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一台のトラックが、埼玉へ向け疾走を続けていた。
荷台に大きな鍋を、そして助手席に胴体を失った少女の首を載せて。

そのトラックの運転手である柊ただおは、無我夢中でトラックを走らせていた。

彼はノリスケを殺した後、大切な娘達と最愛の妻の生存を信じつつ、
情報集めのために東京都内を転々としていた。
そして、『埼玉県の鷲宮神社で、自分の妻子と思しき二人の女の姿を見た』という情報を得て、
今まさに鷲宮神社へと急行するところであった。

彼が故郷へと戻るのには、もう一つ理由があった。
妻子の情報を得るのと同時に、かがみらしき人物の首を持って逃げ回る20代くらいの男と、
男と行動を共にする、人語を解するひよこが埼玉県内にいるという情報も得たからである。
(かがみはきっとその男に殺されたに違いない……かがみの為にも、そいつを捕まえ、必ず殺してやらねば!)
ただおは、その男への復讐をも誓ったのである。

彼は三回目の放送で、自身の娘の一人であるいのりが死んでしまったことはすでに知っていた。
だが、今そのことを悔やんでいる暇は彼にはなかった。
残されたみきとまつりだけでも、命を懸けて、身を粉にしてでも守らなくては……
もう誰も失いたくはない。一家の大黒柱としての使命が、彼をつき動かしていた。

「この県境を越えれば埼玉県か…。まずは二人と合流して、
 それからかがみの首を持つ男を、あのノリスケの如く殺してやらなくては!」

ただおはトラックを発進させ、埼玉県に入る。
だが、埼玉県に入って少し走ったところで、アクセルを踏んでもトラックが加速しなくなった。
「おかしいな。ガス欠か?」
トラックは徐々に減速を始め、しばらくして完全に動かなくなった。
ガソリンの残量を示すメーターが、完全に「E」を指している。ガス欠だ。
道端に乗り捨てられていたこのトラックに乗り込んて以降、彼は一回も給油をしていなかったのだ。
近くにガソリンスタンドはない。どうやらここから先は、歩いて目的地を目指すしかないようだ。
「まいったな。鷲宮神社まではまだ結構距離があるっていうのに……」
途方にくれるただお。しかし、こんなことで家族を見捨てるわけにはいかない。
「いや、この恐怖のどん底の中、みきとまつりを待たせるわけにはいかない! いくぞ!」
ただおは胴体のないつかさの頭部を大事に抱えながら走り出した。

と、次の瞬間!

ドォォォォォォン!!!!

突然巨大な物体が目の前に落下し、ただおの行く手をふさいだ。あまりの衝撃に、道路のアスファルトが叩き割られる。
「な、何だ! この大木は!?」
突如として落下してきた物体にただおは驚き、衝撃で吹き飛ばされた。
その物体は異常なまでに太く、所々苔むしており、鼻の曲がるような強烈な悪臭を放っていた。
「ブウウーイ」
物体の上のほうから、不気味なうなり声が聞こえてきた。
ただおが見上げると、山よりも高く、天まで届かんばかりの巨大な魔物の姿が飛び込んできた。
大木だと思っていたものは、その魔物の足だったのだ。
「さて…ルドルフはどこだ?」
その巨大な魔物――ブオーンは、ぶよぶよと不気味に巨体を揺らしながら、野太い声で小さなただおに問いかけてきた。
「ル、ルドルフ? そ、そんな男は、き、聞いたことがないな」
極度の緊張状態からか、ただおは言葉に詰まりながら答える。
当然の答えだった。ただおの知り合いにルドルフなどという名前の西洋人はいないし、
昔世界史で習った人物にルドルフという人物がいたかもしれないが、世界史はテスト前に一夜漬けでやっていただけだったので、もうほとんど覚えていない。
「…かくすとためにならんぞ」
ブオーンは気に喰わない表情のまま、2メートルぐらいはあろう手でただおを摘み上げる。
その時、なすすべも無く摘み上げられたただおの腕からつかさの頭部がこぼれ落ちていたが、それに気が付かないほど、ただおは焦っていた。
「ほう、その顔がルドルフによく似ているな」
ブオーンはつまみあげたただおを見て感想をもらす。
(まずい、このままでは間違いなくこいつに殺される! 何としても生きてこの場を乗り切らなくては……)
今までの人生で全く味わった事のない恐怖に、ただおの焦りは頂点に達していた。
この先には愛する家族が待っている。ここで殺されて彼女達を悲しませる訳にはいかない。
「もう一度聞く。ルドルフはどこだ?」
怖い顔で詰め寄るブオーンに、生きて帰りたかったただおは閉ざしていた口を開くしかなかった。

「わ、分かったよ、言うから助けてくれ!」
「ほう、では教えろ。どこにいるというのだ?」
「こ、ここから北にいったところに高校がある。そ、その高校からさらに少し西にいったところの空き家に隠れて潜んでいるだろう」
もちろん口から出まかせだ。その方向に空き家があり、そこに誰かが潜んでいるなどという確証は無い。
「なるほど、ここから北西の方角か…まあよいわ」
(ふう、ひとまず助かったな)
化け物のその言葉に、ほっと一安心するただお。だがその安心は、次の一言で完全にかき消された。

「では体ならしにキサマから血まつりにあげてやるわ!」

そう言ってブオーンは大きく開けた口の上にただおを落として丸飲みすると、口を閉じ噛み砕き始めた。
バリバリと砕ける骨の音。口から溢れ出る真っ赤な血。最初は聞こえてきた悲鳴も、ものの数秒で聞こえなくなった。
数分後、噛み砕き終わってブオーンが口から吐き出したのは、唾液と鮮血によって塗り固められた、ただおの衣服だった。
ブオーンは腕で口に付いた血をふき取ると、満足げな表情で民家を踏み潰しながら北西の方向へと歩き始めた。

最後に残された血だらけの父親の衣服の横に転がっていた頭だけのつかさの表情は、どこか悲しげだった。
【一日目 午後六時/埼玉県県境】
【ブオーン@DQ5】
[状態]:健康
[装備]:オリハルコンの牙
[道具]:不明
[思考]
1:とりあえずルドルフぶっ殺すまで殺し合いを止めさせない
2:ツンデレコンビを捕らえて願いをかなえるのもいいかも

【柊ただお@らき☆すた 死亡確認】
【直前の状態】
[状態] :健康
[装備] :トラック、鍋
[道具] :支給品一式、柊つかさの頭部
[思考] :
1:ずっとつかさと一緒……
2:生き残っている家族を探して合流する
3:家族を傷つけるもの、あるいは傷つけたものは殺す
4:ツンデレコンビを捕らえて殺し合いを終わらせる
※:ツンデレコンビがかがみとは気付いていません。
※:いのりを殺したのは自分であることにも気付いていません。
最終更新:2008年01月15日 14:46