「くっ、こいつ強い!」
アルスはバラモスから放たれる閃光を見て、転がりながら爆発を避ける。
バラモスが放ったイオナズンによる攻撃だ。
「っそおおおおおおお!」
爆発が収まった瞬間を狙ってなんとか斬り付けるも、その後に襲ってくる薙ぎ払いにより後退せざるをえない。
そしてまたバラモスの遠距離攻撃が始まる。
今度はバラモスの口から激しい炎が吐き出される。
あたり一面が業火で燃えさかり、ジュウジュウと何かが燃える音が聞こえる。
アルスは後ろに下がることで回避して、すぐに盾を構える。
その瞬間に、炎を飛び越えてきたバラモスの渾身の突きを受けて吹き飛ばされる。
「くそっ、隙が見当たらない!」
一瞬の隙を突いてなんとか攻撃したとしても、すぐに反撃を受けて離れざるをえない。
そしてその間にバラモスが受けた傷が回復する。
こちらは回復する暇さえない。防戦一方だ。埒が明かない。
それというのも先程流れた放送のせいだった。
アルスは普段どおり4人のパーティーを組んで冒険をしていたのだ。
そこに突然流れた4人以上の行動の禁止。
常に4人で戦ってきたアルス達にとってその報せは悲劇でしかなかった。
放送が終わるまでに慌てて分かれたはいいものの、逃げた先にはバラモスがいた。
そのままなし崩し的に戦闘に入る。
もし4人で戦えたなら隙もいくらでも作れただろうし、ここまで苦戦する事はなかっただろう。
だが例え分かれた仲間がこの戦闘に気付いても駆けつける事はできない。
この場には既に3人揃っているのだから。
勇者アルス、こっちについてきた仲間の遊び人、そしてバラモス。
ついてきたのが遊び人でさえなければと悔やむも後の祭り。
あの場ではこんな事になるとは予測できなかったし、相談してわかれる時間もなかった。
メダパニにかかっている遊び人がこっちを攻撃してこないのが唯一の救いだろうか。
バラモスもそんな遊び人は無視してアルスに専念している。
「くっ、せめて遊び人が正気に戻ってくれれば!」
そう、無視されてる間に正気に戻って、攻撃するなり仲間を呼ぶなりしてくれればいい。
それまでアルスが持ちこらえる事ができるか、遊び人がその意図に気がつくかが問題だが。
「だけどっ、それにかけるしかない! 僕は仲間を信じる!」
アルスは自分の顔をはたいて気合を入れなおし立ち上がる。
遊び人から離れるようにバラモスをひきつけて切りかかり、反撃を避ける。
バラモスは確かに強いが、それでも防御や回避に専念すれば一人でもなんとか持ちこたえられる。
アストロンでひたすら攻撃を凌ぐという方法は使えない。明らかにあからさま過ぎる。
あくまでも相手に気付かれないように、適度に本気の攻撃をかましてやらなければならない。
(とはいえ、その適度な攻撃って言うのがつらいんだけどな……でもやるしかない!)
アルスはデイパックに手を突っ込み自分の支給品を手で転がす。
この世界に来てアルスが始めてみたもの。
説明書は読んだ、使い方はばっちり、効能も理解した。
後は使いどころを間違えないだけ。
バラモスもこれがどんなものかは分からないだろう。
だからこそ最後のとっておきだ。
ふと視線を右にずらすと、いつの間にかに遊び人の姿が遠くに見えた。
仲間を呼びに行ってくれたんだろう。
なら後は自分の仕事をちゃんとこなせばいい。
(頼んだぞ、遊び人)
アルスは剣を握り締めバラモスに切りかかっていった。
◆
その頃別れた仲間は―――
「アルスの奴大丈夫だろうか……」
「うむ、そうじゃのう。アルスについていったのが遊び人じゃからなぁ」
アルスを探して彷徨っていた。
「アルス一人ならまだしもな、あいつがいたんじゃ足手まといになりかねないからな」
「それに今更じゃが4人以上といっても範囲指定があったから何も逃げる必要もなかったしのぉ」
女戦士と男魔法使いは誰もいない町並みを見回しながら探し続ける。
だが誰もいないからと言って油断も出来ない。もちろん大声をあげるという事もしない。
冒険者としてそれは当然の知識だった。
「ったく、逃げた後の追記放送だったからな。そんな大事な事はちゃんと一辺にしろってんだ」
「過ぎたことにぐちぐち言っても仕方あるまい。それより早くアルスを見つけ出さなくてはの」
ぐちぐち文句を言いながらも歩く二人だが、驚くほど油断も隙も見当たらなかった。
長年組んできたパーティーであるがゆえ、二人きりになったとはいえ信頼感はある。
それに戦士と魔法使いという組み合わせも丁度よかったためだ。
だからこそはぐれた勇者の事が心配だった。
二人の脳裏に思いうかぶは、もし遊び人でなくて自分が付いていってればという事だ。
とはいえ魔法使いが言うように過ぎた事はなんとやらなので、それは口には出さない。
「この付近にはいないんじゃねぇのか? もっと先の方探そうぜ」
「そうじゃな、あまり隅々まで探し続けても仕方あるまいの……と、あれは?」
「ん……? あれは遊び人じゃねぇか、アルスはどうしたってんだ!」
戦士はそう口にするや否や遊び人のほうへ駆けていく。
「おお、待つのじゃ。ワシを置いていく出ない」
魔法使いも少し遅れてちょこちょこと後を駆けていった。
魔法使いが遊び人のもとへ辿り着いた時には、戦士が遊び人に掴みかかっているところだった。
「てめぇ! それじゃアルス置いて逃げてきたってのか!」
戦士は激昂して今にも遊び人に殴りかかろうとしている。
「戦士よ落ち着くんじゃ! それより遊び人よ、一体何があったんじゃ。ワシにも説明してくれんかの?」
戦士を宥めつつ、怯えた遊び人をあやす様に魔法使いは問うた。
遊び人がそれに助かったというような顔をして口を開いたが、それに対して戦士は面白くなさそうに遊び人を突き放す。
「俺たちが別れた後にバラモスと遭遇して、アルスを置いて逃げてきたんだとよ」
遊び人に睨みを聞かせつつ魔法使いに説明する。
「ちっ、違っ! ボクはアルス君だけじゃ厳しいと思って君たちを呼ぼうと!」
「それでも逃げてきた事には変わりはないだろ! その間にアルスが死んだらどうするつもりだ!?
相手はバラモスなんだぞ、いくらあいつでも一人でどうにかできるわけねぇじゃねぇか!
あいつは勇者なんだぞ、世界の希望なんだぞ、それをてめぇ責任取れんのか!」
「だから落ち着くんじゃ! 今遊び人を責めてもどうにもなるまい!
確かにこやつは逃げてきたかも知れぬが、それでワシらがアルスを助ける事が出来るのかも知れんのじゃぞ!」
ちゃんとレベルが上がっていればアルス一人でもなんとかなっていたのかもしれない。
だが何より出会うのが早すぎたのだ。
アルス達は冒険の途中で殺し合いに巻き込まれて、まさかこんなに早くバラモスと合間見えるとは思ってもいなかった。
バラモスも殺し合いに巻き込まれている以上、奴が各地を放浪している可能性もあったというのにそんな事を考えもしなかった。
その考えに到っていたとしてもレベルを上げる方法が参加者の殺戮以外にない以上どうしようもなかったが。
「くそっ、そうだな。その通りだよ。一々あんたの言う事は正しいよ魔法使いの爺さん。
でもよ、もしアルスが死んでたらてめぇは絶対許さねぇ。
アルスが助かっても後で一発殴るくらいはさせてもらうからな」
戦士は遊び人をギロッと睨みつけながらも冷静さを取り戻していく。
「さあ遊び人よ、逃げたことに関してはアルスを助けることで挽回すればいいじゃろう。
早く助けに行かねばの、ワシらを案内するのじゃ」
魔法使いにそう言われて、遊び人は戦士に怯えつつも来た道を戻っていった。
◆
バラモスの詠唱により巨大な炎の塊が生まれ、それが一直線にアルスの方へ飛んでいく。
息を切らせながらなんとか避けることに成功するも、掠った服の一部が蒸発する。
スレスレを避けたことにより熱線で火傷を負うが、それを気にした風もない。
それも仕方のないことだろう。
アルスの身体は何処も彼処も傷を負っていて見るも無残な姿を晒している。
対するバラモスは傷の修復が追いついていないのか、所々傷を負っているがそれだけだ。
疲労により攻撃の回数が減っていけば、すぐに完治してしまうだろう。
「まだか……これ以上は、流石に厳しい……な」
遊び人がいなくなってから随分と時間が立っている。
もしや普通に逃げただけなのではと思いさえしてきた。
彼は遊び人なのだ。戦闘に特化した戦士や武闘家ではない。
だからバラモスを目の前にして逃げるのは仕方のないことなのではないか……?
「いや、そんな事はない。彼は絶対来てくれる!」
思い返すは遊び人を始めて仲間にした時の事。
「ねぇ、君って勇者だよね。ボクを仲間にしてくれないかな?」
「えっ、でも君は遊び人だろ? 僕は遊びに行くんじゃないんだ」
「知ってるよ。でもボクでも、こんな遊び人でも、世界を救ってみたいんだ。
ボクがバラモスを倒して、遊び人だからってボクを馬鹿にした奴らを見返したいんだ!」
「危険だよ、それでもいいのかい?」
「勿論だよ!」
そう言って仲間になった遊び人。
危険を顧みずバラモス退治に参加した遊び人。
「そうだよ、彼が逃げるはずなんかない!
その為にも、ここで僕が堪えなきゃ!」
再びデイパックに手を突っ込んで、それを取り出す。
デイパックの中には同じようなものが100個はある。
説明書によれば、これだけあればいくらあのバラモスでも大分傷を負うだろう。
「一度しかこの手は使えないだろうけど、それでもバラモスはそれで僕を警戒する。
時間を稼げればいい。仲間たちが駆けつけてくるまでの時間が」
アルスには仲間がもうすぐここにやってくると確信していた。
確証はないただの勘だったが、それでも確かにそう信じていた。
バラモスがメダパニの呪文を唱えるが、それをなんとか耐え切る。
暫くの戦いでバラモスの行動パターンは読めてきた。
次のバラモスの攻撃が切り札の使いどき。
嘴のようなバラモスの口が呪文の詠唱を始める。
アルスはこの攻撃を受ける覚悟でバラモスに走りよっていく。
バラモスに近ければ近いほどいい。
アルスとバラモスの間に閃光が生まれ―――――
爆発が起こる寸前にアルスは自分のデイパックを閃光の中に投げ込む。
「アストロンッッッ!」
アルスの身体が銀色の輝きに包まれたその瞬間。
あたり一面を飲み込むほどの大爆発が起こった。
まるで核の炎のようなその爆発はバラモスも銀色のアルスも飲み込んでいく。
◆
アストロンの魔法が解け、アルスの目に入ったものは荒野と化した街並みと、倒れ付したバラモスだった。
「こ……これは」
思ったよりも凄いその威力に、アルスも呆然とする。
一体何をしたらこんな事になるのだろうか。
勿論アルスには薄々気がついていた。
アストロンを使って意識がなくなったとはいえ、その直前にした事までは覚えている。
デイパックに詰まった100個の異世界の爆弾をイオナズンに巻き込んで爆発させたのだ。
「僕が、やったのか……そうか、バラモスも僕一人で……」
流石に現実感もないのか呟きながらバラモスに近づいていく。
「これじゃあ流石のバラモスといえど―――うわぁっ!」
死んだと思っていたバラモスがアルスの足を掴んで立ち上がる。
そのままアルスの身体を振り回し、そのままジャイアントスイングのようにに投げ飛ばす。
「うわあああああああああああああああああああ!!!!!」
ルーラとは違う浮遊感。
それも上に飛んで行くのではなく、真横に投げ飛ばされたのだ。
そのまま地面に落ちれば瓦礫だらけである以上凄い痛いだろう。
ドスッという音がして目をつぶるが痛みはない。
「あ……れ?」
それどころか何か暖かい感触がする。
ふとそれに振り向いてみる。
「よぉ、大丈夫だったかよ」
そこには放送の時に別れた戦士と魔法使いの姿があった。
禁止行動を気にしてか、大分離れて遊び人の姿もある。
「来て……くれたんだね! 信じてたよ!」
「ま、無事でよかったよ。」
「後はワシと戦士に任せておぬしは遊び人と休んでおれ。
何、バラモスもあのザマじゃ。ワシら2人でもなんとかなるわい」
戦士は抱えたアルスを地面に下ろすと、魔法使いと共にバラモスのほうに切りかかっていった。
バラモスもフラフラしているし、確かに彼らに任せても大丈夫かもしれない。
そう考えたら一気に力が抜けてきた。
「ありがとう遊び人、助かったよ」
2人が離れた事で遊び人はアルスに近づいていく。
その表情はいつもの笑顔のメイクを抜きにしても素晴らしい笑顔だった。
「これで念願だったバラモスも倒せる。お父さんにも出来なかった悲願を達成できるんだ」
勇者もその笑顔に釣られて楽しそうに心を弾ませていく。
未だバラモスは戦士たちと戦っているが、あの様子では長くは持たないだろう。
「君のおかげでバラモスを倒せるんだ。これで君を馬鹿にした奴を見返せるね」
アルスは彼が仲間になった理由を思い返して、それを達成できたことに喜ぶ。
遊び人は確かに弱かったが、それでも彼がいたから道中楽しく過ごせた。
もし彼がいなかったら途中で挫けることもあったかもしれない。
そんな大事な仲間だったからこそ、その目的の達成を自分の事のように喜んだ。
「うん、ボクの夢だったからね。ありがとう。
アルス君についていったおかげで僕の夢が果たせるよ!」
遊び人はとても楽しそうに、そして嬉しそうにはしゃぐ。
「『ボク』がバラモスを倒すっていう夢を!」
遊び人は脱力しきっていたアルスを抱えてバラモスの方に走っていく。
アルスは突然の出来事に何がなんだか分からない。
ただこのままじゃ爆死してしまうことだけは分かった。
「ちょっと遊び人、どうし……ちゃったの?
え、え、まさ……か?」
「そぉい!!!」
禁止行動の範囲ギリギリに近づいてから、一気にアルスをバラモスたちに向かって投げ飛ばす。
バラモスの方に集中していた戦士達は後ろから投げ飛ばされた勇者に気付かない。
遊び人の姿を目にしたバラモスは目的を察して、投げ込まれたアルスにバシルーラをするが効果がなかった。
そして4つの爆音が響く。
◆
「馬鹿にした奴を見返すっていうのは本音じゃないんだよね。
本当はただ名誉が欲しかっただけ。勇者しか無理といわれた魔王を倒したんだ。
そりゃあ礼金だとか地位も貰えるだろうしね、今から楽しみだよ」
空を飛んでいく遊び人は、道化の顔を醜く歪ませて笑う。
最後のバシルーラはアルスに効かなかったため、遊び人に向かっていったのだがそれも問題ない。
いつまでもあそこにいたら怪しまれるだろう。
バラモスを倒したのを知られるのは構わないが、勇者を道連れなんて知られたら名誉どころの話ではない。
全世界で指名手配されて、見つかったら極刑になってしまうだろう。
そうなっては意味がないのだ。
「アルス君には恨みはないけど、ま、運が悪かったと思って成仏してよね。
ボク的には戦士の奴も始末できて嬉しいわけだけど」
遊び人は直ぐに突っかかってくる戦士が好きではなかった。
先程も許さないだなんだといって直ぐに手を出す筋肉馬鹿。
第一いつもは役立たずとか言ってるくせに逃げたら卑怯者扱いだなんてチャンチャラおかしい。
「魔法使いのお爺さんはいつもボクに優しくしてくれたけど、戦争に犠牲は付き物だもんね。
それにどうせ老い先も短いだろうし、問題ないよね」
彼に関しては英雄譚でも語ってあげてもいいだろう。
いつもあの筋肉馬鹿から庇ってくれた恩返しというわけでもないが。
彼の孫に活躍を聞かせてあげるのもいい。
「バラモスも倒したことだし、アリアハンに帰ったら何しようかなぁ。
美味しい物を食べまくるのもいいし、ハーレムを作るのもいいなぁ。
そうだ、ボクの王国を作るのもいいかもな。
魔王を倒した『勇者』の言うことなんだから逆らえないだろう―――――」
「お母さん、ピエロがこっちに飛んでくるよ!」
「ああっ、禁止行動が―――」
「時報はもういやだー!」
【勇者アルス@ドラゴンクエスト3 死亡確認】
【女戦士@ドラゴンクエスト3 死亡確認】
【男魔法使い@ドラゴンクエスト3 死亡確認】
【バラモス@ドラゴンクエスト3 死亡確認】
死因:『密集および大集団での行動の禁止』に抵触
【富岳ジロウ@ひぐらしのなく頃に 死亡確認】
【柊みき@らき☆すた 死亡確認】
【柊まつり@らき☆すた 死亡確認】
【男遊び人@ドラゴンクエスト3 死亡確認】
死因:『密集および大集団での行動の禁止』に抵触(バシルーラで3人のもとに飛ばされる)
最終更新:2008年02月09日 04:08