コックは一人人気の無い町を徘徊している時に、
第二回放送を聞いた。
例の男の生首を持っていた巨乳少女はまだ目覚めないし、モービスは相変わらず自分で動こうとはしない。
よってコック一人でガソリンスタンド周辺の見回りと武器及び味方の調達を引き受けることにしたのだ。
第一回放送に輪をかけてふざけた調子の第二回放送は、やはりコックの知り合いの名前は告げなかった。
しかし、犠牲者が刻一刻と増えているのは事実だ。
こうしている間にも、彼の主君である王さまの身に危険が迫っているかもしれない。
出来れば今すぐにでも一人で王さまの元に駆けつけたいのだが、モービスとの盟約を破るわけにもいかない。
「今は少しでも味方や武器を集めることが肝要か……王さま、あなたの命はこのコックが必ず」
決意を新たにしたコックは、背中からの視線に気がついて足を止めた。
身構えて振り返ると、そこにいたのは彼と同じ格好をした中年の男だった。
すなわち、料理をする人間が身に付ける白い服と、雲のような帽子。
「あんたも、料理人なのか?」
コックの問いに、髭を生やした男は一礼して答える。
「はい。主にパンなどを作っております。あとたまにメカも作ります」
朗らかな笑顔が優しい印象を与える男だった。同業者ということもあり、この男なら信用できるだろうとコックは思った。
「あんた、この殺しあいをどう思う?」
「とても許せないことです。一人の料理人としても、人間としても」
「だろうな。私も同意見だ。私たちはこの殺し合いの首謀者を倒すつもりでいる。どうだ、あんたも一枚噛まないか?」
「ありがたいお招きです。しかし……許せないかどうかと、乗るかどうかは別問題です」
「ぐっ……!!」
気がついた時には、コックの喉笛は中年のパン職人によって食い破られていた。
コックは喉から鮮血を吹き上げながら倒れる。最後にコックが見たのは、悲しい目で自分を見下ろす殺人者の血に塗れた顔だった。
(王さま……大臣……博士……。申し訳、ありません。私がいなくなっても、どうか好き嫌いなどなさらないでください。
どうか悲しまないでください。私は今まで料理を作るために沢山の命を奪ってきた。その償いをしただけです)
「
ごめんよ……あなたの命は無駄にしないよ」
鮮血を口いっぱいに含んで同業者の亡骸を見下ろすパン職人、ジャムはおもむろにコックの胸に手を差し込み、その心臓を取り出した。
これは命のパンを作る源になるものだ。そう、アンパンマンを生き返らせるための……
アンパンマンは彼にとって息子も同然だった。第二回放送でアンパンマンの死を知った時、彼の胸に浮かんだのは自分でも信じがたい決意だった。
大切な息子を生き返らせるため、他の参加者を殺して「命の源」を奪い「命をパン」を作る。
――もしアンパンマンが生き返ったとしても、彼がしたことを知ったら、絶対に彼を許さないだろう。
それでもいい、とジャムは思った。例え息子たちを、世界中のヒーローをも敵に回したとしても、今このときだけ自分は悪役となろう。
あのばいきんまんさえならなかった、卑劣で冷酷な人間にすらも。
「美味しいパンを作ろう。生きてるパンを作ろう」
まだ弱々しく胎動する心臓を握って、パン職人は歩き始めた。
【一日目正午/東京都】
【ジャムおじさん@それいけ!!アンパンマン】
[状態]:健康
[武装]:妄想心音(サバーニーヤ)@Fate/stay night
[道具]:支給品一式
[思考]
1:アンパンマンを生き返らせるため、「命の源」(他人の心臓)を集める
【コック@僕は王さまシリーズ 死亡確認】
最終更新:2007年12月25日 15:49