そんな充実した日々。
もちろん、標的と仲良くする事も忘れない。
唯「あずにゃん、ぷにぷに♪」
梓「う~~……」
普通は相手のことをよく知るほど、相手と仲良くなればなるほど、殺しにくくなると言われる。
唯「物じゃなく一人の人間として認識されて、情がわくから。」
唯「でも、私は人間を殺したい。」
より人間として認識したい。
だから標的のことをよく知らなくちゃいけない。
唯「一個の個人を殺したいんだよね。」
好きなもの、好きなこと、将来の夢。
生活時間。何気ないクセ。家族。
色々なことを調べた。
中野梓の家にちょくちょく遊びに行き、家族とも仲良くなった。
唯「これで私が中野梓を殺せば、みんなこう思うよね。」
唯「なんで?どうして?あんなに仲が良かったのにって。」
唯「そして、その理由は私にしか分からない……。こんな感じでOKかな。」
律「なんか唯、だいぶ変わったよなー。」
唯「そう?」
律「なんかこう、もっとほわほわしてたっていうか、ちょっと抜けてたっていうか。」
唯「そんなだったっけ?」
律「うん。もっとアホな感じだったのに。」
唯「律ちゃん、それはひどいよ!!」
唯「でも多分そうだったんだね。」
唯「人からそう見えるのなら、自分で違うって言い張っても。」
律「ほらその余裕。一体どうしたんだよ!?」
唯「んー、ここのところでだいぶ変わったかも。」
唯「でも気にしない、気にしない♪私は私だから!!」
律「……まっ、そうだよな。唯は唯だもんな。」
律「それじゃあ部活に行くぞーー!!!」
唯「了解しました、律ちゃん隊長!!」
紬「(私、この二人を見てるだけで幸せ……!!)」ボタボタ
憂「お姉ちゃん、最近変わったよねー。」
唯「そう?それより、このオムライス、すごく美味しいよ!!憂はいいお嫁さんになるね!!」
憂「えへへ~、ありがとうお姉ちゃん。そんな事言われると照れちゃうよ。」
憂「そういえば、梓ちゃんもすっごく変わったんだよ。」
憂「前より雰囲気が全然違うくなって、とても可愛くなったの!それに頭もすっごく良くなったみたい。」
唯「ふ~ん、そうなんだ。」
憂「それに、律さんや澪さん、紬さんも前より生き生きしてて楽しそうに見えるよ。軽音部、なんかいい感じだね!羨ましいな~」
唯「だったら憂も軽音部に入らない?お姉ちゃんはいつでも大歓迎だよ!!」
憂「う~ん、考えとくね。」
そして一年が経った。
決行の日だ。
充実した素晴らしい1年だった。
なんらの不満もない満ち足りた日々。
これを棒にふって行われる殺人。
唯「フツーじゃありえないだろうけど。」
唯「でも、だからこそ意味があるってものだよね。」
カバンの中に包丁を入れて学校に向かう。
私のやる気に触発されてか両親の仕事も順風満帆。
今度、重要なポストにつくんだとか。
唯「お父さん、お母さん、ごめんね。」
そして軽音部のメンバーも、どんどん演奏が上手になっていった。
唯「私とあずにゃんがいなくなると軽音部は三人になっちゃうのかー。」
唯「律ちゃん、ごめんね。」
唯「いい天気だなぁ……」
唯「なんか私ってめちゃくちゃ幸せなんじゃ……」
学校に着いて、授業を受ける。
あっという間に放課後になった。
律「ゆいー、部活行こうぜーー」
唯「ごめん、律ちゃん、ムギちゃん。私、ちょっと職員室に用事があるから。」
紬「それじゃあ、先に行ってるわね。」
律「早く来ないと、唯の分のお菓子も食べちゃうからなー♪」
唯「むっ!!律ちゃんそれは許されない事だよ!!」
音楽室に行くのを遅くする。
そうすれば、中野梓は先に音楽室にいるだろう。
ある程度の時間が経ってから音楽室に行った。
ドアの前でカバンから包丁を出し、体の後ろに隠す。
そして、左手でドアを開ける。
中野梓は既に音楽室にいた。
梓「唯先輩、今日は遅かったですね。」
唯「ごめんねー、職員室に行ってたんだ。」
そしてだんだんと標的に近づく。
大丈夫、いつも中野梓にはスキンシップといって抱きついている。
梓「ゆ…い…先……輩…、何で……?」
紬「キャアアアアア!!!」
澪「唯、お前何やって……。血、血がたくさん……」バタンッ
律「唯っ!!お前何やってんだよ!!!梓っ!!いっ、今救急車呼んでやるからな!!!」
多分、みんなはこんな感じの反応をするだろう。
標的まであと少し。
紬「唯ちゃん、今お茶入れるわね。」
唯「ありがとう、ムギちゃん。」
包丁を持つ手に力が入る。
唯「あずにゃ~ん」
抱きつく振りをして、包丁を中野梓の体に刺す。
どこがいいかな。やっぱり心臓かな。
あと30cm。
――――今だ。
――――グサッ
包丁が心臓に突き刺さった。
――――ブシュッ!!
血が吹き出る。
え……?
唯「あ……ず…にゃん、何で……?」
紬「キャアアアアア!!!」
澪「梓、お前何やって……。血、血がたくさん……」バタンッ
―――ドサッ
私はたまらず、床に倒れた。私の胸になんで包丁が……?
律「梓っ!!お前何やってんだよ!!!唯っ!!いっ、今救急車呼んでやるからな!!!」
梓「唯先輩……、あなたは理想的なターゲットでしたよ。」
唯「(ああ、そうか……)」
薄れていく意識の中で、私は不思議に充足感を味わっていた。
あとは彼女が語ってくれるだろう。
これで終わりです。読んでくれた皆様、ありがとうございました。
最終更新:2011年05月06日 19:34