状にパニックに陥る。

「東横、黒子!? このアマなにしやがんだい!!」
「こまっちゃん、こいつは俺がやる。 アンタは他のみんなを守ってくれ!」

仲間のガードは小町に任せ、日之影は突然の襲来者である長門に応戦しようとする。
そして日之影は小町の視界から消えた。

「き、消えた……!?」

存在感を徹底的に薄くする異常性能力『知られざる英雄』の発動。
これにより、敵はおろか味方すらも日之影の存在を感じ取れなくなった。

(人間の皮をもぎとるような奴を人間とは思わん、全力で叩き込む)

日之影はただ空気なだけではなく、地の戦闘力も高いため、大抵の敵はねじ伏せられる。
油断も容赦もする気もなく、長門の顔面に右拳による男女平等パンチを叩きこみ、一撃で決着をつけるつもりだ。

「な、なに?!」

日之影は驚愕した。
彼の渾身の一撃は、長門のか細い腕一本によって軽々と受け止められていた。
これは長門が見た目によらず、日之影以上のパワーとスピードを持っている証であり、そしてそのパワー以上驚くべき点は――

(こいつ、俺が……俺たちが見えているのか!?)

よく考えてみれば、普通はほぼ背景に近い空気キャラによりも存在感のある小町を狙ってくるはずだが、あろうことに目の前の少女は空気キャラを最初に狙ってきた。
これはつまり、長門にはどんなに影の薄いキャラでもしっかり見えていることになる。
長門は情報統合思念体に送られた端末、その目的は大まかに言えば情報収集、ゆえに高い索敵能力をもっているのか。
はたまた、チート能力である情報操作能力の力によって、空気キャラが見えるようにしたのかは日之影は知る由もない。
彼がわかるのは、いま相手にしている女は黒髪めだかと同じかそれ以上のスペックを持ち、なおかつ空気化能力が意味を成さない相手だということ。
それを理解した時には、右腕が彼女の素手で既に「もぎ」取られていた。

「ぐわあああああああああッ!!」
「いきなりもげ!」
「日之影ええェェェェェ!!!」

小町が日之影の存在を再度認識できるようになった時には、彼が右腕の付け根からおびただしい血を流し、本来あるべき右腕は長門の手の中にあった。

「くそッ……」

一般人なら倒れてもおかしくないダメージだが、先代生徒会長の意地により日之影はこらえる。
だが、長門に関して勝てる見込みがないのも悟っていた。
奇怪な歌はもうすぐ天に召されるかもしれない五人に贈る鎮魂歌のつもりか。
小町とは違う意味での「死神」は、興味なさげに黒子の皮膚と日之影の右腕を海に捨てる。

「チーチッチ おっぱーい」
「今度はあたいが相手だよ!」

日之影は片腕を失い、まともな戦闘ができる者は自分だけになってしまった小町。
相手がどんなに高い実力をもっていたとしても、舟の上であるために逃げることも助けを呼ぶこともできない。
どんなに苦しくても戦うしか道はないのである。
弾幕は狭い舟の上では味方に当たる。 デスノートは相手の名前がわからないために使えない。
できるのは白兵戦しかないと小町は意を決して長門に刀を向けた。

「射殺せッ 神鎗ッ!!」

伸びる程度の能力を持つ斬魄刀・神鎗により小町は仕掛ける。
されど、己の喉元まで伸びるよりも早く長門は刃をかわし、持ち前の機動力で小町との距離を一気に詰めた。

「早ッ……」

驚く小町を尻目に、長門はすぐさま背後へと回り込み、そして――

「きゃん!?」

――両手でふくよかな乳房を鷲掴みにした。
思わず、顔を赤くしてしまう小町だったが、それはすぐに青ざめた。

「動けない!?」(金縛りの術でも使われたのか?
それにこいつの手の力はヤバい、乳どころか奥にある骨や心臓までもってかれそうだ!
もし、そいつで死んじまったら…本気で…笑い話にもならないよ……)

相手が抵抗しないように長門は小町の体に情報操作能力をかけたのだ。
加えて鷲掴みされた乳房からはミシミシメキメキと嫌な音にともない激痛が走っている。

「くッ! 今助けるぞ!」

小町の異常に気づいた日之影は、己の負傷に構わず長門を引きはがしにかかるも、空いている足によるカウンターキックによりあっさりと蹴り飛ばされてしまう。

「ぐおッ!」
「日之影さん!!」

桃子が急いで日之影を助け起こすが、致命傷こそ免れたものの多大なるダメージの蓄積によって即座な戦闘続行は不可能であった。
彼が立ち上がる前に、小町の命がもぎ取られる方が先であろう。
そして、その瞬間はもう目前だった。

(もうダメだ! ここまでか……)

体内ではいくつかの胸部筋肉の断裂と内出血が始まっており、限界を迎えていた。
長門は影薄たちには手に余る相手であり、勝ち目などなかったのかもしれない。
小町を助ける手段がなく、小町が死ねば次は自分たちだと、誰しもが生きることを諦めかけていた。






――『主人公』を除いては。

「あかりん、主人公パワー全開!!」

あかりが突如、ディパックから「何か」を取り出し、勢い良く投げつけた!

「あかり、あたいを助け……はぶッ?!」
ベチッ

何かは小町の顔面に直撃した……
なぜ長門ではなく味方にぶつけたのか、その答えはすぐに出た。

「チチ?」

小町の体が煙に包まれ、手足のない青い猫か狸に似た小さな魔物『マムル』へと姿を変えていた。
元の体より小さくなったため長門は小町を取りこぼしてしまう。

「今だ!」

何が起こったのかわからないと戸惑う長門へと畳み掛けるように、再起した黒子が何か布らしき物を投げつける。
布で視界を妨げて攻撃か、はたまた布に何か細工でもしてあるのか?
前者なら五人では長門相手に打撃力不足、後者なら情報操作能力で無効化できる。
どちらにせよチートの塊である彼女には通用しないだろう。
長門は布に覆われかけ、その布を払おうとし――いずこへと消えた。



@@@@@

数分後、マムルと化していた小町が再び煙に包まれ、元の少女の姿に戻った。
長門が消えたためか、情報操作能力による金縛りも解けたようだ。

「貸しができちまったね、あかり」
「えへへへ、主人公として当然の事をしたまでだよ」

あかりは空気であることがアイデンティティではない(本人が認めてない)。
空気化を最大の武器にしている他の三人とは違い、能力を破られてもショックでもなんでもなかった。
そして、焦りは主人公の死亡フラグだと思い、彼女は危機化においても冷静だった。
ただ、冷静だとしても戦闘力は五人の中では下から数えた方が早いだろうし、長門に真正面から勝てる道理はなかった。
長門を退けるには僅かな隙を突く奇策しかなく、奇策を生むために彼女は支給品の力に頼ることにしたのだ。

あかりの支給品は食べると貧弱小型モンスター・マムルになってしまう肉である。
これを長門にぶつけてマムルにして弱体化させる……のはおそらく無理だろう。
長門に投げつけても、あの身のこなしの速さで口に入れさせるのは至難の技だろうし、変身は本人が念じればすぐ解けてしまう仕様でもあった。
ならば、捕まっている小町の方に食べさせて救出させた方が良いだろうと判断した。
しかし、これだけでは強敵・長門自体はそのままであり、一時しのぎの延命策にしかならない。

そこで活躍するのは黒子の支給品、『死出の羽衣』である。
これは覆った相手をどこかへとワープさせる魔道具だ。
あかりたちはあらかじめ情報交換を行なっていたため、黒子がこの支給品を持っていたことを知っていた。
戦いの中であかりは黒子が気絶から醒め、この羽衣を使うタイミングを伺っていたのにも気づいていた。
が、小町が長門に捕まっている以上は二人まとめてワープさせてしまい、仲間を見捨てる羽目になってしまう。
そこを見通したあかりは、助け舟としてマムルの肉を小町に投げたのである。
目論見どおり、小町は長門の魔の手から逃れ、長門を退けることにも成功する。

死出の羽衣によってワープした先は使用者にもわからない。
脱出不可能な亜空間かもしれないし、1kmも離れてない場所かもしれない。
ただ、しばらく経ってから再び襲ってこない様子からしてそれなりに離れた距離へワープしたようだ。
小町と影薄たちは一つの苦難を乗り切った、だがこちらの損害も少なくなかった。

「大丈夫っすか、二人とも」
「セルフで止血したからいきなりポックリ逝きはしないから安心しな、ハハハ」
「辛うじて足と手は残っているからバスケを続けられそうです…痛ッ」

黒子は顔の皮を剥がれ、日之影は右腕を無くしている。
本人たちは暢気な口調で話しているが明らかに重傷だ。
その様子を見ていた小町も胸が痛かった。 怪我的な意味で。

「こりゃあ、治療のために陸に上がって病院を探した方が良さそうだね」
「迷惑かけて悪いな、こまっちゃん」
「いいさ、日之影。 あたしゃ(死神の)仕事をサボリたい気分なのさ。
とりあえずみんな、これから上陸するよ、いいね?」

小町の決定に異を唱える者はいなかった。
舟は進路を大阪の取り、上陸を目指す。
そんな中、小町はため息混じりにつぶやいた。

「はあ~、海の上でもまともにサボれはできそうにないね。
陸地のどこかにもっとゆっくりできる場所はないもんかねえ~」


【一日目・7時00分/大阪府・沿岸】

【小町と影薄な仲間たち】
【小野塚小町@東方Project】
【状態】ダメージ(中)
【装備】斬魄刀『神鎗』@BLEACH、デスノート@DEATHNOTE、舟
【道具】不明
【思考】
基本:バトロワに乗じて仕事をサボる
1:黒子と日之影を治療するため、いったん上陸する
2:どっかに安住の地はないもんかねぇ

【黒子テツヤ@黒子のバスケ】
【状態】顔の皮膚喪失
【装備】なし
【道具】死出の羽衣@ 幽々白書
【思考】
基本:友人たちと生き残る
1:顔が痛いです、死ぬかと思いました

【東横桃子@咲-Saki-】
【状態】健康
【装備】不明
【道具】不明
【思考】
基本:加治木先輩や友人たちと生き残る
1:乳もぎ魔こえーっす

【赤座あかり@ゆるゆり】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】マムルの肉×2@風来のシレン
【思考】
基本:主人公らしく活躍する
1:今のは主人公的に活躍できたよね? ね?

【日之影空洞@めだかボックス】
【状態】ダメージ(大)、右腕欠損(止血済)
【装備】不明
【道具】不明
【思考】
基本:主催者を倒す
1:仲間を守る
2:↑の両方やらなくちゃあならないのが先代生徒会長の辛いとこだな。
3:空気化能力の効かない奴がいるのか、厄介だな


@@@@@

同時刻、近畿地方上空。
空気ガンダムマイスターのアレルヤの搭乗するコアファイターが、唐突な強い衝撃により機体を揺らす。

「なんだ!? 攻撃? 故障? それとも――」

言葉が最後まで紡がれるより早く、アレルヤは首を「もぎ」取られて死んだ。
コアファイターの上には乳もぎ魔・長門が男の首をもって立っていた。
彼女は死出の羽衣によって上空にワープさせられたが、たまたま真下に戦闘機が飛んでいたため、飛び乗ったのだ。
次にアレルヤが彼女の存在を認識するより早くコクピットガラスを素手でぶち破り、頭と体を泣き別れにさせたのである。

そして、長門はアレルヤの首とコクピットに残っていた体を空へと放り投げて、コクピットの中に入り込む。
血が乾ききっていないシートに座り、操縦桿を握って長門はこの戦闘機の新たな主となった。
戦闘機を手に入れて足が大幅に長くなった最凶の乳もぎ魔は次の獲物を求め、歌いながら空から地上を見下ろす。

「チーチッチ おっぱーい ボインボイーン」



【一日目・7時00分/近畿地方上空】

長門有希@涼宮ハルヒの憂鬱】
【状態】ナイン
【装備】コアファイター@機動戦士ガンダム
【道具】支給品一式 、朝倉涼子のおっぱい(右)×2、朝倉涼子のおっぱい(左)×2

【思考】
基本:チチをもぐ
1:朝比奈みくるのチチをもぐ
2:涼宮ハルヒのチチをもぐ
3:とにかくチチをもぐ
4:邪魔者はもぐ

【アレルヤ・ハプティズム@機動戦士ガンダム00 死亡確認】
最終更新:2013年03月04日 16:21