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煌びやかな豪邸の廊下に銃声と、同じ音程のドスの効いた声三つが響く。

「ザッケンナコラー!」
「ザッケンナコラー!」
「ザッケンナコラー!」

発砲しているのは強面のヤクザ集団。
スーツや装備に関してはまだしも、そのヤクザたちの背丈・顔つき・髪型・声質までもが全てが同じであった。
こいつらはクローンのヤクザ、クローンヤクザなのだ。 コワイ。
そんな彼らはこの豪邸の警護を任されており、今はある侵入者たちとの交戦状態に陥っている。
その侵入者たちは仮面ライダーフォーゼとカエルゾディアーツと、ついでに患者が一名……すなわちヒノケン一行である。

「うるさい! おまえらまとめて死ねィ、であります!!」

カエルゾディアーツことケロロ軍曹は豪邸に備え付けられたテレビから先の放送を聞き、戦友の一人であるギロロ伍長の死を知って非常に気が立っていた。
その怒りを力に変えるかのごとくカエルゾディアーツの機敏さとサイズの小ささを利用してヤクザたちの放つ弾幕をかわしていき、己の間合いまで接近すると、舌を長く伸ばして一人のヤクザの首を絡め取る。

「どりゃあああああ!!」

次にゾディアーツとして強化された舌の力を活かして、捕縛したヤクザの首根っこを引っ張って浮き上げさせ、そのまま鈍器代わりに他の二人のヤクザに叩きつける!
そのパワーは数撃で三者の全身を複雑骨折させるほどの強さである。

「「「グワーッ!!」」」

独特な断末魔の叫びを上げ、アバラを粉々に、手足や首の骨は曲がってはいけない方向に向けさせて三人のクローンヤクザたちは死んだ。
だが、すぐに増援として別のクローンヤクザたちが現れた。 そちらはケロロではなくヒノケンを狙っている。
クローンヤクザは量産型であり、相当の金持ちの家ならば敷地に何十人と配置されている場合がある。
一人二人殺しただけでは大局は変わらないのだ。
それでも侵入者のリーダーはWWWの一角であるヒノケン、それに加えて仮面ライダーフォーゼ・ファイアーステイツを纏っている。
質より量を優先したクローンヤクザ程度に負ける道理などなく、ヒーハックガンですぐに焼却された。

「「「グワーッ!!」」」
「クソッ、軽く三時間以上戦っているが、いくら焼き殺してもキリがねえ」

ヒノケンとケロロの周りには、クローンヤクザの死骸が奇麗な床を血と炭で汚しきるほど転がっていた。
たった今、殺した分も含めれば約20人は殺している。
それでも増援が止む気配は一向になく、仮面ライダーとゾディアーツと言えど、このままでは消耗は必死である。

「オイ、ファイアマン! まだ脱出ルートを割り出せねえのか!?」
『申し訳ありません、全力でやっていますがセキュリティレベルが高く、地図検索すら難しい状態です』
「早くしろ、チンタラやってたら三人まとめて地獄行きだ!」


炎を喰らう謎の女、四条貴音からエスケープのバトルチップを使い、逃走に成功したヒノケン一行。
ただし逃走成功の代償として場所は選べず、東京都内のどこかにランダムでワープさせられるのであった。
その場所は――

(まさか首相官邸の地下に飛ばされるとはな……)



送られた先は首相官邸であるとファイアマンの検索により知った……といっても多くの日本人が知る『表の』首相官邸ではなく、地下に建てられた『裏の』首相官邸である。
小奇麗だが地味な印象がする地上部分とはうって変わって、贅沢な豪邸の如き造りの空間が地下にはあったのだ。
50人は収容できそうなパーティルーム、世界の美味珍味が揃った厨房、いろんな機能の風呂があるバスルーム、『禁則事項』用の大部屋、大量の札束や宝石が眠ってそうな巨大金庫(うぐいすが盗みに入ったため、一つ開いてた)、娯楽に関してはなんでもありの施設である。
さらに付け加えれば、建物の状態からしてまだ築4年も経ってなさそうだ……つまり、時期からして野田総理か先代総理辺りが政権を取ってから勝手に改装したのだと想像できる。

(十中八九、この豪邸は税金をちょろまかして建ててやがるな。
これだけのものを建てられる金があるなら、国民の何百人かは路頭に迷わずに済んだろうに……
ま、税金を払ってない犯罪者の俺には関係のねぇ話だが)

国民が納めた血税でこんな豪邸を地下に隠すように建てていたと知られたら総理の支持率低下は必至だったろう。
少なくともバトロワ前はそうであったに違いない、とヒノケンは考える

日本の税関連の事情はともかく、現在、ヒノケンたちが目指しているのは地上への脱出である。
貴音から逃げてきたようにもう一度、エスケープのバトルチップを使ったが、制限によるものか再使用できなかった。
ファイアマンによるとあと数時間は使用できないらしい。
ならば自力で脱出するしか道はないのだが、この地下豪邸はちょっとしたダンジョンになっていると過言ではないほど広い。
反して強力すぎる武器を使うと崩落で生き埋めになるリスクも存在し、多少のボヤならまだしも、病院を襲撃してきた時のように天井や壁を燃やしながら進むこともできないのだ。
警護のクローンヤクザたちは一切聞き耳持たず攻撃してくるので、倒しながら進むしかないのだ。

「それよりヒノケン殿! 一体いつまでこの善野とかいう女を連れて行くつもりでありますか!?
さっきの放送で末原たちが死んで先の作戦ができなくなった以上、殺すかその辺に放置でもいいのでは?」
「人質ごと野田を殺す作戦はおじゃんになったが、奴隷商にでも売りつけて貴重な食料や医療品と交換する程度の利用価値はある。
苦労して手に入れた以上タダで手放すのはもったいない、その女は生かしておけ」
「りょ、了解であります」

放送より指名手配されていた二人が死亡により、引渡しの際に人質ごと野田を焼き殺す計画は台無しになった。
よって動けない善野監督は荷物でしかないが、まだ利用価値を見出しているヒノケンはこの場で手放さないことにした。
実際、武器には恵まれている彼らだが、食料は有限で体を治す薬の類は一切ない。
万が一のためにどこかで手に入れる必要があり、善野はそのための引換券だ。
ケロロは不服には思いながらも忠誠を誓っているヒノケンの命令には従い、長く伸ばした舌で女を運ぶのであった。

(しかし、不可効力とはいえ首相官邸に入っちまったが、首輪を爆破されてないところからして主催への反抗と見なされてないのか?
それか、クローン共で事足りると思われているのか、いちおう何も盗っちゃいないから問題なしとされているのか?
どちらにせよ、今は主催に目をつけられると面倒だぜ……暗殺しづらくなるからな)

脱出口を求めて廊下を走るヒノケンは、主催側のリアクションがやけに薄いことに疑問を持つ(考えようによってはクローンたちの人海戦法で十分すぎる応酬だが)。
ちなみに犯罪者のヒノケンが、この場で何も盗んでいないのは正義心からではなく、野田を殺せばこの豪邸の全てを総取りできると思っているからである。

そんな考えを脳裏に浮かべていたヒノケンはここでミスを犯す。

「ヒノケン殿、前、まえ!!」
「……はっ!」

思考による一瞬の集中力の乱れが、ヒノケンに10数m先への見落としを起こさせた。
天井に備えつけられた無人の機関銃――セントリーガンだ!
セントリーガンの銃口が火を吹き、放たれた銃弾がヒノケン胸部に数発直撃する。

「ぐはぁ!!」

多大な衝撃を受け、ヒノケンは床に尻餅をつく。
コズミックエナジーで作られたライダースーツに守られていなければ、肉塊となって弾け飛んでいたところだ。
ケロロは急いでヒノケンを助けおこし、善野も含めて廊下の曲がり角に隠れる。



「ヒノケン殿! 無事でありますか!?」
「俺としたことが油断したぜ……」
「よくもヒノケン殿を! これでも喰らえ!」

ケロロは曲がり角から飛び出して口から粘性を帯びたものを吐き出し、セントリーガンにぶつけた。
それを食らったセントリーガンは、黒煙を上げながら故障する。

「今、吐いたのはなんだ?」
「カエルゾディアーツの能力の一つ、ガマ油であります!」
「……ガマ油って口から吐くもんだったか? まあいい」

油を被って動けなくなったセントリーガンにヒノケンはヒーハックガンの炎を、先程の報復と言わんばかりに撃ち込む。
セントリーガンはメラメラと燃えて爆散した。

「なるほどな、軍曹のガマ油の引火で火炎の威力底上げができるわけだ。
今後はこの能力を利用させてもら……ツッ!?」

ヒノケンは言いかけて、先ほどセントリーガンにやられた胸部を抑えてかがみ込む。
ケロロには仮面越しでもヒノケンが痛みで顔を青くしているのがわかった。

『ヒノケン様!』
「ヒノケン殿! どうしたでありますか!?」
「……さっきの銃撃でアバラにヒビを入れられたかもしれねぇな」
『怪我をされたのですか!』
「大丈夫でありますか?」
「余計な気遣いは無用だ、俺にも男としての意地がある……それに――」

並の防弾チョッキよりは遥かに頑丈なライダースーツとはいえ、肉体への衝撃を完全には殺しきれなかったようだ。
ヒノケンは胸部に多大なダメージを受けていたにも関わらず、新しいクローンヤクザの援軍はすぐ近くまで接近していた。

「「「ザッケンナコラー!」」」
「――おちおち、休んでいる暇はなさそうだ……」
「ええい、やかましいカトンボ共でありますな!」

ヒノケンは痛みをこらえて立ち上がり、ヤクザたちにヒーハックガンの銃口を向ける。
それに続いて、ケロロはファイティングポーズを構えた。

「軍曹、この場所じゃ火炎放射を持ったコギャルを焼き殺した時のような大技が使えねえ。
この局面だと俺の火力より、おまえの肉弾戦がモノをいうだろう。
性に合わねえが、今回は後方でサポートに回る。 おまえが前衛で暴れろ」
「了解であります!」

そして、ヤクザたちとの何度目かの交戦が始まる――筈だった。
クローンヤクザたちはヒノケンたちに一定距離まで近づくと、機械のようにピタリと止まって銃を下ろした。

「?!」
「急に撃ってこなくなったでありますな……?」

敵の突然の戦闘行為の中止を、戸惑うヒノケンとケロロ。
何かの罠かと思い、警戒して様子を見てみると、ヤクザをかき分けて一人と一匹の男と虎が現れた。
男は三白眼をした一見臆病者のような顔に小柄な体格を持ち、知らない者から見ると学ランに見えなくもない大正風の軍服を着ており、白い毛並みに非常に長い犬歯を持った虎――サーベルタイガーが隣にいた。
そんな突然の来訪者にヒノケンは凄むように正体を問いた。

「なんだてめえは! 主催の手先か?」
「ああ、そうだ。 僕は新城直衛、この首相官邸の管理を任されているものだ。
こっちのネコ(サーベルタイガー)は僕の相棒の千早だ」
「グルルルル……!!」

どこぞのアイドルと似た名前を持つ虎は、主人に敵意を向ける相手に対して白い毛を逆立てて威嚇する。
引き金を引こうとする瞬間、襲いかかってきそうな迫力はあったが、それでたじろぐほどヒノケンはヤワではなかった。

「その主催の手先が何の用だ……と聞くまでもねぇな。
この官邸で散々暴れまわったんだ。 大方、俺たちを殺しに来たってところか」
「……だったらどうする?」
「決まってんだろ、てめえを殺してここから出るぜ!」
「僕を殺してここから出るか……そう、うまくいくかな?」
「なんだと!」



殺意を向けてくるヒノケンに、新城は不敵な笑みを浮かべると自身のディパックからカードケースのようなものを取り出し、妙に複雑なポーズを取りながらカードケースを手近な鏡に向けてかざす。
すると、鏡の中からベルトが現れ、新城の腰に装着された。
さらに新城は一言つぶやきながら、ベルトの窪みにカードケースを挿入した。

「変身」

新城の姿がみるみるうちに変わっていき、虎をイメージした騎士鎧の如き戦闘スーツがまとわれた。
ここでヒノケンたちは、ベルトによる変身プロセスの類似性から、ある可能性に気づいた。

『これは……』
「ヒノケン殿、こいつはもしかして」
「仮面ライダーか!」
「そうだ。 君のとはタイプが違うが、れっきとした仮面ライダーさ」

新城はタイガのデッキをもってして仮面ライダータイガに変身した。
仮面ライダーの戦闘力の高さはヒノケン自身が身をもって理解している。
すなわち、交戦によって自分たちが命を失うリスクが格段に増したことを意味していた。
しかも、よく見ると鏡の中には虎型のモンスターまでいる。

「こっちのねこはデストワイルダーだ。
ミラーモンスターという鏡の中に住む魔物だけど、短時間なら鏡の外に出て人を襲うこともあるそうだ。
さらに……!」

周辺から多数の「ザッザッザッザ」という足音と、「ザッケンナコラー」という咆哮がこだました。
ヒノケンたちは辺りを見回すと、前後左右合わせて数十のクローンヤクザに包囲されていることに気づいた。

「囲まれたでありますか……!?」
「君たちと話をしている間に、この官邸に残っている兵隊を集結させてもらったよ。 ザッと30人はいる。
さて、これだけの戦力を相手に君たちは無傷でここから出られるかな?」
「コイツ!」

構図で言うならば動けない善野を除いて2対33、ヒノケン側が数の上で不利である。
クローンヤクザだけなら仮面ライダーやゾディアーツの敵ではないが、敵側の仮面ライダーと虎の怪物二匹相手は厄介である。
ケロロはもちろん、流石のヒノケンもこれには焦りを禁じ得なかった。
だが、どんなに困難でもこいつらを焼き払わなければ死ぬだけだ。
怯えている暇はない……すぐに攻撃に移らなければ――

「まあ、待ってくれ。 僕は君たちと戦いにきたわけじゃないんだ」
「なんだと……?」

ヒノケンが恐れを捨てて戦いを始めようとした時、新城の方から意外な言葉が出てきた。

「ついさっき、君たちは殺し合いを盛り上げてくれそうだから地上に返してやれ、と上から命令がきたんだ。
このまま何もせずに出ていき、二度と官邸の中に入ってこないと約束するのだったら、三人ともここから出してやろう」

けして難しくない条件付きで、主催者の手先がこの場を見逃してくれるのだという。
しかし、ケロロは相手の言葉を疑い、ヒノケンに意見をする。

「ヒノケン殿、これはきっと罠であります! 敵の言葉なんて信じてはなりません!」
「……信じる信じないは勝手だけど、どちらにせよ君たちに勝ち目は薄いぞ。
大軍相手に戦うなら火力が必要になるけど、あまりに強力な炎を出せば建物が崩落して自滅しかねない。
この閉鎖空間は火のバトルチップ使いである火野ケンイチの実力を100%発揮できないのだからね」
「貴様……!」
「さぁ、早く選ぶんだ。 僕の言葉を信じてここから出るか、信用せずに僕らと戦うかね!」

新城は敵が強力なバトルチップを使えないことは既に把握しており、おまえらなど怖くないという余裕が仮面ごしに伝わってくる。
ヒノケン側は仮に交戦すれば厳しい条件下で戦わなければならない。
故に、男の決断は――

「……チッ。 さっさと地上に案内しろ」
「ヒノケン殿!?」
「ただし!!」

ヒノケンは新城に承諾し、交戦回避の道を選んだ。
だが、ヒノケンは同時にバトルチップをPETに詰めていき、いつでもヘルズバーナーを放てる態勢をとった。

「俺たちを罠に嵌めようとか、少しでも妙な真似をしやがったら容赦なくぶっぱなす!
崩落が起きれば俺たちも死ぬが、その時は同じ建物にいるてめえだって道連れだ。
そこんとこ、忘れんじゃねぇぞ?」

ただ言われるがままではなく、最悪の場合でも敵を道連れにする。
ヒノケンもこの閉鎖空間を利用して、相手の命を握ったのだ。

「わかった。 君ならやりかねないしな。
それじゃあ地上に案内しよう。 ついてくるんだ」

新城の先導に沿って、ヒノケンたちは官邸地下にある豪邸を後にした……






――地上、首相官邸の門前。
主催者の手先である新城はヒノケンたちを罠に嵌める気は一切なかったようで、三人は無事に地上に出ることができた。

「最後に一つ言っておくけど、生き埋めになることはなくなったからと言って外から官邸を燃やそうとするなよ?
そんなことをすれば主催に目をつけられて、寝食もろくにできなくなるくらい命を狙われると思ったほうがいい。
その前に首輪を爆破されるかもしれないけどね」
「うるせえ、その程度のことはわかってらぁ! とっとと失せろ!」

相手に釘を刺した後、新城は官邸の中に戻っていった。
それを見送るヒノケンはどこか不機嫌そうであった。
新城の見下すような態度が癪に触ったのだろう。

「あの野郎はあとで燃やす……野田を殺してバトロワを支配できるようになったら絶対に丸焼きにしてやる」
「ヒノケン殿、これからどうするでありますか?」

新城を官邸ごと燃やしてしまいたい衝動を今は抑え、部下のカエルと今後を話し合う。

「末原たちが死んじまった以上、例の作戦は無理だ。
どっかで計画の練り直しを考える必要があるな。
……それに何時間も戦いっぱなしだぜ、いいかげん休みてぇ」
「そういえばお腹も空いてきたでありますな、どこかに手頃な休憩場所でもあればいいでありますが」
「そうだな……」

二人が話し合っている中で、ファイアマンが話に割り込んできた。

『……ヒノケン様、少しよろしいでしょうか? 少し疑問に思ったことが……』
「悪いがもうクタクタだ。 質問なら後でいくらでも聞いてやるから今は休憩場所を探してくれ」
『しかし……いえ、わかりました。 急いでヒノケン様たちが休憩できる安全地帯を探します』

その後、疲労困憊のヒノケン・ケロロ・人質の善野の三人はファイアマンが見つけた休憩に最適な場所に向けて移動を開始した。


主たちを安全地帯へ誘導する中で、フォーゼドライバーの内部でファイアマンは考えていた。

(あれだけの数の警備兵とセントリーガンなどのトラップがある豪邸から、どうやって千石うぐいすたちは一億円を盗んだんだ?)

カオスロワちゃんねるで調べたところ、千石うぐいすは野球が上手いだけの高校生、片や末原恭子は麻雀が上手いだけの女子高生。
カオスロワちゃんねるに嘘がなければ戦闘や潜入に関する技術はないはずなのだ。

(――だのに、この豪邸は私たちが来るまで戦闘の痕は一切なかった。
仮に官邸に入った際、壁に銃痕の一つでも残ってないのはおかしいのでは?)

ファイアマンの疑念は募っていく。

(先ほど訪れた金庫だって考えてみれば不可解なのだ。
盗み取った形跡はあったが、爆弾の類を使って強引にこじ開けたのではなく、普通にダイヤルを回して開けていたのか無傷だった。
……つまり、二人は『金庫の正しいダイヤルの回し方』を最初から知っていたことにならないか?)

うぐいすと末原は戦いに関しては素人である筈なのでヤクザとトラップの多い地下豪邸から一億円を持ち出すのは難しい。
にも関わらず、豪邸には戦闘の形跡がなく、金庫は強引な手段ではなくダイヤルを回す普通のやり方で開いていた。
それを考え始めると、ファイアマンの中で千石うぐいす・末原恭子の二人が得体のしれないものに見えてきた。

(強引に解釈すればエスケープのようなバトルチップのように、移動や潜入に関する支給品に恵まれていたからとも考えられるが。
もしかすると千石たちの指名手配自体が、参加者同士に窃盗犯を奪い合わせることで殺し合いを加速させるための『出来レース』だったのか?)

出来レースだとすれば、末原をおびき寄せる人質に取るために病院を襲撃し何人か焼殺した自分たちは、まんまと主催の掌で踊っていたことになる。
しかし、いくら考えても真実にたどり着けはしない。 なぜなら情報というパズルのピースが足りないからである。

(クッ、現状では憶測しか出てこない。
せめて官邸のコンピューターにハッキングできれば良かったんだが、セキュリティレベルが高すぎた。
そもそも、あの乱戦状態ではハッキング自体できる余裕がなかった)

そして、主催者の手先によって官邸から追い出され、二度と入ることはできない。
真実が手に入らない以上、もはや千石うぐいすたちの事は考えるだけ無駄だろうか?



(――しかし、なんだか嫌な予感がする。
知っておかないと、あとで後悔しそうな何かを感じる。
……ただの気のせいならそれで良いのだが)

千石・末原両名に何かアンタッチャブルなものを感じ、考察を続ける。
将来的にそれがヒノケンの助けになるかもしれないともファイアマンは考え、安全地帯にヒノケンらを導いたら自分の考えを報告するだけしてみよう、とファイアマンはフォーゼドライバーの内部で考えていた。


【一日目・16時00分/東京・首相官邸近く】

【ケロロ軍曹@ケロロ軍曹】
【状態】疲労(大)意気高揚、カエルゾディアーツ
【装備】ゾディアーツスイッチ@仮面ライダーフォーゼ
【道具】支給品一式
【思考】
基本:バトルロワイアルを支配する
0:どこか安全な場所で休憩し、作戦を練り直す
1:ノダの抹殺
2:ヒノケン殿に尽くす
3:ギロロ……
※カエルゾディアーツの能力として、高所への跳躍・高所からの着地可能・舌を長く伸ばす・ガマ油を吐く能力があるようです。
まだあるかもしれません。

【火野ケンイチ@ロックマンエグゼ】
【状態】疲労(大)、ダメージ(中)
【装備】フォーゼドライバー @仮面ライダーフォーゼ
【道具】支給品一式
【思考】
基本:バトルロワイアルを支配する
0:どこか安全な場所で休憩し、作戦を練り直す
1:ノダの抹殺
2:ケロロ軍曹を従える
3:あの女(四条貴音)が死んでくれてなによりだ
4:善野はまだ使い道がありそうなので、しばらくは生かしておく
※制限により、エスケープのバトルチップは一度使うと長時間使用できないようです

【ファイアマン@ロックマンエグゼ】
【状態】フォーゼドライバーの内部プログラム補助
【装備】火のバトルチップ一式
【道具】なし
【思考】
基本:ヒノケン様に尽くす
1:燃やしたい……!
2:千石うぐいすらに対する疑念

【善野監督@咲 -Saki-】
【状態】気絶
【装備】患者服
【道具】なし
【思考】
基本:……。
1:恭子……。





新城直衛は変身を解き、官邸のモニターがある一室で相棒の千早の頭を撫でながら椅子に腰掛けている。
侵入者が荒らし回った地下の豪邸は一部のクローンヤクザたちに修復・清掃を任せている。

新城は主催者の手先であり、その中でも精鋭として抜擢された特務機関員である。
しかし、彼は主催側の人間でありながら、野田をはじめとする主催への反感を持っていた。
誰に言うでもなく、愚痴を呟くほどにだ。

「まったく、首相官邸の警護なんて嫌な仕事を任されてしまったね。
どんなに敵わない相手でも、参加者からも怪物たちからもここを守らなきゃいけない。
逃げたら反逆者と見なされて主催陣から追われる身になる……本当に貧乏くじもいいところだよ」

東京は激戦区になっており、そこにいる参加者のほとんどは対主催・マーダー問わず強者ばかり。
都庁はいつからか大量の怪物が巣食う死の塔になっている。
幸いにも前者は第二回放送での総理の警告及び、総理がここにはいないという情報が出回っているために積極的に足を運ぶ参加者は少なく、後者の怪物たちはここを無視している節があるようだ。
だが、いざ襲撃を受ければ仮面ライダーとサーベルタイガー、ミラーモンスターにヤクザたちがいるとはいえ、防衛しきれるかは疑問だ。
余談だが先の襲撃によってクローンヤクザが半数近く殺されたため、その分だけ防衛力は大幅に下がってしまった。
ヒノケンたちの前では涼しい顔をしていたが、内心は多くの部下を殺されて戦々恐々であった。

「第一、総理も総理だ。
そんなに自分の財産を守りたいなら、最初から官邸の外に持ち出しておけよ。
それが無理なら禁止エリアを東京に設定して参加者を東京自体に近寄れないようにしとけばいいものを」

総理の浅慮ぶりに呆れるばかりの新城。
おまけに首相官邸の地下にある豪邸を見てしまったため、新城の中で総理の人間性への評価もガタ落ちである。
そんな不満ばかりであるが、彼には主催から離反できない理由があった。
新城は苛立ちを千早の喉を撫でることで忘れようとする。

「グルルルルル」
「……いかんいかん。
ここで癇癪を起こせば蓮乃姉さんの身が危なくなる。
この官邸から出ていける言い訳が立つまではここから出て行くべきじゃない」

新城は主催に協力する見返りとして幼馴染で義理の姉である蓮乃を殺し合いの参加者から外されることになっている。
今頃、彼女は主催の用意したシェルターで殺し合いが終わるまで匿われている手筈だ。
新城が裏切れば、蓮乃は良くて他の参加者同様に首輪を嵌められた上にシェルターから追放、最悪の場合はその場で殺されるのだ。
他の機関員については知らないが、一部は新城と同じように大切な人を守るために主催に与した者もいるだろう。


「はあ……しいていうならコイツが裏切らなければ、僕がこんな任務につくこともなかったんだろうな」

実は、首相官邸の警護を任されていた者は新城が最初ではない。
最初に警護の任務についた者が、バトロワ開始直後にいきなり裏切ったために、後釜として新城が赴任してきたのだ。
その当時の映像を新城はモニターで確認している。

主催に属する機関の者なので、警護のクローンヤクザたちを素通りでき、セントリーガンによるトラップも作動しない。
そのまま金庫に入り、ダイヤルを回して金をディパックに詰め込み、官邸から黙って出て行く……そんな一部始終を新城は見ていた。


「□□、そんなに金が欲しかったのか?
その金は主催に追われるリスクに見合ったものか?
それとも、金はついでであって、主催を裏切るだけの理由が君にはあったのか?」

映像の中に映る□□に問いかけた新城だが、答えが返ってくることはなかった。



さあ、諸君にクイズである。
□□に入る名前は何でしょうか?


【一日目・16時00分/東京・首相官邸内部】

【新城直衛@皇国の守護者】
【状態】健康
【装備】タイガのデッキ@仮面ライダー龍騎
【道具】支給品一式、千早@皇国の守護者、クローンヤクザ@ニンジャスレイヤー×30
【思考】
基本:義理の姉(蓮乃)のために特務機関員として任務を全うする
1:首相官邸の警護をする
2:さっさと官邸から出たい
3:□□(元特務機関員)……なぜ、裏切ったんだ?
※特務機関員です
※□□が誰なのかは次の書き手氏にお任せします
※クローンヤクザは支給品扱いのため、殺してもキルスコアは増えません
最終更新:2013年11月19日 12:20