「はーあ、復活したのはいいんだけどすることなんて無いんだよなあ……」
骨川スネ夫が目を覚ましたのは夢の国の某アトラクションの中だった。
園内をさまよっている時に
緊急放送や死者放送を聞いた。まだまだ殺し合いは継続されるようだ。
「この調子だとのび太やジャイアンも生き返ってるんだろうけど……はあ、どうしよう」
スネ夫は殺しあいに乗るわけでも、信長たちを倒したいわけでもなく茫洋とした足取りで徘徊する。
積極的な行動に出ようとしないその理由は、彼の中にまだある「罪悪感」のせいだった。
―――自分は、のび太やジャイアンたちを見捨てて、逃げようとしていた。
今更合わせる顔なんか無い
「僕なんかが許してもらえるはずが無い。―――いっそ、もう一回自分で死んでみようかな」
死者スレのほうが居心地が良かったような気さえする。
そんなスネ夫の耳に、奇妙な声が聞こえてきた。
「だから、今は物を食べちゃいけないんだって!!」
夢の国に沢山ある食堂の一つに、唇の青い少年と太った少年がいた。
「小杉くん、放送の内容くらい覚えておきなよ!!」
「うるせえ藤木!! 俺は喰うと言ったら喰うんだ!!」
「だから食べたら死んじゃうって……」
「そんなん知らねえ!! 腹が減ってるんだから喰ってもいいだろ!!」
藤木は小杉にすがり付いて止めようとするが、小杉はもはや正常な判断力を失っている。
『メシさえ喰えれば死んでもいい』と本気で思っているのだ。
ここには食材は山ほどあるので、食べようと思えばいくらでも食べられる。
―――自分の命と引き換えに。
「いい加減に離せよ!! この卑怯者が!!」
小杉は藤木を突き飛ばす。そして冷蔵庫を開けると、中からサンドイッチを取り出した。
「やめろ小杉くん!!」
「なかなか美味そうじゃねえか。そんじゃ、いただきま~す!!」
藤木は耳を押さえて目を閉じた。友達一人助けられなかった自分を恥じながら。
「美味しいサンドイッチを、お腹いっぱい食べたつもり!!」
チリーン……
「ああ美味かったぜ。じゃあ俺は寝るぜ。敵が来たら起こせよな」
小杉は満足そうに腹をさすると、さっき『食べた』はずのサンドイッチの味を思い出しながら横になった。
(え? え? え?)
藤木は何が起こったのかわからない顔をして立ち上がった。
(え? なんで?)
小杉は「美味かった」と言ってた。その言葉に偽りが無ければ、彼の首はとっくに胴体から離れているはずだ。
なのに彼はまだ健康そのものである。
いや、そもそも彼は藤木が見た限りではサンドイッチを「食べて」さえいなかったのだ。
冷蔵庫の中に全てのサンドイッチが手付かずで残っているのがその証拠だ。
(そうだ……さっき、なんか『音』が……)
その時、扉が開く音がした。
「ひいいい!!」
殺人者かと思い、腰を机の下に隠れる藤木。
「間に合ったみたいだね」
店の中に入ってきたのは、トライアングルのような道具を持った変な髪形をした少年だった。
「僕は骨川スネ夫。五年生さ」
「僕は藤木茂、あっちにいるのは小杉君。三年生です」
二人は食堂内の椅子に座って自己紹介した。
藤木の目はスネ夫が持っている道具に向けられている。
「ああこれかい? これは僕の知り合いの
ドラえもんって奴が持ってる道具の一つで『ツモリナール』って言うんだ。
さっきみたいに、これを鳴らすだけで音を聞いた人をいろんな『つもり』にさせることができるんだよ」
「じゃあ、さっきも?」
「うん。君の友達の小杉くんに、『お腹いっぱい食べたつもり』になってもらったのさ。
つまり、本当に食べたわけじゃないから首輪は爆発しない。けど、お腹いっぱいな『気分』にはなる。
そういうわけさ」
ちなみに小杉はカウンターの後ろで熟睡している。
「へえ……便利な道具ですねえ」
藤木はすっかり警戒を解いてスネ夫の話に聞き入っていた。
むしろ二歳とはいえ年上の人間と合流できたおかげで、今までよりも気が大きくなるような気がした。
この人と一緒なら、さっきみたいに小杉くんが暴れても大丈夫だ。
この人と一緒なら、どんなことがあったって……
「そうだ、この道具、よかったら君にあげるよ」
スネ夫はツモリナールを藤木に差し出した。
「ええええ!? でも……」
「これがあれば、さっきみたいに小杉くんが空腹で暴れても大丈夫だろう?
ああ気にしなくていいよ、僕ももともとは死者スレにいたリボンの頭の人に貰ったものだから」
「いえ、そうじゃなくて……骨川さんは、僕達と一緒には来ないんですか?」
「……それは、できない」
スネ夫は、きっぱりと言い切った。
「どうして……」
「まあ、僕にも色々と事情があるってことさ。じゃあな、生き残ったらまた会おうぜ」
「そんな!!」
藤木は席を立って去ろうとしたスネ夫の服にしがみ付いた。
「お願いです、僕たちと一緒にいてください!! 僕だけじゃ小杉くんを守れない!!
僕達だけじゃ生き残るなんて出来ない!!
お願いです、僕達を守ってください!!」
「出来るわけ無いよ、そんなこと!!」
僕は叫んだ。自分でも気がつかなかったくらいの大きな声が出た。
藤木くんはびっくりして僕から離れる。
「僕は……僕は、友達を見捨てて逃げたんだぞ!! 裏切り者の卑怯者さ!!
そうさ、ジャイアンは普段はあれでも映画では頼りになるし、のび太だって誰にも負けない強さを持ってる!!
でも、でも、僕には、僕なんかには……」
ハハハ……なんだよ僕、なんでこんなに必要も無いことをベラベラと喋ってるんだよ?
それに、何だよ、この頬をつたう冷たいものは。
なんで僕、泣いてるんだよ!!
どうせ僕なんか、ビビッて逃げるしか能が無い奴じゃないか。そんなのわかりきってるんだよ。
なんで……
そうやってうつむいた僕の耳に、藤木くんの声が聞こえたんだ。
「あなたは卑怯なんかじゃない!!」
思わず彼の顔を見た。
「小杉くんを助けてくれたじゃないか!!」
「ハッ!! あんなの、僕自身に何の危険も無いことだから出来ただけだよ。
もし自分の身がヤバくなったら仲間なんか置いといてさっさと逃げる!! それだけだよ、僕は」
ああ、もうこんな奴と話なんかしたくない。さっさとこの店を出よう。
その後のことなんかどうでもいいや。
そう考えていた時だった。
突如店の扉が開いて、全身が血まみれの犬が入ってきた。彼の頭の上半分は潰れていた。
鈍器か何かで殴られたのだろう。
あんまり詳しく外見を描写すると色々とヤバイので自重しておく。
「だ、大丈夫ですか!?」
藤木くんは腰を抜かしてたけど、僕は急いで彼の元に駆け寄った。
「に……げ……」
それだけを呟くと、彼―――世界的に有名な某犬は息を引き取った。
目の前で人が死ぬのをみたのは初めてだった。助けられなかったという後悔が頭を占めようとする。
が、それ以上に重要なことを彼は言い残して逝ったのだ。
「藤木くん、すぐに小杉くんを起こして!!」
相変わらずビビって腰を抜かしている藤木くんに呼びかける。
藤木くんはなんとか自力で立ち上がるとカウンターの後ろで寝ている小杉くんを起こしにいった。
彼はこう言おうとしたんだ。『逃げろ』と―――
「なんだよ藤木、なんかあったのか?」
小杉君がようやく目を覚ましたらしい。
「藤木くん、君達は裏口から逃げるんだ。僕は表から出る。そうだな、シンデレ○城で落ち合おう」
僕はそう叫びながら、犬男の死体にカーテンを掛けた。せめて安らかに眠って欲しい。
「なんだよー。それより今俺はジュースが飲みたいんだよ!! 早く持って来いよ!!」
「ああもう、『おなかいっぱいジュースを飲んだつもり』!!」
チーン。
「さ、行くよ!!」
「ああ」
藤木君と小杉君は裏口から出て行った。それを認めて僕は胸を撫で下ろす。
さてと。こっちもぼやぼやしちゃいられないぞ。
念のため鞄からちょっと道具を取り出しておく。それを手にして僕は店を出た。
いつの間にか西の空は赤くなっていて、普段なら家族連れで賑わっているはずの夢の国が夕焼けの中で静かにたたずんでいる
風景はちょっとしたゴーストタウンみたいでどこか不吉なものが感じられた。
―――そして、その夕焼けから夜に変わろうとするさながら夢の中のような風景の真ん中に、
ありえない男が立っていた。
その男は全身に血をつけていた。
右手に握っている金属バッドは不吉にひしゃげていた。
そんな格好をしていたら、やさしいおじいちゃんのような白髪と髭も人のよさそうな丸顔も台無しじゃないか。
そして何より、その男が左手に持っているものこそが彼の異常さを完膚なきまでに物語っていた。
それは、世界的に有名な某アヒルの撲殺死体だった。
「少年、どうしたのだね? そんな道の真ん中に立って」
老人は孫にでも話しかけるような声で近づいてきた。僕は逃げようとして、無理なことに気がついた。
足がすくんでいた。
「ああ、このアヒルかい? これはね、フライドチキンの材料にするんだよ。いや、アヒルだからフライドダッグかな?
君ももちろん好きだろう、ケンタッ○ーのフライドチキン」
「そんな、じゃあ、あなたはやっぱり……」
「お初にお目にかかるかな。カーネルサンダー、人呼んでケンタッ○ーのおじさんだ」
そう言って、彼はやはり優しき老人のようににこやかに笑う。なんとも現実味の無い光景だった。
嫌だ。怖い。逃げたい。
逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げ……
ダメだ。
僕がいまここで逃げたら、こいつは次に藤木君たちを狙うかもしれない。
僕を「卑怯なんかじゃない」って言ってくれたあの子たちを。
「ところで少年、君の名前は?」
「ええと……骨川、スネ夫」
「ふむ。骨川か。確かその名前は……」
カーネルは血で赤く染まっているあごひげを撫でながら呟く。
「
第二回放送くらいで呼ばれているね?」
「う、うん……」
「……だったら、遠慮なく殺せるということだね」
彼はそう言うと、僕の頭の上に金属バッドを振りかぶり―――
振り下ろした。
「暇つぶしだよ。単調な日々に刺激が欲しかったんだ。毎日毎日から揚げを揚げるだけの日々、そんなのを繰り返しているとね、
イヤでもたまには何か別のことをしたくなるものさ。
例えば、いつもうちのから揚げを美味しそうに食べているかわいい子供の頭をぐちゃぐちゃにしてやりたい、とかね」
そこで言葉を区切り、カーネルは肩をすくめる真似をした。
「しかし、残念だなあ。ここでおしまいだ。君があまりに機転が利く子供だったせいだ。
いやあ全く残念無念。ここで私の楽しい時間はおしまいだよ」
カーネルは本当に残念そうに、しょんぼりと紙製のバッドを足元に投げ捨てた。
僕は勝ちを確信した。
「え―――」
「本当に残念だよ。これでほら、もう終わってしまった」
カーネルは、本当に心の底からつまらなそうな顔で、僕に銃口を向けていた。
僕は、果たして自分の体のどこから血が出ているのかも確かめることが出来ずに―――地面に倒れた。
「興ざめだ。もっと血沸き肉躍るような殺しをしてみたかったのに。こんな無粋なものなんか使うのは予定外だ」
遠ざかる意識の隅で、僕はカーネルの足音を聞いた。
「君は賢い少年だ。賢くで、そして惨めで。まったく本当に、うちのフライドチキンが良く似合う」
ああ―――そうかもな。僕は卑怯で、惨めで、どうしようもないヤツだよ。
なあ、ジャイアン? のび太? ドラえもん?
でもさあ、こんな僕でもちょっとは自慢していいかもしれないことがあるんだ。
カーネルは僕のことをただの役立たずなガキだと思っただろうけど、でも、きっと僕のしたことは無駄じゃない。
こいつと戦ってる間に、藤木君と小杉君が少しでも遠くに逃げられたんだから―――
それだけで、僕は満足だ。
(ああ、これで少しはジャイアンやのび太に、言い訳も出来るかなあ……今度は、逃げなかったんだから)
カーネルは犬の死体とアヒルの死体、そしてさっき殺した少年の死体を食堂の厨房に運ぶと油でカリっと揚げた。
全ての食材はフライに。それが彼のルールだった。
「さて、さっきの少年はまったく見込み違いでしたが、まあもっと手ごたえのある相手と見える時も近いでしょう」
カーネルはノートパソコンを開いた。インターネットに繋がっている。
「『ツンデレコンビのうち一人は千葉の夢の国にいる』。この偽情報で何人が踊ってくれるかはわかりませんが……
楽しみですねえ」
カーネルは口ひげをくゆらせて笑う。
「私の仲間を道頓堀に投げ捨てた阪神ファンに復讐してやるんですから」
【
二日目・午後四時/千葉県某夢の国(食堂)】
【カーネルサンダー@ケンタッ○ー】
[状態]:健康
[装備]:拳銃、ノートパソコン、から揚げ
[道具]:支給品一式
[思考]:基本:自分以外のマスコットキャラと阪神ファンを皆殺しにする
さらに他の参加者も戯れに殺す
1:偽情報で釣られる参加者を待つ
【二日目・午後四時/千葉県某夢の国(シンデレ○城付近)】
【藤木茂@ちびまる子ちゃん】
[状態]:健康
[装備]:ツモリナール@ドラえもん
[道具]:支給品一式
[思考]:ツンデレコンビを揃えて主催をおびき寄せて倒す
【小杉@ちびまる子ちゃん】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考]:ツンデレコンビを揃えて主催をおびき寄せて倒す
【某世界的に有名な犬@某夢の国 死亡確認】
【某世界的に有名なアヒル@某夢の国 死亡確認】
【骨川スネ夫@ドラえもん 死亡確認】
最終更新:2008年02月25日 10:26