とりあえずこのまま澪ちゃんを放置するわけにはいかないわ…
紬「斉藤、A型の血液を用意して…あとはよくわからないわ。痛み止、包帯、消毒液…麻酔薬もね。急いで」
斉藤『……かしこまりました』
内線で斉藤に捲し立てすぐに道具に目を移す…お祖父様が亡くなってずいぶん経つと言うのにいうのに全ての道具に手入れが行き届いていた。
病院で使われているような金属製のワゴンに凶悪な器具が次々と積まれていく…ノコギリ、鉈、ペンチ、錐、釘、金槌、小型の電気ノコギリや電気ドリル…澪ちゃんが見たらそれだけで気を失っちゃいそうだわ~
紬「こんなところかしら」ガラガラ
紬「澪ちゃん…大丈夫?」
澪「ムギ…ハァハァさっきはごめんなハァハァ…言い過ぎたよハァハァ」
紬「いいのよ…私こそごめんなさい。本当は澪ちゃんを傷つけたくなんかないの」
澪「わかってる…ハァハァムギは優しいからなハァハァ、なぁムギ…さっきから左足が焼けるように…凄く痛いんだ。ちょっと見てくれないか?この体勢だと自分じゃ見れないんだハァハァ」
紬「わかったわ、少し待ってね…え~とこれでいいかしら」ガチャガチャ
世間一般では鉈と呼ばれる道具を手に取る。
澪「足の怪我が治ったらさ…またバンドやろぉなハァハァどうだムギ?大したことないか?……ムギ?何だよそれ、冗談だろ」ガタガタ
紬「えいッ☆」バギィ
力の限り振り下ろす…元々骨が砕けていた位置を狙ったせいか澪ちゃんの左足首は一撃で千切れ飛んだ…
澪「あ゛ぁあ゛ぁあぁあ゛ぁあぁあぁあ゛ぁ」
澪ちゃんは獣のような雄叫びをあげのたうちまわる
澪ちゃんはまた失神してしまった…今度は口の端からなにか泡みたいな物が出てる、切り離された足首は鮮血を撒き散らし離れたところに転がっていた。さっきとは比べられないほど出血が激しい
紬「ちょっとまずいかしら」
斉藤『お嬢様よろしいでしょうか?』
紬「いいわ、入りなさい」
斉藤「失礼します…お嬢様こういった場合には舌を噛むおそれがありますので秋山様にこちらをどうぞ」
斉藤が差し出したそれは猿ぐつわの真ん中に無数の穴が均等にあいた卓球の玉のような球体がついた物だった
紬「驚かないの?」
斉藤「今さら隠すこともないでしょうが先代様で慣れていますので。実はこうなることを見越しておりまして呼んでいる方がいます」
斉藤の後ろから白衣を来た小柄なお年寄りが入ってきた…不意の来客に冷や汗が出る
紬「誰なの?」
斉藤「世にいう闇医者とでも呼ぶのでしょうか…先代様の頃から琴吹家抱えている専属医になります。口の方は固いのでご安心下さい」
医者「まずはそちらのお嬢さんの手当てからしましょう…紬様、四肢の切断は素人が気軽にやれるもんではありません。医師の指導の元、患者の生命を優先して少しずつ進めていくものなんです」
紬「でも澪ちゃんの飼い主は私よ、他人になんか任せられないわ~」プンプン
医者「紬様は先代様に似ておりますな…まぁ当然といえば当然なのですが。」
斉藤「………さ、秋山様の手当てにかかりましょう」
テキパキとした作業で輸血や縫合をはじめる斉藤とお医者様…手持ちぶさたな私は切り離された足首を手に取りその美しさにウットリとしていた
医学のことは詳しくないからわからないけれどその医者によると人間の身体は一度に多くのパーツが欠損すると失血死や外因性のショック死を招くという。
相手の身体に損壊を与えて快楽を得たいという時でなければしっかり麻酔をかけ時間をかけプロセスを踏み取り外した方が安全らしい
…澪ちゃんが怯える様子も見たい気持ちもあるがそこは我慢することにした、命と一時の快楽じゃ天秤にかけられないわ
とりあえず澪ちゃんは床ではなくベッドのある別の部屋で治療していくことになった…少し物足りない気持ちもあるが医者と斉藤に治療を任せ地下を後にする
地上に上がり澪ちゃんの足を切り落とした感触を思いだして奮えていると携帯がまた不在着信があることを告げる光を放っていた…
お昼休みにりっちゃんがかけてくれたらしい。唯ちゃんは体調を心配してくれるようなメールを送ってくれていた。本当にいい子たちだわ。そしてもう一件のメール…昨日の間違いメールと同じアドレスだ。内容は…
『校舎の裏口が開いてたわよ』
奥歯がカタカタ鳴り膝が震える、嫌な汗が全身から吹き出る…誰にも見つからず校舎から出たと思っていたが誰かに見られていたらしい。どうしようどうしようどうしよう
天国から地獄へ真っ逆さまに突き落とされたような気持ちになり生まれたての子馬のような足取りで再び地下へ降りる
紬「ねぇ斉藤、困ったことになったわ」
斉藤「いかがなさいましたお嬢様」
紬「あの日、澪ちゃんを連れ出すところを誰かに見られていたらしいの…どうしたらいいの」
斉藤「ふむ、拝見しましょう…連れ去った直後ではなく二日ほどおいてから核心をつくような内容。相手は恐らくお嬢様を脅す算段でしょうな」
紬「私を脅す!?琴吹家の後継者の私を…一体誰なのよ、そんな不埒者はッ!!」ワナワナ
斉藤「お嬢様落ち着いて下さいませ。脅すのが目的でしたらそれほど恐ろしい相手ではありません。それに送り主はすぐわかりそうです」
紬「そうなの?誰なのよ」
斉藤「お嬢様のお近くによく慣れ親しんだ教師の方はいらっしゃいませんか?」
紬「さわ子先生?」
斉藤「さわ子先生とおっしゃいますか?まぁ十中八九その方でしょうな」
紬「なんでわかるの?」
斉藤「わたくしの記憶が正しければ秋山様は校内でファンクラブが出来るほどの方らしくメールの送り主が生徒だった場合、そんな光景を目にすればすぐに警察なり教師なりに届けるでしょう。何しろ有名な方ですからね」
紬「言われてみればそうね」
斉藤「それにお嬢様を脅すとなれば琴吹家の家柄を知ってのことでしょう、身近な方は知っていても学内全員がお嬢様が琴吹グループの一人娘とは知りますまい」
紬「それに私のアドレスを知っていた…」
沸々と怒りが沸いてくる。きっとこの先の私の出方を想像し楽しんでいるのだろう…
斉藤「そういうことですな」
紬「あの行き遅れ…」ギリギリ
斉藤「お嬢様、お口にお気をつけ下さいませ。余裕が無くなった人間から破滅するものです…先代様はいかなる時でも落ち着いて行動なされました」
紬「………お祖父様だったらこんな時どうするかしら」
斉藤「要求を聞く振りをして呼び出し捕らえて生まれてきたことを後悔させてから惨たらしく殺害なさるでしょうな」
紬「私にも出来るかしら」
斉藤「お嬢様がお望みなら…斉藤はその為におります。それに秋山様の手術に向けて練習台も必要かと…」
そうと決まればメールなんてまどろっこしい真似なんてしてられない。短縮番号でさわ子先生に電話を選択する
斉藤「お嬢様、お待ち下さい…さわ子先生様にはこちらの携帯電話をお使い下さい。お嬢様の履歴が残りますと後々面倒なことになりかねますので」
紬「そうね、ありがとう」
時刻は夕方6時を越えている、軽音楽部は活動していないだろう…さわ子先生は待っていたかのようにすぐに出た
さわ子『もしもし誰かしら?』
紬「さわ子先生、私です。琴吹です、今大丈夫ですか~?」
さわ子『あらムギちゃんだったのね。体は平気?大変だったわね~もう起きても平気なの?』
白々しい…怒りに声が震えそうになるのを堪えて会話を繋げる
紬「先生、これからお会い出来ませんか?」
さわ子『あら急にどうしたのかしら?』
紬「相談にのって欲しいことがあって…先生ならご存知ではありませんか?」
さわ子『そうね、いいわよ。困ってる生徒の為なら時間外労働も苦じゃないわ』
紬「ありがとうございます。では家の者に迎えを行かせますので…ハイ、失礼します」
なにが困ってる生徒の為だ。吐き気がする
紬「斉藤、さわ子先生を連れてきて頂戴…誰にも見つからないようにね。あと出来るだけ無傷でね」
澪ちゃんと違って今度は容赦しない…優しさの欠片も与えるつもりはない、さわ子先生の身体全体に愚かな自分が誰に脅しをかけたかわからせてあげる
一時間もしないうちに斉藤がさわ子先生を抱え戻ってきた…さわ子先生は傷一つなく眠っているようだ
斉藤「処理する事案がありますので少し外します…何かありましたらお呼び下さい。では先生、お嬢様を宜しくお願い致します」
医者「じゃあはじめますかの」
紬「宜しくお願いします」
医者「まずはアキレス腱からいこうかね…そこの大きなニッパーを取っておくれ。そうそうそれでいい。せ~の」バチン
完全に防音処理がされている部屋に繰り返し悲鳴があがり夜は更けていく…
最終更新:2011年05月05日 20:41