【死国 居住エリア】
死国のある一室で、生まれたままの姿の女性が暖かいシャワーを浴びていた。
そう、その女性は私、シグナムだ。
設置された女性用シャワールームの中に私はいる。
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ここから下は見せられん、許せ。
少女のようなあどけなさこそないが、大人としての色気を醸し出す顔。
薄紅色の鮮やか髪。
程よく膨らんだ2つの豊満な胸。
腹回りは腹筋で多少引き締まっているが、硬さを感じさせない柔らかさを残したスリム形状に、腹の中心で自己主張するヘソ。
お尻もプックリと大きいが、ブヨブヨではなくそれなりに引き締まっている。
すらっと長い両手足、それに付随するムチッとした太もも。
指先や爪先もそこまで汚れたり荒れたりしていない。
そして乙女にしか持ってない下腹部の下にあるYの字と、更にその下にある…………いや、こればっかりは書きこみすぎると色っぽい通り越して下品て言われそうだから読み手のご想像にお任せしよう。
それらがバランスよくまとまって私の体はできている。
自分で言うのもなんだか、とてもニート暮らしをしているとは思えない美しい裸体だ。
その裸体は今、シャワーノズルから降り注ぐ雫によって、更に色気を増している。
肌はお湯でピンクに近い色になり、雫は手先や爪先、胸の先端、お尻もしくは下腹部を伝って床に落ち、排水口に流れていく。
「ふう、そろそろ良いだろう」
汗や臭いを大方洗い流したと見て、私は蛇口をひねってシャワーを止める。
川のように流れていた雫が止まり、代わりに体のあちこちに流れそこねた水が玉のように残っている。
私はその水玉を真っ白なバスタオルで拭き取っていき、その度に胸や尻など体のあちこちがプルプルと震えた。
全部拭き取ったところで私はバスタオルを頭に撒き、肌身にバスローブを纏う。
『なあ、シグナムよ……ちょっといいか?』
シャワールームの囲いの外に置いてあるPETからナビであるカーネルが私を呼んだ。
『食料調達なり野球のスタメン選考なり、そうでなければ武器を研いでいたりと他の連中はそれなりに働いているのに、おまえだけシャワーを浴びているとはどういう了見だ?』
「悪いか?」
『この前も言ったが、少しは本気を出す素振りくらい見せてみたらどうだ?
いくらなんでも緊張感がなさすぎるぞ』
「またその話か。慌てることはないさカーネル。時がくればしっかり戦わせてもらう」
その時が来るまで徹底的に休むのが私の主義だ
まあ、私生活においてはそれで余計にめんどくさくなってダラダラと物事を放置してしまうクセがついてるし、今期のロワだって今の所ろくな活躍がありゃしないが、やる時はやるつもりだよ?
うん、最終話ぐらいには働くんじゃないのかな?
「しかし、さっきから何か嫌な予感がするのだが?」
「考えすぎだカーネル。
仮に襲撃があったとして、侵入されてもバヌケ高校生ぐらいの戦闘力なら私とカーネルでまず返り討ちにできるし、外側からの攻撃も死国の頑丈な装甲なら核ミサイルが直撃しても耐えられるだろう。
何も心配はいらないさ」
余計な心配ばかりするカーネルを前に、「死国は安全だ」という意味を込めて私はシャワールームの壁をコンコンと叩いた。
次の瞬間、シャワールームの壁が爆ぜ、私とカーネルは爆炎に飲み込まれた……
【大阪 市街地中央】
時は死国のシャワールームが爆発する前に遡る。
ここは大阪の市街地。
食料調達のために死国を降りて市街地を探索することに熱斗一行であったが、その途中でシャロと殿馬、エスパー伊東が行方知れずになってしまった。
忽然と姿を消した仲間達を探すべく、熱斗達(熱斗、翔鶴、ディオ、トシキ、のび太、クロえもん、ダイアーさん、上条の8人と、ロックマンとシャドーマンの二体)は一旦作業を切り上げて集合し、仲間探しに専念することにした。
そして探索の末、熱斗達はとうとう三人のうち二人を探し出した。
だが、仲間を見つけ出した熱斗達は、変わり果てた二人に絶句せざる負えなかった。
「これはッ!?」
「シャロ……!」
「エスパー伊東!!」
「ど、ドラえもーーーん!!!」
市街地の中央に、シャロ・殿馬……そしてドラえもんの亡骸が適当な木材で作られた三つの十字架に磔られていた。
磔刑にみせかけたようなオブジェは、早く見つけてくれと言わんばかりに存在感をアピールしている。
この残酷な十字架には、ある者は熱斗やトシキのように驚愕し、ある者は仲間と親友の残酷な姿に上条とクロえもんと同じように叫び、そうでなければ言葉を失っていた。
のび太に至っては、ドラえもんが破壊されていたことに対して、ショックで完全に硬直していた……
「まだ生きてるかも知れない! 早く下ろそう!」
頭に風穴が空いていて誰が見ても手遅れなドラえもんはともかく、他の二人はまだ生きている可能性があるやも知れぬと上条は皆に訴え、三人を十字架から降ろそうとする。
しかし、ここで彼のネットナビであるシャドーマンが静止をかける。
『待つんだ皆!』
「シャドーマン!? どうして止める?!」
『冷静になれ、お館様。罠が仕掛けられてる可能性だってある』
「罠?」
『ああ、街の中心で明らかに目立つ磔……まるで見つけてくれと言わんばかりだ。
戦場ならば、こういったものに敵兵が爆弾が仕掛け、助けにきた仲間をトラップで諸共爆殺するケースもある』
「どうしてそう言い切れるんだ?」
『ダークミヤビと傭兵稼業を勤しんでいた俺だからこそ、わかることだ』
「そうか……」
『とにもかくにも冷静になれ……罠の探し方は俺が知っている、まずは罠の有無を確認するべきだろう。
マーダーが近くに隠れ潜んでいる可能性もある以上、他の者は周囲の警戒を頼む』
「「「わかった!」」」
シャドーマンの手ほどきを元に、上条が三人に罠が仕掛けられているかどうかを確認する。
「……シャドーマンの言ったとおりだ。 爆弾に落とし穴……罠だらけだ」
『よし、手順さえ間違えければ素人でも解除できない罠ではないな。
……しかし、三人に息はない。ここは罠を外さずに放置した方が』
「言うなシャドーマン!」
やはり息絶えていたシャロ達の遺体を放っておくべきだと進言したナビを、上条は涙ぐみながら叱責する。
『すまない。だが今のは、お館様達の安全を考えたら罠を解除して彼女らを十字架から降すより、後回しにした方が安全で効率的だと考えての発言なのだ』
「例えそうだとしても、俺はエスパー伊東達をこのままにしておくことはできない。
このまま野ざらしじゃ可哀想じゃないか……皆だってそう思うだろう?」
ディオのような根っからの悪人を除き、その場の全員が上条の意見に同意見であり、一行の方針は三人が既に死んでいたとしても十字架から下ろすことに決めていた。
そしてかけがえのない仲間が殺されていた事実に、熱斗組は強い悲しみと怒りを顕にしていた。
彼らはまだ知らない、すぐ後にこれとは比べ物にならない凄惨な戦いが待ち構えていることに……
【大阪 市街地北側】
熱斗組のいる場所から北側。
そこには遠目から熱斗組を伺う二人の男がいた。
主催の手先である特務機関員の新城直衛と風魔小太郎だ。
「罠に気づいたか――計算通りだな。
罠が外そうとすると必ず隙ができる、その絶好のチャンスを本懐が一気に叩くことだからね」
新城がそう言うと通信機を取り出し、上空にいる味方に指示を叩きつけた。
「今だクラウディウス! 撃ちかたはじめ!」
そして、何条ものビーム砲が熱斗組の下へと落ちた。
【大阪 市街地中央】
その頃、上空では……
「ハハハハハ! やったぜ! この俺の手で熱斗組をぶち殺してやったぜ!」
新城の合図が来る――特務機関員の一人、クラウディウスは何時間もこの時を待っていた。
合図が来たと同時に上空から直下の熱斗組に向けてビーム砲を撃ち下ろすという手はずだったのだ。
例え、熱斗組と言えど仲間の死体に気を取られていれば、この奇襲攻撃に対応できずに壊滅的なダメージを被るだろう。
ビームの直撃によって爆発した市街中央を見て、熱斗組はまず殲滅できただろうと見たクラウディウスはロードビヤーキーのコクピットの中で歓喜に打ち震えていた。
「これだけの戦果ならデウスの奴も文句はないだろうし、ベクターの奴だって……ぐはッ!?」
だが、彼が歓喜を上げるのは間違いであった。
油断している内に、まだ爆煙の消えない直下の市街地から一条のビームが飛び、ロードビヤーキーに直撃したのであった。
そのビームの威力は鬼械神であるロードビヤーキーをダメージで航空不能にし、上空から落下させるには十分であった。
空から落下していく最中、クラウディウスはビームが飛んできた方向を見て愕然した。
「そんなバカな……熱斗組が一人も死んでないだとォ!?」
そして街の外れにロードビヤーキーは墜落した。
「……流石に今回ばかりは死ぬかと思った」
『危なかった……ありがとう、のび太くん』
ロードビヤーキーのビームが上空から降り注がんとした瞬間、一行の中でいち早く反応できたのび太はガンダムを操作し、ビーム砲でビームを落とす荒業……否、神業を持って対処したのだ。
熱斗組に直撃必至だったビームは、バスターガンダムのビームで全て相殺され、一行の被害を防いだのだ。
元々のび太は空中に浮いた空き缶を、宙に浮かせたまま五連続で当てられるほどの射撃技術の持ち主であり、弾丸を弾丸で相殺させることも不可能ではなかった。
「やっぱりシャドーマンの言ったとおり、罠だったのか」
『明らかに攻撃のタイミングが合いすぎている。
奴こそ、シャロ達を殺した犯人もしくは共犯者で間違いないだろうな』
一行が街の外れに墜落した巨大ロボットを見る。
仲間を殺した以上、許すわけにはいかない。
まだ仲間がいる可能性もあり、すぐにでもコクピットから引きずり出して洗いざらい吐かせ、相応の罰を受けさせる必要がある。
それができなければ倒すだけだ。
そう思い至った一行は、すぐにでも巨大ロボットの下へ向かおうとしていた――しかし。
「……」
「なんだ? のび太のガンダムが急に……」
突然、のび太の乗るガンダムがバーニアを最大限に吹かして、熱斗組の誰よりも早くロードビヤーキーの近くまで接近する。
一方、町外れに墜落したロードビヤーキーも起き上がろうとしていた。
「イテテテテ……ひでえ目にあったぜ。だが見てやがれよ、すぐに巻き返しを」
「ドラえもんを殺したのはおまえなんだな! 死 人 に し て や る ぞ ぉ !!」
ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
のび太は怒り狂っていた。
ロードビヤーキーが無二の親友であるドラえもんを殺した相手(実際に殺したのはベン(故)であるが)と見るやいなや、ビーム砲、スラッグ、ミサイル、バルカン……のび太はバスターの持ちうる砲門を全て開き、怒りのままにクラウディウスの乗るロードビヤーキーに浴びせる。
参戦するスパロボでもトップクラスの回避力を誇るロードビヤーキーと言えど、起き攻めを喰らえば避けられる道理などない。
そして回避能力と引き換えに防御力は非常に低い鬼械神であったため、バスターの全ての攻撃を跳ね返せる装甲は持っていなかった。
「のび太くん!?」
「のび太!?」
親友を殺されて感情を抑えられなくなったとはいえ、激情にかられたのび太の凶行には仲間も驚きを隠せなかった。
なお余談だが、怒りでクラウディウスを殺すしか頭にない現状の野比のび太に、暴力を制御するということはできず、滅茶苦茶に撃っているだけである。
仇に当たらなかった暴力は流れ弾となって、ロードビヤーキーの後方へ飛んでいく。
さらに死国の襲来に対して、市街地から遠くに避難していた多くの参加者達に流れ弾が落ち、血の惨状を作り上げた。
一人の警官は対MS用の弾丸で頭を吹き飛ばされた。一人の少女は瓦礫に潰された。
女はミサイル着弾による爆炎に焼かれながら死んだ。遠巻きから様子を伺っていた飛竜はビームで蒸発した。
他にも多くのモブ達がのび太の暴力の巻き添えを喰ったが、その悲鳴はあまりにも遠すぎて熱斗達は知る由もなかった……
「いやあああああ」「助けてくれえええええ」「がはッ」「ママーッ! パパーッ!」「ごめん、ね……モモ」
「死んじまうーーーッ」「こんなところで!」「助けて、ベジータ……」「アツゥイ!!」「グオオオォォォッ!?」
【安錠春樹@新米婦警キルコさん】
【加治木ゆみ@咲-Saki-】
【ブルマ@ドラゴンボール】
【リオレイア@モンスターハンターシリーズ】
「た、助けてくれ新城、風魔! ……うわああああああああああああああああ!!!」
そして、とうとうダメージに耐えられなくなったロードビヤーキーは爆発し、クラウディウスも濃密すぎる弾幕の中では脱出も叶わず、愛機と運命を共にした。
【クラウディウス@機神咆哮デモンベイン 死亡確認】
仇が大破炎上したのを見て、のび太もようやく発砲を止める。
これでドラえもんの仇は取れただろうと思うと、のび太の口元が自然に綻んだ。
ところが戦いはこれで終わりではなかった。
一つの爆音が、更なる戦いの始まりを告げる。
「今度はなんだ!?」
「……みんな死国を見ろ! 火の手が上がっているぞ!」
クロえもんの言葉通りに、皆が港に停泊している死国を見ると火の手が上がっていることに気づいた。
慌てて熱斗と上条はPETを取り出し、死国に連絡を取ろうとする。
「緑間さんの次はなんなんだ!? とにかくパパに連絡を……」
『熱斗くん! 死国との回線が繋がらないよ!』
「なんで?! ジョジョの方は?」
「……ダメだ。シャドーマンもロックマンと同じことを言ってる」
突然、連絡がつかなくなった理由は翔鶴によって明かされる。
「電波そのものが消えてしまっている……これは、ミノフスキー粒子です!
ミノフスキー粒子が周辺に散布されています!」
「ミノフスキーだって!? 確かそれはパパ達を襲っていた連中の……」
ミノフスキー粒子と言えば、一行の中ではかつて祐一郎達を襲ったWB(戦艦ホワイトベース)に載ったマーダー集団を彷彿させた。
そして事態は熱斗組に息を付かせぬほど急転していく。
死国からの爆音、電波障害の次は、バイクと十傑集走りでこちらに向かってくる集団が現れた。
WBの市街地攻撃部隊(大尉、修造、苗木、葉隠、巧、オートバジン、レミリア、咲夜の八人とビーストマン・ヒートマンの二体)である
その集団の中には熱斗達にとって馴染みのある顔があるものがいた。
「アイツは東京でジョジョとディおじさんのネットバトルを邪魔してきた奴!」
「この殺気……気をつけろ、仕掛けてくるぞ!!」
ダイアーの言葉通り、一定の間合いに入ると集団は銃やナイフなどの飛び道具で熱斗組に攻撃を仕掛けてきた。
その濃密な射撃攻撃は、もはや弾幕である。
迫る弾幕に対し、トシキは一行の前に出て、デッキからカードを取り出した。
「弾幕を完全ガード!」
トシキは完全ガードのカードによって、弾幕から味方を守る行動に出た。
ヴァンガ魔法の防御によって落とされる無数の弾幕を前に、熱斗組は「やっぱり櫂君は凄い」略してYKSな展開が来るのだろうと予測していた。
一発の銀の弾丸が彼の心臓を貫くまでは。
「がはッ!!」
「トシキ!?」
「俺の……想像力が…足りなかったか……」
己の無念を嘆きながら、自身の胸に空いた穴から溢れ出た鮮血によって作られた血だまりの中にトシキは沈んだ。
一瞬の攻防の中で命を奪われた友に上条は叫び声をあげる。
「トシキィーーーッ!!!」
【櫂トシキ@カードファイト!! ヴァンガード 死亡確認】
トシキを殺害したのはWB組の仮面ライダーウィザードこと苗木誠であった。
ウィザードの持つウィザーソードガンは、ある程度まで弾丸の軌道を操作することができるのだ。
すなわち、無数の弾幕の中で一発だけ弾道を変えることで、トシキの完全カードの効果範囲を迂回して、トシキの心臓に直撃させたのである。
「あ……当たっちゃったのか?」
しかし、トシキを射殺した当の苗木本人は震えていた。
前述の通りに撃ったのなら、かなりの頭脳プレーのように聞こえるが実際はそこまで計算して撃ったわけではなく、半ばマグレであった。
何より、先ほど破壊したロボットのワスピーターならまだしも、自分の手で人間を殺したという事実が少年の心を刺す。
希望ヶ峰学園ではコロシアイをせず、誰ひとり手にかけなかったというのに……
そんな苗木の怯えを察して、仮面ライダーファイズこと乾は叱咤を飛ばす。
「怯むな苗木!」
「乾さん……でも!」
「奴らはこれまでに多くの人の夢や希望を奪った。
奴らを誰かが倒さないと、また罪のない誰か犠牲になるぞ!」
「夢や希望が奪われる……そんなこと許せない!」
乾の言葉によって苗木は奮い立たされた。
人殺しは嫌だが、拳王連合軍は情けをかけるに値しない最悪の殺戮集団であり、誰かが殺してでも止めなくてはいけない。
苗木としても既に、研やジョナサンなど多くの仲間を殺されており、彼らへの怒りと憎しみは大きい。
新たな犠牲を増やさないためにも、苗木は拳王連合の人間だけは殺害も辞さない覚悟を固め、銃を手に取る。
一方、熱斗組もやられてばかりはいられず応戦に入った。
施設の壁や瓦礫を盾にして弾幕を防ぎつつ、反撃を開始する。
もちろん、一行のリーダーである熱斗も仲間を失った悲しみを怒りに変えて、バトルチップを用いての攻撃を試みようとしていた。
「シャロ達に続いてトシキさんまで! 絶対に許さないぞ!」
『熱斗くん! 上を見て!』
「あれは!」
ロックマンの言葉に従って上を見上げると一隻の戦艦、ホワイトベースが戦場の中央上空に到着していた。
そう、先ほどの死国の爆発の正体はこの船によるものなのだ。
ミノフスキー粒子が周辺にばら蒔かれている時点で、どの集団が攻撃を仕掛けてきたのか熱斗達は感づいていたが、やはり予測通りの相手であった。
「次は熱斗組に向けて砲撃しろ! 撃てッ!!」
ホワイトベースの艦橋にて艦長である十神の号令により、艦を接続しているホライゾンとアイギスが地上にいる熱斗組にむけて、メガ粒子砲やミサイルによる砲撃を行った。
「まずい! 攻撃がくるぞ!!」
的が非常に小さいため、この艦砲射撃で熱斗組の人員に直撃させることはできなかったが、地面に当たって発生する爆発の余波は確実に熱斗組にダメージを与えた。
「いってぇええ……」
『熱斗!?』
「熱斗さん!?」
「だ、大丈夫だ、兄さん、翔鶴さん。小石が頭にぶつかっただけだ」
その最中で爆発の際に跳ねた石が、熱斗の頭にぶつかった。
頭のバンダナを赤く濡らすほど多少の出血が見られたが、熱斗は問題ないと兄のロックマン(彩斗)と妹の翔鶴に伝える。
「く、密集はダメです! 散開してください!!」
翔鶴の指示により、熱斗組全員が一網打尽を防ぐべく、密集状態を解いて四方へとバラバラに逃げることにした。
これにより、ホワイトベースの支援砲撃による効果は薄まり、的も散ったために狙いが付けづらくなった。
となると、頼るべきは地上攻撃部隊であろうと十神は思考する。
「散開したか……愚民共、奴らを一人も逃がすな、追え!」
十神の指揮を受けて地上攻撃部隊がそれぞれ熱斗組の追撃に入る。
個々で誰が誰を狙うかを決め、部隊は分割されて四方に戦士達が別れて追撃することになった。
市街地戦は混迷を深めていた。
一方、その頃、死国では――
【死国 艦橋】
『敵襲! 敵襲!』
WBの砲撃を受けた衝撃で揺れ、警報の代わりにけたたましく騒ぐデューオの声が響く死国の艦橋。
「クソッ、いったいどこの連中が攻めてきやがった!」
「あれはあの時の白い木馬みたいな船じゃないか!」
「熱斗達のいる市街地からもモヤが立っている……チッ、どういうわけか連絡がつかない!」
おそらく死国出港の時間に間に合わないであろう熱斗達のために格納庫で高速艇を作っている祐一郎と、彼の手伝いに回っているダイアーとアドラーを除き、死国の艦橋にいる者達は突然の事態に騒然となった。
「再度、襲撃を仕掛けてきたようですね……船のダメージ具合から、もうしばらく襲撃はないと思っていたのですが。
……吹っ飛んだのはシグナムさんのいたシャワールームですか」
『カーネルと連絡がつかない……おそらく、シグナム達はもう……』
ニートのシグナムがやられた……その事実が、仲間達の胸を打つ。
だが、死国のタクアンこと紬は太い眉を潜める素振りもなく、冷静に指示に出す。
「いいえ、シグナムさんはきっと生きてますよ。最強のニートですもの。
それよりも敵を倒すことだけを考えましょう。デューオさん、迎撃を!」
『全ての砲台を使って沈めてやる!』
死国の頭脳となっているデューオが、死国の甲鈑に設置された砲台を操り、WBに向けてそれらを一斉攻撃を加えようとする。
ところが、砲台を回頭したところで、全ての砲台が次々に爆散した。
「ッ!?」
「どうしたというのだ?!」
『ほ、砲台が全部破壊された!」
「……おい、あれを見ろ! 甲鈑に何者かがいるぞ!」
艦橋の窓から何かを見つけた平等院に促されて全員が窓の外を覗き見ると、各所で火災が発生した甲鈑と、数人の男女が甲鈑の上で死国に対して破壊の限りを尽くしていた。
WB組より死国制圧に趣いた衝撃のアルベルト、ジョンス・リー、ラーメンマン、紅美鈴の四人だ。
いつの間にか侵入していたらしい。
「あいつら、どこから入りやがったんだ?!」
『わからない……艦内のセンサーには何も反応しなかったのに!』
「ポンコツが!」
『なんだと!?』
「二人とも喧嘩している場合ではありませんよ!」
『すまない』
「フンッ」
喧嘩を始めかねなかったMEIKOとデューオを、ちょっと怖い顔で諌める紬。
『ただ侵入されただけじゃない、奴らはどんな方法を取ったかは知らないが、回路に変なエネルギーを流されたせいで自己修復装置に防壁機能や航行に関する機能にまで障害が出てる……!』
「それはつまり?」
『このままだと装甲や砲台の修復ができなくて反撃もできず、船を満足に動かすこともできないということだ。
防壁も働かないから、戦艦の砲撃で簡単に穴が開く』
「それはまあ、大変なことですね」
「……小娘よ、少しくらいは緊迫感を持った方が良くないか?
ともかく、これは非常に面倒なことになった。
どこの馬の骨かは知らんが、連中の妨害によって船は動かない。
ともすれば無駄な時間を喰うことになり、配下達の陽動作戦も水泡に帰す。
……小癪な! これでは『あやつ』の思うツボではないか!!」
悪魔将軍が憤るのも無理はない。
デューオの言ったとおり、現在の死国はWBが流し込んだ謎のエネルギーで反撃することも逃げることもままならないオブジェと化している。
さらに兵庫を滅ぼした緑間のマウンテンシュートですら沈まなかった艦が、メガ粒子砲程度が貫徹するほど弱体化している。
死国ひいては拳王連合はこれ以上ないくらい大ピンチなのだ。
WB組が攻めてきたことによって、陽動の意味を込めた超人血盟軍の決死の奇襲も、このままでは台無しになってしまう。
早急にWB組を排除する必要が拳王連合にはあった。
その窮地に率先して立ち上がった男がいた。
「うむ、死国が頼れぬなら是非もない。この拳王が直々に奴らを屠ってやろうぞ!」
拳王であるラオウだ。
ラオウがいの一番に艦橋を出て、敵を殲滅せんと甲鈑へ向かった。
その後ろ姿はいつもよりとても頼もしく見える。
「待てラオウ! 俺も奴らを滅ぼしに行くぞ!」
「アタシもだ! 獲物を独り占めすんなよ!」
「「「俺達も頑張るぞ!!」」」
ラオウに続いて、平等院とMEIKO、増えまくったデカオも全員、艦橋を出て現場に向かう。
「我々もいくぞハクメン」
「応!」
最後に悪魔将軍とハクメンも戦いに赴こうとした。
武闘派揃いの拳王連合の中でもぶっちぎりで強い彼らが出向けば、突発的に起きたこの戦闘も10分もあれば鎮圧できるだろう。
そう思われた矢先。
「怖いよ……優ちゃん」
「ええ、でも大丈夫だよ春香!」
「みんな殺しちゃえば、誰も私たちを襲ってこない」
「うん、そうだよね優ちゃん♪」
「「「!?」」」
突如、超人血盟軍が連れてきたレズの二人――春香と優が周囲に向けて強い殺気を振りまき、それに気づいた悪魔将軍とハクメンが振り返る。
その時には既にレズ二人のラリアットが眼前にまで近づいていた。
そのラリアットは不意打ちであったとはいえ、悪魔将軍とハクメンすら避けきれず、ダメージを与えた。
「なに、早い!! それになんてパワーだ!!」
「ぐおおおおおおおおおおおッ!!」
その一撃は悪魔将軍とハクメンの鎧にヒビを入れた。
それすなわち、ただのラリアットだけで悪魔将軍の超人強度1500万パワーを上回っているということを意味していた。
(このパワー、片方だけでかつて私を下したキン肉マンに次ぐパワーは確実に持っている!)
「いったい、春香さんと優さんに何が……?!」
「突然狂ったように暴れだした!?」
「あわわわわわ」
『問題が次から次へと!』
レズ二人の異常なパワーを前に焦り、冷や汗を流す悪魔将軍。
艦橋に残っている非戦闘員の紬、ムネリン、プニキ、そしてデューオの四人も予想外の裏切りに戸惑いを隠せない。
対するレズ二人は次はどうやって攻めかかるべきか考えつつ、二人で腕を鳴らしている。
その瞳には狂気で曇り、もはや紬達を獲物としか認識していないようであった――たった数分前は仲間だったにも関わらず。
そしてただ一人、秩序の存在であるハクメンのみがレズ二人の豹変の正体に気づいていた。
「……二人から凄まじい混沌の気配がする。先ほど狂気に飲まれた緑間という少年と同じ力だ!
しかし、なぜ私とあろうものが、こうまで発見が遅れたのだ?」
つまり、高山春香と園田優の二人は緑間と同じくテラカオス化が人知れず進行していたのだ。
二人が超人並みの戦闘力に正体は、二人の百合力を戦闘力に変換できるという、テラカオス化進行によって手に入れた能力だ。
イチャつけばイチャつくほど、戦闘力が増大していくというものである。
超人血盟軍のキン肉アタルの冷静で的確な判断力でも、彼女らの戦闘力の正体を見抜けなかった……というのも、姉帯や善野監督のように雀力を戦闘力に変換できるという技術がロワ開始以前から確立していたため、それを事前に知っていたアタルは彼女らも同じ類の異能者であると思い込んでしまったのである。
だが、それは判断ミスであった。
彼女らは気が付けばコルド大王を二人で玉砕できる戦闘力を手にしていた。
更に過酷な殺し合いの環境とやりたくもない野球でストレスがかさみ、先ほど伝えられたヘルヘイムの件により恐怖心を刺激され、今回のWB組襲来によって、とうとう二人の中で狂気は弾けてしまったのだ。
ちなみにハクメンが彼女らの進行に今まで気付けなかったのは、二人がイチャつく際に過剰に分泌されるフェロモンによって気配を阻害されていたと補足しておく。
「緑間さんと同じ……ということは彼女達は元に戻れるのですか、将軍様?」
「無理だ。
できそこないでも、一度『争いの淀みから生まれた化身』に身を落とした者は始末するしかない。
さもなくば奴らは殺戮本能のままに災厄を振りまくだけだ」
「そう……手遅れなんですね」
悪魔将軍より、仲間だったレズ二人を助ける術はないという事実を知らされたことは、流石の紬といえど寂しさと切なさを感じていた。
百合に対して理解の深い紬は、二人と友達になり、二人の恋を応援してあげたいと密かに願っていたからだ。
「それよりも、この二人の始末は私とハクメンに任せてほしい。
おそらく、こやつらは外に出ている襲撃者共よりも厄介な存在になっている」
「……わかりました。デューオさん! リングをお願いします」
『了解!』
紬が指示を出すと悪魔将軍とハクメン、レズ二人の足元からリングが現れ、その中に四人が立った。
「これは?」
「リングの上ならば我ら超人の力も跳ね上がり、リング自体がこやつらを隔離し、小娘達を守る檻となる。
ハクメンよ、ここは私とタッグを組んで戦え。
今のこやつらはお前でも苦戦しかねん相手だぞ」
「……応!」
「みんなみーんな殺して私達だけの世界を作ろうよ春香ァ~♪」
「うん、もっともっと殺しちゃおう優ちゃん♪」
今、艦橋に作られたこのリングの上にて悪魔将軍とハクメンと、テラカオス化進行者である春香と優のタッグマッチが開かれようとしていた……
「私達もただ指を加えて待っている場合ではありません!
デューオさん、システムの復旧にどれだけかかりますか?」
『ざっと三時間はかかるかも』
「ニ時間で終わらせてください」
『りょ、了解。やれるだけやってみる!』
紬もただ待っているわけにもいかない。
死国の機能さえ復旧できれば事態は好転すると信じて、デューオに指示を出す。
彼女の背後では既にタッグバトルは始まっており、ムネリンとプニキに将軍達の応援兼レズ二人の監視を任せている。
「せめて、格納庫にいる祐一郎さんがここに戻ってくれば、復旧も早く終わるのですが……」
『格納庫とも連絡がつかない。
有線電話ぐらいならミノフスキーの影響は受けないハズなのに、何故でないんだ?』
「……正直、とっても嫌な予感がしますね。杞憂なら良いのですが」
奇しくも紬の悪い予感は的中することになる。
同時刻、格納庫では――
最終更新:2015年03月01日 10:25