ここは地球とは異なる世界。その名もハルキゲニア。
その世界の、トリステイン魔法学校と呼ばれる場所で一人の少女が奮闘していた。
進級試験として使い魔を召還する儀式を行っているのだ。
「所詮ゼロのルイズには無理なんだよ!」
「もう諦めろよw」
「先生、やらせるだけ無駄ですよ!」
幾度の失敗により、少女を囲む子供たちからも不満の声が上がる。
それも当然だろう。失敗による爆発で大なり小なり皆煤を被ってしまっているからだ。
それでも教師らしき禿頭の男は優しく、真剣な目で少女を見守っていた。
「~~~~~~っ!!!」
少女は成功の兆しすら見えないことに怒り悲しんでいた。
周りから馬鹿にされる事には馴れていたが、今は進級が掛かった大事な試験だ。
これに失敗してしまえば魔法学校初の留年という不名誉を負うことになる。
何よりも家名を大事にするトリステインの貴族としては、そんな事になるわけにはいかなかった。
優秀な父母と姉妹に囲まれて育ってきた中、ただ一人の落ちこぼれ。
それが世に広まらないように、薄暗い地方の屋敷辺りにでも閉じ込められてしまうかもしれない。
そういった恐怖に追われながらも弛まぬ努力をしてきたというのに、一向に魔法が使えない。
奇跡でもいい、平民が出てきても構わない。今はただ進級だけがしたかった。
「ミス・ヴァリエール……残念ですが次に失敗してしまえば留年という事にせざるを得ません」
禿頭の教師は沈痛な面持ちで少女―――ルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエールに告げる。
その言葉にルイズはギリッと歯を食いしばった。
次で終わり。奇跡などそんな易々と起きない事など分かっていた。
今までずーっとゼロと呼ばれ、辛酸を舐め続けたのだから。
だけど最後のチャンスを不意にする事もない。
ルイズは顔に疲労の色を浮かべつつも、目を閉じて呪文を唱える。
「五つの力を司るペンタゴン、我の定めに従いし、使い魔を召喚せよ!」
それを見守る生徒たち。
だが、無常にも結果は変わらなかった。
ただいつにも増して大きい爆発が起こったというだけ。
僅かなりとも期待をしていたルイズは、流石に絶望を隠しきれなかった。
「やっぱり失敗だな、ゼロのル・イ・ズwww」
「ハハハハハ、これでルイズのやつ留年だぜ!」
「まぁ最初から分かってた事だよなー!」
次々と子供たちが悪口と笑い声を発していく。
それは徐々に大きくなり、輪を作る者の殆どがルイズを嘲笑していた。
だけどルイズはそれに何も反論できなかった。
そう、最初から分かりきった結果だったのだ。
失敗しかしない成功率ゼロの少女が、進級試験でサモン・サーヴァントでの召還を成功できる訳がない。
進級など、夢のまた夢だと。
悔しさに涙が流れてくる。
その雰囲気を察して、禿頭の教師・コルベールはかける言葉も見つからなかった。
彼はルイズが普段どれほどの努力をしているのかを知っていた。
魔法が使えずに実技が駄目なため、一生懸命に歴史などといった筆記の方にも力をいれている事を。
なんとか進級をさせてあげたい、と心の底から思うほどに。
だがこの春の使い魔召還の儀式は、とても神聖なもの。
一教師であるコルベールの一存でそんな事は決められないし、上に掛け合っても無駄だろう。
それに生徒に対して平等であるべきの教師がこんな事ではいけない。
コルベールは涙を呑んでルイズに留年の意を伝えようとする。
その時、爆発により近くすら見えなくなるほど上がっていた粉塵が収まり始め、何かが見えてきたのに気付いた。
未だ粉塵に隠れている現状では何なのかは分からないが、それはとても大きかった。
「ミス・ヴァリエール! 成功ですよ!」
コルベールは喜びの余りそう叫んでから、恥ずかしさからゴホンと咳をした。
そしてあの大きさで暴れられたら危険な事を思い返し、気を引き締める。
あれが召還の異に応じなかった時に命を懸けてでも教え子を守るために。
そして煙は晴れる。
そこには誰にも想像だにしなかったものがいた。
いや、あったというべきか。
何しろそれは生物ですらないからだ。
巨大な一軒の建物がどっしりと佇んでいた。
「ちょwww」
「おまwww」
「うはwww」
「ワロスwww」
生徒達は口々に大爆笑を始める。
笑われているルイズは未だに現状が把握できずにポカーンと建物を見上げて呆けていた。
コルベールも同様である。
長年生きてきて、こんなモノが召還されるなどと言う事は、見たことも聞いた事すらない。
「ルイズ!家なんか召還してどうすんだ!?」
その言葉にルイズは我に返り、咄嗟に言い返す。
「うっ、うるさいわね! 風除けのマリコルヌのくせに!
もしかしたら中に誰かいるかもしれないでしょ!」
「風邪っ引きのマリコルヌだ! 違う、風上のマリコルヌだ
それに俺は風除けになるほど太っていない!」
コルベールはこの言い合いに、じゃあ太ってる事は認めるんだなぁと現実逃避をしながら、どうするべきか考えていた。
まぁとりあえずルイズの言い分も尤もな事なので、とりあえず中に人がいるか探ろうと思った。
「ではミス・ヴァリエール。中に人がいたら儀式を済ませてきなさい
ミスタ・マリコルヌも悪口は見苦しいですよ」
このまま放っておくといつまでも続くと思ったコルベールは、ルイズに指示する事で言い争いを止めた。
そして生徒たちとともに、ルイズが建物の中に入っていくのを再三見守っていた。
ルイズの成功を祈りながら。
ボンッ! ドサッ コロコロ……
突然の事だった。
生徒達もコルベールも何が起こったのか分からなかった。
ルイズが建物に足を踏み入れた直後、ルイズの首が爆発して飛んだのだ。
地面に転がっているルイズの頭が、死んだ事も分からないように普段と同じ表情をしているのが、やけに滑稽だった。
以後、その建物は入った者の首を飛ばしていく事から悪魔の館と呼ばれ、ハルキゲニアの歴史に名を残す事になる。
【一日目 午後七時/トリステイン魔法学校】
【ジャン・コルベール@ゼロの使い魔】
[状態]:禿げ
[装備]:不明
[所持品]:不明
[思考] :ツンデレコンビを掴まえる
1:唖然
【マリコルヌ・ド・グランドプレ@ゼロの使い魔】
[状態]:かぜっぴき、風除け
[装備]:不明
[所持品]:不明
[思考] :ツンデレコンビを掴まえる
1:呆然
【ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔 死亡確認】
[死因]:禁止エリアのニビジムに足を踏み入れたため爆死
最終更新:2008年01月24日 22:18