校舎内に足を踏み入れた三人のマーダーは、ひとまず別々に行動することにした。
「そのほうが効率よく殺したい奴を探せるだろ」
「そうね。ただし獲物を見つけたらすぐに他の二人も呼ぶことね」
「うん。それじゃあ私は二階を探すね」
自分より健康な人間を殺すという目的を果たすため、ゆたかは一人で二年生の教室を調べることにした。
とはいえ、こんな殺しあいの最中にわざわざ登校する生徒もいない。校舎内は閑散としていた。
「あーあ、つまんないなあ。せめてキモ婦女子かエセ外人でも出てくればいいのに。
そうすれば淫乱ツインテールの分までじっくりと殺してあげるのになあ」
などと、
チェーンソーを振りつつ殺戮の想像に顔を綻ばせている時だった。
「ゆたか……!!」
聞き覚えのある声だった。
振り返ると、そこに馴染みのある顔があった。
「無事だったんだ……どうしたの、その血!?」
みなみは、血相を変えてゆたかに走り寄ってくる。その血糊に塗れた制服に手をかけて青い顔で尋ねる。
「どこか怪我したの!?」
ゆたかはみなみを安心させるように、いつものように微笑んで答えた。
「大丈夫だよみなみちゃん。だってこれ、私の血じゃなくてこなたお姉ちゃんの血だもん」
「え……?」
一体ゆたかは何を言っている? みなみは改めてゆたかの姿を眺めた。
制服は返り血で真っ赤だが、ゆたか自身に怪我をしたような様子は無い。
それに、ゆたかが手にしているチェーンソーの刃にはどす黒い汚れがこびり付いていた。
「ゆたか……泉先輩に何をしたの?」
「あっはっは、お姉ちゃんったら最後まで本当にかわいかったんだよ。
私がお姉ちゃんのフィギュアやポスターをぐちゃぐちゃにしてやったら、私の足にすがり付いて
泣きながら『お願いだからやめて』って言うんだよ。
その後で自分が殺されるなんて夢にも思ってなかったんだろうね」
「ゆ、たか……嘘だよね?」
「あーみなみちゃんひどーい!! 私の言うことを疑うんだ? 友達なのに!!」
ゆたかの様子は一見どこもおかしくないように見える。
ただ一点、普段よりも生き生きとしているように見えるという点を除いて。
「だって、なんでゆたかが人殺しなんか!!」
「なんで? 私はね、健康に生きている人が羨ましくてしょうが無かったんだよ!!
私がこんな苦しい生活をしている傍らで、何の不自由もなく生きている人たちがいるなんて!!
そんな人なんて、みんな死んじゃえばいいんだ!!」
みなみは思わずゆたかから手を離して後ずさった。違う。ここにいるのはゆたかではない。
私の知っているゆたかなんかじゃない!!
「でも、みなみちゃんは私の友達だから殺さないであげようって決めてたんだ。
その代わり、私に協力してよ。一緒にみんなを殺そう? 友達だからもちろん手を貸してくれるよね?」
「……わ……」
みなみは自分の上履きを見ながら、震える声で叫んだ。
「私の友達のゆたかは、そんなことを私に頼んだりしない!!」
「ふーん。ひどいよみなみちゃん……じゃあ、死んでね」
ゆたかはチェーンソーのスイッチを入れた。
みなみは逃げ出すことすら忘れて、その天真爛漫な笑顔を呆然と見つめていた。
ゆたかに殺されるのなら、そう悪い死に方でも無いのかな?
そんなことすら考えていた時だった。
「くらえー、丸一日履きっぱなしの靴下攻撃!!」
何故か自分の靴下を脱いで両手に掲げながら走ってきたのは
野原ひろしである。
「ひいいいいい!!」
いきなり顔の前にひろしの靴下を持ってこられたゆたかは一瞬失神しかけた。
「みなみちゃん、今のうちに逃げるんだ!!」
ひろしはみなみを庇ってゆたかの前に立つ。
「野原さん……でも、その子は……」
「殺しはしないよ。ちょっと大人としてお灸を据えるだけだ」
「……イヤです」
「ったく、わかんない子だなあ!!」
ひろしは頑として動かないみなみの首根っこを掴むと、空いていた窓から放り出した。
みなみは呆気に取られたような顔をしながらゆっくりと落ちていく。
ここは二階だし、窓の下は芝生だ。死ぬことも大怪我をすることも無いだろう。
少なくとも、ここで殺人犯と対峙するよりは安全なはずだ。
「おじさん、いいところなのに邪魔しないでくださいよ~」
「みなみちゃんを逃がしたのは、君に一対一で聞きたいことがあったからでもあるんだよ」
ひろしは微笑み続けるゆたかと対峙する。
「君、うちのしんのすけを知らないか? 五歳くらいの男の子なんだけど」
「しんのすけ? ああ、あの健康な幼児のことですか?」
「知ってるのか? どこにいる?」
「そんなに会いたければすぐに会わせてあげますよ。上半身の右側だけでよければね」
「なっ……」
その瞬間、ひろしの頭の中は真っ白になった。
「て、てめええええええ!! ぶっ殺してやる!!」
叫びながらゆたかに飛び掛るひろし。だが、こちらは靴下、向こうはチェーンソーである。
まともにぶつかれば、勝負にすらならないのはわかりきっていた。
ゆたかのチェーンソーが、ひろしの体を正面から縦に真っ二つに斬りつけた。
「ぎゃあああああああ!!」
ひろしの悲痛な声が校舎中に響き渡る。
着ていた服を、上も下も下着に至るまで綺麗に真っ二つにされたひろしは……全裸になっていた。
「あっはっは、おじさん結構かわいいですねえ」
ゆたかはひろしの股間を見て顔を真っ赤にして笑う。
「いやああああああ、見ないでええええええ!!」
女子高生に全裸を見られるという屈辱を受けたひろしは、泣きながら逃げ出した。
その後を、チェーンソーを持ったゆたかが嬉々として追いかけていた。
「――おい!!起きろ!!」
(うーん……ここは? 私は一体?)
「みなみちゃん、目を覚まして!!」
(そうだ、ゆたかが……ゆたかを止めないと)
目を覚ますと、目の前に知らない男がいた。
「大丈夫か? いきなり空から女の子が降ってくるもんだからびっくりしたぜ」
男は一見善良そうに見える。しかし、良く見ると上着が返り血で真っ赤に染まっている。
そう、あのゆたかのように。
そして、さらにその隣を見ると――
「ひ、柊先輩? なんで首だけなんですか?」
「それを説明してたら長くなるからまた後でね」
かがみはウンザリしたような顔で答える。
「それと、こいつは一応味方よ。安心して」
「俺のことは、まあ◆6/WWxs9O1sとでも呼んでくれ」
大学生くらいに見える男は照れくさそうに言った。
「にしても、覚えにくい上に言いにくい名前よねえ」
「別に、6/(ろくすらっしゅ)でもクルミの人でもカオスロワ一期筆頭書き手でも、好きに呼べよ」
かがみと親しそうに話す男の様子を見る限り、危険な人物では無さそうだった。
みなみはゆっくりと起き上がった。
「おい、怪我とかしてないのか? まずは手当てをしたほうがいいぞ」
「ありがとうございます。でも、私はしなくちゃいけないことが」
そこまで喋って、みなみは痛そうに顔をしかめてうずくまった。
「みなみちゃん、やっぱり怪我してるんじゃないの?」
かがみが心配そうに声をかける。
「だ、大丈夫です」
「おい、見せてみろ」
◆6/WWxs9O1s氏は無理やりみなみの足を手に取った。
「おいおい、挫いてるじゃねえか。しばらくは歩かないのが身のためだな」
「だけど、私は行かないと、ゆたかを止めないといけないんです!!」
ゆたか、だと? どういうことだ?
◆6/WWxs9O1s氏よりも先にかがみがその疑問を口にした。
「まさか、ゆたかちゃんに何かあったの?」
「はい。ゆたかは今、ゆたかじゃない別の誰かになっています」
その言葉で◆6/WWxs9O1s氏は確信した。
小早川ゆたかは殺しあいに乗っている。
まさかゆたかがマーダーになるとは、流石はカオスロワ。予想外過ぎるぜ。
「わかった。そのゆたかとかいう子は俺たちで止めよう。だが、今はお前の怪我の手当てが先決だ」
そう言って、みなみを抱えて立ち上がった。いわゆるお姫様だっこという奴だ。
流石のみなみも顔を赤らめている。
「どっか安全に手当のできる場所は……保健室でも行ってみるか」
みなみを両手で抱え、かがみを肩の上に乗せて◆6/WWxs9O1s氏は歩き出す。
「それにしてもあんた、なんか私の時とみなみちゃんとで随分扱いが違うんじゃないの?」
「はあ? 何言ってんだこのラノベオタツインテール」
まさか、『みなみは俺の嫁だから』なんてことは言えない。
リアルみなみんと会えるなんて、もしこんな状況ですら無かったら歓喜のあまり速攻で
美味しくいただいていたかも知れないけど。
「みなみちゃん、一応気をつけなさいよ。私、こいつに顔射されたんだから」
「言うな!! そんな俺の黒歴史は口にするな!!」
「がんしゃ、って何ですか?」
「そこに喰いつくな!!」
「自業自得でしょ」
「うるせえ、男は色々とデリケートなんだよ!!」
みなみは、言い争う◆6/WWxs9O1s氏とかがみの首を交互に見ながら呟いた。
「それにしてもお二人とも、よく息が合いますね」
「「どこがだ!!」」
本日何回目かわからないシンクロだった。
【一日目/午前十時ごろ 埼玉県】
【
岩崎みなみ@らき☆すた】
[状態]:右足首を捻挫
[武装]:不明
[所持品]:支給品一式
[思考]:
1:ゆたかを止める
2:とりあえず保健室に向かって手当を受ける
3:できれば主催を倒したい
【野原ひろし@クレヨンしんちゃん】
[状態]:全裸
[武装]:靴下
[所持品]:支給品一式
[思考]:
1:ふ く が ほ し い
2:しんのすけの安否を確認する
3:家族を第一に守る
4:できれば主催を倒したい
【小早川ゆたか@らき☆すた】
[状態]:たいへん健康
[武装]:チェーンソー
[所持品]:支給品一式、しんのすけの上半身右側
[思考]:
基本:健康な人間を皆殺し(知り合い優先)
1:野原ひろしを殺す
【◆6/WWxs9O1s氏@現実】
[状態]:軽症
[装備]:
柊かがみの頭部
[道具]:ふっかつそう@ポケットモンスター×1個
[思考]
1:みなみは俺の嫁
かがみ? べ、べつにこんな奴どうってことないんだからな!!
2:みなみに悲しい思いをさせないため、ゆたかを止める
かがみ? ま、まあみなみのついでに守ってやらないことも無いけどね!!
3:誤解フラグを解く
4:出来れば主催を倒す
※大臣の取引には乗ったふりをしていますが、実際に手を貸すつもりはありません。
【柊かがみの頭部@らき☆すた】
[状態]:首から下無し
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
1:◆6/WWxs9O1s氏、岩崎みなみと行動を共にする
2:自分の胴体と友人、家族を探したい
3:出来れば主催を倒す
※
第一回放送を聞いていません
最終更新:2007年12月02日 12:05