「みさえ……ひまわり、しんのすけ」
悪夢のような放送が流れ終わり各地で悲しみの声が響いている中、
野原ひろしも例外なく悲しみに囚われていた。
いや、この放送でそう言った感情を抱かない者など殺人者くらいであろう。
人気のない学校の廊下にはひろしのすすり泣く声だけが響き、
真夜中にこんな声を聴いてしまったら、七不思議のひとつに数え上げられていたかもしれない。
だがそんな噂を広めるであろう生徒達も大半は命を失い、生き残ったものの大半も殺し合いに乗ってしまっている。
だからこの学校が普段の喧騒に塗れる事は、もう無いのだろう。
「なんで……さっきまで一緒だったのに」
ひろしはすぐ傍で倒れている愛娘、ひまわりの身体を壊れ物を扱うように抱き上げる。
見るからに原型を止めていないその姿だったが、肉親であるが故に分かってしまうというのも酷く悲しい。
こんな姿を見てしまうくらいなら、いっその事分からないままの方が良かったかもしれない。
それならばまだ生きているかもという幻想にすがる事もできただろう。
だがその骸は、嫌が応にも娘の死を実感させる。
あの明るい笑顔も、愛くるしい仕草も、二度と見る事はできない。
そう思うと、自分が軽薄な行動を取った事に怒りが湧いて来た。
「
ごめんな、俺が……俺がっ!
もっとちゃんとしていればっ、お前達を……守れたかも……しれ、ないのに!」
あの行動は決して間違った事ではない。
人として十分に立派な行動であっただろう。
ただ結果が伴わなかっただけ。
誰が聞いたとしても、彼の行動を責める事はないだろう。
だが、理屈ではないのだ。
娘を、息子を、妻を失った悲しみや怒りは、そんな理屈で押さえられるものではないのだ。
だからこそ両目からは絶え間無く涙が流れ続け、それを止める事もかなわない。
一体何がいけなかったのだろう。
殺し合いという事も忘れ、家族仲良く高校でのんびりしていた事だろうか。
殺し合いに乗ってしまった
小早川ゆたかから、無様に逃げ出した事だろうか。
それとも、家族からほんの少しでも目を離してしまった事だろうか。
こうして思い返すと、全てが悪かったようにも感じてしまう。
そんな風に考えていると、だんだんと欝な気持ちになってくる。
だけどここでずっとひまわりを野ざらしにするわけにはいかない。
せめて簡素でもお墓を作ってあげよう、と立ち上がる。
その背中は、声をかけるのすら躊躇ってしまう程の哀愁が漂っていた。
そんな男の姿を見つけ、やってくる少年。
片手に
金属バットを持ち、リノリウムの床に引きずっている姿は、あまりにも似合わない。
彼はそんな自分の姿について考える事もなく、ただ自分より人気のある者の殲滅だけを望んでいた。
そのあまりにも卑劣で矮小な姿を見れば人気など出よう筈がないのに、そんな事にも気付かない。
少年はカラカラと音を立てながら男に近づく。
男はそんな少年を気にも留めずに前へ歩く。
いや、少年に気付けないほど焦燥しているのだろう。
兎も角、二人は徐々に徐々に近づいていた。
二人の距離が5mほどになった頃だろうか、少年―――
白石みのるは、金属バットを男に突きつけ立ち止まる。
だが男はやはり気付かない。
白石はそんな男の様子に呆れたように肩をすくめ、今度は声をかけた。
「あんた、野原ひろしだよな?」
ひろしはその問いにピクリと体を震わせ、顔を上げる。
「なんで、俺の事を……」
その反応に満足したのか、白石は下衆た表情でニヤリと笑った。
「ここにしんのすけとひまわりがいたって事は、当然あんたもいると思ったが大正解だったぜ」
白石は問いには答えずに、自分の直感を褒める。
「まさか……」
「あいつら、ガキの癖に俺より売れているなんて許せないよな」
真相に気付きつつあるひろしを誘導するように、笑いながら話す。
「おまえが……」
「折角見逃してやろうと思ったのに、あんな暴言吐くんだからバカだよな。
まぁ所詮ガキの頭じゃ、そこまで計算できないか。ハッハッハ!」
調子に乗って話を続ける白石は、ひろしの顔が憤怒の色に染まっていく事に気付かない。
ひろしはゆっくりとひまわりを地面に下ろし、幽霊のようにフラフラと白石に近づいていく。
「そうだ、ホラ、こいつを見ろよ。
何かの役に立つと思って取っておいたけど、あんたも息子の死体を見れて幸せだろ?
なんたって、知らない間に食べられたりしないですんだんだもんなw」
白石は近づくひろしを意にも止めずに、デイパックから出したしんのすけの残骸を地面に乱暴に落とす。
グチャっという音とともに地に落ちたしんのすけの身体を、ひろしは悲しみと怒りがない交ぜになった顔で見つめた。
その下半身も確かに見覚えのある身体で、それはひろしに更なる過酷な現実を突きつける。
「おまえが……おまえが……」
続けざまに見せ付けられた、家族だった物。
それはひろしの心を壊すのに、狂わせるのに、闇に染め上げるのに十分で。
「おまえがしんのすけを、ひまわりを、みさえをーーーーーーーーーっ!!!」
ひろしは我を忘れたように白石に殴りかかる。
今までヘラヘラ笑っていた白石は、咄嗟の事に反応できずに顔面を殴られ気絶する。
「もう俺には何も残っていない、全てを奪われた。
ならば俺も……私も、欲望のまま奪うとしよう。それが世の真理なのだからな」
泡を吹き白目をむいて気絶している白石を適当な教室に運び込み、狂ったように微笑する。
ひまわりとしんのすけも丁重に教室に運び込み机に置く。
金属バットの回収も忘れない。
そして誰にも邪魔されないようにと扉の鍵を閉め、カーテンを閉めた。
子供達はいわば観客だった。
大切な子供たちを奪った白石が、欲望のまま奪われるさまを見届ける観客。
それで子供たちが満足するかどうかは分からない。
自己満足なのかもしれなかった。
それでも、心を決めるために、そうする事に何の迷いも無かった。
先ずは白石の学ランのボタンを外し、そして脱がす。
これからする事に、こんなものは不要だった。何よりしづらい。
次にベルトを外し、ズボンを緩める。
ズボンのボタンとホックを外し、チャックを下ろす。
この間に起きないように、ゆっくりとズボンを下ろしていく。
これも不必要で、邪魔なものだった。
あと残るはYシャツとトランクスだけだ。
Yシャツに手をかける。
ボタンを上から順に外していく。
同時に白石の胸が、お腹が、臍が露出していく。
そして男らしいとはとてもいえない身体を晒す。
Yシャツを脱がすと、それを机に置く。
これでトランクス一丁になった。
白石はそれでも気付かずに気絶している。
最後の砦、トランクスに手をかける。
これは簡単だ。
脱がすだけ。
それだけで済む。
それだけで白石は全裸になる。
最後にしくじるわけにはいかない。
気付かれないようにゆっくりとやさしくトランクスを脱がしていく。
途中、ポロンとぞうさんが零れでる。
それに気を取られずに、ゆっくりと下ろしていき脱がし終わる。
全裸になった白石を肩に抱き、椅子に座らせる。
冷たさで目覚めないように座りながら作業し、暖めていた。
おかげで、金玉が冷たさで萎縮してしまったようだ。
その椅子はたまたま
柊かがみの椅子だったが、それはどうでもいい事だろう。
そして机においておいたYシャツを適度に切り裂く。
切り裂いたYシャツで椅子と白石を結びつける。
無論、逃走させないためだ。
Yシャツだけでは足りなかったため、椅子の持ち主のであろうスクール水着と体操服を拝借する。
それを同じように切り裂いて、椅子と白石の縛りを強固にする。
両手両足を拘束し終わり、引っ張ったりして動かないのを確認する。
仕上げに、白石の着ていた学ランを処分する。
トランクスは、勝手に使ってしまった体操服などの持ち主の机に、お詫びとして詰め込んだ。
これで準備は終わった。
万が一白石の拘束が解けても、全裸である以上咄嗟に行動できないだろう。
配給品である水を白石の胃の中に流し込み覚醒を促す。
水が肺にでも入ったのか咽ぶ白石の姿を冷めた目で見下ろし、金属バットを突きつける。
目覚めたばかりのぼやけた頭でも、自分が威嚇されている事は分かったのか、慌てて逃げようとする。
だが、そうできないように縛られた身体では身動きすらできなかった。
そして白石は現状に気付く。
油断した相手に倒され、これから尋問でもされるのだろう事を。
恐怖により、両者が全裸だという状況に突っ込む余裕すらなかった。
「さて―――」
「俺が悪かった、ただカッとなっただけなんだ。許してくれ!」
ひろしが言葉を発したと同時に、白石もまたマシンガンのように許しを請う。
その態度の変貌ぶりと、あまりにも子供じみた言い訳に、ひろしは思わず苦笑した。
「何、別に卿を恨んではない。卿は欲望に忠実だったまで、それは正しい姿だ」
金属バットを玩び、白石の周りを廻りながら答えた。
その表情は、言葉どおりに恨み憎しみの表情ではなく、いっそ清清しいほどの笑みだ。
白石はその思いもよらぬ言葉に、呆然としている。
「誰しも欲望は持っているものだ。それを無理に抑えようとするから破綻が生じるのだよ。
人は自らの食欲の為に他の生物を殺して食べている。
だというのに、何故他の欲を抑えようとするのだろうな」
身動きもできない白石は、ひろしの言葉をただじっと聴いている。
「人は理性を持っているから、動物とは違うからか? ハッ、欺瞞欺瞞……。
人間と獣の何が違う。人は簡単にタガが外れてしまうではないか。
この殺し合いを見ろ、どれだけの人間が倫理を守っていられている」
その言葉に白石は考えるように目をつぶる。
おそらく今まで見てきた人間の汚い部分を思い浮かべているのだろう。
「だから卿は何も間違っていない。
もう一度言おう。卿のした事は間違ってはいない、正しいことなのだよ」
「俺は、間違っていない……」
白石は、ほんの少しだけ残っていた理性が消えていくのに気付かない。
「卿は……そうだな、人気が欲しいか?
先程言っていただろう、売れているから許せない……と」
「人気……くれるのか!?」
思うように誘導できている事に、ひろしは満足そうに頷き答える。
「卿が狙ってる人物は色々な人間に狙われているのだろう?
ならば誰よりも先に仕留められれば、人気があがると思わんかね?」
白石はその答えに、気付かなかったと言うように驚きの表情をしていた。
その反応にひろしは満足そうに頷く。
「私は闇ひろし。
人気が欲しければ、卿も私と共に欲望の赴くまま奪うといい」
白石はその誘いに勢い良く頷く。
ここに、全裸の男二人の同盟ができあがった。
【一日目 正午/埼玉県陵桜高校】
【白石みのる@らき☆すた】
[状態]:全裸
[武装]:なし
[所持品]:支給品一式、切り裂かれたかがみのスク水と体操着
[思考]:
基本:自分よりキャラソンのCDが売れている人間を皆殺し(知り合い優先)
1:かがみを誰よりも先に殺す。
2:人気を得るためにひろしに従う。
3:ふ く が ほ し い
【野原ひろし@クレヨンしんちゃん】
[状態]:全裸、闇ひろし化
[武装]:靴下、金属バット
[所持品]:支給品一式 、しんのすけの下半身右側、ひまわりの死骸
[思考]:
基本:欲望の赴くまま奪うとしよう。
1:白石の信頼を得てから無残に殺す。
2:ふ く が ほ し い
最終更新:2007年12月25日 16:40