仕方が無い。黙って隠れていても怪しまれるだけだ。
俺、◆6/WWxs9O1sは急いで返り血を浴びた上着を脱ぐと、それでかがみの首をくるんで座席の下に蹴り飛ばした。
さらに
チェーンソーも座席の下に隠す。
もちろんよく見ればすぐにわかってしまうので、この席に橘を近づけるわけにはいかない。
俺は立ち上がって急いで通路に出た。
「すまんな、そっちが殺し合いに乗っているのかどうか見極めていたんだ」
男はほっとしたように笑みを浮かべた。
橘敬介―――鍵ゲー「AIR」の登場人物の一人。基本的には善人だったはずだ。
ただし劇場版では悪人だったので、そっちからの出場だったらマーダーである可能性もある。
だが目の前の男は風貌と作画からしてアニメ版のキャラらしかった。
「俺はもちろん、こんな殺し合いに乗るつもりは無い。なんとかして主催者を出し抜きたいと考えている」
「なるほど、わかったよ。だったら―――死んでくれるかい?」
そして橘は、懐から黒い物体を取り出した。
銃器に関しては、前にロワ用の資料として若干調べたことがあるので少しはわかる。
確か、コルトガバメント?のような気がする……などと言っている場合ではもちろん無い。
俺は急いで隣のシートの背もたれの影に隠れた。「パン」という乾いた音が耳を揺らす。
ああ、やっぱり映画みたいに派手な音はしないんだなあ……とか言ってる場合でもない。
「クソ、あんたマーダーだったのか!!」
「マーダー? 何だいそれは?」
「なんで殺し合いになんか乗っちゃったんだよ!!」
「もちろん人殺しなんか最低の行為だってことは知ってるさ。そんなのは人間がすることじゃない。
だけど、僕はもう人間であることは諦めたんだ」
橘は一歩一歩こちらに歩み寄ってくる。彼の動揺と哀しみは手に取るようにわかった。
彼は殺したくてしているわけではないのだ。パロロワ書き手ともあろうものが失念していた。
(善人だからマーダーにならない、なんてことは無い。
むしろ、優しき人間だからこそ奉仕マーダーになってしまう場合もあるじゃないか!!)
俺がさっきまで座っていた席はちょうど俺の背後にある。手を伸ばせばさっき隠した武器に手が届かなくもない。
だが、拳銃を手にした人間に電ノコで太刀打ちできるのか?それに、電ノコは俺の位置から比較的遠い。
取っているところを狙い打ちにされたら終わりだ。いや……
「僕を信用した、君の負けだよ」
橘の足音がとまる。俺は座席の下に手を伸ばした。
(体育の授業はサボリ常連だった俺だが……小学校時代のドッヂボールだけは得意だったんだ!!
内野で逃げるの専門だったけどな!!)
俺は座席の下から生首を取って橘の前に飛び出した。そしてサッカーのフリースローの要領で、彼に向かって首を投げた。
橘は悲鳴を上げて後ずさろうとし、強かに尻を打った。ここは走行中の電車の中だ。
その隙に俺は電ノコを座席の下から引っ張り出す。
「俺を丸腰だと思ったのは間違いだったな!!」
血まみれの電ノコを見て、橘は拳銃を取り落とした。その手は振るえ、顔は青ざめている。
だがそれも一瞬。
野生の犬のような敵意に満ちた目を俺に向けたかと思うと、足元にあったかがみの首をこちらに蹴り返してきた。
俺はそれを左手で受け止める。その隙に橘は拳銃を拾う。俺はやむを得ず電ノコのスイッチを入れた。
「俺は誰も殺すつもりは無いんだ。銃をこの場で捨ててくれればそれでいい」
「誰も殺さない、だと!? ふざけるな!! だったらその血の付いた刃と人の生首は何なんだ!!」
「そ、それは、ええと……」
「君だって僕と同じはずだ。いや、もしかしたら君は自分の快楽を満たすために殺人を行ってるんじゃないかな?」
橘は答えられない俺に銃口を向けた。咄嗟に座席に隠れる。流石に素人の狙い、かすりもしない。
だが電ノコを使うには体勢が無理すぎる。俺はかがみの髪の毛を握って、鎖分銅の要領で頭本体を橘の顔にぶつけた。
ツインテール万歳。
鼻面を押さえて倒れる橘から急いで離れた。今のうちに逃げ……
「うがっ!!」
不覚。まさか自分で自分の足につまずいて転ぶとは。運動不足がこんな時に祟った。
やっぱ2chばっかりやってないでたまには運動しないとなあ、なんて思いながら膝を押さえた。
万事休す、なんて思った俺の耳に入ったのはまるで場違いな声だった。
「あらあなたたち、一体何事なの!?」
俺から見て後ろのドアから入ってきたのは、特徴的な髪型をした国民的人気アニメの姉弟だった。
「
サザエさんと、カツオか……」
立ち上がりながら、俺は「助かった」と思った。三対一となれば例え銃を持っていても劣勢になるはずだ。
だが、そんな俺の安堵は橘の一言によって一瞬にして打ち消された。
「この男が、いきなり僕に襲い掛かってきたんだ!!」
サザエさんとカツオの目が俺に向けられる。
「キャァァァァ、な、生首ぃぃぃぃ!!」
「な、なんてことを……」
二人の目は、完全に異常殺人者を見るそれになっていた。
まあ、右手に電ノコ、左手に生首を持ってバトルしてる人間を信用しろってのも無理な話……です……よね……
これにて完全に優勢に立った橘は、再び銃口をこちらに向けて歩み寄ってきた。
ちょうどその時、電車がカーブに差し掛かった。若干ではあるが速度が落ちる。
加えて、今電車は山の中を走っている。恐らく、今なら外に飛び出しても柔らかい草むらの上に出られるはずだ。
そう信じて、俺は荷物を抱えて右に走った。電ノコを振り上げて、その本体部分で窓ガラスを割り、体を丸くして外に飛び出す。
背中を何発かの銃弾が掠めていった。
「まったく、本当に殺し合いに乗る人間がいるなんて信じられないわ!! とっちめてやればよかった!!」
「やめなよ姉さん、適うわけ無いじゃないか。それより、橘さんも無事で良かったですねえ」
「ああ。君たちのおかげで助かったよ」
橘とサザエたちは自己紹介を終えると、「お互いの家族を探し出す」という目的のために手を貸すことを決めた。
「それにしても良かったわ。私、財布を忘れてきちゃったのよ。良かったら少し貸して下さらない?」
「姉さん、そんな場合じゃないと思うよ……」
能天気な会話を始めた姉弟を見て微笑みながら、橘は二人をいつ殺すべきか考えていた。
「なんでもやってみるもんだな……」
俺は全身に擦り傷や切り傷を負ったものの、なんとか死ぬことは無かった。
立ち上がって服に付いた汚れを払う。そして周りに転がっていた電ノコとかがみの首を拾った。
とにかく困ったことは、また包囲網フラグが立ってしまったっぽいということだ。
このままでは完全に包囲されるのも時間の問題な気がする。
(この状況を打開するには、この生首に俺がこいつを殺したわけじゃないと証言してもらうのも一手か)
というより、今出来ることといえばそれくらいしか無いんじゃないだろうか。
第一それだけで「生首を持っているところを見られてマーダーだと誤解される」という危険は無くなるのだ。
俺はかがみを復活させることに決めた。
そして早速ふっかつそうを使おうとしたのだが、
「しまった、ふっかつそうは電車の中だ!!」
とてもそんな余裕は無かったとはいえ、これは痛い。せっかくの強アイテムをごっそり失ってしまった。
とその時、俺はジャケットのポケットの中からふっかつそうを見つけ出した。……二本だけ。
「この二本のうち一本を、今ここで使ってしまっていいのか? 後で困らないか? いや、今はそれより……」
俺は手の中のふっかつそうと正面の生首を見比べてため息をついた。
「もう、どうすりゃいいんだよ……」
【一日目深夜/東京都のどこかを走る電車の中】
【橘敬介@AIR】
[状態]:健康
[装備]:コルトガバメント
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:観鈴を生かすために、他の参加者を殺す。
1:とりあえずサザエとカツオに協力するふりをし、頃合を見て殺す
2:◆6/WWxs9O1s氏が危険人物だと多くの人間に教える
【
フグ田サザエ@サザエさん】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:不明
[思考]
基本:自分の家族を探す
[備考]:◆6/WWxs9O1s氏を危険人物だと認識しました
【
磯野カツオ@サザエさん】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:不明
[思考]
基本:自分の家族を探す
[備考]:◆6/WWxs9O1s氏を危険人物だと認識しました
【深夜/東京都を走るどこかの線路沿い】
【◆6/WWxs9O1s氏@現実】
[状態]:健康
[武装]:電動ノコギリ、
柊かがみの頭部
[所持品]:ふっかつそう@ポケットモンスター×2個
[思考]:
1・とにかく自分だけは生き残る
2・自分から人殺しはしない
3・出来れば主催を倒す
4・できればかがみを復活させたい……んですけど……ねえ……
[備考]:大臣の取引には乗ったふりをしていますが、実際に手を貸すつもりはありません。
最終更新:2007年11月25日 18:08